社会保険労務士は法律家であり、特に社会保険と労務に長けた専門家です。合格率の低い難関資格でありながら認知度はイマイチだったり、仕事がAIに取って代わられてしまうのではと危惧されています。今回はどんな職業なのかを解説するとともに、理解の一助となる本を紹介していきます。
しばしば「社労士」と略して呼ばれる社会保険労務士は、読んで字のごとく「社会保険」と「労務」に関する専門の法律家です。耳に馴染みのあるところでは「労働基準法」「男女雇用機会均等法」「雇用保険法」などの法律に精通しています。
また、社会保険労務士は国家資格であり、業務独占資格でもあります。したがって、社労士以外の人がその業務を行うことは法律で禁じられています。弁護士以外の人が弁護士業務をおこなうことを禁じられているのと同様ですね。
<社会保険労務士の仕事内容>
社会保険と労務に関する法律は上記した以外にも多数あり、かつ非常に難解です。社会保険労務士は専門知識を活かして、企業に対しては雇用が法律に準じているかどうかをアドバイスしたり、個人に対しては年金や労務について相談を受けたりするのが仕事です。
一般的な働き方としては(1)企業の人事部に勤める、(2)独立開業して顧問社労士になる、(3)独立開業して個人からの依頼を受ける、の3通りがあります。
<社会保険労務士の年収>
社会保険労務士の年収を、厚生労働省が2017年に実施した「賃金構造基本統計調査」から平均値のデータを見てみましょう。年齢は44.9歳、勤続年数8.5年で月収が352,400円、賞与が1,033,300円なので年収は5,262,100円です。(企業規模10人以上、1000人未満)
この数字は、一般的な会社員と比べて年収が多いといえるでしょう。ただし、社会保険労務士も労働形態によっていろいろです。
企業に勤める会社員であれば、年収はその企業の給与体系に沿った金額になりますので、会社の規模によって年収は大きく異なります。
また、独立開業した社労士の中には年収1000万超という人もいますし、300万円に満たない人もいます。多くの士業と同様に、年収は実力次第の面があるので、資格を取れば500万円以上稼げるというわけではありません。
社会保険労務士の試験を受けるには、以下3つのうちのいずれか1つの条件を満たす必要があります。
「学歴」については短大・大学、高専の卒業者であれば受験できます。専門学校卒業者や大学中退者の場合は非常に細かな条件がありますので、当てはまるかどうかはご自身でご確認ください。
「実務経験」にも満たすべき条件がありますので要確認です。「厚生労働大臣の認めた国家試験合格」は行政書士の他79種類あり、いずれかに合格をしている方には受験資格があります。
<社会保険労務士試験の内容>
社会保険労務士試験は7科目で行われ、それぞれの科目は択一式が10問と選択式(穴埋め)が1問で構成されています。うち、「労務管理その他の労働に関する一般常識」の科目のみ選択式が2問なので、合計問題数は78問です。論述式や口頭の試験はありません。
点数配分は択一式が各10点で70点満点、選択式が各5点の40点満点です。
試験時間は択一式が3時間30分、選択式が1時間20分なので、前者は各3分、後者は各10分のペースで解いていかなければなりません。
試験の合格基準は「択一式と選択式の問題の総得点」と「各科目の得点」が、それぞれ定められた基準点に達していれば合格です。
したがって、どれだけ得点を取ったとしても、1科目でも基準の点数を下回っていた場合、足切りで不合格となってしまいます。合格基準点の公表は合格発表日です。
<社会保険労務士試験の難易度>
社会保険労務士試験の合格率は非常に低いです。過去のデータから、直近5年分を見てみましょう。
一見して分かるように、軒並み10%を切っています。論述試験がないので暗記力勝負ではあるのですが、暗記する範囲が膨大なため決して容易ではありません。
さらに社労士が学ぶ法律が毎年のように法改正されるので、情報の整理が必要です。これらの要因が試験の難易度を高くしているといえるでしょう。
独学での合格は不可能ではありませんが容易な道のりではありません。そのため、専門学校や通信講座で学ぶ受験者が多くいるのが現状です。
この記事をご覧いただいている方は、将来この職業に就きたいという方はもちろん、手に職をつけておきたい、転職を考えている、という方も多いでしょう。
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社会保険労務士の資格取得後、実際のところ仕事はあるのか、そして将来的に食べていけるのかというのは気になるところ。
結論から述べると、中小企業の顧問としての需要が、将来的には伸びると思われます。
まず、社労士という資格は難関な国家資格ではありますが、関わりのない人にはまったく知られない認知度の低い資格でもあります。また、認知度の高い弁護士や税理士、会計士といった資格と比べた時に、会社にとっての必要性は低いのが現実です。
しかし、だからといって社労士の活躍できるフィールドがまったくないわけではありません。
社労士は取り扱う業務が多岐にわたるため、社会保険や労務に明るくない経営者にとってはコンサルタントとして重宝されます。大企業は、社内に社会保険や労務に詳しい人間がいることがほとんどなので、需要は低いですが、反対に中小企業においては、会社の規模が小さいほど、それらに詳しい人材がいないことが多いので、需要は十分にあります。
では、上記で説明した働き方の違いから、将来性を見てみましょう。
将来的に、書類の作成や給与計算といった事務処理的な業務はAIに取って代わられる可能性が大きいです。
独立開業者や社会保険労務事務所に勤めている人にとっては、事務処理的な業務が将来、先細ることは避けられません。しかし、「なんでもできる」点を活かしたコンサルタントとしての社労士の需要を自分で生み出すことができれば、将来も明るいはずです。
企業に所属している社労士は、務めている会社にもよりますが、AI化によってただちに職を追われるということはないでしょう。会社の中で、自分の強みを活かした働き方を見つけていくことが大事になります。
労務士は、働き方の改革を余儀なくされるとは思いますが、中小企業を中心とした需要の場は将来的にもあり続けると思います。
社会保険労務士について理解を深めてもらえたでしょうか?ここからは、さらなる理解への一助としておすすめの本を紹介します。
まずは今現在、社労士を目指している人や、社労士に興味があってもっと知りたいという人にピッタリの本を紹介します。
本書では社労士がどういう職業で、どうしたら社労士になれるのか、それにかかる費用まで詳しく丁寧に説明されています。
スタート地点である試験の勉強方法や社労士の存在意義という深いところまで、社労士についてのすべてが網羅されていると言っていいでしょう。
本書は社労士の試験は一発で合格するのが最も効率が良いと主張しています。なぜなら、試験で覚えるべき法律が毎年のように大きく改正されるからです。せっかく覚えた法律が翌年の試験においてはムダになるどころか、情報を混乱させることになりかねず邪魔になってしまうことすらあります。
1年で合格するのが効率がよいことは明らかですが、社労士試験合格は狭き門であることは当記事でも述べたとおり。
3回も4回も受験する人もざらですが、ノートも作らず、何度も模試を受けなくても1年で合格できるというのが、本書が提唱する「最短最速非常識合格法」です。「非常識」とありますが、理論的な勉強方法が紹介されていて、これから試験勉強を始める人には重宝されるでしょう。
また、試験合格のノウハウだけではなく、社労士のデメリット・メリットや、社労士がなぜ必要で、何をすべきなのかという根本的なことまで、経験に裏打ちされた豊富な情報がインプットできます。
社会保険労務士の世界の入口へ導く導入書としては文句ない内容です。
次に紹介するのは試験に合格して、さらに独立開業を目指す人に向けた本です。
「そのうち黒字になれば…」というノンビリした経営計画ではなく、稼げる時期を明確に「6ヶ月」と区切って、そこへ至る道のりを指南してくれます。
特に営業手法について細部に至るまでノウハウが示されていて、実践すれば1000万プレーヤも視野に入れることができるかもしれません。
- 著者
- 田中 実
- 出版日
- 2011-03-03
独立開業し晴れて所長になったといえども、それがバラ色の社労士人生の始まりでは決してありません。所長は社労士事務所の代表である資格者であると共に、優秀な経営者であることが求められます。戦略的に顧客を獲得していかなければなりません。
著者が明確に6ヶ月という分岐点を設けているのには理由があります。余程の潤沢な資金を持っている社労士は例外として、多くは開業後の資金に余裕がなく、スタートダッシュで早期に黒字化する計画が必要です。著者はそのための営業方法を惜しみなく披露してくれています。
時には「そんなことまでやるの?」「そこまで同業者に教えていいの?」というところまで言及していて、その営業方法はすべて誰にもできることです。
多くの独立開業した社労士のように著者も少ない資金でスタートしています。それだけに書かれていることは、これから独立開業者を目指す社労士と目線は同じです。
ぼんやりとでも独立を考えている人や、社労士として独立したけどうまくいっていないという人は、一度目を通してみてはいかがでしょう。
試験合格までの勉強方法から資格の活かし方、開業後の働き方まで取り上げているノウハウ本。そして、本書の最大の特徴は「女性のために書かれた」ということ。
著者だけでなく、様々な女性社労士のインタビューが掲載されています。結婚、出産、子育てという女性のライフステージごとに焦点を当てたまさに「女性による女性のための」社労士本です。
- 著者
- 冨樫 晶子
- 出版日
- 2012-07-25
著者・富樫晶子が資格を取ろうとしたきっかけは妊娠5ヶ月で離婚したことでした。自立する、ということをさらに意識した彼女は、その後に行政書士の試験に合格。それからなんと合格したその日には社労士の資格を取るべく、講座に申しこむという素晴らしい向上心の持ち主です。
そして猛勉強の末、見事社労士試験にも合格。クリーニング店を自営でやる傍ら、社労士事務所でアルバイトをこなし、それだけでも気が遠くなるほど大変な話ですが、さらにこの間、子育てという重責も果たしています。
後に独立して女性所長になり苦労の末、今の地位を築いたというなんとも波乱万丈な人生です。
簡単に真似ができることではありませんが、離婚や出産、子育てという大きな転機を乗り越えて自立した著者の行動力には、多くの女性が背中を押されるのではないでしょうか。忙しい中で合格に至った勉強方法のノウハウや、独立してまだ稼げない時期のエピソードなどが詳しく述べられています。
著者の他にも女性社労士数名のインタビューも収録。社労士に関する書籍は数多くありますが、すべてが女性の目線で書かれた本書は、なかなかないもの。悩める数多の女性の道標になることでしょう。
最後に紹介するのは唯一のフィクションです。主人公の駆け出しの社会保険労務士、ヒナコが相談に乗った6つの事件を解決するハートウォーミングストーリー。
裁量労働制やパワハラなど時事ネタを盛り込んだ、職業小説。社労士がどんな仕事なのか、専門書ではとっつきにくい内容も、こちらを読めば楽しみながら頭に入ってきます。
- 著者
- 水生 大海
- 出版日
- 2017-11-28
主人公の朝倉雛子は26歳の彼氏なし。就活に失敗し、非正規雇用でOLになるも、職場での様々な経験から一念発起して社労士資格を取得し、小規模な社労士事務所に就職したというプロフィールです。
そんな彼女が事務所に舞い込んできた相談に乗って事件を解決していく物語ですが、「解決」といっても刑事や弁護士のようにズバっと痛快に解決というわけにはいきません。
社労士の仕事は善悪を明確にする仕事ではないからです。取り扱う事件はパワハラや産休育休、残業代の未払いや裁量労働制、労災、解雇にブラックバイトと、小説で扱うには地味と言っても過言ではない題材。
殺人犯や悪代官のような明確な犯人がいるわけではなく、それらの問題は社会悪です。社会の構造をひとりの社労士が解決することはできません。それだけに問題は現実に即した切実なもので、社会の厳しさや残酷さを垣間見ることができます。
経験の浅い新人社労士であるヒナコの言動は青臭く映るかもしれませんが、それゆえに社会保険や労務に知識のない読者の目線に近く、心動かされます。
フィクションンですので「そこまで首突っ込むの??」という点はありますが、社労士の仕事をイメージできる作品です。
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