その存在感の大きさと謎に包まれた神秘性から、人々を魅了してきた木星。昔から多くの小説や映画、音楽のモチーフとされてきました。この記事では、一体どんな惑星なのか、その特徴をわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
木星の特徴は、なんといっても太陽系最大の惑星であること。その大きさはなんと地球の11.2倍です。
直径は地球が1万2742kmであるのに対し、13万9822kmにものぼり、有している衛星の数も69個。もしこれだけ大きな星に人類が住むことができたら、領土争いなどは無くなりそうですね。
ところが現実的には、住むにはかなり厳しい環境となっています。まず重力がとてつもなく強く、地球の約2.3倍もあります。仮に体重50kgの人が木星に行くと、115kgの重みを感じるということです。
表面温度はマイナス140度ほど。中心にいくほど高温、高圧になり、3万度を超える灼熱になっていると計算されています。
1日の長さはおよそ9.9時間と短いですが、1年は4335日で、地球の11.87年に値します。
特殊なスーツなどを開発し、温度や気圧の問題をクリアしたとしましょう。しかしそれでも人類は木星に住むことはできません。
なぜなら、そもそも地表の無いガスでできた惑星だからです。実はほとんどが水素とヘリウムで構成されていて、成分としては地球よりも太陽に似ています。
このように地表のない惑星を「木星型惑星」と呼び、太陽系ではほかに土星、天王星、海王星があてはまります。
地球から観測をすると、その名のとおり木目のようなボーダー模様が印象的な木星。まるでミルクを溶かしたカフェラテのような美しさで、神秘的な印象を受けることでしょう。
白色と茶色が混ざり合っていて、白は水やアンモニアが氷ったもの、茶はメタンなどの化合物となっています。木星は緯度によって自転の速度が異なり、その差によって大気の成分が異なるため、縞模様が織りなされているそう。しかもどこも10時間以内というものすごい速さで自転をしているので、かなりの強風が吹いているのです。
またボーダーのなかには、木の節のような、あるいは大きな目玉のような模様があります。「大赤斑(だいせきはん)」と呼ばれるもので、これは地球でいう台風のようなもの。なんと秒速約180mというとんでもない暴風で、大きさも地球がまるまる2個入ってしまうスケールです。
なんとも過酷な環境ですが、それが遠く離れた地球から見ると、幻想的な模様となって見えるのです。
木星はガスでできており地表が無い、ということは先述しました。では強風などに耐えられる頑丈な宇宙船を開発すれば、そのまま通り抜けることができるのでしょうか?答えは、ノーです。
たしかに地表が無くほとんどがガスでできていますが、温度が高い地点では水素が液体金属となっているため、すべてが霧状ではないのです。仮に木星に突入してみると、ガスに埋もれながら奥に進み、いつの間にか液体の中にいた、という感覚になるのではないでしょうか。
しかもその液体はとても強い圧力のため、押しつぶされることになります。この圧力に耐えられたとしても、中心にはさまざまな元素が混合した岩石状の核にぶつかるでしょう。いずれにしても通り抜けることはできません。
住むことができないとなると、一見地球とは無関係のようにも思える木星。距離も7億5000万kmと、ずいぶん離れています。
しかし実は、長きにわたり木星が地球を守り続けてくれているという学説も存在しているのです。
宇宙研究をするなかで太陽系以外の惑星を調べていくと、大抵の場合、太陽のように自ら光を放つエネルギーに満ちた恒星の周囲には、木星のような巨大な惑星が存在していました。
ところが太陽系では、木星よりも地球のほうが太陽に近い位置にあります。これによって彗星や小惑星などの衝突から地球が守られているのではないかと考えられているのです。
近年も物体の衝突がいくつも確認されていて、もし木星がなかった場合の軌道を計算すると、地球が危なかったと考えられるデータも報告されています。その巨大な体と強大な重力で守ってくれていると考えると、夜空を見上げる心持ちも変わってくるのではないでしょうか。
- 著者
- 小野 雅裕
- 出版日
- 2018-02-06
遠く離れた場所のことだからこそ、解き明かしたい謎や真理、人々の好奇心をくすぐる……広大な宇宙にはロマンが詰まっています。そして私たちがいる地球も、地球人も、宇宙を構成するひとつでもあるのです。
作者は、NASAで技術者として働き、人気コミック『宇宙兄弟』では監修を担当した小野雅裕。わかりやすい文章で宇宙の神秘を語っています。
どの専門書にもいえることですが、高度な知識を要するようになればなるほど、初心者にはわかりにくい内容になっていくものです。しかし本作は、『宇宙兄弟』の公式ホームページで連載していたコラムが元になっているので、読みやすいのが特徴です。
宇宙に関する知識を解説しているのではなく、人類とは何か、生命とは何かという謎に挑む壮大な物語。宇宙を愛する作者の想いが伝わる、アツい作品です。
- 著者
- ホヴァート スヒリング
- 出版日
- 2016-02-15
宇宙の魅力は、物理や科学の知識がなくても感じることができます。たとえば満点の星空を見れば、美しいと感じるでしょう。
本作は、そんな宇宙の美しさを余すことなく伝えてくれる一冊です。太陽系はもちろん、星雲、銀河、ブラックホールなど、人類のもつ技術と想像力を最大限に発揮して見える、宇宙の姿を堪能することができます。
写真とイラストを見ているだけで、まるで宇宙船に乗って旅をしているような気分に浸ることができるでしょう。専門的な知識も求めている方は、じっくり解説文を読み込んでみてください。
遠い宇宙空間に浮かんでいる木星。その中はどうなっているのか、実際に見ることができませんが、それゆえに無限に想像力を発揮することができます。ぜひご紹介した本を読んでみて、未知の世界に想いを馳せてみてください。