BL界で盛り上がりをみせるオメガバース。今やオメガバースを知らずにBLを語ることは出来ません。BLだけでも最高なのに、こんなに萌える特殊設定があっていいの!?魅惑の世界にご招待します。
まずは「オメガバース」の言葉の定義をご紹介しましょう。端的にいえば、男でも妊娠可能な世界、それが「オメガバース」です。
欧米生まれの特殊設定であるオメガバースは、主に二次創作を中心に発展してきました。男性同士による性交・結婚・出産が普通に行われるという世界観こそが本ジャンルの魅力です。
オメガバース最大の特徴は、男女の性別とは別に、α(アルファ)・β(ベータ)・Ω(オメガ)という独自の性の概念があることです。群れをなす狼の行動や社会を人間社会にあてはめたものが土台となっています。
このように基本となる設定はあるものの、「作者の解釈次第で様々な設定に派生できる」という自由さも本ジャンルの魅力の一つ。妊娠、運命、階級差……元来のBLを飛び越えた様々なテーマで描くことが可能なのです。三者三様の世界で、自分だけの萌えを探してみては?
ちなみにこちらの解説で参考にした画像は『わがままもキミのためならいくらでも』からのものですが、多くの作品にこのような解説がついています。このページ以外にも解説がありますので、少しでも気になる作品があったら、解説がついているか確認して、解説書がてら読んでみるのもいいかもしれません。
プレイボーイなオメガが初めて恋をしたのは、住む世界の違う優等生アルファ。身分の差を乗り越えて愛しあおうとする2人の純愛ストーリーです。
複数の相手と遊びの関係を持っていたまひろですが、アルファにしては珍しく純情で初心な米谷(よねや)にからかい目的で接近。しだいに彼の誠実な人柄に惹かれていき、恋することを知るまひろですが、気持ちの芽生えと同時にアルファとオメガという階級の壁にぶち当たります。
本当は米谷が大好きで素直になりたいのに、その立場の違いから素直に自分の思いを告げられないまひろが切なくもどかしい本作。ビッチだったまひろが恋をすることでピュアな一面を見せる様子が愛おしい作品です。
お互いのことが好きだからこそ傷つけたくない。そんな中学生から高校生に至るまでの過程を描いた純愛青春ストーリーで心温まりたい方におすすめの一冊です。
- 著者
- さねもり束
- 出版日
- 2016-06-24
愛を知ろうとしない快楽主義者のオメガ・るかと、本心を見せない得体のしれない男・せい。オメガバースという運命に逆らえない血が起こしたのは悲劇かそれとも……?
セックスが横行する秘密クラブの常連客のるかは、ある日突き刺すような視線を向けてくる男・せいに出会い、彼に興味を持ち始めます。しかし、自分の気持ちを語らずただるかに嫌悪感だけを示してくるせいには、ある目的がありました。
自分がオメガであるということを受け入れることで感情を捨てたるかは、オメガという性を享受して生きている珍しいタイプ。まさかそのことが他人を傷つけているとは知るよしもありませんでした。言いたいことが言えないせいと、奔放なるか。2人は一見相反しているように見えるものの、空っぽで何も持っていない人間という似た者同士だったのです。
るかがせいに心を寄せていく一方で、せいは憎むべき相手のるかにすがってしまう自分が許せず、ある決断をします……。この結末は人間の弱さが招いた悲劇ともいえるでしょう。
しかしこれは、思いが通じ合わなかったという単純なバッドエンドではありません。るかはこの出会いによって自分が空っぽだったことに気が付き、愛を知ろうと思うようになります。オメガとして情欲に溺れるのではなく、向き合っていこうとする姿勢が大切なのですね。深い……。
終始濃霧の中をさまようような感覚の作品ですが、最後には晴れやかな気持ちにもなれる1冊です。この表題作のほかにも2作品収録されていますので、少しでも気になる方はせひご覧ください。
- 著者
- かたしな
- 出版日
- 2015-10-24
八つ当たりから始まった関係の相手は、運命の王子さまでした。一生懸命で真面目なサラリーマンベータと恋愛で傷ついたニートオメガの優しい恋の物語。
身体目的の男にいいように扱われて捨てられたオメガの万代(ばんだい)。裏切られたショックに沈んでいる中、真面目すぎるベータの長岡に拾われ、「人に利用されるくらいなら俺が利用してやる」とその人の良さに付け込みます。
精一杯尽くしてくれる長岡の優しさに触れ、万代は恋愛で傷ついた分誰かを傷つけるという行為で心が満たされることはないと気が付きます。そして心から好きになれた相手との幸せなセックスに身も心も満たされ……!
後半では万代を捨てた男・紫竹のストーリーも描かれています。アルファには絶対に勝つことが出来ないというオメガバース設定ならではの息苦しさを感じながら生きるベータの行く末を、ぜひご覧ください。
コメディテイストの前半から一変、オメガバース社会の現実を目の当たりにする後半と、2組のベータ×オメガによるメリハリのある本作。笑いあり感動ありエロあり、最後にはみんなが幸せになれる大満足の一冊です。
- 著者
- さとまるまみ
- 出版日
- 2016-05-24
あの憧れの堤先生を抱けるかも!?なんて期待していたはずが、逆に自分が犯されることになるなんて……。アルファがアルファに追いつめられる、策略まみれの鬼畜ストーリー。
敬愛する小説家の堤と偶然バーで居合わせたホストの結真(ゆうま)。チャンスを逃すまいと猛アタックするも、気づいた時には手錠でつながれ、抱かれる側に。屈辱的にも最後にはあっけなく捨てられた結真ですが、そのプライドを凌駕するほどの快感が彼を襲うのです。
α×α、いわば攻め×攻めという構図が魅力的な本作。アルファ特有の優位性が同じ階級であるアルファに崩されたことによって、結真は自分が知らなかった「自分」と対面することになりました。これまでアルファという立場を振りかざしオメガをモノのように扱ってきたのに、逆の立場になるなんて……。しかもそれが気持ちいい。アルファというだけでイニシアチブをとってきた結真が人に翻弄される展開には、BLファンの気持ちも昂ること請け合いです。
一方、ドSを極めたといわんばかりの堤ですが、彼もまた人の子。その鬼畜行動にも理由があったのです。 結局似た者同士だった2人が心の隙間を埋めていく過程は、かなり屈折してはいるものの、徐々に寄り添っていこうとする姿にはなんだかほっこり。
鬼畜BLが好きな方におすすめの1冊です。
- 著者
- 河馬乃さかだち
- 出版日
- 2016-06-24
ケンカ中に発情期が来て宿敵のアイツとまさかの番に!?クールなヤクザの跡取り息子×おバカヤンキーのドタバタラブバトル。
ケンカ上等おバカヤンキーでオメガのクマは、不良相手に暴れ回る日々を送っていましたが、ある日因縁の相手である極道一家の次期組長・アルファのハチと決着をつけることに。
「これはヤンキー漫画……?」と思わせるような激しいバトルの描写に圧倒されますが、ご安心ください。しっかりBLです! 殴られて鼻血を出しながら初めての発情期に戸惑いつつ頬を上気させるクマと、そんなクマのフェロモンを感じ、まるで獲物を見つけた肉食獣のように舌なめずりするハチ。肉体派な2人のエネルギッシュなセックスはたまりません。
はじめこそ拳を交わしていた2人が惹かれ合っていく姿にキュンとすること間違いなし。きっかけはどうであれ、番として結ばれやがて愛し合うようになる2人の様子は、王道BL好きも納得の展開です。好きという気持ちを認め素直になってからのクマがとにかくかわいい……!
同時収録「かくれんぼハニー」では、天真爛漫なハチの元許嫁×ハチのお目付け役・満郎の年の差カップルが堪能できます。インテリ美人の満郎が年下に乱されまくる様子は必見です。
重いテーマになりがちなオメガバースですが、スピード感のある爽快ラブコメの本作。オメガバース初心者さんも安心して読める1冊です。
- 著者
- 鳶田瀬ケビン
- 出版日
- 2015-09-24
ウリ専美少年が良家の純朴少年を淫らに誘惑する、愛憎入り混じる復讐劇が開幕。どこか昭和のドラマを感じさせる、切なくも甘い数奇な運命の物語。
「口止め料、フェラ1回」という衝撃的な煽りと吸い込まれそうな紅い瞳が目を引く挑発的な表紙からは想像できないドロドロストーリーです。
政治家の息子のアルファ・日下は、静謐な美しさを持った転校生のオメガ・水谷に惹かれていきます。しだいに親密になっていく2人ですが、水谷にはある目的がありました……。彼らの関係からは、親の代からの運命に翻弄され、好きという感情を認め受け入れることが出来ないジレンマが感じられます。読者まで胸が締め付けられるような展開です。
一人ひとりの人物のバックボーンが描かれ、真実を知れば知るほど復讐の意味が解らなくなるのも本作の魅力。これまでの水谷の生きる意味が過去の出来事の復讐であったのなら、これからは日下と歩む未来のために生きてほしい。ラストの水谷の笑顔は、それまでの暗さを一掃するほど健やかでなんだかうれしくなります。
ドロドロの復讐劇ながら高校生らしい瑞々しさもあり、読後感のさわやかな一冊です。2人には心から幸せになってほしいと願える感動の作品といえるでしょう。
- 著者
- すなこ
- 出版日
- 2015-10-24
普通の男であるベータだからこそ努力を重ねてきた36歳仕事オタクの主人公。ある日の出来事がそんなベータの運命を変えてしまうことに……。ベータであることが誇らしかった科学者の不器用な恋愛方程式。
その特殊な階級を利用してベータをあざ笑うかのようなアルファ、オメガに嫌悪感を示し、自分の力で生きてきた研究員の日比谷。なんと彼は、ハチに刺されたアナフィラキシーショックが原因でオメガ化してしまいます。オメガになってしまったことへの大きな戸惑いと、抑えられない発情の衝動。そんな日比谷を献身的に支える山木ですが、彼には秘密があるのです。
山木への恋心を自覚するやいなや、彼の秘密を知ることになった日比谷。しかし、動き出した運命の歯車は止まることを知りません!
日比谷はオメガになったことで今まで積み上げてきたものが覆され、発情期には元来の理性から苦悶しますが、精神や肉体を超えたさらに深いところで山木と繋がりました。オメガとしての苦しみや絶望に打ちひしがれるだけでなく、オメガならではの幸福も巧みに描いた本作。ドラマティックなストーリー展開も魅力です。
平凡なベータがオメガ化してしまうという衝撃展開も、自由度の高いオメガバースならでは。運命の物語から目が離せない1冊です。
- 著者
- ぴい
- 出版日
- 2015-09-24
オメガであるがゆえに自分に自信が持てない真生が家族に支えられ、日常の中で少しずつ自分を受け入れていくほのぼのストーリー。藤吉家のだんらんにお邪魔します。
「男性でも妊娠できる」というオメガバースの特長が存分に活かされているのがこちらの作品です。
専業主夫の真生には、エリートサラリーマンでアルファの夫・弘と2歳になる息子の輝がいます。そう、本作ではオメガバースならではの「子育て」の様子が描かれているのです。
なんといっても見どころは家族の絆。「自分がオメガであることが自分以上に相手を傷つける」と自信を持てない真生ですが、何気ない日常の中で家族の愛に支えられ、人間的に成長していきます。自分を丸ごと受け入れて愛してくれる家族の存在が真生を前向きにさせるのでしょう。オメガバースを通じて家族という存在のすばらしさを再確認できます。
ハートフルな藤吉家の日常に癒され、気持ちはポカポカに。優しい気持ちになりたい方におすすめの1冊です。
- 著者
- いちかわ壱
- 出版日
あいつの香りで気が狂いそう……。この気持ちは偽物なのか?運命で結ばれた2人の身分違いのラブストーリー。
必要なものが全て手に入るどころか、あじかじめ用意されていて何不自由ないアルファ。そんなアルファの性質は、実は本人を苦しめていることも。
次期当主という周囲の期待から逃げ続ける西園寺家跡取り・アルファの次郎は、評価されないのに頑張り続ける東條家の長男・オメガの葵に劣等感を抱いていました。しかし2人は出会ったその瞬間から互いが運命の相手であると悟ります。
お互いに惹かれ合っていきますが、それは「魂の番」だからであって偽物の感情なのかもしれない、と疑心暗鬼に。恋よりも先に運命で繋がれた2人の関係性が辛いです。
「次郎が運命に勝つことが出来たら目の前から消える」という葵と、「運命に自分が打ち勝つのを傍で見ていろ」という次郎。相手への気持ちを自覚しながらも、求めることも離れることも出来ない2人ですが、答えは最初から胸の中にありました……。運命という言葉では片づけられない強く深い繋がりに注目です!
さらに、強面でまっすぐな執事長・アルファの久藤×元主に恋をする執事・ベータの宮内にも注目です。意地っ張りで不器用な執事2人のシンデレラストーリーも読みごたえ抜群!
それぞれの階級の悲嘆や立場の苦悩が複雑に絡み合う本作は、ドラマティックな展開に浸りたい方におすすめです。
- 著者
- さちも
- 出版日
理想のアルファとの出会いを熱望するオメガの計が、本当の愛に気付くまでを丁寧に描いたラブストーリー。オメガ・アルファ・ベータの異なる3階級が織りなす三角関係から目が離せません。
夢見るビッチの計には、だらだらとセフレの関係を続けている幼馴染のベータ・次継(つぎつぐ)がいます。お互いのことを必要とし求めあっているにもかかわらず、「オメガはアルファと番になる」「ベータとオメガでは幸せになれない」というオメガバース社会ならではの共通認識が2人の障壁に。しかし、最低クズのエリートアルファ・駅人(えきひと)との出会いが運命の歯車を動かすことになります。
ベータである次継の立ち位置は、本作の見どころの一つ。オメガとアルファのような番の関係になれないベータは、オメガバース世界では影響をあまり受けない階級です。計の幸せを思うがゆえに陰に徹しようとする次継の姿に、切ない気持ちがこみ上げてきます。彼の優しさを受けた計の「次継がβでよかった」という台詞には、残酷さすら感じられるでしょう。
差別をはじめとした社会的な身分格差や発情期の苦しみなど、オメガとして生きることの辛酸が巧みに描かれている本作。これらの背景こそ、計が番を求める所以となりましたが、そういった性の運命や社会の一般論を乗り越えた先にある、「本当に大切なものは何か」を考えさせられる一冊です。
- 著者
- 森世
- 出版日
めくるめくオメガバースの世界、いかがでしたか?作者によって様々な解釈がなされる本ジャンルだからこそ、萌えの幅は無限大。普通のBLに食傷気味の方こそ、オメガバース作品を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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