ガモウひろしが描く名作ギャグ漫画『とっても!ラッキーマン』。画面に所狭しと情報が散りばめられた独特の作風が面白い作品となっています。今回はそんな本作の魅力を全巻ネタバレ紹介していきます。
ガモウひろしが描く珠玉のギャグ漫画として名高い『とっても!ラッキーマン』。「週刊少年ジャンプ」で連載を開始して人気を博し、後にアニメ化までされた人気作です。
宇宙一ツイているラッキーなヒーロー「ラッキーマン」を中心に、実に個性豊かな面々が登場します。また、画面全体に所狭しと情報が散りばめられた、独特のスタイルのギャグが有名です。
今回は、そんな本作の魅力を全巻ネタバレ紹介していきます。
- 著者
- ガモウ ひろし
- 出版日
各巻のストーリーに触れる前に、主な登場人物達をご紹介します。まずは、なんといっても本作の主人公であるヒーロー「ラッキーマン」。胸のマークには「大吉」と書かれ、頭には茶柱の立った湯呑がついているという、なんとも縁起のよいデザインが特徴となっています。
実質作中最強なのですが、ぞの理由はただ運が宇宙一よいということ。どんな凶悪な敵と対峙しても幸運によって勝利を収める事が出来てしまうのです。
彼は地球人である「追手内洋一(ついてないよういち)」と合体しています。洋一は不慮の事故によってたまたま死亡してしまい、そのとき、ラッキーマンが彼と合体することでよみがえらせるのです。一体化した地球人、洋一は「日本一ついてない」中学生として登場し、作品の物語が進むごとに、その運の悪さが進行していきます。
彼は「ラッキョウ」を食べる事によって、ラッキーマンへと変身する事ができます。しかし、洋一本来の運の悪さが災いして、変身したい時に変身できない、変身したくない時に変身する、といった事態もしょっちゅうです。
数々の必殺技を持ちますが、そのほとんどが持ち前の「ラッキー」によるもので、結果的に敵に対してダメージを与える事が出来る、といったものばかりです。
そんなラッキーマンのラッキーですが、力の源泉である「幸運の星」の光が届かなくなるといった理由で、幸運が発揮できなくなってしまうこともあります。
また、その反対に怒りが頂点に達する事でさらに幸運が増す「ゴールデンラッキーマン」と呼ばれる形態に変身する事も出来るのです。
その名のとおり、とにかく努力を良しとするヒーロー、それが「努力マン」です。運だけで活躍しているラッキーマンを打倒するために地球にやってきましたが、ラッキーに敗れ、その後弟子入りするようになったのでした。
地球人としての名前は「杉田努力(すぎたどりょく)」。感動しやすい性格で思い込みも激しいため、ラッキーマンの運による結果を、努力と実力によるものだと信じています。
本人のヒーローとしての実力は高く、過去にヒーロートーナメントで決勝まで進んだ程の力を持ちます。
しかし、彼のストイックさとは裏腹に、精神的に脆い面が多いため、心的要因でピンチに陥る事が多いです。習字で「努力」と書いた紙を胸に張り付ける事で変身する事が出来ます。
とにかく目立つことを信念に生きるヒーロー、それが「スーパースターマン」です。彼は宇宙人ではなく、純粋な地球人であり、地球人名は「目立たがる(めだちたがる)」。
目立ちたい一心から違法な人体改造手術を受け、スーパースターマンに変身できるようになったのでした。しかし、元がただの地球人であるため、戦闘能力は皆無に等しく、唯一まともな武器といえる「スーパースターカッター」も、重すぎて本人が自由に扱えないというお粗末さです。
「目立ータイ!」という掛け声とともに蝶ネクタイを装着する事で変身できますが、ほとんどの場合は戦力として役立たずであるため、足手まとい。
しかし、本人のクセが強いため、作品の人気投票をおこなうと必ず上位に入るという、不思議な魅力を持つキャラクターでもあります。
「不細工ですよ(ぶさいくですよ)」は、その名の通り作中でも屈指の容姿の醜さを持つ、洋一の同級生の女の子です。バスト、ウエスト、ヒップ、全て100㎝という衝撃的なプロポーションの持ち主。
洋一が間違ってラブレターを渡してしまった事で、洋一を好きになってしまいます。そんな彼女ですが、日本の5分の1を所有する程の良家のお嬢様で、かつ成績は優秀といった才女でもあるのです。
容姿と持ち前の怪力以外は完璧なのですが、その容姿がきわめて問題であるため、作中でもぞんざいな扱いを受けがちなキャラクターといえます。
奇麗田見代(きれいだみよ)、愛称「みっちゃん」は、洋一の片思いの相手で、日本一美しい女子中学生として登場します。
しかし、洋一の不幸に巻き込まれ続けた結果、洋一を親の仇のように憎むようになってしまい、それに伴って作中での性格もどんどん悪くなっていきました。
先述の通り美貌は申し分ないため、たびたび宇宙人に攫われる事があり、そのたびにラッキーマンに助けられています。(ただし、ラッキーマンの正体については知らないため、洋一の評価が上がることはありません。)
時間が進むとともに、問題が増えていくキャラクターですが、登場回数も多い人物です。
とにかく負けず嫌いで、どんな卑怯な手を使ってでも勝利を得ようとするヒーロー、それが勝利マンです。地球人としての名前は、「磯野勝利(いそのしょうり)」。
戦闘スタイルは素手での戦いが多く見受けられますが、背中の凶器入れから出した武器を迷いなく使うなど、なんでもありの戦法が主体です。
その信念の通り、登場初期はとにかく卑劣な手段で勝負に勝とうとする悪役に近い思想が目立ちました。しかし、後になって、平和のためには絶対に戦いに勝たなければならないという彼の強い想いが分かります。
ある意味、ヒーローに徹するために最も迷いがない人物といえるでしょう。
復讐の念に燃えた悪のヒーロー、それが世直しマンです。通称は「よっちゃん」。よっちゃんは、作中の登場から300万年前に強盗星人に家族を皆殺しにされた過去があり、その消える事のない傷を抱え続けてきたという経緯があります。
一度は、悪を憎む心から宇宙を制圧したという強力なヒーローでしたが、自分の力に驕ってしまい、自分を認めなかったヒーロー神とヒーロー協会に復讐を企てたのでした。
しかし、ラッキーマン達によって倒された後、ロケットで太陽に向かって燃え尽きようと決心したところを、ヒーロー神によって救われます。
これによって改心したよっちゃんは、後に「世直しマンSZG(スーパーゼットグレート)」として復活し、味方のヒーローとして再登場するのでした。
「バックコスモス・サミット16世」、通称「さっちゃん」は、ブラックホールの向こう側にある裏宇宙を支配する独裁者です。
裏宇宙の人類全てに爆弾を仕掛け、恐怖で従わせるなど、とんでもない独裁政治を行っている人物で、性格はきわめて傲慢。しかし、実力はかなりのもので、左手にブラックホールを操る「救世手」、右手に破壊光線を放つ「ギルガメッ手(別名フィニッ手、エネルギッ手)」という強力な手を持っています。どちらも強力な一撃必殺となりえる手です。
そんな彼は、以前に努力マン、勝利マン、友情マンの父親である三本柱マンと戦って傷をつけられたことを逆恨みし、復讐を果たそうと目論んでいました。
しかし、すでに三本柱マンはこの世に居なかったため、彼の息子たちに対しその矛先を向けたのです。実に悪役らしい悪役ではありますが、彼にも実はひそかに抱えている闇があります。彼とラッキーマン達の戦いの最後には、そんな彼の心の闇が少しだけ垣間見えます。
天才マンは、その名のとおり全てが完璧に近い天才ぶりを発揮するヒーローです。地球人としての名前は「生月天才(うまれつきてんさい)」。
その見た目は作中でもずば抜けた美形で、八重歯があるのがトレードマークとなっています。女性からの人気は圧倒的で、全ての女性に平等に接するクールな振る舞いがまたかっこいい人物です。
しかし、過去に元祖ラッキーマンが偶然彼のヒーロー認定証を拾ってしまった事で、彼はヒーローの身分を剥奪されてしまいます。その復讐のために、よっちゃんと結託して悪事に加担しますが、認定証を奪った張本人であるラッキーマンに敗れ、説得を受けたことで改心するのでした。
そんな彼は、天才で能力も高いため、味方になって以降はとても頼りがいのあるキャラクターといえるでしょう。
ですが、ギャグセンスがなかったり、敵に利用されてしまったりといったところで、ところどころかませ犬のような扱いを受ける事もあります。
そんないまいちキメきらないところが、彼の魅力でもあるかもしれません。
- 著者
- ガモウ ひろし
- 出版日
1巻~3巻では、洋一のラッキーマンとしての人生が始まり、宇宙人侵略者達との闘いが描かれつつ、主要なヒーローも続々登場します。
ラッキーによって侵略者と戦いながら、努力マン、スーパースターマンといった新たなヒーロー達と出会う事で、更なる戦いへと身を投じる事となるのです。
とはいっても、基本的にはギャグパートが多く、日常が面白おかしく描かれているので、肩肘張らずに読み進めるとよいでしょう。
見所としては、ヒーロー3人の日常生活を通した掛け合いが、日常と非日常の合間を感じられて面白い内容といえるでしょう。
*文庫版では、1~2巻の内容になります。
- 著者
- ガモウ ひろし
- 出版日
よっちゃん編からは、徐々にシリアスな展開もスタートしていきます。
新たな登場人物として、勝利マン、友情マン、天才マンなども登場し、本編のボスとしてよっちゃんこと世直しマンも登場します。
これまでラッキーマンのラッキーによる勝利がほとんどだったのに対し、バトルシーンも増え始め、他のヒーロー同士の戦いが本格化します。
また、ヒーロー毎に抱えている複雑な事情も明かされていき、単なるギャグマンガに留まらない、様々な要素が盛り込まれた作品となっていくのです。
そんなよっちゃん編の見所は、シリアスなバトルシーンの数々です。特に怒りによってさらなる変身をしたラッキーマンによるバトルは、貴重なので必見です。
それ以外にも、主要なヒーロー陣による活躍が目白押しなので、バトル漫画好きも楽しめる作りとなっているお話といえるでしょう。
*文庫版では、2~4巻の内容です。
- 著者
- ガモウ ひろし
- 出版日
平和を守るためのヒーローを認定するための武道会、通称H-1グランプリが開催されます。
16人のヒーローが出場し戦います。味方陣営の主要ヒーロー達に加え、様々な出場ヒーロー達が登場します。
そのなかでも中心となるのが、謎のヒーロー「セーラーマン」です。その正体は、「聖・ラマン(せいらまん)」という女性。「ヒロイン」になってしまうことを恐れ身分を隠していたのでした。通称は「ラマンちゃん」。
唯一の女性ヒーローである彼女は、読者の人気投票で女性キャラ中1番高い順位を獲得した程の人気キャラクターとなりました。
ヒーロー達の熱い戦いがくり広げられるH-1グランプリ編ですが、見所はラマンちゃんのバトルシーンと、そのサービスシーン描写でしょう。
女性の少ない本作では貴重なラッキースケベシーンが盛り込まれているため、注目です。
*文庫版では、4~5巻の内容です。
- 著者
- ガモウ ひろし
- 出版日
裏宇宙からの侵略を企むさっちゃんとの戦いが描かれます。
バックコスモス・サミット16世、通称「さっちゃん」と、その側近である「黄桜」といったさっちゃん陣営との戦いが始まり、新たな宇宙の危機に立ち向かうこととなるのです。
主要な味方陣営のヒーロー達に、H-1グランプリで仲間となったヒーロー達を加え、さっちゃん打倒を果たそうとします。
見所は、16人のヒーロー達が力を合わせて戦う場面でしょう。これまで登場した魅力的なヒーロー達が力を合わせるというのは、王道ながらの魅力があります。
*文庫版では、5~6巻の内容です。
- 著者
- ガモウ ひろし
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いよいよヒーロー達の戦いは、宇宙同士の戦いへと発展していきます。宇宙同士がトーナメントをおこなう大宇宙トーナメントが開催され、ラッキーマンを要する第3小宇宙が他の宇宙を相手に戦う様子を描きます。
ラッキーマンにとっての不測の事態が数多く発生し、ピンチの連続といった様子の本編。苦戦しながらもなんとかトーナメントを勝ち進んでいくギリギリ感に興奮する内容となっています。
そして、物語は16巻で最終巻を迎える事となります。最終回では、ヒーロー神によって本来のラッキーマンと洋一が分離され、それぞれの生活を送る事となります。
これまで通りの不幸な日常に戻った洋一を、最後にとんでもないアクシデントが襲います。詳細は割愛しますが、ギャグ漫画のクライマックスらしく、笑えて楽しいエンディングとなっていますので、ぜひご一読くださいね。
*文庫版では6巻~8巻の内容です。