悲劇の女性ユリア。彼女は本作を象徴するヒロインです。その慈愛に満ちた性格、異常なまでのモテっぷりは、もはや伝説級。本作に登場する屈強な男たちを、端から端までトリコにしてしまうのでした。 しかし、そんな彼女ですが実像は断片的にしか語られず、その実態は熱心なファン以外にあまり知られていません。今回はそんなユリアについて、余すところなくご紹介しましょう。これを読んだら、あなたも彼女のトリコになるはず! ちなみに、この有名作品は、スマホアプリから無料で読むこともできますよ。
本作は1983年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた武論尊原作、原哲夫作がのアクション漫画です。
核戦争後、荒廃した世紀末世界を舞台に、主人公・ケンシロウが数々の強敵と拳を交えるハードボイルドな作風で知られています。
- 著者
- 原 哲夫 (著), 武論尊 (著)
- 出版日
本作は大まかに第1部と第2部でストーリーが分けられます。特に第1部でメインストーリーに関わってくるのが、ケンシロウの恋人・ユリアです。
『北斗の拳』はある種彼女の悲恋の物語といってもよく、アニメでは彼女をイメージした曲『ユリア…永遠に 』がエンディングテーマとして使われました。
彼女は本編中で気丈な女性、理想的なヒロイン像として描かれます。出生、来歴については後述しますが、詳しいプロフィールは公開されていません。年齢もわかっていませんが、ケンシロウは26~30歳と想定されているのでほぼ同じくらいでしょう。包容力のあるので、ひょっとすると少し年上かもしれません。
このような理想的ヒロインとして未だ人気の衰えない彼女は、『北斗の拳』を元にしたパチンコ機種にもなっています。彼女自身がモチーフの「ユリア」、彼女の宿星「慈母星」がモチーフの2タイプが出ており、その人気振りが窺えるでしょう。
魅力的な美女・ユリアは、作中で多くの屈強な男達から愛を向けられました。相思相愛の仲であるケンシロウは言うにおよばず、彼の最初のライバルであるシン、聖人・トキ、暴君・ラオウ……。
また敬愛という意味では、自由人・ジュウザ、鬼神・フドウといったそうそうたる面子から慕われるのです。ジュウザだけは少し事情が異なりますが……。
- 著者
- ["原哲夫", "武論尊"]
- 出版日
これは後に明らかになるユリアの宿命、南斗六聖拳正統血統「慈母星」に由来するものでしょう。彼女は浮かれ持って、あまねく人々を惹き付ける性質なのです。
とはいえこのユリア、慈母星という語感から聖母のようなイメージですが、作中の時期や相対するキャラによって見せる印象が異なります。
原作者は執筆当時、行き当たりばったりで創作していたと述懐しており、それをして彼女の性格諸々が後付けだというのは簡単です。しかし、あえて慈母星という属性から考察してみましょう。
慈母星とは男の心を映す鏡のようなもの。ユリアの考えとは裏腹に、男の願望が反映されて振る舞ってしまうとしたら、どうでしょうか。結果、シンに対しては厳しく当たり、トキには慈愛の一面を見せ、ラオウには凜々しく気丈に見えたのです。
こう考えると矛盾はなくなりますが、慈母星というより魔性の女という感じになってしまいますね。そしてこれが正しいとすると、シンの趣味は……。
ラオウについては<『北斗の拳』ラオウの知られざる11の事実!暴君の身長体重、最後、名言まで>の記事で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
彼女は物語の序盤、シンに浚われた境遇に耐えきれず、自殺を計りました。ヒロインが死んでしまうという、前代未聞の展開です。
しかし後に、南斗五車星の手で救出され、生きていたことが判明します。そして、南斗最後の将という重要ポジションでカムバック。怒濤の変遷を見せます。
天下を分ける鍵となった彼女は、今度はラオウによって奪われました。そこで哀しみを知らない彼によって無想転生を開眼するために殺される……と思ったのですが、実は仮死状態にされただけでした。
ケンシロウとラオウの最終決戦後は、平穏な余生を過ごして安らかに息を引き取ります。死因はトキと同じ、死の灰による不治の病でした。その後、ユリア本人の登場はなくなりますが、終盤にケンシロウを想う魂となって現れます。
彼女は死後も作中に影響を残し続ける存在でした。
次のページでは、あのライバル2人についてご紹介。その戦いのきっかけもユリアだった!?
『北斗の拳』といえば、多くの人はケンシロウとラオウの戦いを思い浮かべるのではないでしょうか。なんと、このあまりにも有名なライバル2人の戦いの引き金ともいえる存在が、ユリアだったのです。
なぜか?それは、ラオウが拳王軍を率いて世界を支配しようとした理由が、ユリアを手に入れるためだったからです。南斗の人々に匿われている彼女を見つけ出し、自分のものにしようとする狙いでした。
ラオウがこの世を支配しようとしている、とトキから聞いたケンシロウは、ラオウを倒すことを決めます。こうして、2人の戦いは始まったのです。
つまり、ユリアを手に入れたい→世界を征服すれば彼女を手に入れられる→それをケンシロウが知る→ケンシロウ VS ラオウ、となるのでした。こう考えると、ユリアがきっかけであの壮絶なバトルが生まれたと言っても過言ではないのです。
ユリアは、ケンシロウがたった1人で救いだそうとする物語の構造から、天涯孤独のようなイメージがあります。
しかし、彼女には血の繋がった肉親が2人いるのです。それも劇中に、ターニングポイントで活躍するキャラとして登場しています。
- 著者
- ["原哲夫", "武論尊"]
- 出版日
- 2013-12-20
1人は天狼星のリュウガ。もう1人は南斗五車星、雲のジュウザです。彼らはユリアの兄なのです。正確にはリュウガが実兄で、ジュウザは腹違いの異母兄。
どちらも兄であることに変わりありませんが、リュウガはユリアを付け狙う拳王軍の将軍で、言わば敵です。一方のジュウザは彼女の味方ですが、南斗五車星は南斗最後の将であるユリアの部下に当たります。
ジュウザがユリアを慕うのは、彼女が親愛なる妹であり、同時に敬愛する将でもあるためなのです。血を分けた兄妹ながら、なかなかに複雑な人間関係です。
先に少し触れましたが、彼女は南斗六聖拳を統べる頂点、正統血統の生まれ。その定めに従って後継者となるべく育てられた彼女の幼少期は、まさに過酷なものでした。母親の胎内に感情と言葉を置き忘れた、と言われるほど、無感情に育っていったのです。
しかし、あるきっかけから彼女は感情を取り戻し、以後、慈母星の愛に目覚めていきます。そして、心優しく成長していくのです。その優しさは留まるところを知らず、当時まだ「鬼」と恐れられていたフドウに、命の尊さを示して改心させたほどでした。
南斗の星に生まれさえしなければ、彼女は穏やかに暮らしていけたことでしょう。
次のページでは、ユリアにそっくり!?あの人物を紹介します!
物語上でシンが倒れ、ユリアも亡くなりました。そして拳王の魔の手と南斗六聖拳が本格的に出てくるころ、ユリアによく似た女性・マミヤが登場します。
彼女は、自分の村を守る自衛集団のリーダーでした。男に守られるか弱いヒロイン・ユリアとは対称的に、戦うヒロインです。
おそらく彼女は、ユリアにはない能動的な要素を込めて生み出されたキャラなのでしょう。意図的に、対になるように設定されたのです。
しかし、彼女がなぜユリアに似ているのか、劇中で明かされることはありませんでした。第2部でキーポイントとなるリンとルイと似た関係なのか、あるいはそうではないのか。
実際のところ、ユリアとマミヤは劇中でいわれるほど、その外見の描写はあまり似てません。見た目というより、芯の強い女性としてイメージが合致するということなのではないでしょうか。
『北斗の拳』の物語の発端には、シンによるユリアの略奪愛がありました。
ケンシロウとユリアの間に割って入り、文字通り力ずくで奪い取ったのです。力が支配する世紀末世界ならではの出来事でした。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
- 出版日
そしてシンが次にしたのは、ユリアの生活の保障と安全の確保です。この時代、衣食住を手にするには暴力が手っ取り早く、そのためにさらなる力が必要となり、彼は私設隊を組織しました。それがKING軍です。
シンとユリアを中心とする大所帯には、それに相応しい所在地が必要となります。そうして彼はついに、ユリアのための街、サザンクロスを築いてしまいました。
そしてユリアは自殺して――それは五車星に助けられますが――、シンはその汚名を被るのです。それもラオウに狙われる彼女を救わんがため。死んだことにして、ラオウを誤魔化すための行動でした。
ひとえに、ユリアへの愛ゆえに……。あまりにもスケールの大きな愛に、目眩がしそうです。無理矢理の略奪愛なので仕方ないのですが、ここまでしてもユリアになびかれることがなかったシンは、少し哀れに思えます……。
ユリアとケンシロウは恋人同士。というか2人は婚約していて、結婚寸前まで進んだ関係でした。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
- 出版日
すでにご紹介しましたが、ユリアの幼少期は悲惨なもの。感情のない人形のような少女だったのです。それを変えたのが、ケンシロウでした。実は、南斗と表裏一体の北斗を見ることで、彼女の心境に変化が起こると期待した人物がいました。テレビアニメでは、これはリハクの思惑です。
北斗の聖地へ赴いたユリアは、2人の少年に出会います。ラオウとケンシロウです。そこで彼女はラオウの気迫に飲まれるのですが、反面、ケンシロウから優しい感情を向けられたのでした。それがきっかけで、ユリアには人の感情が戻ったのです。
ユリアの人間としての側面は、ケンシロウに根差しているといえるのかもしれません。2人は運命的に結ばれた仲なのでしょう。
次のページでは、衝撃の展開を紹介。ユリアが妊娠!?
2006年から順次公開された公式外伝映画『真救世主伝説 北斗の拳』。その最終作にして本編の前日譚『真救世主伝説 北斗の拳ZERO ケンシロウ伝』には、衝撃の映像が差し挟まれていました。
物語は第1部終了後、ケンシロウが回想する形で幕を開けます。ケンシロウとユリアは2人で静かに暮らしているのですが、なんと、そこでユリアが妊娠している描写があったのです。
普通に考えて子供の親はケンシロウなのですが、映画制作者は「北斗の子=作品をずっと好きでいたファン」であるという、象徴として描いたとのこと。
ちなみに子供といえば、原作にはラオウの息子・リュウが登場します。一部のファンからは、彼の母親がユリアと考える向きもあります。原作者・武論尊も同様のイメージではあるようですが、基本的に少年漫画である『北斗の拳』でそう明言するのは、いささか問題があるようです。
その問題を差し引いても、リュウの年齢や時期的に考えて、ユリアが彼の母親というのはかなり無理があるでしょう。
- 著者
- 原 哲夫 (著), 武論尊 (著)
- 出版日
先述した「ケンシロウ伝」では、ユリアとケンシロウの結婚式の描写がありました。それと関連して、同作品公開記念に粋なイベントが催されたのです。
それは、結婚式ならぬ「結魂式」。魂で結ばれる2人を祝福するリアルイベントが、生みの親である武論尊、原哲夫やその他ゲスト、多くのファンによっておこなわれたのでした。
劇中ではあまり報われている、とはいえない2人でしたが、連載から25周年という節目でようやくゴールインしたのですね。
短い人生を、激動の運命に左右されたヒロイン・ユリア。その凄まじい一生のなかで呟かれた特に印象的な台詞を、5つピックアップしました!
あなたはまちがっている
こんなことでわたしの気持ちはかわらない
むしろ軽蔑する
(『北斗の拳』1巻より引用)
劇中初期、シンに向けて言い放った言葉です。毅然とした様子が、凜々しい女性像として映ります。しかし、こう言われたシンは、なんだか嬉しそう。やっぱり彼は……。
わたしはあの人を待つために生きてきました。
まちつづけるのがわたしの宿命。そしてケンとの約束!!
(『北斗の拳』14巻より引用)
彼女の受難の人生を象徴するかのような名言。この時ユリアはケンシロウとの待ち合わせ場所に行ったのですが、すでにケンシロウはラオウを倒しに行って、そこでは再会出来ませんでした。
熾烈な男たちの戦いのためにわたしがしてあげられるのは、
心おきなく送りだすことだけ
(『北斗の拳』15巻より引用)
これはラオウが無想転生体得のため、ユリアを手にかけようとしたシーンでの言葉です。男の決着に自らの命すら差し出す覚悟。そこには、もはや敵味方の区別すらないのでしょう。慈母星ならではの発言です。
あ……あなたと暮らしたここでの短い間
本当に……本当に平和で……夢の様に幸せでした……
(『北斗の拳』16巻より引用)
これこそ、1人の女性としての本音でした。シンにさらわれてから経験した、激動の人生。ケンシロウとの最後の生活で、彼女はようやく平穏を感じらたことでしょう。実感のこもった一言です。
ね……生きてるでしょう
暖かいでしょう。これが命よ!!
あなたもわたしもこうやって生まれてきたの
(『北斗の拳』15巻より引用)
鬼神・フドウを優しき巨人に改心させた、運命的な名台詞。この幼少時から、すでに慈母星の片鱗が感じられます。すべての乱暴者が胸に刻むべき名言です。
- 著者
- 原 哲夫 (著), 武論尊 (著)
- 出版日
いかがでしたか?作中でも大きなウェイトを占める、ユリアという人物。そんな彼女への理解が深まったならば幸いです。
彼女が登場する『北斗の拳』は、スマホアプリで無料!ぜひ、ご利用ください。