真っ赤な鼻筋に、鮮やかな青色の頬をしたマンドリル。初めて見た際に、驚いた方も多いのではないでしょうか。今回はそんな彼らの生態や特徴、青い色の秘密などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
中央アフリカにあるガボンや北西部の赤道ギニア、カメルーン、コンゴなどの一部の熱帯雨林に生息している、オナガザル科マンドリル属に分類される動物です。
名前が似ていることから「マントヒヒ」と間違えられることもありますが、マントヒヒは同じオナガザル科でもヒヒ属に分類されるため、まったく別の種類。見た目もマンドリルほど派手ではありません。
体長は50~80cmで、体重は11~25kg。性格は警戒心が強く、時には人間に対して威嚇行動をとることもあります。絶滅危惧種に認定されているので、個人での飼育はできません。
名前の由来は「マン(man=人間)」、「ドリル(drill=ヒヒ)」で、「人間のようなヒヒ」という意味です。
人間の手と同じように、親指が他の4本の対して向かい合うようについていることから、サルのなかでももっとも人間に近いとして名付けられました。この指は物を握るのに非常に適した形をしているため、彼らは木を自由自在に登ることができます。
また頬には「頬袋」と呼ばれる袋が備わっており、そこに胃に入るのと同じくらいの量の食料を溜めることが可能。これはマンドリルが巣を作らずに移動しながら生活をする生態に関連していて、長距離移動の際や、移動した先で食料が無くても困らないように発達したといわれています。
彼らの最大の特徴は、なんといっても赤い鼻筋と、鼻の両脇にある青い縞模様でしょう。熱帯雨林らしい派手な配色ですが、ではなぜこのような色合いになったのでしょうか。
マンドリルは基本的に群れで行動する動物です。移動距離は1.5~15kmと長く、1度群れを見失うと再度見つけるのは困難になります。さらに熱帯雨林は昼間でも薄暗く、少し離れてしまうと仲間なのかどうかもわかりません。
このような環境から、常に仲間を見失わないようにするために派手な色を備えるようになったと考えられています。
青い色をした生物は哺乳類で見かけることはほとんどありませんが、実は皮膚にある色素が青いわけではありません。皮膚の下にはコラーゲン繊維の層があり、これが光りを散乱して青く見えるようになっているのです。
かつては「不規則な配列による光の散乱」だと考えられていましたが、研究によってコラーゲン繊維には規則性があることがわかり、必然的に青く見えるようになっていることが判明しました。
ではなぜ、「青色」でなくてはならないのでしょうか。わかりやすいものであれば他の色でも問題なさそうですが、実はこれにもちゃんとした理由があるのです。
本来哺乳類は2原色で物を見ていますが、マンドリルは人間と同じく3原色で物を見ています。つまり他の哺乳類にはない「青色」を体に表すことで、より仲間をはっきりと区別しているのです。
彼らは群れで移動しながら生きる動物だと説明しましたが、では群れの構造はどうなっているのでしょうか。
数は平均で10~15匹ほどですが、多い時には50匹にも達し、乾季になると200~250匹以上の大群になるといわれています。観測データによると最大で観測データによると800匹ほどの超大群になることもあるのだとか。
しかしそんななかでも、大人のオスはリーダーを含めた2~3匹のみ。残りはすべてメス、もしくは子どもで構成されています。
かなりのハーレム状態で、争いも頻繁に起こるのだとか。また群れの外からオスがやってきて激しい順位争いがくり広げられます。
勝負の決め手になるのは、やはり顔の色。コントラストがはっきりしていて派手な個体ほど順位が高く、群れのリーダーになることができるのです。
日本人にとってはなかなか見る機会の少ないマンドリルですが、なんとアフリカでは食用にされていた過去があります。
その理由は諸説ありますが、かつてマンドリルが農作物を食い荒らしていたので個体数を減らすために狩り、食べたという説がもっとも有力です。
現在は絶滅危惧種に指定されているので、食用とされることはありません。
- 著者
- 出版日
- 2017-11-26
知っているようで知らない世界中のサルを、南米、アジア、マダガスカル、アフリカの4つの地域に分けて紹介している図鑑です。掲載されているのは約130種。
写真が大きく、かつほとんどが正面を向いているものなので、細かな部分まで観察できるのがポイント。図鑑としても写真集としても楽しむことができます。
特にマンドリルは人間に対して警戒心が強いので、綺麗な写真を撮影するのが難しいといわれています。本作ではまるで絵画のように色鮮やかな姿を見ることができるので、ぜひチェックしてみてください。
また写真だけでなく、現役の研究者による最先端の解説も付いているので、サルの生態をより詳しく知りたい方にもおすすめです。
- 著者
- 河辺 花衣
- 出版日
- 2014-09-08
おならが臭くて、みんなと遊べないマンドリルおじさん。そんな彼の悩みを解決するために、優しい動物たちが一緒になっておならをする……というなんともユニークな絵本です。
子どもでも大人でも、「おならをする」ということには恥ずかしさを感じますよね。でも実はいたって普通で健全なこと。
体から自然に起こる現象に恥ずかしがる必要はないということがわかり、また題材も小さなお子さんが大好きなものなので、読み聞かせなどにおすすめの一冊です。
群れで生活をするマンドリルの生態には、リーダー争いや1匹のメスを巡るオス同士の争い、メス同士の駆け引きなど、どこか人間の世界に似た光景も見ることができます。興味をもった方はぜひご紹介した作品を読んで、より詳しく学んでみてください。