おそらくほとんどの人が知っているであろう「重力」。しかし実際にどんな仕組みで、どんな力なのか説明できる人は少ないのではないでしょうか。今回はその原理と、引力・遠心力・時間との関係、発見の歴史などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてください。
重力とは、地球上で物体が地面に引き寄せられる力のことで、言い換えれば、重さの原因を作っている力のことです。
物体同士が引っ張り合う力である「引力」と混同されることもありますが、実際には異なります。地球は自転をしているので、地球上にある物体は引力に加えて遠心力の影響も受けています。この遠心力と引力を合わせた力を重力と呼ぶのです。
実は17世紀まで、物体の大きさと重力の強さは比例し、物体が大きければ大きいほど重力も強いと信じられていました。この考えは、古代ギリシャの哲学者、アリストテレスが唱えたものです。そして長い間支持されていたその常識を覆したのが、イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイです。
物体の落下速度が異なる原因は空気抵抗にある、ということを実験で明らかにしました。真空中では100キロの鉄も1グラムの羽毛も同じ速度で落ちることを証明したのです。
先述しましたが、引力とは物体と物体が引き合う力、重力は引力に遠心力が加わった力です。中心に向かって引きつけられる引力に対し、遠心力は中心から遠ざかろうとします。
たとえば水の入ったバケツを振り回した時に、バケツが逆さまになっても水がこぼれないのは、水にかかる重力よりも遠心力の方が勝っているためです。
では、地球の周りを回っている月はなぜ地球に落ちてこないのか、疑問に思ったことはありませんか?まずはボールを地面と水平方向に投げた時のことを想像してみましょう。投げられたボールは、ある程度の距離を飛んだら地面に落ちます。では、ボールを投げるスピードをとても速くしてみたらどうでしょうか?ボールは長い距離を飛び、ずっと先で地面に落ちます。
地球は丸いです。遠くから見ると、地面も曲がっています。もしボールが地面に落ちるよりも前に、地球の地面が曲がっていたらどうなるでしょう?ボールは落ちても地面につくことはありません。
実は月も同じことです。月は地球に向かって「落ち続けている」ものの、地球にぶつかることはありません。このような運動を「円運動」といいます。円運動をする物体は、円の中心に向かって力を受けており、地球の場合はこれが「重力」にあたります。つまり月は、地球の重力を受け、地球に落ち続けているものの、ぶつかることはなく地球の周りを回っているのです。
2つの関係性を理解するために、重力を「ボール」、時間を「トランポリン」にたとえてみましょう。
トランポリンの上にボールを置くと、トランポリンの表面は歪みます。その歪みはボールが重ければ重いほど大きくなります。
では、トランポリンのある地点とある地点を結び、表面をたどって端から端まで光が通過するのに1秒かかるとします。ボールがある状態だとトランポリンの歪んだ表面をたどって端から端まで行かなければいけません。
端から端までを1秒としているので、ボールが存在する場合の1秒は存在しない場合の1秒よりも遅くなります。つまり重力のある方が時間が遅くなるのです。
このような現象を「時空の歪み」といい、重力がある方が時間が遅くなり、また重力が強ければ強いほど時間が遅くなることを相対性理論では説明しています。具体的には、無重力空間よりも重力のある地球の方が、1秒につき約100億分の7秒間遅れているといわれているのです。
重力を発見した人物として多くの人が思い浮かべるのが、アイザック・ニュートンではないでしょうか。しかし、彼がりんごが木から落ちるのを見て重力の存在に気づいた、というのはまったくの作り話です。
1655年から1656年の間、ニュートンの通っていたケンブリッジ大学がペストのため休校に追い込まれ、実家に帰ってのんびりしていた時期に万有引力に関する思考をまとめたのが本当のところのようです。
また同時期には微分積分学や光学などの分野でも発見や証明をしており、この時期はニュートンの「創造的休暇」とも呼ばれています。
先述したとおり、重力がどのような力であるかは、この時すでにガリレオが証明していました。彼は「ピサの斜塔から大小2つの金属の玉を落とす」という実験をし、「重力による物体の落下速度はその物体の質量の大きさに関わらず同じである」という結果を導き出したのです。
そのほかケプラーやロバート・フックなど多くの科学者が重力に言及しており、また古くは古代ギリシャ時代から重力に関する多くの議論がされていました。その存在自体は、人類は非常に早い段階で気づいていたようです。
ちなみにニュートンは、力や運動に関する考えを『自然哲学の数学的諸原理』という本にまとめ、発表しています。これは非常に画期的な内容で、近代科学におけるもっとも重要な著作のひとつといわれています。
重力を含む宇宙の神秘の最先端研究を、わかりやすく説明した解説書です。
数式が使われておらず、言葉で伝えようとしている作者の努力が感じられ、初心者でも宇宙論を楽しめます。
- 著者
- 大栗 博司
- 出版日
- 2012-05-29
重力は「弱い」「消すことができる」「どんなものにも等しく働く」という不思議な性質を持っています。その謎を解き明かすことは宇宙の謎を解明することと等しく、本書はミステリアスな最先端研究の様子を知ることのできる貴重な内容だといえるでしょう。
興味を引く逸話も多く盛り込まれているので、宇宙論に精通していない人でも飽きずに最後まで読むことができます。重力とは何かという大きなテーマと、現代に至る宇宙論の発展がバランス良く記載されており、宇宙についての概要をつかみたい人にぴったりです。驚くべき真実や、意外な発見を楽しめることでしょう。
本書ではニュートンとアインシュタインという2人の天才に焦点を当て、「光」と「重力」をとおして彼らの思考に切り込んでいます。
おのおのにフォーカスを当てた作品は多くありますが、両者を比べるという視点で書かれたものは多くありません。2人がどのようにして物理学を開拓していったのか、その歴史を学ぶことができます。
- 著者
- 小山 慶太
- 出版日
- 2015-08-21
「『プリンキピア』は全編を通し、ほとんどの内容が幾何学を用いて記述されている。ニュートンはせっかく微積分法を作り上げていながら、なぜ、それを使わず現代の我々から見るとややまわりくどく感じる、旧来の数学に頼ったのであろうか」(『光と重力 ニュートンとアインシュタインが考えたこと 一般相対性理論とは何か』より引用)
『プリンキピア』は、ニュートンが重力など自身の発見をまとめた作品です。本書ではこのように冒頭で読者に問いを投げかけ、それに応える形で解説を進めていきます。
理解を助けてくれる写真や図、資料も豊富です。章と章の間に挟まれているコラムでは、内容をより深く理解するための数学問題や物理の方程式なども載っています。
理系の人に限らず、物理学や宇宙学に詳しくない人でも簡単に読むことができるでしょう。ニュートンとアインシュタインの功績に触れてみたい人にもおすすめです。
私たち人間にとって身近な力である重力。調べてみると、まだまだ謎に包まれている部分や、意外な事実がわかってくるのではないでしょうか。今回紹介した作品は、宇宙や化学についておもしろく、かつわかりやすく解説しています。興味がわいた方はぜひ実際に読んでみてください。