誰もが知る『ドラえもん』の主人公ドラえもんの、かわいい妹ドラミちゃん。誕生秘話からスピンオフまで、ドラえもんによく似た(?)彼女の知られざるマニアックな秘密をご紹介したいと思います。
ご存知、国民的人気作品『ドラえもん』は、主人公の1人のび太の周囲で起こった出来事、あるいはのび太が起こした厄介事を「すこしふしぎ」な秘密道具で解決していくお話です。
そこで大活躍するのがもう1人の主人公、我らが愛すべき猫型ロボットのドラえもんです。毎回、秘密道具が登場するのが基本骨子なのでドラえもんは必要不可欠ですが、時折ドラえもんに変わって活躍する存在がいます。
それが今回ご紹介する「ドラミちゃん」ことドラミです。ドラえもんの妹で、彼と同じく未来から来た猫型ロボットです。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-07-31
体色は初期ドラえもんと同じ黄色で、全体的な作りはドラえもんと同じ。ポケットの柄としっぽが若干異なり、リボンの有無も違います。ただしヒゲは生えておらず、声もガラガラではありません。優等生的な性格で女の子らしい部分もあり、とてもかわいいキャラクターです。
その人気から彼女がメインの映画『ドラミちゃん ミニドラSOS!!!』、『ドラミちゃん アララ少年山賊団!』、『ドラミちゃん ハロー恐竜キッズ!!』、『ドラミちゃん 青いストローハット』などが製作されました。
ドラミの誕生日は2114年12月2日。生まれの経緯は媒体によって異なりますが、ドラえもんが大きく関わっています。
元々は耳を失い、悲嘆に暮れるドラえもんを慰めるために造られたのです。その際、彼がスネないようにドラミも耳のないデザインに。その代わり、高性能集音機であるリボンが付けられたのです。前から見ると猫耳、後ろ姿ではリボンというなかなかお洒落な装備。『ドラえもん百科』で明かされたこの設定は、後にアニメ化もされました。
『ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?』で共闘したことがきっかけで、ドラ・ザ・キッドとは友達以上恋人未満な関係にあります。初期には複数のボーイフレンドが示唆されていて、ドラミは真面目なイメージとはちょっと違って、意外に交友範囲の広いリア充なキャラなのです。
アニメの声優は1代目がよこざわけい子、現在放送中の2代目は千秋が担当。そのアニメ版では登場時にテーマソングがかかることも多く、特に「ハロー! ドラミちゃん」という歌が有名です。
今更説明するまでもありませんが、ドラえもんとドラミは猫型ロボットです。しかし、ロボットなのに兄妹というのは少し変な話。
製造番号、順番などが連続していたからでしょうか? いいえ。ドラえもんは2112年生まれで、すでに書いたようにドラミは2114年生まれなので、2年差があります。彼らは量産型子守ロボットなので、工場が停止していたというような事情がない限りは2年の差があるのに連番ということはないでしょう。
実はドラミが製造された際に使用されたロボットオイルが、ドラえもんのそれと同じ缶のものだったのです。つまり人間の兄弟が両親の血を分けているのと同じように、ドラえもんとドラミは同じオイルを分けた存在だから兄妹とされているのです。
しかもこの話には続きがあって、オイル缶は良質な成分が下半分に沈殿しており、そのためにドラえもんよりドラミの方が優秀だと言うのです。単純なスペックで比較しても、ほとんど全てでドラミが上回っているのですが。
ドラミの身長等スリーサイズはドラえもんより小柄な設定ですが、ドラえもんが129.3馬力なのに対して、ドラミの最高出力は1万馬力。
人間はプロスポーツ選手ですら瞬間的に一馬力出すのがせいぜいです。それを踏まえるとドラえもんですらかなり力が強いのに、ドラミと比較すると見劣りしてしまいます。兄妹仲のいい2人ですが、本気でケンカしたらドラミに軍配が上がるでしょう。
有能な手腕とあわせて考えると、ドラミこそ『ドラえもん』世界で最強のキャラクターかも知れません。
ドラえもんについては<ドラえもんに関する11の事実!『ドラえもん』の体には、秘密がいっぱい!>の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
ドラえもんファンには落胆の事実かも知れませんが、基本スペックで差のついているドラミとドラえもんの間にはさらなる格差が存在します。
最新(?)型ゆえに高性能で、動作は良質オイルのおかげでさらに良好。頭脳も優秀で堅物なきらいがあるものの、真面目な優等生。これ以上ドラえもんとどんな差があるのかと言うと……。
彼らの重要な秘密道具の1つであるタイムマシンの性能が段違い。ドラえもんの空飛ぶじゅうたん型タイムマシンが型落ちの中古品であるのに対して、ドラミのタイムマシンは高額高性能な逸品なのです。
チューリップ型タイムマシンの速度はじゅうたん型の倍以上、動力源も改善され、安全性も格段に進歩しています。時間を越えるタイムマシンで速度も何も関係しない気はしますが、タイムマシン同士でカーチェイスする時には重要な要素です。
ここまで差がついているとドラえもんがかわいそうになってきますね。
そんなドラミの好物はメロンパンとされています。とても女子らしい好み。アニメ版ではさらに、クッキー生地を好んでいることが明かされました。
文字通りに万能猫型ロボットとして優秀さが強調されるドラミですが、苦手なものももちろんあります。ドラえもんにおけるネズミのような存在が、ドラミにもあるのです。
それが何かと言えば……ゴキブリです。
わざわざゴキブリを好き好む方も世の中にはいらっしゃいますが、ゴキブリ嫌いは多くの人が賛同することでしょう。ロボットらしくはないけれど、女の子らしくてやっぱり可愛らしいと思いませんか?
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-10-31
ドラミはドラえもんと違って登場回数が限られていることから、彼女が取り扱う道具もそう多くありません。
しかもドラミはのび太の自主と自律を促す教育方針なので、出てくる道具が即物的な効果を発揮するものは少ないです。が、それらは全て、使い方を想像するとワクワクしてくるような、好奇心をくすぐる素敵なものばかりです。
たとえばドラミが本編に初めて出来た時のエピソード「海底ハイキング」(『ドラえもん』4巻)では、太平洋横断のために海底ハイキングセットが登場しました。水中で歩ける快速シューズに、呼吸の出来るエラ・チューブ、耐水圧用の深海クリーム。海底を自由に散策出来る冒険セットがずらり揃っていました。
他には30巻に出てきた「ハツメイカー」という道具もあります。これは望みの道具を発注すると、必要な材料と設計図を出してくれるというものです。材料はモジュール化されているので組み立ては簡単。半オーダーメイドで自分だけのオリジナル秘密道具を造れるという、浪漫溢れる魅力的な道具でした。
さて、実はドラミの初出は『ドラえもん』ではありません。本編未収録の公式スピンオフ『ドラミちゃん』という漫画で初めて登場しました。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 2007-08-01
そこではドラえもんに代わるお助けキャラとして、ドラミちゃんが出てきたのです。最初は『ドラえもん』とは別作品ということで、のび太そっくりの親戚のび太郎、ジャイアン似のカバ田、しずかちゃんそっくりのみよちゃんらの独自の「すこしふしぎ」な日常が描かれました。
後に整合性を合わせるためにキャラクター設定や台詞が修正され、いくつかは『ドラえもん』のエピソードとして本編へ再録。第1話だけは長らく日の目を見ていませんでしたが、2007年に『ドラミちゃん』として単独発売されました。しかし、残念なことにこちらも大半が修正済みで、雑誌初出版は『藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん』にしか収録されていません。
ドラミの初登場と言えば、もう1つ面白い話があります。
長命作品『ドラえもん』は他キャラクターでも設定の変遷がよく見られるのですが、ドラミも例外ではありません。元々、ドラミは藤子F不二雄が考えたキャラクターではないのです。当時の学年誌「小学四年生」の読者がドラミの元になるアイディアを投稿し、実際に採用されたという経緯があります。
そのためか、作品登場前の予告に描かれた顔見せ段階では、設定が固まっていませんでした。その時点でドラミは、ドラえもんの妹ではなく、ガールフレンドであるかのような紹介がされていたのです。
実際に蓋を開けてみると、前述した『ドラミちゃん』の中で妹として登場しました。
ご存知のようにのび太はぐうたらな少年です。それを改善すべくドラえもんが頑張るわけですが、彼自身も残念ながらポンコツ気味なのであまり効果は出ていません。のび太の子守ロボットというより、彼の親友という立ち位置の方が強いからでしょう。
そこへ行くとドラミは違います。子守ロボットの補助として造られた彼女は、生来の真面目さもあって、駄目ところはびしびしと指摘していきます。のび太の成長を促すためには、ちょっとした嘘や罵倒のように聞こえる言葉も平気で使うのです。そういったドラミの態度はドラえもんがだらしない分、余計に厳しく映ります。
ドラえもんとスタンスこそ違えど、根っこにあるのは成長に期待する優しさであることに変わりはありません。
のび太については<のび太に関する13の事実!『ドラえもん』のいじめられっ子は意外とリア充?>で紹介しています。
不甲斐ない兄に代わって、時々解決に乗り出してくるドラミ。スピンオフ『ドラミちゃん』は別にして、普段は現代ではなく未来で生活しています。
- 著者
- 方倉 陽二
- 出版日
そんなドラミの未来での役目は、のび太の玄孫(孫の孫)にしてドラえもんを送り込んだ張本人、セワシの世話です。子守ロボットのドラえもんは、本来セワシの面倒を見るのが仕事でしたが、その役割がのび太の世話に移ったため、ドラミはその穴を埋める形で働いています。
また『ドラえもん百科』によれば、それ以外の時間には「宇宙大学」に通っており、文学、哲学、科学などを研究しているそうです。ロボットグループのリーダー的存在も勤めているようで、彼女の優秀さがひしひしと伝わって来ます。
セワシの家事手伝いに収まっていてよい器とは思えないですね。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-11-28
それでは最後に、高性能ロボットのドラミちゃんらしい名(迷)言の数々をご紹介して終わりたいと思います。
第5位:
「おー、よちよち
かわいちょ
ドラミちゃんがめんどうみてあげるからね」
(『藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん』20巻より引用)
本編未収録、ドラミ初登場の場面です。ぐずるのび太(のび太郎)をあやす様はさすが子守ロボット。
第4位:
「どんなきずでもすぐなおす薬があるから、安心してなぐられてきなさい」
(『ドラえもん』8巻より引用)
いつも通りジャイアンにいじめられ泣きつくのび太に対して、意外とスパルタ教育(?)なドラミちゃん。道具で解決するのが最善とは限りません。
第3位:
「おにいちゃん一生けんめいやってるわ」
(『ドラえもん』24巻より引用)
いつまでも進歩しないのび太。見かねた未来のセワシがぼやいたところ、すかさすフォローするドラミでした。麗しき兄弟愛。
第2位:
「しんせつをわすれちゃだめ!」
(『ドラえもん』9巻より引用)
親切が仇になって、自棄になったのび太を諫めた一言。例え親切が裏目に出たとしても、やがて人徳が功を奏する時がきっと来るのです。
第1位:
「そんなゆめみたいなはなし、きらいなの。
お金は、じぶんではたらいてもうけるものよ」
(『ドラえもん』5巻より引用)
楽して稼ごうと道具に頼るのび太に言った言葉です。けだし名言。ただ、子供向け漫画にしてはちょっと現実的過ぎるかも知れません。
いかがでしたか? 愛されキャラのドラミちゃんがますます可愛く見えてきませんか?