ドラえもんと言えば、言わずと知れた国民的作品『ドラえもん』の主人公です。ですが、あまりにも長寿作品だけに、ドラえもん自身については意外と知らない方も多いでしょう。今回はそんなドラえもんの秘密に迫ります。
誰もがよく知る国民的作品『ドラえもん』は、22世紀からやってきたロボットのドラえもんが、怠惰な少年のび太と暮らす「すこしふしぎ」な物語です。1話完結のショートショート的短編漫画が原作で、それを元に作られたテレビアニメは幅広い世代に愛されています。
大長編と銘打たれた長編ストーリー漫画、映画版も普段と違った魅力に溢れており、こちらも多くの人から愛されています。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-07-31
そんなドラえもんがタヌキ――もとい、猫型ロボットであることはご承知の通り。22世紀、正確には2112年9月3日が誕生日の子守用ロボットです。身長、体重、スリーサイズに至るまで全て129.3cm(またkg)で統一された寸胴体型です。絵描き歌で歌われるほど単純な容姿をしていますが、実際に似せて書こうとすると書き方に少しコツが必要となります。
普段の素振りからは想像も出来ませんが、129.3馬力とかなりの力持ち。鍛えたスポーツ選手でも瞬間的に1馬力くらいしか出せないことを考えると、ドラえもんの強さはかなりものです。
猫型だけに元々は猫耳が生えていたのですが、とある理由から消失。彼の体色が青いことと、耳がなくなったエピソードは時代や作品によって異なります。ネズミが関係していることだけ共通しています。
ドラえもんの内部構造図解などは古くからあるものの、漫画の描写としてはともかく、歯の有無は不明でした。最近になって、映画『STAND BY ME ドラえもん』などでは歯があることがはっきりと描かれるようになりました。
ドラえもんのアニメ版での声優は何度か代替わりしており、2018年6月現在は水田わさびが担当。上の世代で最も馴染み深いのは大山のぶ代でしょうか。
何をやっても駄目な少年のび太が、なんらかの理由でドラえもんに泣きついて、秘密道具を出してもらうのが『ドラえもん』の基本的な流れです。最後には教訓が得られるのも特徴。
そもそもドラえもんが過去にやってきた理由とはなんでしょう? ドラえもんは、のび太の玄孫(やしゃご。孫の孫)セワシによって、苦境に喘ぐ一族の運命を変えるために送り込まれたのです。
その変えるべき運命とは、のび太とジャイ子の結婚でした。最初にドラえもんが来たことで、その運命は回避されます。
とはいえ勘違いされがちですが、これはジャイ子が悪かったわけでも、彼らの結婚生活がうまくいかなかったせいでもありません。のび太の一族が失敗する運命の起点が、ジャイ子との結婚だったというだけのことです。
のび太については<のび太に関する13の事実!『ドラえもん』のいじめられっ子は意外とリア充?>の記事で、ジャイ子については<ジャイ子に関する10の事実を紹介!『ドラえもん』の中で、1番天才!?>の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
ドラえもんと言えば、ロボットらしからぬ表情豊かなキャラクターです。驚いた時や笑った時など、ある種の変顔に近い変化からすると、人間の皮膚より数段柔らかそうにも見えます。
『ドラえもん』に限らず、長期連載作品ではよくあることですが、ドラえもんほどわかりやすいキャラクターでも顕著な絵柄の変遷が見られます。
原作漫画の初期などは顔も胴体もまん丸。大きな丸い胴に小さな頭が乗っていることから、雪だるまのようにも見えます。これはドラえもんというキャラクターの着想が、「ポロンちゃん」という起き上がりこぼしの玩具から来ているためでしょう。
以後、徐々に(胴だけ)スリムになっていき、現在のような頭でっかちのシルエットに変化していきました。
ドラえもんの妹ドラミちゃんについて紹介した<ドラミに関する意外な10の事実!『ドラえもん』の中で、最強!?>もおすすめです。
ドラえもんはのび太の世話役であり、保護者であり、友人です。しかし、それがドラえもんの生活の全てではありません。大山のぶ代時代のアニメ版では、ドラえもんの私生活における恋のお相手として近所の猫ミーちゃんが準レギュラーのように登場していました。
原作漫画では名もなき猫や、ふさふさの血統書付き(?)猫に、シロちゃん、タマちゃん、猫型ロボットのノラミャーコ、挙げ句の果てに玩具のミィちゃんなど数え切れないほどの女性(メス)に靡いています。
こうして見ると結構節操がないですね。
量産型子守ロボットとはいえ、ドラえもんには未来のハイテク技術が詰まっています。
たとえばドラえもんの構成要素で数少ない猫要素である首輪の鈴。これは音波の発生源となっていて、猫だけを集める機能があります……が、第1話の時点で故障しており、正常に使われたことは一度もありません。
故障と言えばドラえもんの鼻は人間の20倍です。犬や猫にはだいぶ劣るものの、充分高性能。ところがこれも故障中で、ドラえもんのポンコツさ加減に拍車がかかります。
特徴的な丸い手は「ペタリハンド」というメカで、ある程度自在に変形させたり吸着させる機能があります。大事なしっぽも忘れはいけません。鼻と同じ真っ赤な球形のしっぽは、ドラえもんの電源スイッチです。迂闊に引っ張るとスイッチが切れて機能停止に陥ります。
寸胴体型のドラえもんは、腕が短ければ足も短いです。マスコット的キャラクターとしては正しく誰からも好かれやすいデザインではあるものの、実用面においては多々不便が起こりえるだろうと想定されます。
ですが、そこはそれ未来のロボット。正座したりあぐらをかくシーンが時々見られるのですが、覚えはありませんか? ドラえもんは非情に短足ではありますが、伸縮自在に出来ているのです。漫画的表現と言ってしまえばそれまでですが。
ちなみに正座状態の長さで直立したところを想像してみると、見た目がちょっと怖くなります。
足と言えば、外でも家の中でも、ドラえもんは常に裸足です。やや不潔に思えますが、ここもきちんと設定されています。ドラえもんの足裏には反重力装置が内蔵されており、常に地面から3mmほど浮いているのです。意外なところに高機能が隠されているのでした。
ドラえもんはロボットですが、日常生活でエネルギーを充填するなどのメカっぽい描写はありません。それどころか、野比家の一員として食卓を囲んでいる様子が見られます。大長編などでは、秘密道具から美味しそうな料理を出して口にすることもしばしば。そもそもどら焼きを好物としていて、日常的に摂取しています。
ロボットにも関わらず、です。
その理由は彼の動力源にあります。ドラえもんには胃袋に相当する場所に小型原子炉が搭載されていて、取り込んだ食べ物がエネルギーに変換されているのです。変換効率は脅威の100%。排泄物が発生しないので基本的にトイレに行く必要はありません。おそらく超々効率的な核融合炉なのでしょう。
何せ(劇中時代から見て)2世紀先のテクノロジーですから、もしこの事実が世間に知れ渡れば、現代科学に途方もない革命が起こること間違いなし。ああ見えてドラえもんは、歩くブラックボックスの塊なのです。
ドラえもん自身がブラックボックスといえるのですが、よりわかりやすい超科学の結晶が彼の秘密道具です。
普段何気なく使われるタケコプターやどこでもドア。特に後者は輸送効率がとんでもなく良いので、流通革命が起こります。とりよせバッグもそうですが、どこでもドアは悪用すれば他人の秘密を覗き放題、大事な物品も盗み放題の危険な道具です。スモールライトでも侵入に使ったり、あるいは誰かを小さくして閉じ込めるなど、様々な悪事に応用可能です。
応用性で言えば、最も危険なのはタイムマシン。好きな時代、好きな場所に移動出来るタイムマシンは、使い方を誤れば歴史が変わってしまいます。劇中でもタイムパトロールに関連したエピソードがありました。
こうしたドラえもんの代名詞ともいえる秘密道具ですが、これを特別にフィーチャーした『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』という映画も2013年に公開されました。
今でこそお馴染みのドラえもんという名前。その名前にはふかーい意味が……あったりはしません。
藤子・F・不二雄による自伝的漫画「ドラえもん誕生」によると、『ドラえもん』の新連載締め切りギリギリまで、なんの構想も浮かんでいなかったそうです。その時点ではタイトルもビジュアルもすらも出来ていなかったのです。
人間差し迫ると無関係な行動に出るものですが、藤子・F・不二雄もかつて窮した時にどら猫の世話を焼いたことをふと思い出しました。そして決定的だったのは、うろうろしてる時に偶然転びかけた娘の玩具でした。それが起き上がりこぼしの「ポロンちゃん」。
どら猫と起き上がりこぼしが繋がって、ドラえもんの原形が出来たのです。「ドラ」はどら猫の名残。「えもん」については謎ですが、おそらく未来ロボットという設定と相反する、ギャップのある面白味として採用したのでしょう。
ただ、「えもん」がひらがなである理由は『ドラえもん百科』に描かれています。それによるとドラえもんがロボット戸籍調査員に名前を尋ねられた際、咄嗟に文字が出てこなかったのでひらがなで書いた、とされています。
ドラえもんらしいというかなんと言うか……。
『ドラえもん』には「さようならドラえもん」という、実質的に最終回として描かれたエピソードがあることは有名です。ある事情から未来に戻らざるを得なくなったドラえもんと、彼に心配かけまいとするのび太の絆が描かれる感動作です。
実は『ドラえもん』には、これ以外にも最終回があるのです。『ドラえもん』は「コロコロコミック」だけでなく、小学館発行の小学1年生から6年生までの各学年を対象とした、いわゆる学年誌にも掲載されていました。連載初期には、そうした学年誌の読者の進級にあわせて、年度末号で最終回が描かれていたのです。
まず1971年発表の「ドラえもん未来へ帰る」。時間旅行者のマナーが悪くなったことを受け、法律によって時間渡航が禁止さ、ドラえもんが未来に帰ることになります。
翌年の「ドラえもんがいなくなっちゃう!?」では、やはりある事情からドラえもんが帰還することに。のび太にその事実を納得させるため、故障した振りをするのですが……。
いずれの場合も、ドラえもんがのび太の元を離れて未来に帰る形になっています。どのバージョンでも、最後はのび太がドラえもんなしで奮起、独立独歩するように描かれているのが示唆的です。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-07-31
世界的に広く長く愛されるドラえもんだけに、長い歴史の中で格言めいた名言がたくさん生み出されました。その中から取っておきの5選を発表したいと思います。
第5位:
「日本じゅうがきみのレベルに落ちたら、この世のおわりだぞ」
(『ドラえもん』39巻より引用)
のび太が「ハンディキャップ」という道具で、自分の能力が劣っているなら周りのレベルを下げてしまえばいい、と非常に危険な使い方をしようとしたシーン。言い方は辛辣ですが、それくらい危機的状況にありました。
第4位:
「きみはかんちがいしてるんだ。
道をえらぶということは、
かならずしも歩きやすい安全な道をえらぶってことじゃないんだぞ」
(『ドラえもん』42巻より引用)
分かれ道の行く末を知ることが出来る道具「コースチェッカー」。決断の重要性をテレビで見て感動したのび太は、それを使って進む道を見極めようとします。楽な道、甘い考えがなくならない彼へ、ドラえもんが叱責したのがこの台詞です。
第3位:
「よくみておくんだね。
君がひるねしている間も、時間は流れつづけてる。
1秒もまってはくれない。
そして流れさった時間は2度と帰ってこないんだ!!」(『ドラえもん』34巻より引用)
ぐうたら昼寝して無駄に時間を使うのび太に対して、ドラえもんが「タイムライト」で時間の流れを視覚化してお説教したシーンです。鴨長明『方丈記』に曰く、ゆく河の流れは絶えずして……というお話でした。
第2位:
「どっちも自分が正しいと思ってるよ。
戦争なんてそんなもんだよ」
(『ドラえもん』1巻より引用)
人間の業とも言うべき、対立構造を鋭く見抜いた言葉です。タイムマシンでのび太のご先祖様に会いに行ったエピソードですが、どれだけ経っても人間性は変わらないという藤子F不二雄の哲学が垣間見えます。
第1位:
「人にできて、きみだけにできないなんてことあるもんか」
(『ドラえもん』1巻より引用)
ドラえもんがのび太を見守る存在であることがよくわかる名言。最初からそのスタンスが変わっていないというのが凄いですね。この言葉を胸に刻んで様々なことにチャレンジしていきたいものです。
いかがでしたか? ドラえもんについて知ったことで、もっと身近に感じられるようになったのではないでしょうか?