農と食が離れている!と言われて久しいですね。ただ、これって農業界だけ!?なんて思うこともしばしば。今回は、実際に感じている方も多いハズ!という前提で(笑)、『生業としての農と、生活としての食の接点』を身近に感じさせてくれるような本をご紹介できればと思います。
みなさんは、野菜に「走り」「盛り」「名残り」があるのをご存知ですか? 実際にこう呼ぶ人は少ないのですが、自分はこの考え方が大好きです。
旬の野菜は、とかくその出荷初期に大変注目を集めます。その結果、生産者は出荷時期を早めるため栽培に創意工夫を凝らし、高値で売れる時期に出荷します。こうして季節感が薄らいでいくわけですが、どんな野菜も始まりと終わりがあるのです。『内田悟のやさい塾』は、この生育の流れを楽しみながら料理ができる素敵な一冊です。
旬がなくなっていると言われている野菜。トマト、ナス、ジャガイモ、キャベツなどなど・・・お店で見ない日はないですね。そんな「通年野菜」(勝手に命名!)であっても栽培時期や場所によって、素直に向き合い、切り方から野菜のレシピを紹介してくれる。そんな一冊です。
春夏編、秋冬編がありますが、自分たちがトマトを栽培しているということもあり、今回は春夏編をご紹介します。
- 著者
- 内田 悟
- 出版日
- 2012-02-03
みなさんはお味噌をご家庭で作っていますか???
えっ・・・作ってない?!最近は、作っている方が珍しいですから当然です。でも、「手前味噌」の語源は、もともと「自分の家で作っている味噌」を訪問先へ持って行ったりしたことからできた言葉です。
昔は味噌は家で作るのが当たり前でした。なぜなら、味噌づくりは驚くほど簡単だから! 材料は大豆、麹、塩。はい、これだけです。でも、作られなくなった味噌。僕はそのポイントが大豆にあると思います。なぜなら、大豆は収穫までにものすごーく時間がかかるから。(ちなみに、大豆は枝豆ですよ!知ってますよね?)
農業が生産性やスピードを求め、国内生産量が減少するにつれて食文化への影響が出た一例かな、と感じています。
そんな現在だからこそ、この『てまえみそのうた』が大ヒット。DVDつきで家族で親子で歌って踊れる味噌づくりが楽しめる一冊です。
- 著者
- 小倉 ヒラク コージーズ
- 出版日
- 2014-02-20
このサイトをご覧の方ならご存知の方も多いはず。言わずと知れたマンガ大賞受賞作品です。
進学校で挫折した主人公が、農業高校に行き、いきなり「家畜の奴隷」となって(※本編より)農業を通して成長していく漫画です。
舞台が北海道ということや筆者が畜産関係の出身ということもあり、畜産がメインのストーリーなのもかなり興味がわくポイント。 特に北海道の農業や畜産は規模が他都府県とは大違い! 最先端はもちろん、農業全般における問題も深刻です。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2012-10-18
「農」と「食」の繋がり・・というテーマで特に読んで頂きたいのは第5巻です。
みなさんは、牛や豚、鶏が「肉」になる瞬間はいったいいつ(どこ)か?なんて考えたことはありますか? 恐らく想像したことは、ほとんどないと思います。 牧場をのどかに歩く牛も、自然のままに元気に育てられた鶏たちも「肉」となって、私たちの「食」を支えてくれています。
この第5巻では高校生たちが牛の屠殺場を見るシーンがあり、本当に素直な感想が描かれています。まさに牛が肉になり、食になる瞬間です。そして悲しくも、その肉は大変美味しい! だからこそ悩み、そして成長していく姿がとても共感できる本です。
最後にご紹介したいものは、本ではなく配布冊子です。
農林水産省が出している冊子でHPから簡単にダウンロードできます。
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/pdf/guide_all.pdf
2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
なんだか凄そうなことだなーと思われる方も多いのですが、何が凄いの?と聞かれると何だか分からない方が多いです。
そこでオススメしたいフレーズは「和食は日本文化」というもの。
食文化というよりも、食を通して「日本文化」を醸成しているといった方がイメージしやすいかも知れません。そこには、自然への尊重や地域との関わり、時候やハレの日を大切にすることなど、日本という風土が多様性を生み、その結果「和食」という形に辿り着いた歴史があります。
そんな和食を農林水産物といった食材の面や、煮るや和えるといった調理法の面などから丁寧に紐解いてある一冊が前述の冊子です。 ちなみに全くの余談ですが、同じくユネスコの世界農業遺産というものもあります。石川県能登半島の「能登の里山里海」や静岡の「茶草場農法」など日本の登録は意外と多いのでご注目ください。
みなさん、いかがでしたでしょうか?
農と食は、元来一連の流れです。その流れの中では、作る、食べる、といった単一の行動だけでなく、その間にある「繋ぎ」があるから、その大切を実感できると思っています。季節に合わせた素材の調理方法、自然の力を活かして食物を作る、生きているものを頂く心などなど。みなさんの普段の生活の中に、今よりももっと「農と食の繋がり」を感じて頂ければ嬉しいです。