地球から肉眼でも見ることができる金星。「明けの明星」、「宵の明星」などとも呼ばれ、朝夕と私たちを見守るように輝いています。英語では「ビーナス」といい、太古から女神の象徴でもありました。この記事ではそんな美しい惑星の自転、大気、温度などの特徴や、「スーパーローテーション」という風の謎などをわかりやすく解説していきます。あわせて宇宙の壮大さがわかるおすすめの関連書籍も紹介するので、チェックしてみてください。
地球にもっとも近い場所にある惑星です。その距離はおよそ1億5000万km。ちなみに地球の直径は1万2742kmで、金星の直径は1万2104kmと、大きさがよく似ています。そのほか質量や密度なども近いので、研究者からは「地球の兄弟惑星」と呼ばれているのです。
幼いころ、夕方まで友達と遊んでいてふと空を見上げると、燦然と輝く一番星を目にしたことがあるのではないでしょうか。ほとんどの場合、一番星は金星だといわれています。地上から肉眼でも非常に明るく見えますが、その理由は距離が近いというだけではありません。金星は表面が分厚い雲で覆われていて、太陽の光をよく反射する性質をもっているのです。
天体望遠鏡を使うと、月のように満ち欠けをしていることも観測できます。これは太陽系の惑星のうち、金星が地球よりも太陽に近い軌道を回っている内惑星だからです。
地球よりも外側の軌道を回っている外惑星の場合は、太陽光の当たっていない部分を見ることはできません。
兄弟と言われるほど地球に似ている金星ですが、大きく異なることがあります。実は自転をする回転方向が逆で、これは他の太陽系の惑星と比較しても金星だけがもっている特徴となります。この理由について明確なことはわかっていません。
もっとも有力な仮説は主に2つです。
ひとつは、金星が誕生する際に、岩石の激しいぶつかり合いが作用して、今の回転方向になったという説。そしてもうひとつは、太陽との引力が作用し、以前は他の惑星と同じ方向に回っていたものの、しだいに現在の方向に変わっていったという説です。
ちなみに自転の方向が逆なので、地球などとは異なり、太陽が西から昇って東に沈みます。また公転周期が約225日なのに対し、自転周期が約243日で、自転周期の方が長いところも特徴です。
2010年に打ち上げられた金星探査機「あかつき」のミッションのひとつに、自転の謎に迫ることがあります。他の7つの惑星とは逆の自転をしていることが単なる偶然ではないことがわかれば、宇宙科学の大きな進歩になるに違いありません。
金星が文字どおり黄金に輝いて見えるのは、表面を覆うぶ厚い雲が太陽の光を反射しているからです。太陽の光を反射しているので地表面の温度は低いことが想定されますが、実際の温度はなんと約460℃!とても人が住めるような環境ではありません。
この理由として大気の成分が挙げられます。
金星の大気は、二酸化炭素の割合が95%以上。二酸化炭素は温室効果に優れているので、太陽の熱が逃げず、地表面の温度が高温になるのです。温室効果によって昼と夜で温度の変化がほとんどないことも特徴で、平均温度は太陽に近い水星よりも高くなっています。
雲の主な成分は二酸化硫黄。雨が降ることを連想するかもしれませんが、硫酸となった水分はすぐに蒸発し、地表に届くことはありません。
また大気圧も高く、地球の90倍ほど。人間が装備をせずに行けば、そのままスクラップされてしまうでしょう。地球の兄弟とはいわれますが、生命が簡単に存在できるような環境ではないというわけです。
「スーパーローテーション」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは金星最大の謎ともいわれていて、大気の上部で自転速度を超えた速さで吹いている風のことをいいます。
その速度は自転の60倍ともいわれ、他の惑星の気象学では考えられない不思議な現象です。
なぜスーパーローテーションが起きているのか、はっきりしたことはわかっていませんが、太陽光で温められた面から太陽とは逆側の冷えている面へ大気が循環している、太陽の熱で大気が振動したことで重力波が生じている、「大気潮汐(たいきちょうせき)」という運動によるもの、などさまざまな説が唱えられています。
スーパーローテーションを含む金星の大気については、「惑星気象学」という学問の大きなテーマとなっています。今後の研究に期待が膨らみますね。
- 著者
- ["室井 恭子", "水谷 有宏"]
- 出版日
- 2017-08-08
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- 著者
- ホヴァート スヒリング
- 出版日
- 2016-02-15
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