私たちの住んでいる地球が属している太陽系の中心にあり、全天体の重量に影響を与えているといわれている「太陽」。今回はこの重要な恒星の基本情報から歴史まで、わかりやすく解説していきます。
水星や金星、地球などが属する太陽系の物理的中心は、恒星である太陽です。なんと太陽系に存在する全質量の99パーセント以上を占めていて、天体に大きな影響を与えています。
地球に生命が誕生したのも、この強大な光エネルギーが関係していると考えられています。直径はおよそ139万キロメートル。地球の直径はおよそ1万3000キロメートルなので、100倍以上です。また太陽系のなかでもっとも大きい木星と比べても、10倍ほどの差があります。
表面には黒点と呼ばれるシミがあり、この部分は温度が低く周囲よりも弱い光を放っているため、黒く見えます。
表面、黒点、中心部分と場所によって温度が大きく異なるのが特徴。表面は約6000度、黒点は約400度、中心部分は約1500万度にのぼります。
地球との距離は約1億5000万キロメートル。光速は秒速30万キロメートルなので、太陽の光は地球までおよそ500秒=8分20秒で届く計算です。つまり我々が浴びている光は8分20秒前に放たれた光だということになります。
太陽を構成している成分は、約70パーセントが水素、約25パーセントがヘリウムです。水素は大量に集まると重くなり、重力がかかると収縮する性質をもっています。
水素が収縮し圧力が上昇すると、温度が高くなり、中心部では核融合というエネルギー変換がおこなわれます。この時の中心温度は約1600万度、気圧は約2500億気圧のという超高気圧状態です。
核融合が起こると、大量の水素はヘリウムに変換され、1秒間に約430万トンもの重量を減らしていきます。それと同時に膨大なエネルギーを作り出すのです。
太陽が46億年以上もエネルギーを保ちながら存在していられるのは、この核融合が絶え間なく、そして効率よくおこなわれているからだと考えられています。
ただこの強大なエネルギーは、およそ20億分の1しか地球に届いていません。それでも地球が無数の生命を維持できているのは、二酸化炭素や窒素、海が存在するおかげで温暖な気候を維持できているから。地球に届いたエネルギーは約45パーセントが地表に、約20パーセントは大気に吸収され、残りは宇宙に反射されています。
誕生のきっかけは、とある恒星が起こした超大規模な「超新星爆発」です。
超新星爆発とは、恒星が一生を終える時に起こす爆発のこと。この際の波動で水素ガスや宇宙塵が大きく揺れ動き、密度を増していきました。時間をかけることによってさらに高密度になり、やがて「原始星」(誕生したばかりの恒星のこと)へと姿を変えたのです。
先述したとおり主成分は水素とヘリウムですが、1パーセント未満の割合で炭素・酸素・鉄なども含まれていることがわかっています。このことから太陽は、超新星爆発を起こして姿を消した恒星の生まれ変わりである可能性も指摘されているのです。
太陽について調べる時に頻出する2つの言葉について、ご説明しましょう。
黒点
黒点とは、太陽の表面に存在する黒い斑点模様のこと。回転の微妙なズレによって生じる磁場が原因でできたと考えられています。実際はこの部分も光を放っているのですが、周りよりも弱いため、観測すると黒く見えているのです。
太陽フレア
太陽の表面で起きる爆発現象のことです。小規模なものは1日に3回ほど起きていて、そのほとんどが黒点付近で発生しています。
大規模な太陽フレアが起きると大量の電気を帯びたガスが噴出されるため、磁場が乱れて人工衛星のトラブルや通信障害が起きるなど、地球にも影響をおよぼす可能性があります。
太陽の光を直接見るとくしゃみが出るのは、「光くしゃみ反射」というれっきとした現象です。
光刺激が原因となり、まぶしさを感じると反射的にくしゃみが出てしまうもの。太陽の光だけでなく、暗い部屋から外に出た時や、蛍光灯の明かりなどで起こることもあります。ただどのようなメカニズムになっているのかは、解明されていません。
優性遺伝で伝えられるもので、日本人では25パーセントの人にこの現象がみられます。どれくらいの光でくしゃみが出るかは個人差がありますが、脳が眩しさを感じているほんの短い間だけ起こるので、連続して何度もくしゃみが出ることはないようです。
- 著者
- 宮原 ひろ子
- 出版日
- 2014-08-18
本書は地球の過去・現在・未来を、太陽活動や宇宙気候学の最前線から読み解いた一冊です。いまだ解明されていない謎を考察しながら、地球に与える影響について考えます。 太陽と地球の関係性を掘り下げられる、興味深い内容でしょう。
太陽はどんな星なのか、黒点とは何なのかというった基本的な情報から、宇宙の転機やオーロラの発生原理など興味深いトピックが取り上げられています。太陽フレアの規模と宇宙天気災害の関係性などを知ると、いかに影響力の大きい星なのかを実感できるはずです。
幅広い分野の内容をカバーしていますが、平易でかみ砕かれた文章なので素人でも大丈夫。太陽活動という視点で宇宙や地球を眺めて見たい人に、ぜひおすすめしたい良書です。
- 著者
- 柴田 一成
- 出版日
- 2016-01-23
作者の柴田一成は、太陽宇宙プラズマ物理学を専門とする研究者で、第一人者といわれている人物です。本書ではそんな彼が、宇宙の不思議や宇宙をめぐる人々の物語について解説しています。
本書の魅力は、数式などを一切使わずに、広大なスケールの宇宙の解説をしているところ。そして宇宙について知れば知るほど、これまで遠くに感じていた存在がぐんと身近になっていくのです。それはまるで、静的な宇宙が動的になり、神秘性を増していくようでもあります。読者はページをめくるたびに、新たな発見に出会えることでしょう。
「月の裏側には宇宙人の基地がある」「太陽が生まれるきっかけとなった超新星爆発の大発見に、大きな貢献をしたのは日本人アマチュア天文学者」など、気にならずにはいられないトピックにも惹きつけられます。
まるで作者に宇宙旅行の案内をされているかのような高揚感を味わえる一冊。宇宙に少しでも興味のある人は、ぜひ手に取ってみてください。