『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に登場する岸部露伴は、スピンオフの主人公になるほど大人気のキャラクターです。変人漫画家がどうしてこれほど人気なのか?その魅力をご紹介しましょう。 岸辺露伴が登場する『ジョジョの奇妙な冒険』は下のボタンのアプリから読むことができます。
『ジョジョの奇妙な冒険』第4部「ダイヤモンドは砕けない」は、奇妙な隣人との奇妙な日常、そこに潜む恐怖を描いた、「ジョジョ」シリーズでも異色の物語です。
岸部露伴はその登場人物の1人で、4部を代表する濃いキャラクターとして有名です。田舎にひっそりと住む偏屈な漫画家として登場した直後、とてつもないインパクトを読者に与えました。
カラーで描かれる時にはビビッドな口紅であることが多く、いろいろな意味で記憶に残ります。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1993-11-01
1979年生まれ、弱冠20歳にして大ヒット作品『ピンクダークの少年』を抱える超売れっ子漫画家の岸辺露伴。東方仗助(185cm)と並ぶと一回り小さいほどなので身長は175cm前後でしょう。漫画を描くシーンやメモを取る様子からすると利き手は右ですが、左手でもなんなく描いてしまいそうな凄みがあります。
スタンドは、線を描いて発動させる「ヘブンズ・ドアー(天国への扉)」。対象は知的生物(?)に限り、その記憶を本のように読み出したり、書き加えて支配することが可能です。
1人称は「ぼく」。一見すると丁寧な物腰ですが、ともすれば慇懃無礼に振る舞います。誰が相手でも物怖じせず、ズバズバ言うのは見ていて痛快な反面、彼の欠点でもありますが。
その漫画への飽くなき姿勢から、露伴のモデルは作者の荒木飛呂彦ではないかとも言われています。実際に似た点はありますが、これは荒木の「漫画家としての理想像」を彼に反映したためです。ちなみにインタビュー風のプロフィールによると、露伴が尊敬する漫画家はこせきこうじということになっています。どうやら適当に答えたようですが。
愛車は日産300ZX。バイクも乗るので、案外スポーティな趣味をしています。
テレビアニメ版の声優は櫻井孝宏が勤めました。
第4部ダイヤモンドは砕けないについては<『ジョジョの奇妙な冒険』4部ダイヤモンドは砕けないの魅力をネタバレ紹介>で紹介しています。あわせてご覧ください。
岸部露伴のビジュアルで特徴的なのは、常に額に巻いているヘアバンドでしょう。奇妙な美意識を感じさせるそれは、ペン先型のイヤリングなどとあわせて彼のトレードマークとなっています。
「ジョジョ」は荒木の独特のファッションデザインも人気なため、アパレル商品もいくつか発売されています。なんとその中に、露伴のギザギザヘアバンドとペン型イヤリングもあるのです。ヘアバンドの日常使いは難しいですが、イヤリングならちょっとしたアクセントにいいかも知れませんね。
他にも彼をイメージして作られたネクタイや、高級陶磁器ノリタケとコラボしたティーカップなども発売されています。
また後述する『岸辺露伴は動かない』のアニメ版発売を記念して、コラボカフェも企画されています。露伴も食べた同作の再現料理や、劇中シーンをイメージしたスイーツなど盛りだくさんです。
岸部露伴を案内役にしたスピンオフ『岸部露伴は動かない』にて、彼のオリジナル体操が披露されています。収録作では1番と2番が明かされました。
まず掌を上に向けて体と並行になるようにしてバンザイの姿勢を取ります。手首と手は直角を意識。
そこから息を吐きながら手を正面へ。この時の指の向きは上です。手首は直角を保ったままで肘も真っ直ぐ。そして両手の親指から順に折っていき、次は同じように開きます。
しばし静止してから、脱力して首と手首を回して終了。
体操の2番では、折る指の順番をずらします(右親指、右人差し指と左親指……)。
これが結構効くのです。おそらく荒木本人が実践している方法なのでしょう。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
「『リアリティ』こそが作品に生命を吹き込むエネルギーであり
『リアリティ』こそがエンターテイメントなのさ」
(『ジョジョの奇妙な冒険』34巻より引用)
4部で初登場した岸部露伴は、漫画の面白さをこう表現しました。すでにある程度の成功を収めているだけあって、説得力のある言葉です。
フィクションであるかどうかに関わらず、いやむしろフィクションだからこそ、「たかが作り話」と馬鹿にされないだけの真に迫ったリアリティが必要なのでしょう。その迫力が読者に訴えかけて、感動へと変わるのです。
そしてその後、彼は衝撃の行動に出ます。
「味もみておこう」
(『ジョジョの奇妙な冒険』34巻より引用)
蜘蛛の表現のリアリティのために、蜘蛛を解体し、あまつさえ舐めて味もみてみたのです。これで一風変わったリアリティを持たせることが出来ると。
執念や信条はともかく、やってることは奇人……。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1995-03-01
岸部露伴は頑固ですが、約束を守る男です。
41巻で金銭に困っていた仗助から、チンチロリン勝負を挑まれた時も、怪しいと感じつつも賭けを請け負いました。イカサマを暴いてやろうという魂胆でした。
そして仗助は堂々とイカサマします。しかし、このカラクリが露伴にはわかりません。チンチロリンの出目は最早問題ではなく、どうやって暴くか、どうやって隠し通すかの勝負に移行していきます。
たかがサイコロを振るだけの賭博で、滅茶苦茶盛り上がるのです。
仗助について紹介した<東方仗助の13の魅力!髪型にこだわる変人だけど善人!?【ジョジョ4部】>の記事もおすすめです。
某日夕方、M県S市杜王町の住宅地、勾当台2丁目の住宅で火災が起きていると通報がありました。住民は1人暮らしをしている漫画家の岸部露伴(20)で、怪我人などは出ませんでした。
自宅に置いてあった虫眼鏡が出火の原因と見られています。岸部邸は半焼し、被害額はおよそ700万円に上るものとされています。
このように新聞に書かれたかは不明ですが、これは前述した露伴と仗助のチンチロリン対決、その最中に起こった不幸な出来事の結果です。火事に気付かないほど白熱していたわけです。
岸部露伴は非常に癖のある人物。同時に茶目っ気も持ち合わせており、それが大変な結果を生むことも多々あります。
自宅炎上後、彼は1級建築士の乙雅三(きのとまさぞう)に改修見積もりを依頼しました。が、この乙が相当に奇妙な男で、なぜか背中を見せようとしません。ヘブンズ・ドアーでも理由は不明でした。彼は悪戯心を出して、スタンドを使うことなく、この男の背後を取ってみました。
すると乙はミイラのようになって死にました。彼は無自覚なスタンド使いで、そのスタンドである「チープ・トリック」は背中を見た人物=露伴に取り憑いたのです。
背中を誰かに見られると、取り憑かれた人物は死ぬ。まさに好奇心は猫を殺す。かくして彼とチープ・トリックの根比べが始まりました。
4部の物語は終盤、ラスボスである吉良吉影が、時間を巻き戻す能力「バイツァ・ダスト」に目覚めました。作中で露伴は吉良に限りなく迫り、バイツァ・ダストの犠牲者となりました。
バイツァ・ダストには吉良の正体に迫った者を爆殺し、時を1時間戻す効果があります。そしてその餌食になった者は、前の時間軸と同じタイミングで必ず死ぬ運命となります。ここにこの能力の不都合な点があるのです。
バイツァ・ダストは起動すると必ず時間逆行し、対象が生きている時間まで戻ってしまいます。
もしも時間が戻った後、対象が死ぬ前にバイツァ・ダストを解除することが出来れば、能力は無効化されるのです。従って爆殺された者が死ぬこともなくなります。
劇中では川尻早人が洞察力と機転を駆使して解除に成功、露伴や承太郎らのピンチを救ったのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 2011-05-27
スピンオフ作品『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の見所……それはずばり、岸部露伴のロマンスです。
頑固者の彼はロマンスとはおよそかけ離れていて、例えるなら露伴と仗助、もとい水と油。色恋とは最も縁遠い人間に思えます。しかし、やはり本作の根底に流れているのはロマンスなのです。
タイトル通り、主人公は露伴です。4部でお馴染みの仗助や康一、億泰も出てきますがあくまで脇役。彼ら3人の発言をきっかけに、露伴がルーヴル美術館へ行くというのが大筋の物語です。そこに保管されているという「この世で最も黒い邪悪な絵」を巡って、今まで明かされなかった彼の過去と、人間関係が明かされていきます。
本作はフランスのバンドデシネプロジェクトの一環として、漫画家荒木飛呂彦とルーヴル美術館のコラボが結実したものです。全編フルカラーの異色作。後述する『岸部露伴は動かない』とも少し違ったテイストは、ここでしか味わえません。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 2013-11-19
フルカラーのドアップで描かれた露伴が目印の連作短編『岸部露伴は動かない』。
なぜかこの表紙の露伴はオッドアイになっていますが、これはおそらく目の色の微妙な差異=「ジョジョ」本編との違いを表しているのではないでしょうか。あるいは、作中の中で露伴が話に食いつく場面が多々出てくるので、ネタを前に「目の色を変える」ということかも知れません。
この『岸辺露伴は動かない』の連載は不定期で、発表媒体もバラバラでした。なんとジャンプ本誌だけでなく青年誌、ウェブ媒体のコミック誌や、なんと少女漫画誌である「別冊マーガレット」にも掲載されたのです。
掲載誌が色取り取りなら、内容も雑多。露伴が観察者の視点で本場の懺悔、妖怪の取材、富豪の奇妙な慣習をとうもろこしで切り抜けたかと思えば、杜王町沿岸の特産クロアワビの密漁に勤しみます。
大失敗して破産する彼の姿を拝めるのは『岸辺露伴は動かない』だけです!
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1995-01-01
露伴は独自の理論と価値観で生きるキャラクターなので、作中ではその分だけ面白い発言をしています。どれも甲乙付けがたいですが、強いて言えば、という順番でご紹介しましょう。
第5位:
「味もみておこう」(『ジョジョの奇妙な冒険』34巻より引用)
2度目の紹介になりますが、やはりこの台詞は名言から外せません。突拍子もないことをする奇人のイメージが、初登場時点で確立されました。
第4位:
「この岸辺露伴が
金やちやほやされるために
マンガを描いてると思っていたのかァ―――――ッ!!」
(『ジョジョの奇妙な冒険』34巻より引用)
広瀬康一からスタンドで他人の記憶を読むぜひを問われ、返したのがこの言葉でした。露伴の飽くなき探究心は、全て創作意欲に直結していることがわかります。重要なのは金銭ではなく、ただ描いて読者に読んでもらう、そのサイクルのためだけに漫画家を続けているという変人エピソード。
第3位:
「いい話だなあ~~~~。
それに……実にスゴイ体験させてもらったよ
うれしいなあ~~
こんな体験……めったにできるもんじゃあないよ。
これを作品に生かせれば……
グフフフ……と……得したなあ……
杜王町に引っ越しして来てよかったなあ~……」
(『ジョジョの奇妙な冒険』35巻より引用)
康一の記憶を奪った結果、露伴は仗助に察知されてぶちのめされたのですが、その直後にこう宣いました。懲りない男、岸部露伴を印象付けた名言です。なんでも糧にし、バネにする、という見方に変えれば尊敬出来なくもないでしょう。
第2位:
「だが断る
この岸辺露伴が最も好きな事のひとつは
自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやることだ…」
(『ジョジョの奇妙な冒険』41巻より引用)
露伴の代名詞的名言。トンネル内の奇妙な小部屋を調査していた彼が、謎の襲撃者によってピンチに陥り、仲間を売るよう持ちかけられた時の返事です。反骨心を褒めるべきか、へそ曲がりと評価すべきか……。
第1位:
「いいかい!
もっとも『むずかしい事』は!
『自分を乗り越える事』さ!
ぼくは自分の『運』をこれから乗り越える!!」
(『ジョジョの奇妙な冒険』40巻より引用)
大柳賢との白熱したジャンケンバトルで見せた、露伴の決意。物凄く気合いが入ったいい言葉なのですが、やってることはジャンケン勝負というギャップが凄いです。逆に言うと、ジャンケンをここまで大げさに、そして面白く描けるのも荒木飛呂彦だけでしょう。
いかがでしたか?岸部露伴は深い付き合いをするには厄介、友達にしても面倒ですが、見ている分には飽きない魅力的な男です。