飼育グッズも充実しており、その飼いやすさからペットとしても人気のあるヤドカリ。貝殻からひょっこり出ている目玉やハサミが可愛いですよね。この記事では彼らの生態や種類、飼育方法、引越しにまつわる秘密、イソギンチャクとの関係などをわかりやすく解説していきます。あわせてもっと彼らの魅力がわかるおすすめの関連本も紹介するので、最後までチェックしてみてください。
十脚目ヤドカリ上科に分類される甲殻類です。巻貝の貝殻を背負って生活しています。
体は頭胸部と腹部に分かれていて、頭胸部は固い殻で覆われています。腹部は常に貝殻の中にあるためや若く、形状に合わせて形を変化させることができるそう。巻貝の9割が右巻きであることから、彼らの腹部も右巻きのらせん状になっています。
腹部の末端にある尾肢や脚の先端には、ヤスリのように細かい凹凸が付いており、これによって貝殻を落とさずに移動することが可能です。
雑食性で、ハサミで器用に千切りながら海藻から魚の死骸まで何でも食べます。波に乗って流れてくる生物の死骸や細かなゴミも食べるので「海の掃除屋」とも呼ばれており、また餌を選ばないことから海水のあるところであればどんな環境にも適応して生きていける強みがあります。
寿命も長く、平均でも10~20年。なかには30年以上生きた個体もいるようです。
日本に生息するヤドカリは200種ほどいると考えられています。なかでも飼育に向いている種の筆頭として、本州から九州の広い範囲に生息していて、磯で簡単に採取できるホンヤドカリが挙げられるでしょう。体長は1cmほどです。
また5cmほどあるやや大型のソメンヤドカリは、ペットショップなどで購入することが可能です。自分よりも小さな種を捕食する可能性があるので、飼育をする場合は同じ水槽にいれないようにしましょう。
ちなみに主に陸上で生活するオカヤドカリも家庭での飼育に適していますが、国の天然記念物に指定されているため個人での採取は禁止されています。
実際にヤドカリをペットとして飼育をする際は、水槽の片側に多めに砂利を敷き、陸地ができるように調整してあげましょう。底面フィルターとエアーポンプを設置し、隠れるための割れた植木鉢や、引越し用の貝殻なども一緒に入れてあげてください。
最初は採取した時に汲んできた海水を水槽に入れるのがおすすめ。その後は月に1回ほど、海水の素で作った人工水と取り替えるようにしましょう。
雑食性なので何でも食べますが、おすすめの餌はアサリの中身やしらすを細かく切ったもの、金魚やザリガニの餌など。1日に1回、少量でかまいません。同じものが続くと栄養バランスが偏るので、いろいろな種類をローテーションさせながら与えるのがよいでしょう。
昆虫同様に「外骨格」という皮膚に付属されるように形成されている骨格を持っています。成長して体が大きくなると窮屈になった外皮を脱ぎ、これをくり返すことで成長していくのです。
脱皮が終わると体が一回り大きくなるので、住処にしていた貝殻も引っ越す必要があります。
空っぽの巻貝を見つけると、大きさが自分にあっているか、壊れていないかなどを脚やハサミを使ってチェックし、問題がないようであれば中に入っている小石や砂利を取り出して掃除をはじめます。
やがて綺麗になると、古い巻貝から尾を引き抜いて遂にお引越し。引越し後も腹部を使って殻の内部に問題がないか丁寧に調べ、新居の最終チェックをします。
ここまで慎重なのは、彼らにとって住処である巻貝選びが非常に重要なことだから。サイズがあわないと成長が阻害され、また外敵に襲われた際も全身を隠すことができません。
貝殻の破損や劣化で引越しをすることも多いのですが、彼らの需要に比べて適したものは少ないのが常。自分の体に合った大きさの貝殻で生活をできているのは、全体の30%ほどしかいないともいわれているのです。
そのため魅力的な貝殻を背負った他の個体を見つけると、相手の殻につかまって殻同士を何度もぶつけ合い、乗っ取ろうとします。取られた側は、相手が置いていった貝殻に入って生活。こうして住処の交換をくり返すことで、自分に合うサイズの貝殻を探していると考えられています。
多くの野生のヤドカリは、背中の巻貝にイソギンチャクを付けて生活をします。日本でその姿がよく見られるのは、サンゴ礁の海に棲むソメンヤドカリ。
イソギンチャクの触手には刺胞という刺針と、毒液を内包したカプセルが多数付いており、ヤドカリの天敵であるタコやイソダイなどが、この毒を恐れて近づかなくなるのです。
一方でイソギンチャクにとっても、単独では進出できない場所に行けるメリットがあります。そのため、ソメンヤドカリが貝殻を移る際には、イソギンチャクも同時に引越し。新しい殻に移動した後のヤドカリがハサミでイソギンチャクを刺激して、古い殻から剥がします。
イソギンチャクの吸引力はかなり強力で、人間が無理に剥がそうとすると体が千切れてしまうのですが、不思議なことにソメンヤドカリの手にかかるといとも簡単に殻から外れるのです。剥がれたイソギンチャクをハサミで抱えあげて新しい殻に移し、引越しが完了になります。
生きることが苦しい、何のために生きているの……?
悩みを背負ったヤドカリが海の中を漂いながら答えを探す物語です。子供の心の力を育むことを目的とする、「子供のレジリエンス研究会」から発表されています。
- 著者
- 石歌庵
- 出版日
- 2018-04-27
何のために生きているのか、という普遍的で答えのない問いをさまざまな生物に投げかけるヤドカリ。詩的で哲学的な内容ながら、素朴なタッチの絵と合わさることで親しみやすい一冊に仕上がっています。
主人公の名前を自分で決めて書き込めるようになっていたり、ローカンやデトリタスといった造語に意味を与えたり、物語の分岐点に空白のページを設けて、別の結末を読者自身で描く余地を残したり……と参加型の要素が多いのも特徴です。
ひとつの悩みを消化しても、また新たな困難にぶつかる日が来ることを暗示するかのようなラストですが、主人公の表情は明るく、元気をもらえる作品でしょう。
日本国内で見ることができるヤドカリ200種の特徴を、写真とイラストを用いて紹介した図鑑です。
色とりどりの彼らの姿は、ぱらぱらとページをめくるだけでも楽しめるでしょう。
- 著者
- 有馬 啓人
- 出版日
- 2014-05-23
生息地域や生息水深もアイコンでわかりやすく紹介されているので、磯遊びやダイビングをする際のガイドブックとして活用するのにも最適です。
浅瀬や砂浜に暮らしているイメージが強いですが、実は水深200mの深海に生息する種もいたり、巻貝ではなく平らな二枚貝に挟まっている種がいたりと、その多様さに驚かさされるでしょう。
タラバガニがカニではなくヤドカリの近種である、など意外な情報が載ったコラムも面白く、また巻末には上手に撮影するテクニックも載っている、盛りだくさんの一冊です。
暢気に暮らしているように見えて、実は住宅難に悩んでいる一面があるヤドカリ。2017年にはサンゴの中に棲むことで引越しをせずに生きていく新種も発見されました。今後のも研究が進んでいくのが楽しみですね。