長く続く『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズで、複数の部に跨がって特異な存在感を放つキャラがいます。その名はジョセフ・ジョースター。今回はこのトリッキーなキャラの魅力についてご紹介したいと思います。 ジョセフ・ジョースターが登場する『ジョジョの奇妙な冒険』は下のボタンのアプリから読むことができます。
1部主人公ジョナサンとバトンタッチする形で2部の主人公になったのが、その孫であるジョセフ・ジョースターです。
彼は生まれついての波紋使いで、運命的に戦いの場へと導かれていきます。2部の後、3部、4部でも主要人物として登場しました。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1988-08-01
ジョセフはジョージ・ジョースター2世とリサリサ(エリザベス)の息子として生まれました。誕生日は1920年9月27日。2部の時点での年齢は18歳です。イギリス出身ですが、後にアメリカへ移住しています。
身長195cm、体重97kgのB型。癖毛のような髪型を除けば瞳の色も祖父譲りの碧眼で、全体的な容姿はジョナサンによく似ていますが、性格や言動はまったく違います。紳士とは縁遠く、気性の荒さがあり、目的のために手段を選びません。しかし、その勇気と利他的行動はやはりジョースターの血筋。1人称は「おれ」、年を取ってからは「わし」です。
知略と心理戦に長けており、口癖のように相手を手玉に取って「次は○○と言う」と宣言します。
利き手はおそらく右。2部の最終決戦で片手を失い、左手が義手になっています。
テレビアニメ版の声優は、『銀魂』の坂田銀時役で有名な杉田智和です。
ジョセフが主人公の2部を振り返りたい方は<漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第2部「戦闘潮流」が実は面白い!ネタバレ解説>の記事がおすすめです。
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ジョセフの面白いところは、ジョナサンと違って軽口は叩くし、嘘もつき、平気で逃げようともするヒーローらしからぬところです。しかも、そういうほとんどの行動は計算の上で、敵を罠にはめる算段を常にしているしたたかさがあります。全編に渉ってトリッキーな行動と、相手を煙に巻く言動で活躍しました。
それらはすべて生まれ持った特性らしく、本人は優秀な才能があるのに努力が大嫌いというのが、やっぱり面白いです。
「オー! ノーッ
おれの嫌いな言葉は1番が『努力』で、
2番目が『ガンバル』なんだぜーッ」
(『ジョジョの奇妙な冒険』8巻より引用)
ジョセフと言えば、お調子者の他にトラブルメーカーの一面を挙げることが出来ます。
特に乗り物関係のトラブルが非常に多いです。搭乗した飛行機はことごとく墜落し、ヘリコプターは襲われ、船も潜水艦も沈みました。
孫の承太郎には正面切って、(飛行機に)2度と一緒に乗らない、などと言わしめるほど。ジョセフ自身が乗り物の疫病神と言ってもいいでしょう。
ジョセフが主に活躍するのは2部「戦闘潮流」での主人公としてです。前述したように、ジョナサンとは違った新世代のヒーロー像を感じさせる新鮮なキャラとして登場しました。
古代遺跡から発掘された、吸血鬼に変わる新たな敵、波紋と因縁の深い「柱の男」達。目覚めた彼らに1ヶ月で致死毒が回る「死のウェディングリング」を埋め込まれたジョセフは、波紋の師リサリサを頼りに修行を行って成長していきます。そして彼らは「エイジャの赤石」を巡る決戦に挑んでいくことになります。
「死のウェディングリング」によって死が宣告されたジョセフは、波紋の力を高めるためにヴェネツィアにいるリサリサに師事します。そしてそこで、兄弟子シーザー・アントニオ・ツェペリと出会いました。
伊達男シーザーとジョセフは性格の不一致から当初いがみ合っていましたが、修行を通じて心が通い合い、互いに高め合って親友となりました。
ところがその矢先、先走ったシーザーが単独で「柱の男」ワムウに挑み、壮絶な死を迎えてしまいます。敵であるワムウが敬意を払うほどの死に様でした。シーザーは最期にジョセフに希望を託して息絶え、彼は熱く慟哭するのです。そのシーンはシリーズでも屈指の名場面です。
物語の佳境に至り、ついに動き出した「柱の男」エシディシ。彼らの欲するエイジャの赤石のために、修行中だったジョセフ達の下へ乗り込んで来ました。
修行の仕上げに模擬戦するはずのロギンズ師範代を殺され、ジョセフは怒り心頭。針山のごとき闘技場でエシディシとの戦いに入ります。ここでは一見正面から戦っているようですが、しっかり罠を張っている辺りがさすがジョセフ。
炎を操る「怪焔王」のエシディシに対して、いつになく熱血な彼が見物です。
ジョセフとワムウは都合2回戦うことになります。1度目はジョセフの大敗。
2度目の戦いは昔ながらの馬が引く戦車に乗って、レース形式の戦闘です。レースと言っても、攻撃妨害なんでもあり。武器が支給されるのですが、ジョセフの武器の使い方とワムウの行動が注目ポイント。
最終的に肉弾戦に突入し、強くなったとはいえ、地力の差でどんどんジョセフが追い詰められていきます。そこで決定打となる逆転の一手!
命を振り絞った決戦の後には、男の友情が残りました。ジョセフにとってワムウは親友に仇敵にも関わらず、尊敬に値する相手となったのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
3部では打って変わって、経験豊富な先達として登場。ジョースター家因縁の敵であるDIOの居場所を示し、主人公一行を決戦の場へと誘います。
69歳ですが、もちろん戦士としても健在。軽口とジョークで敵スタンド使いを翻弄する手腕は、ジョセフの存在感を存分に感じさせました。シリアスになりがちな旅の道中、ポルナレフと並ぶコメディリリーフ要員にも。
3部「スターダストクルセイダース」については<『ジョジョの奇妙な冒険』3部スターダストクルセイダースの魅力をネタバレ!>の記事で紹介しています。
ジョセフはジョナサンの才能を受け継ぎ、生まれつき波紋を体得していた男です。それがリサリサの下で修行に励んでパワーアップ。3部ではジョナサンの肉体を乗っ取ったDIOとの、肉親の繋がりからスタンドにも開眼します。「ジョジョ」シリーズを通して、波紋とスタンドをどちらも使えるのはジョセフだけです。
ジョナサンの使っていた波紋技はどれも使えますが、最大の違いはジョナサンにはない発想力にあります。ジョセフはジョナサンと違って正々堂々にこだわらず、奇策や奇襲、武器から環境に至るまでなんでも使いこなします。知略こそジョナサンの力です。
そして老境に至ってスタンド「隠者の紫(ハーミット・パープル)」を体得。遠隔地の念写と、自在に伸ばせるイバラを鞭や触手のように扱います。派手さはありませんが、攻防に便利な燻し銀の能力。
ジョセフは3部の最終決戦時、DIOがパワーアップするために吸血されてしまいました。後に承太郎は、瀕死のジョセフにDIOから血液を輸血し、蘇らせることに成功します。
ここで疑問なのは、吸血鬼の体内に流れている血で、どうして吸血鬼にならなかったのか? という点です。
いくつか可能性が考えられますが、1部のディオがヒントを言っていました。「吸血鬼のエキス」なるものを循環交換して吸血鬼化させる、という発言があったのです。
虫の蚊は吸血時、吸血と同時に唾液を送り込むことでかゆみを発生させています。それと同様、ディオも吸血する時にエキスを送り込んでいたのでしょう。そのため、直接血液を輸血したジョセフが吸血鬼化することはなかったのです。
ただ、そうすると血を分けられて吸血鬼になったヴァニラ・アイスと矛盾します。おそらく、吸血鬼が吸血鬼化させる意志を持って、吸血するか血を与えると対象が変貌するということなのではないでしょうか。
2部の後、ジョセフはスージーQと結婚してニューヨークに移り住んで富を築き、不動産王となりました。
何不自由なく暮らす彼は、本来なら波紋の呼吸法でいつまでも若さを保てるのですが、愛妻スージーQと老いる道を選択して、後の部では加齢した状態で登場します。それがまたなんとも渋い。言動はジョセフそのままなのでやや残念ですが、まさしくナイスミドルと言った容貌です。
妻一筋で愛娘ホリィを溺愛する家庭人……と思いきや、4部でまさかの不倫発覚。数十歳年下の東方朋子との間に、仗助という隠し子がいることがわかりました。また彼はその4部において、両親不明でスタンドが暴走状態の赤ん坊を拾い、「静」と名付けて養子に迎え入れました。
79歳にして突然乳児の父になったジョセフ。そのせいか、4部登場当初はボケ気味でしたが多少しっかりしてきたようです。
4部ダイヤモンドは砕けないについては<『ジョジョの奇妙な冒険』4部ダイヤモンドは砕けないの魅力をネタバレ紹介>の記事で紹介しています。
ジョセフは複数の部に跨がって、主要な活躍を見せました。その中には、かなり際どいシーンも少なくありません。
たとえば、前述した死のウェディングリング。30日経過すると即死してしまう劇薬を仕込まれました。
あるいは、飛行機で何度も墜落したこと。乗船した船が沈んだこともありました。また他にも、4部では赤ん坊救出のために決死の出血シーンも。しぶとく生き残ったものの、いずれも一歩間違えば死んでいた出来事ばかりです。
そんなジョセフは4部の時点で79歳。5部以降は登場もないため、死亡説が浮上しました。ですが、6部のあとがきにて作者から生存が明言されました。彼はやっぱりしぶとく生き残っているのです。
ジョセフは文字通り歴戦の猛者です。4部での活躍は戦闘ではなかったものの、その精神力やスタンドパワーに衰えはありませんでした。
主に2部と3部での戦いになりますが、彼の戦績は通算で15勝5敗1分けです。
特に3部では69歳と還暦を超えてなお、現役時代さながらに単独で敵と渡り合い、勝利を収めているところは歴戦の経験が感じられます。
承太郎も長く活躍するキャラでしたが、意外にも3部以外で単独勝利を飾ったことがないため(敵から最も警戒対象されていたということもありますが)、やはりジョセフの凄さが際立ちます。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1989-06-01
ジョセフは登場回数が多く、何かと印象的な台詞も多いキャラです。出来れば全てご紹介したいところですが、2部~4部の中から選りすぐった名言5選をお送りしたいと思います。
第5位:
「オーノーだズラ
おめえもうだめズラ。
逆にお仕置されちまったズラ
波紋を流されてしまったズラ」
(『ジョジョの奇妙な冒険』10巻より引用)
奇妙な田舎言葉を使う敵、鋼線のベックに対しての台詞です。ベックは見かけ倒しの雑魚敵で、すでにやられていることに気付いてない彼に口癖を真似てこう言いました。ジョセフのお調子者の一面。
第4位:
「この杜王町の今回の事件に関わる仗助たちを見ていて……
ひとつだけ言える事を見つけたよ
この町の若者は『黄金の精神』を持っているという事をのォ」
(『ジョジョの奇妙な冒険』47巻より引用)
4部ラスボス戦を終えて、杜王町には一時の平和が戻りました。しかし、まだ見ぬスタンド使いがいることを危惧する承太郎へ、ジョセフはこう言ったのです。2人が街を離れても、杜王町の人々が自分達でなんとか出来ると。
第3位:
「『相手が勝ち誇ったとき、そいつはすでに敗北している』
これがジョセフ・ジョースターのやり方。
老いてますます健在というところかな」
(『ジョジョの奇妙な冒険』16巻より引用)
対象の肉体と融合し、搦め手で襲ってきたネーナの「女帝(エンプレス)」を下した時の台詞です。波紋もスタンドも有効手段にはならず、ジョセフは機転を利かせて切り抜けました。知略家ジョセフここにあり。
第2位:
「シィィザ──────────ァァァッ」
(『ジョジョの奇妙な冒険』10巻より引用)
2部の中心である「柱の男」との決戦。一足早く、単独で挑んだ盟友シーザーが無惨にもやられたことを知り、その高潔な精神に慟哭したシーンです。シンプルゆえに感情が揺さぶられる叫びでした。
第1位:
「おまえの次のセリフは、
『なんでメリケンのことわかったんだこの野郎!』
という!」(『ジョジョの奇妙な冒険』5巻より引用)
粗暴な振る舞いのごろつきに対して、一歩も退かなかったジョセフの言葉。「次のセリフは~」は一手先読みする彼の常套句で、このシーンが初お披露目でした。彼がクレバーな男であることが感じられます。
いかがでしたか?「ジョジョ」らしい強いキャラなのに、どこか人間味のあるジョセフ。知れば知るほどその魅力の虜になっていくことでしょう。