ディザスター系の映画でもたびたび登場する「太陽フレア」。地球を滅亡させるほどの威力がある現象ですが、実はほぼ毎日発生しているのをご存知でしょうか。この記事では、決して他人事ではない太陽フレアについて、仕組み、黒点との関係、地球への影響などをわかりやすく解説していきます。あわせてもっと宇宙に興味をもてる本も紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
人類を含め、地球上の生物が快適に生きることができているのは、太陽が活発に「活動」をしているからです。太陽から地球に届く光は、明るさをもたらしているだけでなく、エネルギーにもなっています。
では、太陽の「活動」とはなんでしょうか。
地球から太陽までの距離は、約1億5000万km。かなり遠い場所に位置しているため、地上から太陽を見ても、ただ輝いているようにしか見えません。しかし近づいてみると、大規模な爆発があちこちで起こっているのです。
この爆発こそが太陽の活動。よく「燃えている」とも表現されますが、実際は核融合によって爆発しているのです。火炎(フレア)のように見えることから、「太陽フレア」と呼ばれるようになりました。
爆発の大きさは、1~10万km。生じるエネルギーは、水素爆弾が10万〜1億個並みと途轍もないものになっています。
太陽には「黒点」と呼ばれている場所があります。その名のとおり黒いほくろのように見えるこの部分、実際には光を放っていますが、周囲よりも温度が低いため黒く見えているのです。その差は約2000度ほど。
そして太陽フレアは、黒点付近でよく生じることがデータで確認されています。その理由として研究者は、黒点部分に強力な磁力が発生していることを挙げています。
磁力線が集まることでガスの運動を妨げ、温度が低くなっていると考えられている黒点。何らかの作用で磁場が乱れると、エネルギーが一気に周囲に伝わっていきます。そのため黒点付近で爆発が起きるとされているのです。
ちなみに小規模なものも含めると、黒点付近で太陽フレアはほぼ毎日のように発生しています。その都度電磁波やプラズマが飛び出していて、宇宙空間を移動して2~3日後には地球付近にも到達しているのです。
莫大なエネルギーを放っている太陽フレア。地球への影響はどのようなものがあるのでしょうか。
大規模な爆発が起こった際、そこから放出された電磁波やプラズマは地球まで届きます。しかしよほどのことがない限り、それらが人体に直接影響することはないと考えられています。
その理由として、地球には成層圏があるからです。成層圏は、紫外線や放射線など宇宙から降り注ぐ有害物質から地球を守るバリアのような役割をしています。
ただ、たとえば宇宙空間を飛行している人工衛星が影響を受けてトラブルを起こせば、通信障害が発生します。さまざまなデータが乱れてしまうほか、GPSが使えなくなれば飛行機の操縦も不可能。多くの電子機器に頼った生活をしている現代人にとっては、死活問題ではないでしょうか。
また磁場が乱れると、オーロラが発生します。通常はオゾンホールとよばれる成層圏の薄い場所、つまり南極などでしか観測することができませんが、激しい太陽フレアで成層圏を超えて太陽プラズマが内部に侵入してくると、日本でもオーロラが見られるようになるでしょう。
一見美しいですが、これは磁気嵐が到達している証拠です。磁気嵐は電力系統を破壊するだけの威力を持ち、過去にはカナダやアメリカで実際に大規模な停電を発生させています。
ものすごい破壊力をもつ太陽フレアですが、幸い人類が滅亡するレベルには現在のところ至っていません。しかし、今後も大丈夫かというと、そうとも言い切れないのです。
「スーパーフレア」という通常の太陽フレアの100倍以上のエネルギーを持つ爆発が起こり、強力な電磁波が地球を直撃する可能性があるといわれています。
1859年には、「キャリントン・フレア」と呼ばれるスーパーフレアが発生しました。膨大なプラズマが地球に到達して大規模な磁気嵐が起こり、電信用の鉄塔が火花を発したり、電源を落としている電報システムが受信をするなどの現象がみられたそうです。
この時と同じ規模の太陽フレアが起こった場合、ほとんどの人工衛星は破壊されてしまうだろうといわれています。研究によると、確率的には何百年、あるいは何千年に1度だと考えられていますが、自然の活動を確率論で語るのはナンセンスな一面もあるはずです。
もしも……を考えて常に技術を進歩させ、最大限リスクを補う努力が必要だといえるでしょう。
- 著者
- 宮原 ひろ子
- 出版日
- 2014-08-18
地球で「気候」というと、基本的には雲の内側の話。しかし雨の日でも雪の日でも、太陽は常に光を放っていて、その影響を地球は受け続けているのです。
雲の外側から太陽までも含め、宇宙空間で起きた現象が地球におよぼす気候変動を「宇宙気候学」といいます。
本書は、その宇宙気候学に沿って、太陽の活動と地球の関係を学ぶことができる一冊です。地球の気候変動は、地球自らが起こしていることではなく、ほぼ100%太陽が関わっているという事実を理解することができるでしょう。
これまでどのようなことが起きたのか、その歴史だけでなく、これからどのようなことが起こる可能性があるのか、地球に住む私たち人間がするべきことは何なのか、考えることができる作品です。
- 著者
- 柴田 一成
- 出版日
- 2016-01-23
太陽は地球を明るく照らしてくれる存在で、東の空から昇り、西の空に沈むもの……。間違いではありませんが、本書を読むとそんな単純な理解だけで終わっていたことがもったいなく思えてきます。
太陽フレアのスケールの大きさや、宇宙の活発な動きを知ると、空を見上げる気分も変わってくるでしょう。
作者の柴田一成は、太陽研究の第一人者。本書も主に太陽に関することが重点的に語られています。専門的な内容もあるものの、常にユニークさを忘れていないので飽きることはありません。話が脱線しても、後にそのエピソードを絡めた研究について述べられるなど構成も巧みで、楽しく読める一冊です。
さまざまな恵みをもたらしてくれている太陽ですが、そのあまりにも巨大なエネルギーゆえに、もしも暴走してしまったら……という妄想を抱いてしまいます。自然の優しさと脅威のもとで暮らしていることを自覚して生きていきたいですね。