BL界の逸材・ヨネダコウ先生による大人気連載『囀る鳥は羽ばたかない』は、数あるヤクザBLのなかでもひときわ光を放つ名作です。策謀渦巻く裏社会で生きる男たちの、傷だらけの物語を徹底的にご紹介します!ネタバレを含みますのでご注意ください。
真誠会若頭の矢代は、ドMで変態の淫乱といういわゆるビッチ受け。頭は切れるが股は緩く、周囲から「幹部の公衆便所」と囁かれる彼のもとに、付き人兼用心棒として刑務所上がりの百目鬼(どうめき)が現れます。普段は部下には手を出さない矢代ですが、なぜか百目鬼に惹かれていってしまいます。しかし、百目鬼はある理由により矢代の誘いに応えることができません。
傷ましい過去と自己矛盾を抱える矢代と、彼に心酔し愚直なまでに従う百目鬼。傷を抱えて生きる2人の、心揺さぶる激しくも切ない物語です。
- 著者
- ヨネダ コウ
- 出版日
- 2013-01-30
物語は、矢代の腐れ縁の友人で内科医の影山と、矢代が目をつけていたチンピラの久我が惹かれ合い、結ばれるところから始まります。その2人のキューピットとなった矢代ですが、彼には目的があったのです。
「影山がどうやって男に惚れ、どうやってモノにするのか」が見たい。実は、影山は矢代の初恋相手でした。そのような屈折した感情によっていつも自分を傷つけ、同時に自分を保ってきた矢代。そんな彼が、どうしてか惹かれてしまう男・百目鬼に出会います。
しかし百目鬼は、男として不能(ED)でした……!
百目鬼が不能になってしまった背景には、彼の家族にまつわる過去が関係しています。そしてその過去を知った矢代は百目鬼の妹に接触し、彼なりの手助けをしていきます。矢代にとっては興味本位だったのかもしれないけれど、百目鬼と妹は少なからず救われ、気持ちにも変化が生まれました。そしてまた矢代と百目鬼の関係性も、名前こそないものの少しずつカタチになっていくのです。
自分が孤独であることを悟っている矢代だからこそ、たとえ怒りであっても自分へ向けられる真っ直ぐな視線や感情を知らずのうちに求めてしまう。ドMで不憫で不器用な矢代の行動の意味、過去を知るほど切なくてたまらない1巻です。
矢代に救われた恩もあり、彼に心酔する百目鬼。矢代のことを綺麗だと言う彼の気持ちは、尊敬なのかそれとも……?
矢代が思いを寄せている相手・影山。そしてその恋人である久我。2人の存在を知り、自分の気持ちを自覚していく百目鬼ですが、その矢先に矢代が何者かに狙われてしまいます。裏社会で巻き起こる波乱の展開から目が離せない第2巻。
- 著者
- ヨネダ コウ
- 出版日
- 2013-11-01
過去のトラウマからEDになったものの、矢代への心酔が恋心に変化するにつれて勃ってしまいそうになる百目鬼。勃ってしまったら、セックスができるようになってしまったら、矢代に捨てられるのではないかという予感が彼にはありました。
さらに、矢代の初恋相手・影山とその恋人・久我の存在を知り、交流することで、自らの気持ちが明確になっていきます。どうして自分は矢代のもとから離れたくないのか、そばにいたいのか。百目鬼の気持ちに変化が生まれる一方で、人間を好きになる孤独とそれが「男」だという絶望を知る矢代は、当然百目鬼に対する自身の「何らかの」感情に目を背けようとしてしまうのです。自己完結することが防衛策。切なすぎます……。
そして矢代は何者かに狙われ、被弾してしまいます。命に別状はないものの、矢代の身体には不自由が残ってしまいました。付き人兼用心棒である百目鬼は、その責任から指を詰めることに……。俗にいうエンコ詰めです。実は元警官の百目鬼ですが、それはもうカタギの世界には戻れないことを意味しています。百目鬼は矢代の右腕として、彼と同じ世界でい生きていく覚悟を決めたのでした。
物語が大きく動き出し、ヤクザの世界にドップリはまっていく第2巻。しかしこれも序章にすぎません!
矢代を守るために変わる決意をした百目鬼と、その変化と自身の気持ちに戸惑う矢代。2人の関係は徐々に変わり始めていきます。
ヤクザモノの真骨頂・跡目を巡って内部抗争勃発!手に汗握る第3巻。
- 著者
- ヨネダ コウ
- 出版日
- 2015-06-01
組では会長が病気や老衰によって長くはないことから、矢代を拾った道心会若頭・三角がその跡目として有力視されました。それに伴い三角の可愛がる矢代に若頭の座が囁かれると、その成り上がりぶりをよく思わない者も存在します。そうした内部のいざこざによって矢代は命を狙われました。
この謀略は誰の描いた絵図なのか、はたまた踊らされているのは誰か?それぞれの思惑や過去が複雑にからみ合い、徐々にその絵図の容貌が明らかになっていきます。黒幕はいったい……?
矢代の右腕となることを誓った百目鬼は、矢代を守ることはできても彼の行動を制限することはできません。本当は誰にも触れさせたくない。誰のことも求めないでほしい。しかし自分には矢代の行動を止める資格がない。そんな百目鬼がまた辛いです。
一方で矢代は、自分の意志とは裏腹に百目鬼を試すようなことを言ったり無意識に彼を求めてしまったりと、変わっていく自分に戸惑います。普段飄々としていてクレバーな矢代が、身を焦がすような激情に身悶える姿がたまりません。
ますます今後の展開が気になる第3巻です。
謀略の全貌が明らかになるにつれて、事態も進展していきます。その渦中で、変わり始めた矢代と百目鬼の関係性を揺るがす事態が。
疑似家族的なつながりの持つ熱量と、それが引き起こす悲劇に気をもむ第4巻です。
- 著者
- ヨネダ コウ
- 出版日
- 2016-09-30
家族も好きな人も、初めから何も持っていなかった矢代。だからこそ今手にした、自分を信頼してくれる仲間や百目鬼といった存在を失うことに恐れを抱くようになります。百目鬼への感情の正体に気づいてしまったら、素直に百目鬼を求めてしまったら……?人を好きになる絶望と孤独を知っているがゆえの悲しい葛藤がそこにあります。
さらに、矢代はこれまではEDであることで「欲望を向けられることのない存在」だったはずの百目鬼が、自分を前に勃起するのを目の当たりにします。セックスができない・しないからこその関係性が崩れ、そばにいることができなくなってしまうという予感のあった百目鬼には、知られたくなかった事実です。
矢代としても、セックスは関係がない人間だからこそできる行為。一緒にいることが苦しいなら、失うのが怖いなら、まだ兄弟の盃を交わしてもいない段階の百目鬼をいつだって手放すことができるのです。
そして矢代は百目鬼にセックスを持ち掛けるのでした……。
親子・兄弟といった疑似家族的なつながりのあるヤクザの世界。そのつながりは諸刃の剣なのです。2人の関係に固唾をのむ第4巻。
部屋で向かい合い、今まで目をそらしていた百目鬼への思いを受け入れる矢代と、本心を打ち明ける百目鬼。互いに強く意識しつつも一線は越えてこなかった2人ですが、ついにそのバランスは保たれなくなります。
大切なもの、失ってはいけないものができる恐怖に、矢代はどんな道を選ぶのか……?2人の関係が一気に進展する第5巻です。
- 著者
- ヨネダ コウ
- 出版日
- 2017-11-30
百目鬼を失くすことが怖いと認めた矢代。百目鬼も、矢代の身体をもう誰にも触らせたくない、と本心を伝えます。そして2人はついに……。
痛みではなく、優しさを与えられるセックス。矢代は初めての感覚に困惑します。欲しいものを素直に求めることができない矢代は、失いたくない相手である百目鬼を手に入れてしまうことに恐怖を覚えるのです。「人間は矛盾からできている」と悟っているからこそ、矢代にとって百目鬼は欲しくても望むことはできない相手。自己完結することで自己防衛してきた矢代の壁が壊されていく様子は感動必須!
しかしながら、矢代は百目鬼の前から姿を消してしまいます。百目鬼とのセックスの後、不自由になっていたはずの右腕が動くようになった矢代は、百目鬼から離れる覚悟をしたのでした。百目鬼は自分と一緒にいるべき相手ではないのだと、セックスを通じてあらためて実感した矢代なのでした……。
恐怖と欲望のはざまで葛藤する矢代に大注目の第5巻です。物語の行く末が気になりすぎる……。6巻に期待!
本作の映画化が決定しました。2020年2月15日より新宿バルト9を皮切りに、全国の劇場にて公開されました。
矢代に声を吹き込むのは新垣樽助、百目鬼は羽多野渉。2月21日には第6巻が発売されたドラマCDと同じ布陣でのアニメ映画化ですので、ドラマCD作品の世界観が好きという方は必見です。
映画を手がけたのは、BL作品に特化したアニメレーベルとして新しく立ち上がった「BLUE LYNX」(ブルーリンクス)。本作はその記念すべき第1作目として選ばれました。「『好き』が動き出す」と銘打ったBLUE LYNXが、BL好きをうならせる素晴らしい映画です。
劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』公式サイトでは、トレーラー映像のほか、DVD・Blu-ray情報も確認できます。ネオン街を背景に佇む登場人物のビジュアルを見るだけでも作品の空気感が伝わってきますので、ぜひご覧ください。
おすすめのBL作品を集めた<おすすめBL漫画ベスト39!200万人の本好きが選ぶ、本当に面白い漫画を紹介!>の記事もおすすめです。
裏社会という危険な環境、複雑な人間関係、それぞれの過去と今、これから……。辛く切ない展開を我慢した先にある(かもしれない)、萌えの尊さったら半端じゃない!
至高のヤクザBLの世界を味わってみてはいかがでしょうか。
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