『修羅の門』とは、川原正敏による格闘技漫画です。主人公である陸奥九十九(むつ つくも)は、無手(素手)であらゆる相手に1000年不敗を誇る「陸奥圓明流」の伝承者として、現代格闘技においても自らの流派が地上最強であることを証明する為に世界中の強者と戦います。 格闘家の中では決して大きくない体でありながら、どんな相手に対しても闘い抜く主人公の姿に多くのファンが引き付けられ、1987年の連載開始から休載をはさみ2015年まで連載されました。
『修羅の門』の主人公、陸奥九十九(つくも)は、自らは無手(素手)でありながら、武器を持った相手や、一度に複数の人数を相手にする等、あらゆる状況においても1000年不敗という一族に伝承されてきた陸奥圓明流という古武術の継承者です。
陸奥圓明流の業は、どれをとっても相手を殺すことを前提に作られており、現代格闘技やスポーツとは相いれないものです。
その1000年の歴史の中で、歴史上の偉人達とも戦いながら、積極的に表舞台には出てこなかった為、誰にも知れらずに伝承されてきた陸奥圓明流。
しかし、主人公である陸奥九十九は、ある理由から自らの代で陸奥圓明流を終わらせようと決心します。
その為に、陸奥圓明流が存続してきた理由である、「陸奥圓明流が地上最強である」ことを証明する方法として世界のあらゆる格闘技の強者と戦う道を選びます。
そこで、まず手始めに訪れたのが、九十九の祖父とかつて戦った武神・龍造寺徹心が運営する空手道場「神武館」でした。ここから、修羅の門をくぐった男たちの長い戦いが始まるのです。
単行本は全31巻、文庫版は全15巻刊行されています。これから、文庫版の流れに沿ってあらすじをご紹介いたします。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-01-12
祖父の知り合いの武神・龍造寺徹心の運営する空手道場「神武館」にやってきた主人公の陸奥九十九。地上最強を証明するため、まずは神武館を倒しに来たのです。
しかし、やってきた神武館の道場では、先客の道場破りによって門弟が倒され、看板が 持っていかれるところでした。成り行きで道場破りを撃退した九十九は、龍造寺徹心に迎えられ居候の身となります。そんな九十九の事が気に入らない門弟達は、九十九に挑みますが敵わず、幹部指導員すら歯が立ちません。
噂を聞きつけて全国から集まった神武館の4強も順に九十九と戦いますが、次々と敗れていきます。そんな九十九の前に神武館の天才・海堂が立ちふさがります。格闘家としては決して恵まれた体格ではない体で、大男達を次々と倒していくその強さに多くの読者が惹きつけられました。
作中で出される陸奥圓明流の技も、現実でできるのではないかと思わせるものが多かったこともファンが集まった理由なのではないでしょうか。そんな陸奥九十九の伝説が始まる第1巻です。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-01-12
他の門弟との闘いの中で九十九の技「無空波」を見た海堂は、このままでは勝てないと悟り、無空波を破る為に山籠もりをします。
壮絶な山籠もりの果てに、無空波を破るヒントを得た海堂はとうとう九十九と激突。作戦通り無空波を破り、優位に立ったかに見えた海堂でしたが、無空波だと思われた技は 「虎砲」という別の技でした。
そして、九十九の放った本当の奥義「無空波」の前に海堂は破れます。海堂を破った九十九は、空を見上げ、自身の修羅の門が開いたことを感じました。
その闘いを見守っていた龍造寺徹心は、日本中の強者を集めた異種格闘技戦の開幕を決意、マスコミを通し日本中に宣言します。 こうして舞台は、神武館から日本武道館へと移るのです。
日本一の格闘家を決めるトーナメントの開幕です!
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-02-09
全日本異種格闘技選手権が開幕し、九十九は1回戦でキックボクシングの竹海を破り、 2回戦へとコマを進めます。相手は、温厚な性格と言われる羽山。
しかし、羽山は自身の所属する弱小団体シュートボクシングの名を高める為、グローブを外して素手の拳で九十九に襲い掛かってくる本気ぶり。 自らの身体のダメージを顧みず、シュートボクシングの為に命がけで九十九と戦う彼を獅子と認めた九十九は、陸奥圓明流の技を繰り出し、破ります。
勝者である九十九に、羽山のトレーナーが負けることは許さないと告げるのは、なかなかかっこいいシーンです。勝ち続けるということは、敗者の思いを背負い続けること。九十九の戦いは続きます。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-02-09
準々決勝にコマを進めた九十九の3回戦の相手は、プロレスラー・飛田! 圧倒的な体力とサブミッション(関節技)で九十九を圧倒し、「虎砲」すら受け止める飛田に、九十九は奥義「龍破」を放ちます。凄惨なバトルシーンの応酬ですが、正面から戦う両者の姿に観客は心を動かされます。
そして闘いの後、飛田も修羅の門をくぐるのです。強者たる者は、次なる闘いを求めるのが運命なのでしょう……。
そして準決勝の相手、空手家・片山は、九十九の「龍破」すら破る天才!菩薩のような表情で九十九の攻撃をさばく片山に、九十九は人の姿のままで挑み続けます。全ては、陸奥圓明流の悲願である地上最強を証明するために。
決勝へとコマを進めるのはどちらか?
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-03-09
とうとう決勝に進んだ九十九の相手は、武神・龍造寺徹心ではなく「不破北斗」。その正体は、九十九と同じ圓明流の業を受け継いだ陸奥の分家の後継者でした。苦戦する九十九の脳裏には、幼い頃の兄との思い出し、ある誓いが蘇ります。
やがて、限界を超えた闘いの中で九十九の中の「修羅」が目覚め、闘いは佳境を迎えます。日本武道館での死闘に勝利するのはどちらか?
九十九がどうして表舞台に上がり、陸奥圓明流が最強であることを証明しようとしたのかが明かされる巻で、ひとつのターニングポイントになっています。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-03-09
日本を出た九十九が向かったのはアメリカ、ニューヨーク。最強の格闘技の代名詞であるボクシングのヘビー級に九十九が強者と感じ取った「アリオス・キルレイン」がいたからです。
ウェルター級(66kg位)の身体でありながら、ヘビー級(無差別級)に挑戦する決意をする九十九。知人の紹介で知り合ったトレーナー・テディと共にひとつずつ勝ちを拾い、偶然知り合った大富豪・ヒューズの力も借り、統一王座トーナメントへの参加資格を得ます。
修羅の門のファンの間でも特に人気の高いボクシング編の開幕です!
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-04-12
統一王座トーナメント予選の相手は、白人ボクサー・ガンフォード。 反日感情と白人至上主義にさらされ、会場中が敵という状況でも九十九は、ボクシングのルールの中で圓明流の戦いをし、自らの実力を証明します。
しかし、ジャッジに無理矢理負けと判定されてしまうのです。果たして本選1回戦に進めるのでしょうか?
九十九の魅力の1つには、決意したことは必ずやる、という点があります。
相手が大人数であろうと、どんな思想であろうと、挑むと決めたら挑む。そして、そんな自分を止めていいのは、戦って自分に勝てる相手だけ。
そんな決意を持つ彼に、敵ですら心を動かされ……。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-04-12
トーナメント参加者「ジャージー・ローマン」の協力もあり、本選へとコマを進めた九十九。この協力者は、1回戦の相手でもあり、「神の声が聞こえる」というボクサー。九十九は動きをすべて読まれ、苦戦します。
しかし地上最強への挑戦は、神への挑戦と同義と考える九十九は、正面からローマンに挑み続けます。「最後まで逃げるなよ、神よ!」という決意を持って戦う彼の姿は、多くのファンを惹きつけました。
なんとかローマンを破った九十九の次の相手は、WBC現チャンピオン。苦戦が予想された相手に「圓明流の本来の戦い方」をします。九十九にとって、「強い相手」よりも「怖い相手」の方が戦いたい相手のようです。
そしていよいよアリオスとの決戦に備えるのですが、アメリカ国内は反日感情に溢れている為、誰もスパーリングパートナーをしてくれません。
そんな中、龍造寺徹心の娘婿・巌が現れ、スパーリングパートナーを買って出ますが……。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-05-11
アリオスとの闘いを控える九十九の為に、スパーリングパートナーを買って出た巌でしたが、スパーリングで彼の力を知れば知るほどボクシングではなく、本来の空手家として闘いたいという欲を抑えきれなくなります。
その挑戦を受ける九十九。陸奥を名乗るということは、いつでも戦える、いつでも勝てるということだという彼の、そして陸奥の掟があります。そうした強固な自らに課した掟が彼を支えているのかもしれません。
「闘鬼」と呼ばれる巌に勝利するも、結果として怪我を負った九十九。不利な状況の中で、アリオスとの決戦に臨むことになります。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2001-05-11
とうとう迎えたアリオスとの決戦。 アリオスとも互角に戦えるかと思われた九十九でしたが、徐々に劣勢に立たされます。
今は亡きトレーナー・エザードの為にチャンピオンになると誓ったアリオス。そんな強固な想いに支えられた彼の猛攻の前に打たれ続ける九十九。そうして追い詰められた第5ラウンド、とうとう「修羅」が目覚めます。
壮絶な打ち合いを続ける両者。圓明流の考え方のみで戦っていると思われていた九十九も、自らのトレーナー・テディの言葉に支えられていました。「スタンド・アンド・ファイト(立って、そして戦いなさい)」。
死闘の果てに、最後に立っているのはどちらか?ボクシング編、完結です。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2002-01-11
アメリカを後にした九十九は、「陸奥」に恩があるという「ジルコォー・マッイイツォ」と共に、ブラジルの土を踏みます。祖父から言われた、陸奥と決着をつける約束をしたコンデ・コマの業を継ぐ者に会う為でした。
九十九は、ようやく見つけたコマの弟子から、グラシエーロ柔術の大会への参加を条件に、コマの業を継ぐ者の居所を教えるという提案を受けます。その条件を飲んだ彼は、なんでもありの闘技場、ヴァーリ・トゥードの舞台に上がることに。
当時、丁度グレイシー柔術が話題となり、便乗とも言われたブラジル編でしたが、作者は以前からヴァーリ・トゥードを取材をし、温めていた舞台に九十九を上げたのです。ただ、やはりなんでもありの舞台は恐ろしいなと思わせる闘いが繰り広げられるブラジル編です。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2002-02-08
ルールのない闘いは殺し合いにも等しいと感じさせるヴァーリ・トゥード。勝ち進む世界中の強者たちの中で九十九の戦いも開幕します。
1回戦では、カポエラの強豪選手と闘い、観客の持つボクサーとしてのイメージを払拭するバトルを見せます。さらに続く2回戦の相手は、元力士。体重200kgの相手に、70kgに満たない九十九はなんと相撲のスタイルで挑みます。
陸奥圓明流の本当の恐ろしさは、技ではなく「人」であることを、参加者たちは改めて知ることになります。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2002-02-08
九十九の3回戦の相手は、危険な元傭兵「ブラッド・ウェガリー」! 格闘家としても1流であるウェガリーの攻撃に、九十九は格闘家として応じます。
本性を出したウェガリーは暗器を交えた攻撃で九十九に襲い掛かります。しかし優勢に進められていると思ったウェガリーは、陸奥圓明流の奥の深さを思い知ることになるのです。
「死にたいんだ、アンタ」という九十九のセリフが恐ろしい、この展開。命のやりとりをしている様子に読者も手に汗握ります。しかしシリアスな闘いの中でも、コミカルな内容も盛り込まれている闘いですので、ぜひご覧ください。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2002-03-12
傷を負ったまま準決勝を迎えた九十九の次の相手は重戦車・イグナシオ。 天性の足腰のバネと、魔術師と呼ばれた師匠ゆずりのテクニックに圧倒されてしまいます。
しかし恐怖とともに九十九の「修羅」が目覚め、とうとう互角の戦いになりますが、イグナシオの空手家としての意地は九十九の予想を上回っていました。
九十九に立ち技では倒せないと思わせる、そして組技でも倒せないと思わせた唯一の男・イグナシオ。最後まで立ったまま戦うその姿に、空手家達は光の道を見ます。
決勝に進むのはどちらか?
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
- 2002-03-12
九十九の決勝戦の相手は、神父であり戦士でもあるレオン。 彼もまた、自分の中に「悪魔」と名付けた獣を棲まわせていました。
人を殺さないために、悪魔の顔は出さないと決心して試合に臨むレオンですが、そんな彼の悪魔の顔を引き出す為に、あえて土俵の組技で圧倒する九十九。そんな九十九への恐怖と、彼を殺したいという自分の気持ちを認めたレオンは言います。
「私は嘘つきだ」
(『修羅の門』文庫版15巻より引用)
凄惨とすら思える闘いに、修羅となった九十九は勝利できるのでしょうか?燃え尽きるのはどちらか!?
ブラジル編完結です!
15巻の内容までが連載された後、修羅の門は一時休載となります。再開後の内容は、作風が変化したと話題になりました。
- 著者
- 川原 正敏
- 出版日
ブラジルでの「ヴァーリ・トゥード」を終え、九十九はコンデ・コマの後継者と戦う為、コロンビアに向かいます。 それから3年程、九十九の消息は分からず、表舞台から姿を消してしまいました。
世間が陸奥九十九を忘れかけていたころ、九十九は突然日本の格闘技イベントに姿を現し、再び闘いはじめます。
しかし、その闘い方にはかつての九十九と比べて違和感がありました。
実は、コロンビアでの戦いで負った傷が原因で、九十九は部分的な記憶喪失となり、自分がコロンビアで負けたかもしれないという思いから、わざと自分を痛めつける(=しなせる)かのような戦い方をしていたのでした。
やがて、戦い続ける中で記憶が戻り、自らが不敗であることを自覚する九十九。そんな彼の前に、最後の相手が現れます。その相手は、かつて神武館のNo.1空手家として九十九と戦い、敗れた「海堂晃」。修行の末、空手の極意に辿り着き、九十九のあらゆる攻撃が無効化されます。
この最後の戦いでの、「空手の極意」や「限界を超えた先」のような抽象的な闘い方や表現に、往年のファンからは「作風が変わった」のでは?と心配する声も上がりました。
確かに、『修羅の門』は、非現実的な闘いの中にも、まだ再現できる技や戦い方で構成された戦闘描写がほとんどだった為、急に「技を極めた先」や「限界を超えた先」の話になってしまって面食らった形になったファンも多かったのではないでしょうか?
しかし、現実的な修練や技を重ねた先に、一定の壁を超えた者にしか分からない極地があるのは能や歌舞伎等にもあるのではないかと思います。
とは言え、この最後の戦いになって、確かに表現方法は確かに変化していますから、読者の方もこれまでの『修羅の門』とは違うと覚悟した上で読んでみると良いのではないでしょうか。いちファンとしては、この戦いの後も、九十九の伝説は続いていくと信じています……。
川原正敏が海を舞台に壮大なスケールで描いた『海皇紀』。そんな『海皇紀』については<漫画『海皇紀』を徹底紹介!見所、登場人物、結末、名言…【ネタバレ注意】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。