漫画『海皇紀』を徹底紹介!見所、登場人物、結末、名言…【ネタバレ注意】

更新:2020.12.15

「海王の統べる国」と誰もが恐れる海の一族のひとりが、主人公のファン・ガンマ・ビゼン。彼が一族単位、国単位での戦いに巻き込まれ、成長していく様子を全45巻で描いた人気作品が、『海皇紀』です。 戦いだけでなく、ヒロインたちとの複雑な恋の行方や、人工兵器の登場など近未来的な世界も描いています。 ファンタジーが好き、海賊好きな方はもちろん、スケールの大きな読みごたえのある作品としておすすめです。下のボタンからダウンロードできるスマホアプリから読むこともできます!

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

『海皇紀』の伏線、見所ネタバレ考察!まずはあらすじから紹介

『海皇紀』は交易で栄える海の一族である、ファン・ガンマ・ビゼンの闘いを描く海洋冒険活劇です。西方の大国ロナルディアとの対決、一族内での争い、政略結婚、魔道士アナハラムとの決戦を通し、ファンが一族の長へとなる過程が描かれています。

全45巻という長編で、読みごたえたっぷりの本作は、独特な世界設定が魅力。

海洋ファンタジーというと、バイキングや大航海時代のようま原始的な雰囲気を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、『海皇紀』には「カガク」があります。これは作中では魔法のような扱いになっていますが、現代の「科学」と同じものです。

実は、ファンが生きているのは、人類の文明が一度滅亡した世界。空には太古に人間が打ち上げたといういわれのある静止衛星が浮かび、二足歩行が可能な戦闘ロボットが登場します。純粋な大航海時代とは一線を画した近未来の趣もあるのです。

海洋ロマンに、爽快なアクションシーンと近未来的な趣きが加わった本作。一筋縄ではいかないヒロインとの恋の行方も気になる、読みごたえたっぷりの内容です。

著者
川原 正敏
出版日
1998-08-10

作者・川原正敏とは?

作者・川原正敏は広島県三原市の出身です。1960年生まれで、国立広島商船高等専門学校航海科で学びます。

その後1985年『パラダイス学園』によりマンガ家デビューをし、1990年に『修羅の門』で講談社漫画賞を受賞。そのほか代表作には『修羅の門 第弐門』、小説『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』など。

著者
川原 正敏
出版日

格闘シーンなど動きのある絵を得意とし、『海皇紀』でもその魅力が海を舞台に描かれます。また、綿密なストーリー構成も人気で、海皇紀でも長編ということを活かし、「歴史」という言葉ではくくりきれない人々の動きや思いが丁寧に描かれます。

また、商船学校の出身ということで、『海皇紀』での帆船や操船法などの詳細な描写は、専門あるものです。


川原正敏の人気作『修羅の門』については<『修羅の門』の見所を最終回まで全巻ネタバレ紹介!マッチョ異能バトル漫画?>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

『海皇紀』の魅力を考察!中だるみしない、ストーリーテリング!

『海皇紀』の魅力の一つは、先ほどお話しした世界観のほかに、重層的なストーリーテリングと人物構成もあげられます。自分にとっての作者・川原正敏自身が、本作を『三国志』のようだと捉えるほどです。

著者
川原 正敏
出版日
1998-11-14

それぞれの策謀・策略、彼らなりの思いで動いていく人物関係は、個人の動きが大きな流れに繋がっていく様子がひしひしと感じられ、「歴史」の生まれる瞬間を目の当たりにしているかのようです。

海での覇権争いや陸地の国々との抗争、魔道士の助言、亡国の王女の思い、敵対する大臣の粛清、政略結婚など、様々な人物の思い、言動が作品に厚みを出しています。45巻にも及ぶ長編作品ですが、中だるみせず、最後まで一気に読ませる内容です。

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説1:才能あふれ、ミステリアスな主人公、ファン・ガンマ・ビゼン

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説1:才能あふれ、ミステリアスな主人公、ファン・ガンマ・ビゼン
出典:『海皇紀』5巻

ここからは登場人物たちの魅力、ストーリー上でどんな見所をつくってくれるのかを解説していきます。

主人公のファン・ガンマ・ビゼンは、「怠け者・稀代のペテン師」と自称し、普段はのらりくらりとしていますが、実はとても武勇に長けた男。その名を聞けば誰もが恐れる「海王の統べる国」という海の一族の船乗りです。

7隻しかないはずの影船のうち、なぜか八番艦隊を率いており、リーダーとしてのチーム牽引力と、仲間思いな優しさを持ち合わせています。

……と聞くと完璧な人間に思えるかもしれませんが、そんな彼も骨を折る、さまざまな苦難が待ち受けています。大国ロナルディアとの闘いや、部族の長を決めるためのレース、心に決めた人がいながら政略結婚をして一族を守る定め……。

もちろん優秀な人物といえどひとりでできることは限られており、そのたびに仲間たちの力を借りながら立ち向かいます。

さらにファンを語るにおいて外せないのが、ある謎。幻ともいわれる名剣ニホントウを所持しているのですが、それは彼の出身地であるビゼンの里と関わりがあるようなのです。

そこは「とある使命」を貫く里なのですが、事件が起きてしまったため、ファンの母であるマリシーユは里を離れ、ファンの今の暮らしがあるのでした。

さらに物語終盤での魔導師や呪いとの闘いの一因も、ビゼンの里に隠されているようで……。

武勇と人徳、さらに戦略的思考に長けたファンですが、ミステリアスな要素が彼をさらに魅力的にしています。

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説2:マイア・スアル・オンタネラ

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説2:マイア・スアル・オンタネラ
出典:『海皇紀』1巻

『海皇紀』の正ヒロイン・マイア・スアル・オンタネラにも注目です。彼女はオンタナ国の王女でしたが、大国ロナルディアに屈し、伝説の大魔導師イルアンジャの手がかりを求めてトゥバンと旅をしていました。その途中に偶然ファンと出会い、ともに旅をしていくことになります。

王女という地位にいたせいか、当初のマイアは自分のことしか考えられず、自己中心的な性格でした。だからといって闘いの戦力にもならず、足を引っ張る場面もしばしば。

ところが、旅でさまざまな経験をしていくうちに、自分だけでなく周りの人を思いやる気持ちが芽生え、成長していくのです。

そしていつの頃からかファンに恋心を抱くのですが、それを素直に表現することができません。強がりな性格なのですが、いじらしい一面も垣間見え、「かわいい!」という読者の声も多いヒロインです。

一方のファンも彼女に好意を持っているようなのですが、2人の恋はなかなか一筋縄にはいきません。ファンは敵対する海賊ジーゴ・サナリアと手を組むために、大長の孫娘アグナ・メラ・ジーゴと政略結婚をすることになるのです。

物語終盤での最後の闘いで彼女はどうからんでくるのか、またファンとの関係はどうなるのでしょうか。

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説3:トゥバン・サノオ

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説3:トゥバン・サノオ
出典:『海皇紀』8巻

徹頭徹尾痛快な闘いをくり広げ、とにかく強い男、それがトゥバン・サノオです。彼は北方のエンノロイア国の出身で、伝説の兵法者として、大陸中でその名を知らぬ人はいません。

その強さは戦闘中に自ら剣を折ってしまい、自分の力に耐えうる剣がないかとため息をもらすほど。

さらに斬り合いや殺し合いが大好きで、去るものは追いませんが、闘いを挑んでくる者には無条件で応え、ほぼ殺してしまいます。王女の護衛をしていても自分より強い者を見つけると、任務そっちのけで会いにいくと公言しているほど、生粋の戦闘好きです。

そんな最強キャラと聞くと、無骨で気性の荒い人物を想像するかもしれませんが、彼の普段の性格は穏やかなもの。45巻をとおして、威圧することはあっても怒りを表に出すことはなく微笑みつづけ、ファンからたびたび「オッサン」呼ばわりされて軽口をたたかれるようなキャラです。

そんな圧倒的な強さと穏やかさのギャップが魅力的なトゥバンは、ファンやマイアと旅をともにし、自分よりも強いとされる森守を倒す目的を持っています。彼よりも強い者がいるとはにわかには信じられませんが、物語の終盤でのトゥバンと森守との対決に注目です。

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説4:アグナ・メラ・ジーゴ

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説4:アグナ・メラ・ジーゴ
出典:『海皇紀』29巻

アグナ・メラ・ジーゴは、作中の第二のヒロインともいえる女性です。海賊ジーゴ・サナリアの大長の孫娘で、当初は海の一族であるファンと敵対関係にありました。しかし2人は政略結婚をすることになり、海の一族とジーコ・サナリアは手を結びます。

彼女は男勝りな気性を持ち合わせているとともに、一族の大事には冷静な判断をくだすような長としての才覚も持ち合わせている、頼もしい人物。

もうひとりのヒロイン・マイアとは違った、大人の魅力があり、アグナの方が好きだというファンも多いほど。

ファンの妻となってからは、2人の子どもに恵まれます。しかし悲しいことに彼女には死期が迫っており、そこで一族の長の妻として、ある決意を固めます。

物語終盤のアグナの言動は、彼女らしい魅力を感じさせるものですので、お見逃しなく。

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説5:森守

『海皇紀』の登場人物の魅力を解説5:森守
出典:『海皇紀』44巻

伝説の兵法者と評されるトゥバンですら倒せない相手、それが森守(もりもり)です。オンタナ国 テラトーの森の守護者で、人でも精霊、魔人でもなく、ロボット型の人型兵器です。頭部と思われる部分から発せられる強力な光線は超高熱で、土塁をも一瞬で溶解するほど。森守に会った者は、会った瞬間に死ぬといわれています。

原始的な海洋ロマンを彷彿とさせながらも、近未来的な要素が織り込まれ、独特の雰囲気を生み出しています。

そんなロボット型兵器の強力な光線を連発されながら、唯一生き残ったのがトゥバン。彼らの戦いも本作終盤の見所のひとつです。

森守と遭遇しながらも生き残った功績で、森を所有するオンタナ国の王と知見を持ったトゥバン。第一話でオンタナ国の王女であるマイアと旅をともにしているのも、それがきっかけでした。

彼は、森守に打ち勝つための武器を探しており、その条件は2つあります。1つは森守にダメージを与えることができる武器であること。もう1つは、そもそも使用するトゥバンの力に耐えうることができる武器であるかどうかです。

森守を倒すための武器を手に入れ、強敵を倒すことができるのでしょうか。

『海皇紀』強さランキングベスト3!

 

ここまで登場人物の魅力を紹介してきましたが、結局一番強いのは誰なのでしょうか?仲間同士などでもあるので、強さを比べるのにあまり意味はないかもしれませんが、武力のあるキャラクターの強さをランキング形式でまとめてみました。

  • 3位:ファン
  • 2位:トゥバン
  • 1位:森守

 

著者
川原 正敏
出版日
1999-02-15

 

森守がトゥバンより強いことは明らかです。森守に遭遇し、辛くも逃げのびたトゥバンは、自分の身だけでは勝てないと悟り、打ち勝つ武器を求めて旅をしています。

一方、主人公であるファンとトゥバンのどちらが強いかどうかはランク付けが難しいところです。しかし純粋な武力の対決とすれば、ファンよりもトゥバンが強いのではないでしょうか。

ファンも強いですが、彼の強さは人徳や戦略的思考を総合した将の強さ。仮にファンとトゥバンが差し向かって戦った場合、最初は地理や自然条件を巧みに利用したファンが優勢でしょうが、最終的には体力と腕力のあるトゥバンが勝利しておかしくありません。

また、作中での魔人衆との闘いのシーンでは、ファンは苦戦を強いられ、彼らを取り逃がしますが、トゥバンはそのうちの一人を倒しています。

とはいえ、ファンは優れた将という性格で、トゥバンは優れた戦士といった立ち位置なので、2人の強さは甲乙つけがたく、単純には比較できません。

実際に物語を読んでみて、ご自身で考察してみるのも面白いですよ。

 

『海皇紀』名シーン、名言を解説!

『海皇紀』の作中には、キャラクターたちの人生観を表す魅力的なセリフが随所に見られます。その中で特に胸を打つ3つの名言をご紹介します。

(1)ファンの母親マリシーユ・ビゼンの言葉

「自分に責任がある事で 
泣いちゃダメ。 
泣けば少しは忘れられるわ…。 

でもそれは 
忘れずに背負っていくもの。」 
(『海皇紀』第38巻より引用)

ファンの母親であるマリシーユがマイアにかけた言葉です。ファンたちと旅をしていたマイアは、自らの行いのせいで窮地を招いてしまい、つい涙がこぼしてしまいます。そんな彼女をマリシーユが優しく諌めるのです。

悪意はないにもかかわらず、ちょっとした行いが大きなトラブルを引き起こしてしまったシーン。彼女の心労は共感できる人も多いのではないでしょうか。

涙を流したくもなりますが、泣くことで気持ちを解消してしまうのではなく、責任を持って対処していくことが、仲間に対する責任だと教えてくれる言葉です。

著者
川原 正敏
出版日
2008-12-17

(2)ファン・ガンマ・ビゼンの言葉

「俺はファン・ガンマ・ビゼン… 
それ以上でもそれ以下でもない」 
(『海皇紀』第1巻より引用)

物語の初頭で「何者だ」と聞かれ、ファンが答えたセリフです。

「それ以上でもそれ以下でもない」とは、なんとかっこいいセリフでしょう。

自分と向き合い、自分の存在、世界とのかかわり、自分がどう生きていくか、それらがはっきりとし、自分の軸があるからこそ発せられる言葉です。肩書や過去ではなく、ただ今の存在こそが自分なのでしょう。

(3)ファン・ガンマ・ビゼンが闘いに臨む際の言葉

「オレは天運とか、 
神様の微笑みなんてのは大好きだが、 
そんなものは決して頼りにならん。 
神の微笑みはきまぐれだ。 
最後まで責任を取ってくれるとは限らない。  

人の世のことは人が責任を取るのが当然。 
本当に神様ってのがいて、そいつが敵に微笑んでいようとも、 
力尽くで最後には笑わせてやる。 

たとえ、そいつが苦笑いであっても…な。」 

(『海皇紀』第35巻より引用) 

ファンが大国ロナルディアとの戦いの際に発した言葉です。神の存在を否定しないものの、運命を自らの力で覆そうとするガッツに溢れた言葉です。

人生はどうにもならないことが多々あります。しかし最初からあきらめず、少し自分が動くことで状況が好転することもあるかもしれません。

そのためにはまず、考えを前向きにしなくてはなりません。この言葉はかっこいいだけでなく、私たちの気持ちを前に向かせてくれる力を持っているのではないでしょうか。

『海皇紀』の結末の見所を解説!最終回は……【ネタバレ注意】

ウォルハンの新国王カザルを助ける闘い、海の一族の次代海王をめぐるレース、アグナとの政略結婚、大国ロナルディアとの闘いを経た、ファンと仲間たち。彼らはともに成長し、闘いは終盤を迎えます。

最終回では森守との戦いに、災いの一因であるパンニャーノ卵の孵化や、呪いを操る魔導師と、呪いをかけられたメルダーザとの戦いがくり広げられ、事態は複雑化。そんな中でマイアが大怪我をしてしまいます。

著者
川原 正敏
出版日
2010-09-17

マイアはどうなってしまうのでしょうか。また、メルダーサの呪いや、パンニャーノ卵とファンの出身であるビゼンの里の関係の行方はいかに?

さまざまな登場人物たちとの戦いが混迷をきわめていくなか、ファンたちはそれぞれすべき行動をとっていきます。彼らの成長が感じられ、その結末は新たな始まりを予感させます。そしてタイトルを回収する見事なラストです。

とはいえ、本作は未回収の伏線も多いことで知られています。ニホントウやビゼンの里、八番艦隊についてなど……。伏線の未回収が苦手な方にはあまりおすすめできないかもしれませんが、彼らの世界がまだ自分のなかで続いているのだと楽しめるともいえます。

もっと見る もっと見る