和田誠のおすすめ作品5選!文春や星新一の挿絵を手掛けるイラストレーター

更新:2021.11.15

「週刊文春」の表紙絵や、星新一の著作の挿絵などでおなじみのイラストレーター、和田誠。大手企業の広告をいくつも手掛けたほか、映画監督やアニメーション作家としても活躍しています。この記事では、そんな和田のおすすめ作品を厳選してご紹介していきましょう。

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和田誠とは

 

1936年に大阪で生まれた和田誠。戦後の日本で「イラストレーター」という職業を広く知らしめた人物です。学生の時に、俳優にイラストを添えたファンレターを出したところ、褒められたことがきっかけで職業にしようと決めたそうです。

多摩美術大学を卒業した後、広告の制作会社にデザイナーとして就職。紙巻きタバコの「ハイライト」や政党のロゴ、そのほか大手企業の広告を多数担当しました。

1968年にフリーになった後は、雑誌「週刊文春」の表紙絵や星新一作品の挿絵などを長年にわたり担当。特に「週刊文春」は40年以上にわたって手掛けていて、2017年7月に記念すべき2000枚目を達成しています。

またイラストレーターだけでなく、映画監督や装丁家、エッセイストなど幅広い活躍をしています。ちなみに父親はラジオの神様と呼ばれた和田精、妻は料理研究家の平野レミです。

和田誠の代表作!『もう一度 倫敦巴里』

 

1977年に発行された伝説的名著と呼ばれる『倫敦巴里』に、未収録作を加えて40年ぶりに復刊された作品です。『倫敦巴里』は、当時はまだ珍しかった「パロディ」という言葉を日本語にしてしまったといわれています。

たとえば川端康成の『雪国』の冒頭、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」はあまりにも有名な文章ですが、これを池波正太郎や大江健三郎が書いたらどうなるか……と文体を紹介するなど、センスが光っています。

バラエティ豊かな発送と、眺めているだけで満足できるイラストで、一冊丸ごとパロディを取り入れた構成。時代を経てもクスリと笑えて感心させられる内容です。

著者
和田 誠
出版日
2017-01-21

 

根本にあるのがパロディなので、元ネタを知らないと真の面白さを楽しむことができないかもしれませんが、取り上げられているのはどれも有名作ばかり。

上述した文体模写のほか、童話『ウサギとカメ』を山田洋二や黒澤明、ヒッチコックが映画にしたら……などその発想力に驚きです。

楽しく読みながらも、色あせない和田誠の視線の鋭さに心動かされるでしょう。

和田誠と村上春樹のジャズ名鑑『ポートレイト・イン・ジャズ』

 

若いころからジャズへの造詣が深い和田誠。本書は、そんな彼が厳選して似顔絵を描いたジャズミュージシャンのイラストに、村上春樹が文章を添えたジャズ名鑑です。

もともとは雑誌「芸術新潮」で連載されていたもので、最強タッグがおくる内容はジャズに詳しくない人でも楽しめるものになっています。

著者
["和田 誠", "村上 春樹"]
出版日
2003-12-20

 

和田誠が描いた似顔絵に、村上春樹がそのミュージシャンのベストアルバムだと思う1枚を紹介しています。世間一般ではなく、あくまで村上春樹がおすすめするベストだという点がミソで、自分の好きなことを存分に語る村上の文章と、ミュージシャンを描く和田誠の優しくリスペクト溢れるまなざしに惹き込まれるでしょう。

ジャズファンはもちろんですが、これからジャズを聞いてみようと考えている方にとっての入門書としても最適。興味をもったら、本書で紹介されているなかから13人分の楽曲を収録した「ポートレイト・イン・ジャズ 和田誠・村上春樹セレクション」というCDも発売されているので、そちらも聞いてみてください。

1960年代の日本『銀座界隈ドキドキの日々』

 

和田誠が多摩美術大学を卒業し、あこがれの広告会社に足を踏み入れてから独立するまでの10年間の回想記です。「講談社エッセイ賞」を受賞しました。

1960年代の賑やかできらびやかな銀座という街を中心に、刺激的な仲間たちとの交流や、当時のデザイン業界に関する話題を綴っています。

著者
和田 誠
出版日

 

1960年代というと、日本はちょうど東京オリンピックを中心とした高度経済成長期。若かりし頃の和田誠が働いていた銀座は「街の王様」と呼ばれていました。新人デザイナーだった彼は、各業界の若い才能と惹かれあうようにさまざまな交流を重ねていきます。

伊丹十三、谷川俊太郎、横尾忠則、篠山紀信、寺山修司……今となっては各業界の重鎮ともいえる人々と、思わず笑いがこぼれてしまうようなエピソードをくり広げているのです。

また彼がいたデザイン業界も著しい変化を遂げていきます。それまではデザイナーにすべてを任せていたクライアントとの関係性が変わり、広告は金になると代理店の存在感が増してくる様子がありありとわかるでしょう。

およそ10年間務めた会社を退社する直前のエピソードなどは、単なるエッセイを超えて、時代や表現とはいったいどういうものなのかを読者に考えさせてくれる内容です。

平野レミも登場!和田誠と猫の日常を描いたエッセイ『ねこのシジミ』

 

小学生のショウちゃんに拾われた、たれ目で目やにの汚い捨て猫。シジミと名付けられた子猫の目線で、ショウちゃん一家の日常が描かれた絵本です。

イラストはすべて銅版画で書かれていて、柔らかな風合いが優しいストーリーにマッチ。読んでいると心が暖かくなる一冊です。本作は「日本絵本賞」を受賞しています。

著者
和田 誠
出版日
1996-09-01

 

数匹の子猫が公園に捨てられ、他の子たちが順番にもらわれていくなか最後まで残ってしまったシジミ。のんびり屋の男の子ショウちゃんに拾われ、飼い猫になりました。

この家族のモデルになっているのは、なんと実際の和田家だそう。シジミは長男が拾ってきてから16年間和田家で暮らした猫で、作品のなかで強烈なマイペースっぷりを発揮している一家のお母さんは、和田誠夫人である平野レミでした。

物語のなかで大事件が起こるわけではないですが、何気ない日常が幸せなことや、猫を本当に大切にしていることが伝わってきて、しあわせな気持ちになれる一冊です。

映画に関する集大成ともいえる一冊『和田誠シネマ画集』

 

映画に造詣が深く、自身も監督として作品を発表したこともある和田誠。本書はそんな彼が描いた、オスカー受賞作品や名作映画のとあるシーン、監督の似顔絵などをまとめた画集です。

収録されているのは全部で123点。フルカラーで楽しむことができます。

著者
和田 誠
出版日
2014-07-01

 

和田の個展で発表した作品、「週刊文春」で発表した作品など、画集と銘打っているだけあり基本的には絵がメイン。いくつかの作品に文章も添えられています。

取り上げている映画のなかにはモノクロのものもいくつかありますが、それらもカラーで書かれているので、和田の世界観を存分に味わうことができます。

単なる映画の一場面を切り取っただけでなく、映画を愛する和田誠ならではの画集だといえるでしょう。

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