通りかかった獲物をあっという間に砂の中に引きずり込んでいくアリジゴク。実は猛毒をもっていることをご存じですか?この記事では、彼らの生態や巣の仕組み、毒性、飼育法などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
ウスバカゲロウとは、アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科に分類されるトンボに似た昆虫です。体長は35~45mmほどで、北海道から南西諸島の広い範囲に生息していて、アリジゴクはこの幼虫にあたります。
幼虫の間の2~3年は、サラサラとした砂地にくぼみを作り、その底部分で暮らしています。大顎だけを砂から出して獲物となる虫が落ちてくるのを待ち続けているのです。
アリなど獲物にできる小さい虫が落ちてくると、砂や小石を投げつけて底に引きずり込み、体液だけを吸い取ります。残った死骸は大顎を使ってくぼみの外に投げ捨てるそうです。
成熟すると、腹部から糸を出して砂と絡めながら直径1cmほどの蛹室を作り、その中に籠ります。2週間ほどで羽化するとウスバカゲロウの姿となり、巣から飛び立っていくのです。ただ成虫となってからの寿命は2~3週間ほどで、交尾と産卵をして短い生涯を終えてしまいます。ウスバカゲロウでいるよりも、アリジゴクでいる時間のほうがかなり長いことが分かります。
アリジゴクの巣の大きさは、直径10~60mm、深さは5~30mmほどと小さいです。入り口が広く、底にかけて狭くなるすり鉢状になっています。
雨をしのげる軒下や木の下など、常に乾いている砂地に作られ、アリジゴクの成長に伴って巣も大きくしていきます。彼らは後ろ向きにしか進むことができないため、砂中で円を描くように後ずさりをくり返し、徐々に直径を広げていくのも特徴です。
巣の壁面は、粘液などで補強されているわけではなく常にサラサラです。非常に崩れやすい構造になっていて、この壁面こそが落ちてきた獲物が地上に逃げるのを拒み、底で待っているだけのアリジゴクの狩りを成功させる秘訣になっています。
巣に落ちてきた獲物を捕らえ、体液のみを摂取するアリジゴク。獲物に逃げられたり、反対に攻撃されてしまったりすることはないのでしょうか。
彼らは大顎の先から消化液を敵の体内に注ぎこみ、相手の動きを止めるのですが、この消化液がかなりの猛毒なのです。その強さはなんと、フグのもつテトロドトキシンの130倍ほどもあるといわれています。
アリジゴクの巣穴の周辺を観察してみると、体に穴が空き赤黒く変色した虫の死骸を見つけることができるでしょう。
ただし、彼らの顎の力はそこまで強くはないので、人間の皮膚を貫通することはなく、毒で倒れたなどの報告はされていません。
アリジゴクはペットとして飼育をすることができます。砂を掘り返して捕まえた場合は、必ず周辺の砂も一緒に飼育ケースに入れて持ち帰るようにしましょう。彼らが巣を作るのに適した砂だと判断したものなので、家庭でも変わらずに巣作りをしてくれるはずです。
飼育ケースには、10cmほどの深さまで乾燥した砂を入れましょう。そこにアリジゴクと、餌となるアリやダンゴムシ、ハエなどの虫を入れます。アリジゴク自体が逃げることはないですが、餌が逃げないよう蓋がしっかり閉まるケースがおすすめです。
餌を食べる頻度は3日に1度ほどでよいので、その期間を目安に生餌を与えるようにしてください。5月ころに巣穴が小さくなってきたら、蛹になっている可能性があります。羽化した後に止まれるよう、砂に小枝をさして準備をしてあげてください。
無事に羽化してウスバカゲロウになったら、狭い飼育ケースの中で飼うのは難しいため、逃がしてあげましょう。
- 著者
- 松良 俊明
- 出版日
作者は、アリジゴク研究の第一人者でもある生物学者の松良俊明です。
日本に現生するウスバカゲロウ科の昆虫は17種ですが、そのうち巣を作るのはわずか4種です。残りは決まった巣をもたずに砂の表面で餌を待ち伏せするか、詳しい生態がわかっていません。
また、巣を作ったアリジゴクはただ待ち伏せをしているだけと見せかけて、さまざまな工夫を凝らして餌をおびき寄せています。国外に生息する種のなかには見た目が奇抜のものも数多く、興味深いでしょう。
実はまだまだ生態が明らかになっていないアリジゴク。少しでも興味をもったらぜひ手にとってほしい1冊です。
- 著者
- ["小池 啓一", "小野 展嗣", "町田 龍一郎", "田辺 力"]
- 出版日
- 2014-06-18
「小学館の図鑑 NEO」シリーズです。ドラえもんとのび太をナビゲーターにしたDVDも付いています。
取り上げられている昆虫の種類の多さもさることながら、特集記事やコラムの内容も充実しており、子どもだけでなく幅広い年齢の読者が知りたいことを学べる図鑑です。
アリジゴクの巣の作り方の詳細も説明しています。