社会学者として現代のさまざまな問題にメスを入れ続けている宮台真司。「性」などあまり公に語られることのないテーマにも積極的に取り組み、発信をしています。この記事では、そんな彼が手掛けた本のなかでも特におすすめの作品をご紹介していきましょう。
1959年生まれ、宮城県出身の社会学者であり映画評論家です。
1971年に麻布中学校に進学。当時は学生運動の真っただ中で、勉強をするような環境ではなかったようです。そんななかで宮台は、哲学や思想の本を好んで読むようになります。特にイタリアの思想家アントニオ・グラムシに傾倒し、彼の唱える「支配者が被支配者に対し利益を与えることで指導性を確立する」という「ヘゲモニー論」をきっかけに世直しに興味を持つようになりました。
高校を卒業後は東京大学、大学院に進学。在学中からサブカルチャーライターとして活動をはじめ、女子高生のブルマーやセーラー服、援助交際などの実態を調査してメディアに出演するようになりました。
現在は執筆活動やインターネット番組をとおして、独自の目線で社会に対するさまざまな問題を提起しています。
人々が抱える「仕事」「生と死」「性」などにまつわる不安を、社会学の視点から考え、これからをどう生きればいいのか語っている作品です。
宮台真司が世の中に存在する通俗的な概念に鋭く切り込んでいきます。
- 著者
- 宮台 真司
- 出版日
- 2013-01-01
宮台の経験を織り交ぜながら、「恋愛」や「生活」など身近なテーマについて考えていきます。「人を殺してはいけないと決まってはいない」「仕事はあくまで金銭を稼ぐためのもので、生きがいではない」など、「当たり前」とされていることを次々と切り捨てていく様子は、読んでいて爽快そのもの。
「敗戦の歴史に注目する場合、『失敗したけど頑張った』『スゴイ人もいた』みたいな話はどうでもいい。どこで選択を間違えたか。原因はなにか。情報伝達経路の問題か。参謀のキャラクターの問題か。総じて『どんな別の選択があり得たのか』を考えるべきなんだ」(『14歳からの社会学―これからの社会を生きる君に』より引用)
14歳のみならず、大人が読んでも面白い一冊。「社会を分析する専門家」である社会学者ならではの視点で各問題に向き合っています。それまでの読者の経験によって、受け止め方や感銘を受ける箇所は異なるでしょうが、自らが生きる「社会」とはどのようなものなのか、考えさせてくれます。
本書は、2009年に発売されてベストセラーとなった『日本の難点』の続編にあたります。
前作で披露された宮台真司の独特な社会に対する視点を残しながらも、問題提起を日本から世界へと広げています。
- 著者
- 宮台 真司
- 出版日
- 2017-04-11
世界に目を向けることで、日本の抱える特殊な問題も浮き彫りになります。特に現代に大きな影響を与えている戦後日本の変容に関する記述は一読に値するものがあるでしょう。
これを含め、現在の日本はどのような経緯で形づくられたのか、そして現在の日本がこれから未来に向けて何ができるのか、分析していきます。
やや難しい言葉も出てきますが、35ページにわたる壮大な脚註がついているので問題はありません。これからを生きるうえで、いまの社会が置かれている状況を知るのに最適の一冊だといえるでしょう。
中学生以上のすべての人を対象に、宮台真司が愛と性について語る指南書です。中学2年生の女子と対談する形式で書かれていて、講義のようでもありつつ内容は学校ではとうてい教えてくれないこと。
愛を軸に、現代社会に潜む闇や問題点に鋭く切り込んでいきます。
- 著者
- 宮台真司
- 出版日
- 2015-10-03
日本は経済的に豊かでモノにや技術にも恵まれているのに、どうして幸せだと感じる人が少ないのか、社会学から見た幸福度と愛の関係とは……学生でもわかるように、やさしく解き明かしてくれます。
「人間はね、経験から学ぶ生き物だ。特に失敗から学ぶ生き物なんだよ。だから失敗なくして、ハートのある見識は育たない。だって、考えてみなよ。失敗や挫折がなく、誰よりも幸せな環境を生きてきた奴なんかに、君たちが学ぶに足る経験を喋れると思うかい?」(『中学生からの愛の授業』より引用)
意味や目的がわかっていても、経験をしていなければ説得力はありません。不倫がダメ、援助交際がダメだといくら説いたところで、当人たちにその道徳は通用しないのです。
また性行為の価値が低くなったがために、性の二極化が進んでいるという論理も興味深いところ。人によっては過激に感じる発言もあるかもしれませんが、さらけ出して語ることが幸せへの近道なのかもしれません。
AV監督である二村ヒトシと宮台真司が、性愛について対談をしている作品です。
いくら社会がよくなったとしても、性的に幸せになれるわけではない……男性も女性も満たされた人生を送るためにはどうすればよいのでしょうか。社会学の観点から分析していきます。
- 著者
- ["宮台 真司", "二村 ヒトシ"]
- 出版日
- 2017-10-27
本作では、日本人のセックスレス現象や、女性同士がセックスについて語ること、若者のセックスなど性愛に関する事柄がストレートに語られています。女性と男性の考え方の違いも掘り下げているので、異性間の恋愛観の溝を埋める心理学としても読むことができるでしょう。
損得感情のあるセックスと純粋な性愛関係の違いを浮き彫りにし、本当に心から誰かと愛しあうにはどうすればよいのか、答えへと導いてくれます。なかなかヘビーな内容ですが、対談形式なので自然とリラックスして読むことができます。
通俗的な概念を大胆に壊し、新しい概念を勢いよく放り込む宮台真司の真骨頂が味わえる内容です。
プライベートでは3人の子どもの父親である宮台真司。「男親」をテーマに、その価値や役割、意味を解き明かしてどのように行動するべきかを語っていきます。
小学校教員の岡崎勝とライターの尹雄大もコラムを寄せていて、自由な子育て論を展開しています。
- 著者
- ["宮台 真司", "岡崎 勝", "尹 雄大"]
- 出版日
- 2017-12-19
宮台真司は、現代社会に漂う不安をこう分析します。
「今は変化の激しい複雑な社会。他者のゴールは、自分のゴールではない。いきおい、ゴールのないまま自分探しが続き、終わりのない不安が続きます。だから大人になっても承認を欲しがります。親や家族からの承認では足りない。社会の中で自分のポジションを保つために他人の評価を気にして右往左往します」(『子育て指南書 ウンコのおじさん』より引用)
こんな不安のなかで、親は子どもにどんな体験をさせて、どのように善悪を教えていったらよいのかが記されています。
本作は、10人中10人が絶賛する完璧な子育て指南書ではありませんが、悪を完全に無いことにしようとする潔癖社会に少しでも疑問を持っている人にとっては響く内容だといえるでしょう。