サウザーが犬を飼って、挙げ句の果てに駄々をこねる!?シュウもレイも、みんなで大暴れ!超問題作をご紹介です。 さて、『北斗の拳 イチゴ味』はタイトル通り、不朽の名作アクション漫画『北斗の拳』のスピンオフ作品……ですが、その内容は公式のキャッチコピー「著作権の無駄遣い? 原哲夫風の北斗ギャグ!!」からわかるように、完全に原作ブレイカーのカオスなギャグ漫画となっています。 シリアスが行方不明になった、このおかしな『北斗の拳』をご紹介しましょう。本作は、スマホアプリから無料で読むこともできます!
オリジナルの『北斗の拳』は武論尊原作、原哲夫作画のハードボイルドアクション漫画でした。
ところが「イチゴ味」と名付けられた本作は、オリジナルとはひと味もふた味もテイストが異なります。
世紀末世界を舞台にした男達の熱き血潮が滾る物語は、ツッコミがほぼ不在の全員がボケ倒すカオスの坩堝へと変化しているのです。
それでいて見た目は原哲夫の作画そっくりなのですから、カオス度は天井知らず。劇画チックな登場人物が、(本人としては)大真面目にくだらないギャグや原作パロディを連発するところが、まさ見所なのです。
- 著者
- ["行徒妹", "河田 雄志", "原 哲夫", "武論尊", "行徒"]
- 出版日
そんな本作は、Webコミックサイト「WEBコミックぜにょん」やアプリ「マンガほっと」などで連載されている、河田雄志がシナリオ、行徒妹が作画担当しているギャグ漫画。
公式のキャッチコピー「著作権の無駄遣い? 原哲夫風の北斗ギャグ!!」からわかるように、完全に原作ブレイカーのカオスなギャグ漫画となっているのです。
本作はあまりのふざけ加減が逆に好評を博してか、コラボも多数展開されています。スリッパなどのグッズ展開、「ドラポ」の通称でお馴染みの『ドラゴンポーカー』、『新世紀エヴァンゲリオン』のパロディ漫画「ピコピコ中学生伝説」、吉祥寺のカフェなど、まさに多岐に渡るのです。
さらには、「たまごクラブ」とのコラボまで……!サウザーの守備範囲、おそるべしです。ちなみに、内容は「俺は聖帝、子育てにも退かぬ!」「父親に逃走はないのだああぁぁ!!」との意気込みのもと、父親の子育てを紹介しています。
そんな本作の魅力を、余さずご紹介していきましょう。
199X年。不毛の大地に無法が蔓延り、時はまさに世紀末の様相を呈していました。
そしてケンシロウは聖帝・サウザーと出会います。聖帝軍の行進にケンシロウが敢然と立ち向かいますが、帝王の体を持つサウザーに北斗神拳は通用しませんでした。が、通用はしないだけで、痛みはある様子。
ケンシロウとの対決もなんだかんだウヤムヤにしつつ、サウザーは物語から決して退場せずにしぶとく生き残ります。あの「引かぬ媚びぬ顧みぬ」の精神はどこへやら、とぼけた態度で今日も突っ走る聖帝。
『北斗の拳』のキャラクターが真面目にボケて、その世界観がシチュエーションコメディになり、本編のシリアス展開を荒唐無稽な笑いがぶち壊すのです!
漫画の内容からも容易に想像つくと思いますが、アニメの内容のめちゃくちゃカオスな本作。地上波だろうがなんだろうが、パロディてんこ盛りな内容なのです。
なかでも、もっとも問題作といえるのが、丸々1話、サウザーが歌って終わった回でしょう。世紀末アイドルユニット「南斗DE5MEN(なんとでごめん)」(リーダーとボーカルがサウザー)がデビューして、大事manブラザーズバンドの名曲『それが大事』をカバーしました。
まるで歌番組のような、衝撃的な内容。しかも、これが大好評を博し、DVDでは5分のフル尺のものが収録されることになったのです。他にも「いすゞのトラック」のあの曲(しかも、、トラックの知識紹介つき)をカバーしたりと、もうなんでもあり状態。
ちなみにセカンドシングルは『檄!帝国歌劇団』、サードシングルはシンをセンターに『慟哭』が展開されました。
クリアファイルが発売さるほどの人気ぶりを見せる彼ら。こうなってくると、次がどんな歌ネタがくるのか、楽しみでもあります。南斗DE5MENのファンのみんな!チェケラ★ですよ。
次のセクションからは、本作の見所をご紹介。ヤバすぎるサウザーや、あのシェルターの名場面のパロディまで!?
本作の基本は、『北斗の拳』のパロディです。
サウザーは、何度となく同じシチュエーションでケンシロウと戦います(ギャグなので)。そのシチュエーションの構図や配置は、往年の名場面と瓜二つ。状況だけを見れば原作と同じか、再演と見紛うほど。
そして、そこでくり広げられる熱い攻防――からの、しょうもないギャグで腰砕けになるのです。
原作に詳しければ詳しいほど、精通して何度も読み込んでいればいるほど、「この次はこう来る」という場面を絶妙に外して爆笑に転化していきます。基本的にそういったノリなので、原作愛溢れつつもパロディに寛容な方には打って付けです。
そして、もう1つ。こちらは原作好きに太鼓判を捺しておすすめしたい特徴ですが、原典にはなかったif展開が見られます。くだらないギャグと並行して、ある種のパラレルワールド的なストーリーが描かれるのも本作の魅力なのです。
『北斗の拳』ではご存知のとおり、北斗神拳伝承者ケンシロウが主人公でした。
しかし、本作は違います。主人公は南斗6聖拳が1人、南斗鳳凰拳のサウザーです。見た目こそ無慈悲な聖帝そのままですが、内面はまったくの別人。
自尊心が高いというよりは、単なるわがまま。一般常識が欠けており、子供のような言動で周囲を困惑させ、それにも関わらず高いカリスマと能力を誇る残念な人物として描かれます。
夕食がカレーではないというだけで暴れる聖帝の姿を、かつて想像することが出来たでしょうか。
なぜか北斗勢には敵がい心を抱いており、しょっちゅう対抗するのですが、その方法がいちいち児戯のようで、可愛らしくもあり馬鹿馬鹿しくもあり……。一方で、苦労人の一面もあるのが面白いところです。
天敵は、原作でもサウザーに傷を負わせた少年、通称「ターバンのガキ」。彼が出てくると、どんな状態でも、必ずサウザーの脚が刺されるという結果に集束します。
『北斗の拳 イチゴ味』はギャグ時空というか、コメディパロディならなんでもありという空気を存分に活かして、本編では早々に退場したり、因縁の果てに決着を付けたあのキャラこのキャラが勢揃いします。
その結果何が起こったかというと……夢の組み合わせが実現したのです。南斗6聖拳が一堂に会し、北斗4兄弟が欠けることなく揃い踏み。
想像で、あるいは妄想で。各種ゲームで補っていた夢のマッチングの真剣な絡みが見られるのです。それも、当時の原哲夫を想起させる絵柄。夢にまで見た光景が原哲夫(風の)絵が拝めるのですから、ファンにはたまりません。
南斗vs北斗はその最たるものですし、世紀末覇者ラオウによる修羅の国遠征も、原作ではついに実現しなかった出来事です。
特に感動的なのは、トキとアミバのやりとりです。偽トキとして猛威を振るっていたアミバが本人との交流して改心し、ともに医療の道に邁進していくのです。トキの後継者に見込まれるところなどは、ギャグ漫画とは思えない感涙のエピソードでした。
核戦争の際、死の灰が迫るなかをケンシロウ、ユリア、トキの3人が駆け抜けています。そして、ようやくたどり着いた避難用シェルター。しかし、そこは満員だとご婦人に告げられて……ん?けっこう余裕あるぞ!と、『北斗の拳』本編でツッコミどころ満載だった、この場面。
結局、満員だと言われてしまったことにより、トキが犠牲になって、ケンシロウとユリアをシェルターの中へ入れることになります。
『北斗の拳 イチゴ味』では、この名場面もネタにしているのです。シェルター内のご婦人から、本編同様「ここは もうひとり いえ・・・どうつめてもふたりまでです!!」と言われる3人。しかし、3人はそっとシェルターに入ります。
ところが、次の瞬間に3人とも外へはじき出されてしまうのです。懲りずに、今度は肩車をして入ろうとしますが、やはりはじき出されてしまう結果に。なぜ、どうしても入れないのか……その理由は、トキにも勝るとも劣らないパワーで、ご婦人が3人を吹っ飛ばしていたからなのでした。
本編で、一見入れそうなのになぜご婦人が断ったか謎でしたが、彼女が3人を入れることを拒んでいたから入れなかったのですね。納得(違う)!
199X年。世界は核の炎に包まれました。大地は焼け、海は干上がり、人類は死に絶えた……かに見えましたが、しぶとく生き残るどころか、けっこう順応して、それなりの生活を営んでいます。
- 著者
- 行徒妹
- 出版日
- 2017-12-20
サウザーは聖帝軍強化の名目で学校を建設して感謝されたり、なんやかんや音頭を取って南斗6聖拳をまとめたり、北斗4兄弟と仲良く対立したりと順調です。
そんなサウザーのもとへ、学校で拾われた子犬が届けられました。教師役を買って出ているトキ曰く、子犬は孤児だったサウザー自身であり、それを育てることで哀しみを知ることが出来るとのこと。
ケンシロウと同じく哀しみを背負えば、彼と同等以上に強くなる――という建前で、サウザーは犬を飼うことになりました。
一方、北斗4兄弟長兄のラオウは、シャチに請われて修羅の国へと向かう途中、第2の羅将ヒョウと戦うことに……。
サウザーのギャグはいつも通り。やはり1番の見所は、原作のパラレルワールドとして見ることの出来る修羅の国遠征でしょう。ラオウの剛拳と魔闘気の激突は痺れます。さりげにジャギも頑張っているのがポイントです。
ギャグ展開全開で突っ走ってきた本作ですが、なんと本巻ではマジのバトル展開に発展!?カイゼルとファルコの勝負がアツい!
なんだか名勝負満載の予感がすごい、最新9巻です。
- 著者
- 行徒妹
- 出版日
- 2018-09-20
……と、期待をあおる文章でスタートしましたが、本巻はあの名作のパロディーからスタートします。そう、『日本昔ばなし』です!北斗4兄弟の歴史が、なんだったら本編よりわかりやすく(失礼)書かれています。
そのなかでも注目したいのは、3男・ジャギの存在。本編でも残念なイメージが強い彼ですが、本巻での彼を見ると、残念をとおり越して、もはや切ないです。思わず抱きしめてあげたくなること必須でしょう。
とはいえ、先ほどご紹介したとおり、本巻はシリアスなバトル場面が多めな一冊。『北斗の拳』本編のファンも思わず唸ってしまうような、そんなバトルも見られるかも!特に、改心して別人になったアミバには要注目です。
いかがでしたか?『北斗の拳 イチゴ味』はギャグなのに、あるいはギャグだからこそ、原作では出来なかった夢の組み合わせが実現しています。原作にこだわるのも1つの楽しみ方ですが、一風変わった楽しみ方だと思ってぜひお試しください。