会田誠のおすすめ作品5選!美少女絵やエログロを開拓した天才現代美術家!

更新:2021.11.15

葛飾北斎「蛸と海女」のパロディである「巨大フジ隊員VSキングギドラ」で注目を浴び、その後もエロスとグロテスクが融合した作品で知られる会田誠。日本のみならず海外でも人気を博している現代美術家です。この記事では、そんな彼の魅力がよくわかる作品をご紹介しましょう。

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会田誠とは

 

1965年生まれ、新潟県出身の現代美術家です。東京藝術大学・大学院を卒業。「レントゲン藝術研究所」で開催された展覧会「フォーチューンズ」で本格的に活動をはじめます。

その後は絵画だけでなく写真や立体作品、映像作品、都市計画などの分野で、国内外を問わずに活躍中。個展やグループ展などを数多く開催していることから、彼の作品を見たことがある方も多いでしょう。

奈良美智や村上隆とともに「新ジャポニズム」の代表的な作家といわれ、美少女やロリコンなどをテーマにしたエログロや、戦争・暴力の賛美など、社会通念や道徳に対するアンチテーゼを盛り込むタブーな作風で知られています。

ここでは、そんな彼の魅力がわかる小説やエッセイ、対談集などおすすめの書籍を厳選してご紹介していきます。

 

会田誠の小説、覗きに魅せられた男子高校生の手記『青春と変態』

 

地味で友達も少なく、目立たない男子高校生の会田君。本書は、彼が書いた日記という形式で進んでいく会田誠の処女小説です。

会田君の趣味は、なんと「覗き」。所属しているスキー部の合宿に参加することになりましたが、彼の目的はもちろん女子生徒たちのいろんな行為を覗くことです。

その手法や排泄の描写はかなり細かく、読者が容易に脳内で映像化できてしまうほど。センセーショナルなテーマとともに、会田誠のアート作品同様エログロ要素が各所に散りばめられ、変態少年の青春を疑似体験するかたちで読んでいると、つい背徳感に浸ってしまいます。

 

著者
会田 誠
出版日
2013-10-09

 

バレなければ被害者のいない犯罪だと、趣味のトイレ覗きを正当化する会田君には、好きな女の子がいます。けれども彼は変態なので、好きな女の子と自分がどうこうなりたいなんて考えません。それどころか彼女を他の男とくっつけるべくキューピット役を買って出て、ふたりが愛を交わすのを覗こうと考えるのです。

会田君は女性器を含めた体や排泄の様子などあらゆるものを覗くのですが、見ているものに性的に興奮しているというよりは、人が隠しているものを観察するという行為自体に喜びを見出しているようです。

私小説風な書き方や下品ともいえる言葉の羅列、しつこいほどの覗きの描写に好みは分かれるかもしれませんが、会田誠のアート作品に惹かれる方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。

ちなみに表紙になっているのは、会田が自身の分身として位置づけているおにぎり仮面の「考えない人」という作品です。

 

会田誠の初エッセイ集『カリコリせんとや生まれけむ』

 

家族のことや創作のこと、はたまた2ちゃんねる、中国、発達障害、現代美術に関しての考察など多岐にわたるテーマについて語っている会田誠のエッセイです。

普通だったらさらけ出さないようなことについてもかなり赤裸々に語っていて、アート自体には知見の無い方も興味をもって読める内容になっています。

 

著者
会田 誠
出版日
2012-10-10

 

「20世紀が始まって以来、形式をことごとく破壊していって、ついには一作家一手法のような超個人主義に行き着いた現代美術では、教育は原理的に不可能なものとなっている。「オレはオレのことしか分からない。キミらの作りたいものなんか分からない。自分の考えをキミらに押し付ける気もない。だから教えることなんか何もない!」というのが偽らざる気持ちだった。」(『カリコリせんとや生まれけむ』より引用)

引用したような現代美術に対する会田の思いはもちろん、彼を形作ったともいえる家族など原点についても多くのページが割かれています。

厳格な教育者だった会田誠の父親がアルツハイマーを患ったことで小さくなっていく様子や、自身の母親のどこか芝居がかった教育論、母性の喪失、そうした家庭で育った自分と姉のストレスなどを冒頭から語り、彼が自身について隠すことなく語ろうとしている姿勢がうかがえます。

また会田誠自身と彼の息子が発達障害であることも公言。子どもの教育について語る部分は注目です。学校でのトラブルや発達障害と診断されることの弊害などについては、もしかしたら読者からは反発を受ける内容かもしれませんが、天才と問題児の紙一重のところにいる子どもたちの教育について一石を投じています。

 

戦争と芸術を読み解く対談集『戦争画とニッポン』

 

戦争画とは、国が戦時中に動員した従軍画家に描かせた戦争記録絵画のことです。

一時期は戦争画や従軍画家たちは戦争責任の一端を負わされる形で意図的にタブーとされていた時期もありましたが、刻々と変わっていく日本の歴史観のなかであらためて評価されつつあります。

本書は、会田誠と美術評論家の椹木野衣という戦争を知らない世代の2人が、戦争画について真摯に考え、多方面から語り合った対談集です。

 

著者
["会田 誠", "椹木 野衣"]
出版日
2015-06-24

 

「鬼畜米英まっしぐらで、かなり偏ってイデオロギーに染まった、ひどい絵があるかと思っていた。ところが、蓋を開けてみたら何て言うんですかね、どれもやさしい。だから、『本当の戦争画はやさしい絵が多いな』というのが第一印象でした。」(『戦争画とニッポン』から引用)

戦時中の作品だけでなく、戦後に描かれた戦争をテーマにした絵画も紹介されていて、その違いなどについても考察しています。

現代からあらためて戦争を振り返る話が多く、「もし自分が戦時中に生まれていたら戦争画を描いていただろうか」という会田誠の問いに、芸術家としての葛藤がうかがえるでしょう。

70年以上前に終わった戦争を振り返り、芸術と戦争の関わりを語り合うなかで、会田は自らの戦争をテーマにした連作にまつわる意識を語っています。彼の作品を見たことがある方は、また違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。

 

会田誠が選ぶ至極の少女画集『藤田嗣治の少女』

 

藤田嗣治は、1920年代にパリを中心に活躍した画家「エコール・ド・パリ」のなかの代表的な日本人画家です。日本画の技法を油彩画に取り入れた画法と、死ぬまでその秘密を明かさなかった彼独自の「乳白色の肌」をもつ裸婦像などで人気を博しました。

本書は、会田誠が藤田嗣治の作品群から少女を描いたものに着目し、時代別に85点を紹介している画集です。

 

著者
藤田 嗣治
出版日
2018-02-17

 

日本で生まれ、パリで才能を開花させた藤田嗣治は、帰国した後に日中戦争や第二次世界大戦で従軍画家として戦争絵画を残しました。

戦後は、戦争協力者の烙印を押され、逃げるようにパリに戻り、フランスに帰化します。本書では従軍画家になる前と後とで少女画に違いがみられる点にも着目し、その変化についても解説しているのです。

藤田の少女画はモデル不在だそうで、空想の少女を描き続けていました。作品によってはポップアート的で、会田誠は彼を「早すぎたアンディ・ウォーホル」と評しています。

背景に性的なものを背負っている会田の少女画と比べると、藤田の少女画はあまりにも無垢。このような視点から解説をできるのも、会田誠ならではでしょう。

 

会田誠とサド、澁澤のコラボレーション『ジェローム神父―ホラー・ドラコニア少女小説集成』

 

サディズムの由来となったマルキ・ド・サドは、フランス革命前後の激動の時代を生き、人生の大半を放蕩と虐待の罪で刑務所や病院で過ごした人物です。貴族の特権を利用して性的蛮行に耽り続けたのち、獄中で自らの妄想を描き続けたことでも知られています。

そんなサドの著作は、日本では澁澤龍彦が翻訳した『悪徳の栄え』や『ソドムの百二十日』などが有名でしょう。

本書は、澁澤が訳したサドの作品に、会田誠が挿絵を手掛けたものになっています。

 

著者
マルキ・ド・サド
出版日
2012-01-12

 

マルキ・ド・サドの作品は、全編にわたって凌辱的なシーンが延々と描かれる倒錯文学です。本作も例にもれず、悪辣でありながら聖職者の仮面をかぶった主人公がひたすら少女たちを痛めつけ、犯し、殺す内容になっています。

ただ澁澤龍彦の翻訳が不思議と耽美なイメージを与え、エログロ一辺倒の作品ではなく物語に深みをもたせているのです。

サドの異常性愛と残虐性、澁澤の耽美で幻想的な魅力に、会田誠の絵画は絶妙にマッチ。作品集としても高い完成度を誇っています。

かなり豊富に挿絵が収録されているので、少女たちのエロティックな残酷性を堪能することができるでしょう。

 

会田誠は、そのセンセーショナルな作風から好みの分かれる芸術家ではありますが、現代アートを語るうえで外せない人物。ご紹介した作品も、読んでおいて損はないでしょう。

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