イモリとヤモリ、名前も姿も似ていますが、両者の違いをご存知でしょうか。この記事では、簡単な見分け方や、イモリの生態、毒性、飼育方法などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
有尾目イモリ科イモリ属に分類される両生類の一種です。漢字で書くと「井守」。井戸の中に暮らし害虫を食べることから、井戸を守る存在と考えられ名付けられました。
「イモリ」と呼ばれている種のほとんどは、正確には「アカハライモリ」という名前です。日本の固有種で、本州、四国、九州に生息しています。水田や川の澱みなど流れのない水辺で暮らしています。
体長は10cmほどです。背中側が黒や茶褐色で、腹部は赤色に黒い斑点模様が入っています。皮膚の表面がザラザラしているのが特徴です。
脊椎動物としては再生能力が高いことで知られ、たとえ尾を切断されたとしても骨まで再生することができます。再生というとトカゲのしっぽも有名ですが、彼らは骨まで再生することはできません。イモリはそのほかにも指先や目のレンズなども再生することができ、その能力の高さは医学的にも注目されています。
主食は昆虫やミミズなどで、他の両生類の卵や幼生なども食べます。寿命は20~25年と、比較的長生きだといえるでしょう。
かつては市街地でも姿を見ることができましたが、近年では個体数が減少し、2006年に環境省レッドリストで準絶滅危惧種に登録されました。
お腹の部分を見てみると、赤地に黒の斑点という派手な色合いをしています。これは、毒をもっていることを他の生き物に知らせるための警告色と呼ばれるものです。陸上で強い刺激を受けると、横に倒れて体を反らせ、お腹を見せます。
イモリの毒は「テトロドトキシン」というもので、フグがもっている毒と同じ種類です。日本に生息する両生類でこの毒を持っているのは、イモリだけだといわれています。
人間が触っただけでは問題ありませんが、その手で目をこするなどすると危険です。症状としては痛みが出たり炎症を引き起こしたりする場合もあります。
ただイモリは、江戸時代から精力剤や惚れ薬として用いられてきました。現在でも一部の地域では焼いて食べることがあるそうで、これまでイモリを食べたことによる死亡例は報告されていません。
イモリとヤモリは、名前だけでなく見た目もそっくりです。最大の違いは、イモリが両生類であるのに対し、ヤモリは爬虫類であるということ。また生息場所も、イモリは水辺を好む一方で、ヤモリは屋内を好みます。
実は名前を漢字で表記すると一目瞭然です。水辺を好み害虫を食べてくれることから「井戸を守る存在」と考えられた「井守」と、屋内に生息し害虫を食べてくれることから「家を守る存在」と考えられた「家守」。こうしてみるとわかりやすいでしょう。
また外見でいえば、お腹に大きな違いがあります。お腹が赤いのがイモリ、赤くないのがヤモリです。
ちなみに、両者とトカゲも見た目がよく似ています。トカゲはヤモリと同じく爬虫類ですが、ヤモリが夜行性であるのに対し、トカゲは昼行性です。またトカゲにはまぶたがあり瞬きをしますが、ヤモリにはまぶたがなく、眼を舌で舐めて乾燥から守っています。
生息場所や行動時間、見た目をよく観察して見分けてみてください。
実はペットとしても人気があるイモリ。餌をしばらくやらなくても生きていけるほど丈夫なこと、寿命が20~25年と長いこと、歩く姿や泳ぐ姿が可愛いことがその人気の理由に挙げられるでしょう。
ペットショップなどで購入することができ、オス・メス関係なく1匹200円ほどから販売されています。
卵から飼育をする場合、幼生、幼体と姿を変えながら成長し、成体として成熟するまでに3~5年かかります。水中で生活する幼生の時期は、動くものなら何でも口にするので、複数飼育をする場合には共食いに注意が必要です。
飼育に必要なものは、水槽、フタ、底砂、陸地、温度湿度計です。
水槽は45cm以上の大きさのものを用意しましょう。脱走を防ぐためにフタは必須です。底砂は1cmほどの厚さで敷き、亀用の浮島や水草などで陸地を作ります。また室温や水温も一定に保つ必要があります。15~20度くらいの水温がイモリにとって快適な温度だといわれていて、10度以下に下げると冬眠させることが可能です。
ペットショップなどではイモリ用のエサが売られていますが、カメ用のエサでも問題ありません。またメダカやエビ、イトミミズといった生餌も大好物です。
イモリは両生類の変温動物です。冬場に気温が下がってくると、代謝能力が落ちます。必要なエサの量もその分減るので、注意してください。夏場と同じ量を与えてしまうと消化器官に負担がかかり、消化不良を起こす可能性があります。食べる様子を観察しながら調整をしてあげてください。
またイモリには毒性があるため、触った後には必ず手洗いをしましょう。
- 著者
- 松岡 達英
- 出版日
- 2016-01-27
新潟生まれの著者が、ふるさとの池を舞台に紡ぐ心温まる物語です。男の子に捕まってしまったイモリくんを、なんとか池に返してあげようと頑張るヤモリくん。似たもの同士の大冒険が描かれています。
絵本を読みながら、両者の違いについても学べるでしょう。優しいタッチの自然の風景にも心がなごみます。
読後はつい出かけて彼らを探しにいきたくなってしまう1冊です。
- 著者
- 川添 宣広
- 出版日
- 2012-10-01
両生類のイモリと爬虫類のヤモリ。その可愛らしい姿から、ペットとしての人気も高まっています。本書では、そんな両者をはじめ、カメやカエル、トカゲ、ヘビにいたるまでさまざまな両生類と爬虫類の飼い方を解説しています。
苦手意識がある方でも思わず目を留めてしまうような、可愛らしい姿の写真が多く掲載されているのも特徴です。眺めているだけでも楽しめるでしょう。
飼育をしようと考えている方はもちろん、飼えないものの興味がある方にもおすすめの1冊です。
イモリとヤモリ。かつては人間にとって身近な生き物で、両者の違いを答えられる人がほとんどだったそうです。興味をもたれた方は、ぜひ紹介した本を読んでさらに魅力を知ってみてください。