著述家として多数の書籍を発表する一方で、ディレクターやコメンテーターとしても活躍している湯山玲子。痛快な物言いで人気を博しています。この記事では、そんな彼女の作品のなかから特におすすめのものを5冊ご紹介していきましょう。
1960年生まれ、東京都杉並区出身の著述家、ディレクター、コメンテーターです。学習院大学の法学部を卒業して、チケット事業や出版事業をおこなう「ぴあ」に入社。その後フリーの編集者となります。雑誌や単行本の編集、文章の執筆、広告ディレクターとしても活躍しました。
著述家としては、恋愛やファッション、食、音楽など幅広いテーマを扱い、歯に衣着せぬ物言いで読者を楽しませています。
近年ではテレビ番組のコメンテーターを務めるなど、お茶の間にも浸透。多忙から10kgも体重が増加したという経験を活かし、ダイエットに関する発信も多数おこなっています。
アラフィフになった湯山玲子が自身の40代を振り返りながら、性、美容、健康、仕事などについて自由に語ったエッセイです。
40代はちょうど人生の折り返し地点。ファッションやメイクなどは、自分の好みと周りからの目線に乖離ができ、これからどう身の振り方を変えていけばいいのか悩む時期でもあるそう。悩める四十路たちを指南してくれる内容です。
- 著者
- 湯山 玲子
- 出版日
- 2013-10-25
「海外のクラブでは、太めの身体をボディコンに包み、しかもベリーショート。どう見ても70キロ以上の女性とスタイリッシュなイケメンのカップルをよく見たりしますが、そういったルックスにきちんと『女性』を感じて、欲情できるような文化や思考回路、そして身体的なタフさを、日本人男性には期待できないのです」(『四十路越え!』より引用)
痛快な口調で自由気ままに語っているように見えて、ドキリとするような鋭さで本質に切り込む湯山玲子。この緩急が彼女の文章の魅力でしょう。
また「40代女性の性欲」「女性のマスターベーション」という、ともすればタブーとされてきたトピックも取りあげています。海外の事例と独自の見解を交えつつ、本来あるべき姿に導いてくれます。文章自体が単純に面白いので、女性でも男性でも楽しめる一冊です。
「ビッチ」とは、直訳すると「メス犬」。日本では悪口として使われることが多いでしょう。
本書は、性欲が旺盛で、それを実践して憚らない女性たちの生態を、「ビッチ」というキーワードをもとにポジティブに解説した一冊です。
- 著者
- 湯山玲子
- 出版日
- 2012-04-27
「戦乱の世に騎士たちが女性たちを先に行かせ、敵に襲われなければ自分たちも先に進むというのがその意味だそう。(中略)『お先にどうぞ』とは、決して女性を尊重する風習のことではなかったのです。」(『ビッチの触り方』より引用)
「レディーファースト」やタイトルにもなっている「ビッチ」など、耳や目に入った瞬間に固定のイメージが浮かんでくる言葉を異なる角度から眺め、性に関する誤解や思い込みを解いていく試みがされています。
後半に収録された「ビッチ図鑑」では、「スポーティー・ビッチ」や「森ガール・ビッチ」「路面カフェ・ビッチ」などさまざまなビッチをイラスト付きで紹介。また巻末には岩井志麻子との対談もあり、一冊で読みごたえたっぷりです。
「出世」「お金」「モテ」……男性の原動力でもある一方で、彼らを縛りつけて自由を奪ってもいるこの3項目。
本書では、これらの呪縛をいかに解いていくのか解説しています。
- 著者
- 湯山 玲子
- 出版日
- 2015-01-31
会社での競争や結婚、母親との関係性など、男性がこじらせてしまいがちなテーマを取りあげ、具体例とともに分析していきます。なぜこじらせてしまうのか、この呪縛から逃れることができないのかが丁寧に記されていて、社会的背景や文化的背景にまで話はおよび、 湯山の物事を捉える目線が光る内容です。
基本的には男性に向けたメッセージが込められていますが、彼らが抱えている不自由さには少なからず女性も関係しています。男性読者は激しく同意し、女性読者は胸に手を当ててじっくり考えたくなる一冊です。
フランス革命の前後を舞台に、男装の麗人オスカルとフランス王妃マリー・アントワネットの人生をドラマチックに描いた漫画『ベルサイユのばら』。子どもの時に夢中になって読んだ方も多いのではないでしょうか。
本書は、そんな「ベルばら」をさまざまな角度から掘り下げた、大人のための一冊です。
- 著者
- 湯山 玲子
- 出版日
- 2013-05-01
フランスの歴史やファッション、食事情など、大人だからこそ理解できる作品のバックグラウンドを楽しめます。「ベルばら」の世界観はキラキラとしていますが、実際のベルサイユ宮殿は目を覆いたくなるほど汚かったなど、裏話も盛りだくさん。オスカルやアントワネット、アンドレなど主要人物だけでなく、目立たない脇役たちについても語っています。
また西本智実、島田雅彦、よしながふみなど著名人が語る作品の考察も見どころです。「ベルばら」とBLを比較してみたり、当時のフランス思想や流行について語ったりと、自由な語らいをくり広げています。
さらに、カラーイラストが収録されていて、ビジュアル的にも楽しめるのが嬉しいところ。かつての「ベルばら」好きにも、これから読もうと考えている方にもおすすめの一冊です。
未曾有の災害といわれた「東日本大震災」は、日本人の生き方や考え方をどのように変えたのでしょうか。
本書は、湯山玲子とフェミニストで社会学者でもある上野千鶴子が、悲しみを快楽に変えていく方法について模索していく対談本です。
- 著者
- ["上野千鶴子", "湯山玲子"]
- 出版日
- 2015-04-10
「フェミニズムのゴールは、男並みの女を作ることではないんですよね。もともと男に有利な世界にできてるんだから、そこで頑張ったって絶対に無理で、そこで男並みの女を目指すのは違ってる。もともと向こうのほうがいいカードを持っているという社会の構造自体を、いじらなきゃいけない。」(『快楽上等! 3.11以降を生きる』より引用)
フェミニスト界の重鎮である上野千鶴子とカルチャー界の先駆者的存在である湯山玲子が、お互いの意見をぶつけ、擦りあわせながら生き方を語ります。
3.11以降、より強くなっていった同調圧力や、空気を読むということ。しかし本来はもっと自由や快楽を求めてよく、そのエネルギーこそが日本を変えていくそうです。読後は、「思い切り求めてもよいのだ」と思えるようになるでしょう。