江川紹子のおすすめ本5選!オウム事件を追ったジャーナリストの作品

更新:2018.8.10

オウム真理教を追ったジャーナリストとして、真っ先に名前のあがる人のひとりに江川紹子がいます。自身も命を狙われながらも取材を続け、菊池寛賞を受賞しました。この記事では、オウム事件の裁判傍聴ルポを含め、彼女の著作のなかからおすすめのものを5作ご紹介します。

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江川紹子とは

 

1958年生まれ、東京都出身のジャーナリストです。早稲田大学の政治経済学部を卒業した後、神奈川新聞の社会部記者として活躍。29歳で独立してフリ―ライターになりました。

1989年、息子がオウム真理教に出家したことを相談してきた家族に、弁護士の坂本堤を紹介。しかしその後坂本一家が殺される事件が起き、これを機にオウム真理教について取材を重ねていくことになりました。江川紹子自身も命を狙われるなど、壮絶な経験をしています。

オウム真理教以外の宗教や政治問題にも深く切り込んだ取材をし、多数の著作を発表しているほか、インターネット上でもさまざまな論評を展開している人物です。

 

江川紹子の裁判傍聴ルポ『オウム事件はなぜ起きたか 魂の虜囚』

 

1989年に起きた「坂本堤弁護士一家殺害事件」、1994年の「松本サリン事件」、1995年の「地下鉄サリン事件」などオウム真理教に関する一連の事件の裁判を傍聴し続けてきた江川紹子。なぜ彼らが犯罪に手を染めることになったのか、実行犯の証言から明らかにしていく作品です。

「週刊文春」「週刊読売」での連載記事に加筆修正したもので、テレビでは報道されきれていない信者たちの人間性や、オウム真理教に入信することになった経緯を垣間見ることができます。

 

著者
江川 紹子
出版日

 

「私たちの目は、事件やそれを引き起こした集団の特異性に向けられがちだ。そんな異様な集団の問題は、自分とは無縁と考えることで、安心したい気持ちもないではない。しかし、きわめて「まとも」に見える法廷での林を見ていると、そんな楽観論には何の根拠もないことに、否応なく気づかされる。」(『オウム事件はなぜ起きたか 魂の虜囚』から引用)

裁判を傍聴するなかで江川紹子が注目していたのは、オウム真理教の元幹部らの人物像です。どこにでもいる普通の若者たちがなぜオウム真理教に傾倒し、犯罪に手を染めるにいたってしまったのか……加害者となってしまった信者たち個々の人物像に迫ります。

長きにわたって取材を続けてきた江川にしか書けない文章。淡々と、それでも熱い思いが込められた傍聴記録です。

 

江川紹子のインタビュー集『人を助ける仕事―「生きがい」を見つめた37人の記録』

 

福祉や医療など、直接的に「人を助ける」仕事に就いている20代から30代の若者を取材した作品です。

彼らがどうしてその仕事に行きついたのか、地道な仕事のなかで何に「生きがい」を感じているのかをレポートしています。

 

著者
江川 紹子
出版日
2004-03-01

 

消防士や自衛隊員、看護士など、取材した人物は総勢で37人。彼らがどのような経緯でその仕事を選んだのかが書いてあります。

特徴は、決して紹介している職業に就くことを薦めているわけではないということ。わかりやすい形で「人を助ける」仕事に就いた当事者の人間ドラマを描いている作品です。

世の中にある仕事は、ほとんどが何かしらの形で人のためになっているでしょう。そして忘れてはいけないのが、オウム真理教に傾倒していった若者も、最初は「世の中を救いたい」と信者になっていったのです。

「生きがい」とは何かという壮大なテーマを背景に、若者たちが自らの仕事を選択した経緯を見つめます。進路に悩む学生はもちろん、大人の方も自らの生き方を考えなおすきっかけになる一冊です。

 

江川紹子とともに考える『勇気ってなんだろう』

 

哲学的に「勇気とは何か」と論じている作品ではなく、実際に困難な局面に立たされた時に行動を起こした人たちへインタビューをし、まとめた作品です。

孤独のなかで、仲間に支えられて、命や地位と引き換えに……さまざまなエピソードから、本当の「勇気」とは何かあぶり出していきます。

 

著者
江川 紹子
出版日
2009-11-21

 

取材対象は、アルピニストの野口健、弟を北朝鮮に拉致された蓮池透、愛知県警の裏金問題を現職警察官として内部告発した仙波敏郎、兵役の拒否を貫き続けているイスラエルの人々などです。

彼らの置かれている状況は普通の人では考えられないほどハードですが、読んでみると悩みや葛藤などの根本の部分は同じで、1歩踏み出すことができるかどうかなのだと思わせてくれます。

日々の生活のなかでつい目をつぶっている「ちょっと引っ掛かること」にどう対応するべきなのか、周りに流されるのか自分の信念を貫くのか、そこに「勇気」があります。

「ジュニア新書」ですが大人も十分満足できる一冊です。

 

日本人として知っておきたい近代史『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』

 

韓国併合、満洲事変、日韓基本条約、日中国交正常化、慰安婦問題などを検証し、歴史認識について日本と特定アジアとの間に生じる歴史認識問題の背景や経緯に切り込む一冊です。

従軍慰安婦問題や東京裁判など、戦後責任の本を多数執筆している法学者の大沼保昭に、江川紹子が聞き手となってインタビューした内容をまとめています。

 

著者
大沼 保昭
出版日
2015-07-24

 

太平洋戦争後の日中・日韓関係を軸に、日本の戦後処理や近代史について語っています。なぜ歴史認識の齟齬が生まれてしまうのか、統一することはできないのかを感情を混ぜることなく知識として学べる一冊です。

特に大沼が理事として関わっている「アジア女性基金」については、なかなか報道されない活動実態などが描かれ、興味深いでしょう。彼はこの基金の運用をする過程で、アジア諸国の慰安婦の方と交流をもったそうです。

また、日本が歴史認識問題に取り組むことは、欧米各国の植民地支配問題を解決する先駆けになることも指摘。歴史を振り返るだけでなく、これからの世界情勢についても考えを深められる一冊です。

 

江川紹子が綴るボランティア犬の成長物語『家族の愛犬から地域へ── もか吉、ボランティア犬になる。』

 

和歌山市でボランティア犬として活躍している「もか吉」。防犯パトロールをしたり、介護施設でのセラピーにあたったり、動物愛護教室に参加したりしています。

ただもともと「もか吉」は、野良犬として保護され、大の人嫌いだったそう。そんな彼がどのようにして地域の人と関わりあうボランティア犬になったのか、その成長と経緯が綴られた作品です。

 

著者
江川 紹子
出版日
2015-12-15

 

「もか吉」が保護されてからボランティア犬になるまでの4年間、江川紹子は何度も和歌山県に足を運び、取材を続けたそうです。

「もか吉」は拾われた時はボロボロの死にかけ状態。またアレルギー体質で病弱なうえ、対人恐怖症でもあります。そんな彼が、まずは飼い主一家の愛犬になり、そして地域の愛犬へと成長していく様子に、取材をしている江川が感動していることがありありと伝わってきて、読者も胸打たれるでしょう。

写真も豊富に掲載されているほか、漢字にはルビが入っているので、小学校低学年のお子さんでも読むことができる作品です。

 

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