5分でわかるWTO!加盟国や中国参加の経緯などをわかりやすく解説!

更新:2018.8.24

トランプ大統領が脱退を検討していると報道されたWTO。もし実現してしまったら、どのような影響が出るのでしょうか。この記事では、加盟国や前身であるGATTとの違い、中国が加盟するまでの経緯などを含めてわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。

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WTOとは?加盟国など概要をわかりやすく解説

 

「World Trade Organization」の略称で、日本語では「世界貿易機関」といいます。自由貿易の促進を目的とした国際機関で、1995年1月1日に、従来の「GATT」を発展解消させる形で成立しました。

原加盟国は日本を含めて77ヶ国、2018年現在の加盟国は164の国と地域。もっとも新しい加盟国は2016年に加盟したリベリアとアフガニスタンで、22ヶ国が申請中です。

常設の事務局がスイスのジュネーブに置かれていて、現在はブラジル出身のロベルト・アゼベド事務局長のもと約640人のスタッフが働いています。

基本原則は「自由」「無差別」「多角的通商体制」の3つ。これらの原則のもと、物品の貿易だけでなく金融や情報通信、知的財産権、サービスにいたるまで包括的な国際通商ルールを協議するほか、加盟国間の貿易紛争の解決にもあたっています。

 

WTOの特徴と、GATT(ガット)の違い

 

WTOの前身であるGATTは、「General Agreement on Tariffs and Trade」の略で、日本語では「関税及び貿易に関する一般協定」といいます。

第二次世界大戦後、各国の保護主義的貿易政策が戦争の一因になったという反省に立ち、貿易の自由化を促進するために、国際通貨基金や国際復興開発銀行とともに国際貿易機関の設立が計画されました。

その準備に際し、暫定協定として締結されたのがGATTです。その後、国際貿易機関の設立が廃案となったため、GATTが発展、強化され、多角的貿易体制の基礎を築いて世界経済の成長に寄与してきました。

しかし、1986年に開始されたウルグアイ・ラウンド交渉において、貿易ルールの大幅な拡充がおこなわれると、あらためて常設の機関が求められるようになり、GATTの事務局やスタッフを受け継ぐ形でWTOが設立されたのです。

GATTがあくまでも暫定的な「協定」であったのに対し、WTOは強固な基盤を持つ常設の「機関」であるということが大きな違いだといえます。

貿易紛争にあたっては、WTOは紛争処理機関(パネル)によって解決に導く機能を有していて、パネルの提訴に対しては全加盟国による反対がなければ採択されるというネガティブ・コンセンサス方式を採用。この方式によって、コンセンサス方式を用いていたGATTと比べて強力な紛争処理能力をもっていることが特徴です。

 

中国のWTO加盟の概要を解説!

 

中国(中華人民共和国)は2001年に加盟して、WTOの143番目の加盟国となりました。交渉開始から足掛け15年におよぶ紆余曲折を経て、最終的に加盟したことは、世界経済にも大きな影響を与えています。

元々、GATTの原締約国のひとつであった中華民国は、中華人民共和国との内戦に敗れて台湾に逃れ、1950年にGATTからの脱退を通告。その後、中国は長くGATT体制の枠組みの外にありました。

1980年代に入ると、鄧小平政権の推進する改革開放路線のもとで実質的な資本主義化が進みます。1986年には「GATT締約国としての地位の回復」を申請しました。台湾政府によるGATT脱退通知を無効なものとして、新規加盟ではなく地位の回復を申請したのです。

当初中国の加盟交渉は順調に進んでいましたが、1989年6月に起きた「天安門事件」により情勢が一変すると、交渉はストップしてしまいます。

その後も中国は江沢民政権のもとで工業化を果たし、世界経済における存在感を高めていきました。その結果、2001年に開かれた閣僚会議において満場一致で加盟が可決します。

WTOに加盟したことで中国の貿易はさらに拡大し、日本を抜いて世界第2位の経済大国に躍進する原動力となりました。

 

アメリカがWTOから脱退?その影響は

 

2018年7月、「米国第一主義」を掲げるアメリカのトランプ大統領がWTOからの脱退を示唆し、議会の承認なく関税を自由に引き上げられるようにする法案の起草を指示したという報道がされ、世界中に衝撃を与えました。

仮に世界最大の経済大国であるアメリカの脱退が実現した場合、第二次世界大戦後に構築されてきた世界貿易システムが崩壊するのではないかと懸念されています。

WTOのもとで、国際社会は一連のルールに従い、不公平な貿易慣行の排除と市場の開放を目指してきました。この体制が崩壊してしまうと、ルールの無い不公平な貿易慣行が横行し、自国の市場を守るために互いに関税をかけあうようになる可能性があるのです。

トランプ大統領が起草を指示したという「米国公正互恵関税法(仮)」内容は、1930年に成立した関税に関する法律「スムート・ホーリー法」を彷彿とさせます。

スムート・ホーリー法でアメリカは、2万品目におよぶ輸入品に過度な関税をかけました。多くの国はアメリカからの輸入品に報復関税をかけ、アメリカの輸出入は半減、大恐慌の引き金になったといわれています。

EUや中国、カナダに対して追加関税を発動したトランプ大統領。EU、中国、カナダもまた報復関税を発動するなど、ますます貿易戦争は深刻なものになりつつあります。

ただWTOにも改革が必要だという声があるのも事実です。不公平な貿易に対して制裁を科す権限を持つWTOですが、為替操作が罰則の対象になっていないことや、ダンピングを取り締まる罰則がないこと、デジタル貿易に対する対処が弱いことなどが課題として挙げられています。

また加盟国からも、紛争解決について時間がかかりすぎるという不満の声があがっているのが現状です。自由貿易体制を守るためにもWTO自身が変革しなければならないと唱える専門家もいます。

 

グローバル経済の流れを紐解く一冊

著者
["ケネス ポメランツ", "スティーヴン トピック"]
出版日
2013-08-22

 

「グローバル化が進展する現代」といわれますが、グローバル化は何も最近始まったものではありません。古代からシルクロードによって結ばれていたユーラシア大陸は、大航海時代を迎え、そのつながりを世界に広めました。それから約500年、世界はグローバルに、ダイナミックにつながり、2度の世界大戦を経てWTOを設立するなど自由貿易体制の構築にいたったのです。

本書では、グローバル化を語るうえで外すことのできない砂糖やコーヒー、茶、綿花などの商品や、東インド会社、コロンブスなどの人物にまつわる歴史を通じて、貿易がいかに世界の姿を変えたのかを紐解いていきます。

作者はアメリカの歴史学会で会長を務めていた歴史学の権威で、多岐にわたる研究の成果をわかりやすくまとめてくれています。

いま我々が謳歌しているグローバルな自由貿易がどのような経緯で生まれ、WTOのような国際機関を生み出すにいたったのかがよくわかるでしょう。

 

WTOなど世界経済の見方を浜矩子流に解説

著者
浜 矩子
出版日
2016-11-04

 

日々、新聞やニュース番組で耳にする経済問題の数々。 わかっているようで理解はできていないことを、辛口のエコノミストである浜矩子が歴史を紐解きながら解説してくれる作品です。

トランプ大統領がWTOからの脱退を示唆したことで揺らぎはじめた戦後秩序。そもそもこの戦後秩序とは誰が、何のためにつくったのものなのかを振り返ると、皮肉なものではないでしょうか。TPPについても、WTOやFTAの関係を読むとその正体がより具体的に見えてきます。

基礎から教えてくれる入門書なので、経済自体に詳しくなくても大丈夫です。これからを生きていくうえで必要な知識が身につくでしょう。

 

保護貿易が戦争の原因になった、という反省から設立されたWTO。そしてそのWTOから脱退し、保護貿易の道を進もうとするトランプ大統領。大きな時代の転換点だといえるでしょう。この記事を通じて世界の経済に少しでも興味をもっていただければ幸いです。

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