恋する気持ちは歳をとらない 〜大人の恋愛がテーマの本〜

読むと誰かと繋がっていたくなる

よるのふくらみ (新潮文庫)

著者

窪 美澄

出版日

2016-09-28

同じ商店街で生活する幼馴染のみひろと、圭祐、裕太の兄弟。みひろと圭祐は付き合っているが、うまくいっておらず、裕太はみひろに昔から好意を持っていた。圭祐との関係がうまくいかないほど、みひろは裕太に心を許すようになっていく。

みひろと圭祐の関係
みひろと裕太の関係
圭祐と裕太の関係
３人の周りの人々との関係
周りから見た３人

わずか300ページでその全てが理解できてしまいました。活字が映像になって鮮明に頭に浮かぶ。これでもかというほど登場人物に寄り添って描かれていると思いました。

好きなのに好きと言えない
辛いのに辛いと言えない
辛くないのに辛いと言う
負けてると分かっているから格好付ける

自分の気持ちに気付いているのに、遠回りして遠回りして、そうしているうちに自分の気持ちがわからなくなって、人を傷つけてしまうんだと思います。

クリープハイプの尾崎世界観さんがあとがきを書かれているのですが、「窪さんの作品を読むと誰かと繋がっていたくなるから困る。」とあって、勝手にものすごく共感してしまいました。

私は普段強がってしまったり、人前で感情を出しきれない部分があるのですが、この作品を読んだ後は本当は1人じゃ生きていけない自分の弱さと向き合いました。最近読んだ本の中で1番面白かったかも。女性の方には特に読んでほしい1冊。

ザ・大人の恋愛

マチネの終わりに

著者

平野 啓一郎

出版日

2016-04-09

天才ギタリスト蒔野聡史と、ジャーナリスト小峰洋子が出会い、急激に恋に落ちていくが、洋子には婚約者がいた。やがて洋子は蒔野と一緒になることを決断するが、そこに蒔野のマネージャーである三谷が割って入っていき二人の関係を変えていく。

そういえば、20代の恋愛は想像がつくけど30代〜40代の恋愛は未知だなと思って読んでみた本。洋子がジャーナリストという設定もあって、恋愛模様以外にも洋子のPTSD(心的外傷後ストレス障害)についてや、海外の深刻な情勢、 なども描かれています。

この本の中で蒔野も洋子も、大切な人の死を経験しています。洋子に至っては常に死と隣り合わせの仕事。自分もいつ死んでしまうかわからない環境で生きているからこそ、大切な人に対しての愛情が深いのかなと思います。私はまだ子供なので、2人のデートの仕方とか口調がとても上品で素敵だなと感じました（笑）。でも、恋愛が生活に影響していく様は若い人と同じだなと思いました。

ザ・大人の恋愛 という感じで現実味はなかったですが、私が40代になってもこういう純粋な気持ちやトキメキがあったらいい人生だなぁ…。心が洗われる一冊です。

悲しいことがあったときは、間違いなくまたこの本を読む

キッチン (角川文庫)

著者

吉本 ばなな

出版日

知ってる人も多いはず、吉本ばななさんのベストセラー。

この世で1番好きな場所は台所という変わり者の主人公“みかげ”が、唯一生きていたの肉親の祖母の死をきっかけに大学の同級生“雄一”とその母(?)と奇妙な同居生活を始める。感想を書くのが難しいくらい、この本を読むことでしか触れられない世界が存在しています。

『2人の気持ちは死に囲まれた闇の中で、ゆるやかなカーブをぴったり寄り添って回っているところだった。しかし、ここを越したら別々の道に別れ始めてしまう。』

という文があるのですが、すごく好きです。お互い大切な人の死の直後、どうしようもないくらいの寂しさを埋められるのはお互いしかいない。それに気付いてしまった時の焦りと、悲しみを乗り越えた後にお互いが必要なくなってしまうのではないかという悪い予感。

この気持ちは恋愛以外にも置き換えられるのではないかなと思います。人間としての本質ではなく、それ以外の何かによって人と人が惹かれ合うことはあると思います。でも、自分が誰と何によって惹かれてるかなんて、正解は分かりませんよね。

個人的には雄一の母(厳密にいうと父)のえり子さんが好きすぎる。えり子さんの魅力を知ってほしいがためにこの本を読んでほしいくらい（笑）。

自分に悲しいことがあったときは、間違いなくまたこの本を読むと思います。