見た目が猫な彼氏・猫氏と、その彼女・多恵のデートの様子を描く漫画『オデット ODETTE』。猫なのか人間なのかその正体が不明な猫氏と、ダイエットを試みるものの常に食欲に負ける多恵、2人の仲睦まじい様子が微笑ましく魅力的な本作について、その見所を紹介していきます。
身長は約180cmで、食べるものも、通常生活も、ほとんど人間。しかし、その見た目が猫な彼氏・猫氏。冬でも夏でも首元や手首・足首は見せず、境目は秘密だという彼ですが、性格や普段のおこないは、とても猫らしいのが特徴です。
彼がセリフっぽいものを話すシーンは1コマのみで、基本的に彼女や周りの人間ばかり話します。そのため、彼がいったいどういう生態なのかは、いまいちわかっていません。
ただ、周りの人間は彼をそのまま受け入れているため、彼のような存在を普通に受け入れられるような世界ということでしょう。
- 著者
- 日当貼
- 出版日
- 2015-02-14
セリフはほぼない猫氏ですが、その表情はとても豊か。多恵のことが好きだと伝わってくるような描写が、非常に可愛らしいキャラクターでもあります。
彼女のことで嬉しそうに笑ってみたり、頬を染めてみたり、目元や口元などはほとんど変わらないのに、彼の気持ちがたくさん伝わってくるよう。
余計なセリフなどがないからこそ、こういった表現がより明確に伝わってくるのかもしれませんね。
また、悲しいときに耳を下げて落ち込む姿や、驚いて顔の毛が膨張する姿は、非常に猫らしく可愛らしいもの。近所の野良猫に弱腰だったり、お化けは苦手など、ちょっと弱々しい部分もあるものの、そこが逆に魅力的に映りますね。
食べることが何より好きで、非常にまったりとしたペースで生きている彼女の多恵。彼女の可愛いところは、なんといっても食欲旺盛なところ。一応ダイエットを試みようとしているようですが、常に食欲に負けていて、ゴールまではまだまだ遠そうですね。
さらに食欲だけでなく、わりと己の欲求に忠実に生きているよう。コロコロと話題が変わったり、その場の思いつきで行動するような場面が多々見られるのが特徴的。バイタリティが溢れているキャラクターです。
表情もコロコロ変わり、会話中などではなく、本を読んでいる最中にも内容に影響されて百面相しているのが可愛いところ。食べ過ぎや遅刻を気にしている場面以外では、常に明るい笑顔なのも読者をほっこりさせます。
デート中に大きな鉢を買い、自分で持つと言った矢先に、たい焼きを買いたいから持っててほしいと頼み、購入後は両手がふさがっていて食べれないとショックを受けるなど、なかなかな猪突猛進さを見せる多恵。そんな彼女を見ていると、気持ちが明るくなります。
少々ボケたところもあるものの、明るく一途なところが本当に可愛いヒロイン。子どもっぽいところや、マイペースすぎるところも、なんともいえない魅力で、作中に登場する服装も女の子らしいものが多く、ぜひ注目していただきたいところですね。
猫な彼氏・猫氏と、彼女の多恵のデート模様を描いた本作。本巻ではデート前の待ち合わせまでの様子や、合流後のまったりタイム、水族館デート、多恵の友人・鷹子と2人の話などが収録されています。
中華まんを食べに行こうとするデート話があるのですが、多恵は「とり」「ぶた」「うし」の3種類のうち、どの中華まんを食べるか悩みます。彼女は食べることが大好きで、ついつい食べ過ぎてしまう傾向にあるようです。
- 著者
- 日当貼
- 出版日
- 2015-02-14
3つとも食べればいいじゃないという猫氏の提案に、最初は食べきれない、また太った、と断ろうとするものの、翌日のお昼と晩御飯を抜けばいいのでは、と考え直すあたり、彼女のダイエットは一向に成功しそうにありません。
ただ、食欲に忠実というか、美味しいものを美味しそうに、たくさん食べてくれる子というのはやっぱり可愛いです。
そんな彼女が悩む一方で、猫氏は忽然と姿を消してしまいます。彼女が探し見つけたとき、彼は公園にある遊具で1人遊んでいました。デート中、彼女を置いて遊具で遊ぶなんて、だいぶフリーダム。
ただ、そんな彼を見て、彼女も中華まんのことなど忘れて遊具にかけて行くのですから、彼女もフリーダムです。その後はなぜか、公園デートが展開されていくことに……。
猫氏は果たして人間なのか、猫なのか疑問なところですが、この公園デートでは猫っぽい動きをする彼をたくさん見ることができます。彼への疑問が積み重なっていきますね。
最初の目的も忘れ、ひとしきり公園で遊んだ2人。お目当の中華まんを食べることはできるのでしょうか。
冬のスケートリンクデート、定番の映画デート、たまには健康的にハイキングデート、ディナーデートに夏祭りデートなど、相変わらずまったりとしたラブラブデートをくり返す2人。本巻では、そんな2人のデート以外の場面を見ることができます。
まず、この話で注目したいのは、2人が電話で会話をしているということ。今まで猫氏が言葉を発したように表現された場面は、1巻の1コマのみで、それ以外はどんな対話シーンにも彼の発言らしきものはありませんでした。
- 著者
- 日当貼
- 出版日
- 2015-10-15
もちろん、この電話のシーンでも彼のセリフは書かれていないのですが、きっと多恵には何かしらの声が聞こえているのでしょう。彼が猫か人間かわからない、本作独特の表現ですね。
仕事帰りの多恵に電話する猫氏ですが、彼女のほうのスマホの充電が切れてしまいます。マグカップに飲み物を入れに行こうとした彼は、窓の外に猫がいるのを発見し、尻込み。一方、多恵は塀の上に猫を見つけ、猫語で対話をおこないます。
どうも猫氏は、家の近所に生息している野良猫を苦手としているようで、だいたい下手に出ている様子。多恵のほうは猫全般好きなようですね。まあ、猫氏が彼氏なことを考えると当然といえば当然です。
家に帰り、空腹に耐える多恵のもとに、再び猫氏から電話が。内容は映画デートの申し込みなのですが、お腹が空いているという彼女に、悪魔の所業ともいえる飯テロ画像を送りつけるなど、お茶目な面も見られます。いっぱい食べる彼女が好きだという、彼の気持ちが伝わってくるようなエピソードです。
工場見学デートや、1年前の蚤の市デートなど、普段のデートシーンのほか、バーでずっと話している2人や、雨で目的のデートと変わってしまった2人、猫氏と多恵の出会いなどが収録された本巻。そのなかで注目したいのは、誰かしら経験あるかもしれない、腹鳴り問題です。
- 著者
- 日当貼
- 出版日
- 2016-12-14
多恵は、猫氏とのデート中に唐突にお腹が鳴るのですが、その音というのが、普通の「ぐう」という音ではなく、まるで鳥が鳴いているかのような、大きく長い音。彼女の友人の鷹子や、弟の千寿は一般的な「ぐー」という小さく短い音なのですが、彼女はそれとは比べ物にならないほどの大きく変な音が鳴るのだそう。本人曰く「怪鳥」だそうです。
確かに、他の人よりお腹の音が大きくなってしまうことや、変な音階を刻むことはありますよね。食べることが好きな多恵らしい特徴だとは思いますが、家族以外でそういった音を聞かれると恥ずかしいもの。
可笑しそうにする猫氏に対し、顔を真っ赤にして笑わないよう要求する彼女は、本当に可愛いです。しかし、そんな話の最中、猫氏のお腹からも怪鳥の鳴き声が……。実は彼も、お腹の音が盛大に鳴るタイプの人物だったのです。
そして何のアンサンブルか、彼の怪鳥が声をあげたことで彼女の怪鳥も再び鳴くことに。カップル同士でお腹の鳴りあいは何だか可愛いもの。あまりのお腹の悲鳴に、カフェから出たばかりなのにも関わらず、2人は軽食を購入。
無事満腹まで食べた2人に待っていたのは……?正反対のように見えて似た者同士な2人は、やはりいいカップルです。
冬の夜空堪能デート、映画の帰り道デート、デート前の準備や、お参りデート、遠出デートのバス内シーンなど、デート前後の話が多く収録された本巻。鷹子の登場も多い巻となりますが、そのなかで注目したいのは、カフェデート中の2人の話です。
まず、カフェデートへ赴く前、待ち合わせをしていた2人。猫氏はいつもと違う多恵の様子に気づきます。彼女の目元が二重になっていたのです。寝起きすぐだと二重になっていること、人によっては結構ありますよね。
- 著者
- 日当貼
- 出版日
- 2017-10-12
彼女は必死に寝坊はしていないと言いはりますが、猫氏に詰め寄られ素直に寝坊したことを白状。彼女はだいたい寝坊や遅刻をしていますね。そのまったりさが可愛いところでもありますが。
ただ、そう詰め寄った猫氏の片耳も、普段とは違う方向を向いていました。いつも家を出る前は入念にブラッシングや身の回りのことをする彼にしては珍しい、寝癖のようなもの。それを見つけて多恵は嬉しそうにします。
その後も、猫氏は多恵のクセを見ては嬉しそうにし、多恵も猫氏のクセを見ては満足そうにするのです。相手が無意識にやってしまうクセを見つけて、嬉しくなることもありますよね。このお話は、そんなちょっとした幸福感と優越感が全面に押し出されています。
互いが互いのクセを知って、嬉しく思っているなか、最後の最後で鷹子が登場。多恵が大好きな彼女は、多恵のクセを知って1人嬉しそうな猫氏に、自分も気づいているとアピール。この3人の話は見ていてとてもほっこりしますよ。
彼氏の猫氏と、彼女の多恵のデートや日常を描いた『オデット ODETTE』。猫な猫氏に誰も驚かない独特の世界のなかで、食欲と愛を育むまったりデート漫画の本作は、読んでいて暖かい気持ちにさせてくれますね。