対外的・対内的にプレゼンテーションをする機会はありますでしょうか? プレゼンテーションとまでしっかりしたものではなくても、人に対して物事の説明や報告をする機会はおそらく誰にでもあるのではないかと思います。ただ、そのような中で伝えたいことが思ったように相手に伝わらないと感じたことはありませんか? 自分もかつてはそうでした(今でも、まだまだ未熟者ですが…)。その理由は様々だとは思いますが、今回は同様の課題を感じている方々のお役に立てそうな書籍をご紹介します。
- 著者
- 安部 徹也
- 出版日
- 2015-02-27
本著は、電動バイクベンチャー・Speedy社の新入社員である早乙女レイナが、コトラー先生と呼ぶ謎の老人からマーケティングを学びながら新製品販売を成功させるまでの道筋を描いたマンガです。マーケティングの大家であるコトラーの提唱する考え方がわかりやすくまとめられています。
相手に伝わらない理由として考えられることのひとつが、相手のことをどれだけ理解できているかです。このことを考えるうえで、本著でも紹介されているマーケティングの考え方がとても参考になります。
相手が感じている課題は? 何に関心をもっているのか? 特定の話題に対するリテラシーはどの程度あるのか? 相手に伝えたいことが伝わらないとき、これらの点を一度振り返ってみると良いかもしれません。
そもそも伝えようとしている相手が曖昧であるということに気が付くこともあるかと思います。「全員に伝えたいことを伝えわかってもらいたい」という気持ちもよくわかります。ただ、そうするあまり様々な情報を盛り込みすぎ、結局何を言いたいのかわからなくなったり、言いたいことがぼやけてしまったりすることもよくあること。課題感、関心などは人によって異なるもの。全員に同様に理解してもらおうと考えることに、少し無理があるのかもしれません。プレゼンテーションや日々の報告・相談などは目的があるもの。その目的を実現するためには、特に誰に対して情報を伝えて協力してもらう必要があるのかを考える必要があります。
これらに加えて重要だと思うのが、その方の意思決定や課題感などに影響を与える環境の変化(政治、経済、社会、テクノロジーなど)、得ている情報(社内外からの報告・提案など)、競合の動向など。どこまで情報をキャッチするかという議論もありますが、これらをザクッとでも理解しておくとどのような要素を盛り込まなくてはならないかなどのアタリがつきやすくなるのではないでしょうか。それが、相手にとっての価値につながるのだと思います。最近、特にこのことを痛感しています。
また、プレゼンテーションや報告・相談などはあくまでもひとつの手段。目的を実現させるために、それら以外の方法を使っていかに情報を伝え下地を作っていくか(情報の流通チャネルをいかに築くか、いかに信頼関係を構築していくかなど)という視点も不可欠でしょう。このようなことを考えるうえでも、マーケティングの考え方を活かすことができます。
- 著者
- 開米 瑞浩
- 出版日
続いて考えられる、相手に伝わらない理由のひとつが、伝えたい情報がわかりやすく整理されているか否か、そしてそれを適切な形で伝えることができているか否かということです。
プレゼンテーションや報告・相談時に話の流れを考えたり、それに合わせて資料を作成したりすることがあるでしょう。その際に、グラフや図などで図解を入れることも多いのではないかと思います。しかし、その図解の方法ははたして理にかなったものなのでしょうか? また、相手に伝わりやすいものにしっかりなっているのでしょうか?
今回ご紹介する書籍は2部構成で図解を適切に利用して伝えたいことを的確に伝えるための方法を解説しています。第1部では、ピラミッドストラクチャーやマトリックス、折れ線グラフなど基礎となる図解方法や活用時のポイントを解説しています。それ自体は他の書籍でも多く取り上げられている内容ではあるのですが、本著が珍しいのは「図解をする前の読解の大切さ」を説いているところになるのではないかと個人的には感じています。
図解を使いこなすことはとても大切です。ただ、その前提となる問題の本質や相手の認識などを正確に把握することができていなかったら、そもそも相手に伝わるように図解を使いこなすことができないですし、その上で相手とコミュニケーションをとることも困難なのではないでしょうか。
著者は、「文章を正しく読み解く」読解力の大切さ(もっと言うと、文章だけではなく相手が口頭で言っていることも含めてだと私は思います)を説きつつ、そのためには文章の内容を「ステートメント(1つのことだけを明確に表現した短い文)やキーワードに分け」、「正確な読解のために用語や言い回しなどの表現を揃え」、「抽出されたキーワードを一直線に並べて順番をつけて並べて」、「表を作る」ことにつなげていくという動作習慣の大切さを重視しています。
そもそもの内容や本質を理解しきれていなければ、相手に伝えたいことが明確に伝わらないことは間違いないでしょう。図解はそのためのひとつの手段。まずは読解力を鍛え、身に付けていきたいものです。
書籍内には例題と解説も多数掲載されていますので、ぜひトレーニングのためにもチャレンジされてみてください。きっと多くの気づきを得られるのではないかと思います。
- 著者
- 魚住 りえ
- 出版日
- 2015-08-07
最後にご紹介するのはフリーアナウンサーの魚住りえさんの書籍です。
意外とないがしろにされがちなのが、声のトーンやテンポ、話し方などの要素。ただ、皆さんもご経験をお持ちかもしれませんが、どんなにこちらのことを理解していて、話している内容が的確な内容であったとしても、相手の話し方などが気になってその内容をしっかりと受け止めることができなかった経験はありませんでしょうか? 自分もこのことで痛い目に遭ったことがあるので、話し方の重要性は痛感しているところです(今でもまだまだ改善の余地があり…。他のことも同様ですが)。
著者も指摘しているように、声の高さやスピード、抑揚の使いこなし方次第で相手に訴えかけられる力は絶大なものになります。このことは私自身も経験したことがあります。このようなことはよく天性のものだから自分ではどうにもならないと思われがちですが、著者も言うように自分でデザインし、トレーニングによって身に付け改善することができる力でもあるのです。
日本人はこのことについて意識が低いと問題提起する著者。同じことを言っていても、声や話し方によって聞き取りやすさも伝わりやすさもかなり変わってくるものです。
書籍内では、腹式呼吸のトレーニング方法、話を聞き取りやすくするための声の共鳴方法、活舌の改善など様々なテーマで声や話し方を良くするためのトレーニング方法を解説しています。私もかなり活舌が悪い方なので、独自のトレーニングに加えて書籍を見ながら少しずつ改善をしていきました。まだまだではありますが、今では昔は苦手だった人前で話すこともそれなりにできるようになってきているように感じています。もちろん、まだまだ改善しなくてはならない課題は山積みですが…。
声や話し方以外のテクニックも紹介されている本著。もし話し方などに関して悩みや課題を感じていらっしゃるようでしたら、とても参考になる一冊になるのではないかと私自身は思っています。
今回の記事はいかがでしたでしょうか? 自分自身も本当に口下手、あがり症で、人前で話すことがとても苦手でした。人と話すことにも煩わしさを感じていたこともあります。 営業や広報、マーケティングをやるのにこのままでいいのかと20代の時は本当に悩んでいましたが、実践を積んで場馴れしていくこと、具体的なスキルは勉強して実際に使ってみて試行錯誤を繰り返していくことでかなり克服されてきたのではないかと思います(今でも、まだ多少苦手意識は残っていますが…。笑)。今でもまだ決してうまいとは言えないものの、人前でプレゼンテーションしたりすることに抵抗はなくなり、それなりの成果もあげられるようになってきました。セミナーなどでアンケートをとると、ほとんどの方に満足をしていただくこともできるようになってきています。それも、これらの要素を抑えて試行錯誤するようになってからではないかと思います。程度の差はあるかもしれませんが、人間、やってみてできないことは少ないと自分は考えています。まずは自分の可能性を信じてやってみる。それに尽きるのではないでしょうか。