漫画『妖怪アパートの幽雅な日常』の魅力を16巻までネタバレ紹介!

更新:2021.11.26

両親を亡くし、伯父夫婦のもとで暮らしていた稲葉夕士は、高校進学を機に家を出ることに。不思議な導きにより妖怪たちの住むアパートで暮らすこととなった彼は、そこで人として大事なものを学んでいきます。 そんな彼らの心の触れ合いが魅力的な本作について、見所を紹介!

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漫画『妖怪アパートの幽雅な日常』が優しくてあたたかい。【あらすじ】

 

交通事故で両親を亡くした、稲葉夕士。あまり馴染めなかった伯父夫婦のもとを離れるべく、高校進学時に寮付きの高校を選び、家を出ることに決めます。

しかし、入居予定の寮が火事にあい、行くあてがなくなってしまいました。そんな彼の前に不思議な不動産屋が現れ、それを機に、人と人ならざるものが暮らす「寿荘」で暮らすこととなったのです。

人と、妖怪と、幽霊。性別も年齢もまったく違う彼らとともに暮らすことで、彼は霊能力者としての素質と、心の豊かさを手に入れていくことになります。

 

著者
深山 和香
出版日
2011-11-09

見所:妖怪たちのあたたかいエピソードが沁みる

 

『妖怪アパートの幽雅な日常』の特徴ともいえますが、夕士の住むアパートには、アパートに住むことになった経緯も、年齢もさまざまな、妖怪や幽霊が住んでいます。夕士よりもはるかに長生きしている彼らは、その経験のなかで、夕士の人生の手助けになるようなことをたくさん話してくれるのです。

妖怪はもちろん、成仏せずにいる幽霊など、彼らにも歩んできた人生というものがあります。そのなかには、悲しい出来事や辛いことなどもありますが、それを乗り越えた先に今の人生があるのです。今一緒に過ごしている人々との絆など、非常に心があたたかくなるような話もあります。

妖怪アパートに住む、子どもの幽霊クリの話などは、まさに悲しいもの。しかし、現在多くの愛してくれる人と一緒に居られる幸せを感じさせてくれるストーリーです。

起きたことや現実を否定するのではなく、過去などすべてを受け入れたうえで、全力で手を差し伸べてくれる。そんな環境があったら、何よりも嬉しいですよね。人間とは違う生き物だからこそ、見落としてしまうような繋がりや、思いやりが見えるようにも感じます。

他にも、夕士に霊能力者としての基礎を教えてくれた女子高生・秋音のバイト先の話なども、心あたたまるもの。彼女のバイト先は、身寄りのない老人や成仏できない幽霊、妖怪などがいる病院です。

文字だけで見れば非常に怖いものですが、彼らは彼らなりの生活を送っていて、病院は彼らにとってなくてはならない居場所であることが、そのエピソードからうかがえます。

長生きしている分、多くのことを見聞きしたからこそ彼らの言葉には重みがあり、そして情に溢れているのです。

 

見所:主人公の成長にほっこり

見所:主人公の成長にほっこり
出典:『妖怪アパートの幽雅な日常』1巻

本作の主題でもある、主人公・夕士の成長。両親がいないということで、常に気を張り、居候させてもらった身内である伯父夫婦の家でも気を緩めることができない性格でした。しかし、さまざまな人生を送ってきた先輩たちと接することで、人間的に大きく成長していきます。

夕士が成長できた大きな要因のひとつは、なんでも相談できる大人がいることではないでしょうか。彼はずっと学校ではただひとりの友人・長谷以外には心を開かず、家でも従姉や伯父たちに気を使い、腹を割って話すことができませんでした。

そんな彼にとって、初めてできた頼れる大人が妖怪アパートの住人だったのです。ほとんどの住人が人間ではありませんが、やはり多くの人と関わってきた彼らの言葉、多くのよいこと、悪いこと、さまざまなことに対峙してきた彼らの話は、今まで知ることができなかった世界を知れる、またとないチャンス。

正直、普通に暮らしている外の大人たちより、いい話を聞けるのではないかと思われます。しかし、彼らと過ごすだけで終わらないのが、夕士のいいところ。それをきっかけに彼はアパート内のメンバーや長谷以外にも、学校の教師やバイト先の上司など、多くの「頼れる大人」を見つけ、自分から歩み寄っていくようになるのです。

夕士は内にこもっていくのではなく、手に入れた心の豊かさや素直さを、外の世界でも発揮できるようになります。差し伸べられた手を、別の人間へ差し伸べるようになった彼の姿には、感動すら覚えるでしょう。

人と必要以上に接してこなかった彼が積極的に人に手を伸ばし、理解し、そして衝突や和解をくり返しながら成長していく姿は、見ていて勇気ややる気をもらえます。そんな彼が、非常に眩しく思えるはずです。

見所:飯テロ!とにかくご飯が美味しそう!

見所:飯テロ!とにかくご飯が美味しそう!
出典:『妖怪アパートの幽雅な日常』5巻

 

本作のメインのひとつといっても過言ではないのが、アパートで出てくる食事。その料理は、手しかない「るり子さん」が作ってくれているのですが、どれも絶品らしく、作中のキャラクターたちは食事シーンで毎回異様な盛り上がりを見せるのです。

たまに豪華な材料も出てきますが、基本はどこでも買えるような食材を使っています。料理自体はシンプルなものから、手の凝ったものまでさまざま。人によって、ご飯やパンなどと合わせて出てくるのが嬉しいところですね。

食事シーンは、特に夕士が霊能力者としての基礎特訓を始めたあたりからが注目したいところ。それ以前にも美味しそうな料理シーンはたくさん登場するのですが、体力のいる特訓では、今まで以上に食事が重要になってきます。

しっかり食事をしていてもガリガリにやつれてしまった夕士が、再び肉を取り戻すために欠かせなかったのがるり子さんの料理。ただ美味しいだけでなく、その人ごとにあった料理を提供するのが彼女流で、だからこそ、よりご飯が美味しそうにも見えるのです。

作中ではきちんと四季が巡っていくのですが、その季節ごとに旬の食材が登場し、その食材が最も美味しく食べられる料理法をとってくれるのも嬉しいですよね。その描写がうまいだけでなく、登場キャラクターが美味しそうに食べるので、読者が本当に美味しそうだと感じることができるのです。

これはやはり、原作が小説だからでしょう。ただの冷やっこいご飯と熱々のコロッケが美味しそうに感じるのですから、相当うまい書き方をしているのだと思います。

作中に登場する料理のレシピは漫画に載っていることもあるので、あわせてチェックしたいこところですね。

漫画『妖怪アパートの幽雅な日常』16巻の見所をネタバレ紹介!力を持つということ

 

夏休み中、勉強の合間に街に出かけた夕士は、偶然担任の千晶と、同じクラスの仲良し女子3人組の田代・垣内・桜庭に会います。そのまま5人でジュエリー展へと行くことになりましたが、そこで強盗たちの人質になってしまうことに。

15巻では、千晶の前で能力を使い、強盗たちから助かるところで終わりました。そして本巻では、強盗に傷を負わされ入院した千晶に、事情を説明しに行くところから始まります。

 

著者
深山 和香
出版日
2018-04-09

見所は、長谷やアパートの住人以外にも、夕士の能力を知る人物が増えたところではないでしょうか。もともと千晶には理屈では説明できないような能力を使い、いろいろと手助けをしていましたが、これほどはっきりと能力を使ったのは初めてのこと。

夕士は人前で、しかも心を許している人物の前で能力を使い、嫌われること、気味悪がられることを恐れていました。もともと望んで手に入れた力ではないため、そう思うのも当然ですよね。

そういった葛藤や想いを素直に吐露した彼に対し、千晶はその想いを受け入れ、また訂正し叱ります。能力を持っているからといって、何かあったときに絶対使わなければいけないということはない、と彼の気持ちを察したうえで、その葛藤を消したのです。

彼女はもともと、理解力と包容力のある大人して描かれてきていました。到底信じられないような出来事を目の当たりにしても、それを不気味に思うわけでも、否定するわけでもなく受け入れる姿は、まさに教師らしい、大人の鏡ですよね。

学校でも理解者を得た夕士。新学期も始まり最後の文化祭へと乗り出すなか、とあることがきっかけでクラスの空気は少しずつ悪くなっていきました。その状況を打破しようと、千晶と話しながら彼はつい、自分の持つ能力を頼ろうとしていまうのです。

そんな彼に千晶が放った言葉は……。さまざまな経験を積んできた彼女だからいえる等身大の人間の言葉や、素直な夕士の姿に、胸が熱くなりますよ。

偶然が重なり、まるで運命のように妖怪アパートへと引き寄せられた高校生・稲葉夕士の数多くの出会いと、心の繋がり、経験を描いた本作。今まさに青春を送っている人、すでに青春は過ぎ去ってしまった人、さまざまな人の心に刺さる名言が魅力的ですよ。


原作であるラノベ版『妖怪アパートの幽雅な日常』については<『妖怪アパートの幽雅な日常』の魅力を全巻ネタバレ紹介!【アニメ化】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

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