5分でわかるPFI!事例やメリット、デメリットなどをわかりやすく解説!

更新:2021.11.15

ニュースなどでもよく耳にするようになった「PFI」。実はどのようなものなのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、概要やPPPとの違い、事業方式と具体的な事例、メリット、デメリットをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。

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PFIとは。PPPとの違いなど概要を簡単に説明

 

PFIとは、英語の「Private Finance Initiative」の略称です。1992年に「小さな政府」を目指していたイギリスで生まれた手法で、公共施設や設備の設計、施工、維持管理、運営などに民間の資金やノウハウを活用することで、より効率的な公共サービスの提供を実現することを目的としています。

日本では1999年に「PFI法」が施行され、取り組みが開始されました。

PFIとよく似た言葉として、「PPP」というものがあります。これは英語の「Public Private Partnership」の略称で、官と民がパートナーとして連携、協力しながら事業に取り組む手法です。

PFIでは、事業計画については行政が作成し、資金やノウハウを提供する民間事業者を入札などで募集するのに対し、PPPは事業の企画段階から民間事業者が参加する点に違いがあります。

ただ官民が連携して事業をおこなうという意味ではほぼ同じなため、海外ではPFIも含めてPPPと称するのが一般的です。

一方で日本でのPFIは、指定管理者制度や市場化テスト、民間委託、アウトソーシングなどと同様にPPPの一手法と考えられています。

 

PFIの事業方式を紹介。BTOやDBOなど

 

施設や資産を、官民のどちらかがどのように所有するかで、事業方式が類型化されています。一見わかりづらいですが、民間事業者を主語として、何をどの順番で実施するかで名付けられているというルールがわかれば、それほど難しいものではありません。

・BTO方式(Build・Transfer・Operate)

民間の事業者が施設を建設した後、所有権を公共側に移転。そのうえで施設の運営は民間事業者が担う方式です。日本ではもっとも多く用いられています。

・BOT方式(Build・Operate・Transfer)

民間事業者が自前で施設を建設し、一定期間にわたって管理や運営を担った後、公共側に施設を移管する方式です。イギリスなどで主流になっています。

・BOO方式(Build・Own・Operate)

民間の事業者が施設を建設し、保有したまま事業を運営する方式です。

・BLO方式(Build・Lease・Operate)

民間事業者が建設した施設を公共側に一定期間リースし、運営は民間事業者が担う方式です。

・BLT方式(Build・Lease・Transfer)

民間事業者が建設した施設を公共側に一定期間リースし、期間終了後に所有権を移転する方式です。

・DBO方式(Design・Build・Operate)

民間の事業者が設計・建設・運営を一括して担い、施設の所有や資金調達については公共側がおこなう方式です。

 

PFIの具体的な事例を紹介

 

NPO法人「全国地域PFI協会」によると、2018年8月9日現在のPFI事業の実施件数は775件です。

カテゴリー別に見ると、1番多いのは「教育文化施設」で253件、次いで「公営住宅」が88件となっていて、この2つだけで全体の半数近くを占めています。

方式ではBTO方式が510件と圧倒的多数。

小中学校の空調整備や給食センターの設置、改修などが進められているほか、関西国際空港、大阪国際空港、仙台空港など国内各地にある空港の運営、日本版GPSと呼ばれる「準天頂衛星システム」の運営など、ニュースに取り上げられた事例もあります。

普段何気なく使用している施設のなかにも、PFIが取り入れられているかもしれません。

 

PFIのメリット、デメリット

 

全国的に見られるようになったPFIですが、なかには失敗してしまった事例もあります。導入にあたってメリットとデメリットをしっかりと把握したうえで事業計画を練ることが重要です。

メリットとデメリットは、公共側、民間事業者側、利用者側の3点から見る必要があります。

・公共側

メリット:これまで担ってきた事業に関わるリスクを民間に移すことでリスクを軽減できるとともに、財政支出の削減効果が期待できます。

デメリット:PFIは運営によって民間事業者が利益を出せることが前提です。そのため対象となる事業が限られてきます。また準備や手続きが煩雑なため、行政コストが膨らむ場合もあるでしょう。

・民間事業者側

メリット:新たな投資機会を獲得することができます。また長期的に安定した収入が見込め、企業としての信頼性が高まる効果もあるでしょう。

デメリット:準備が大変なうえ実績を求められることも多く、参入障壁が高いのが現状です。投資回収期間が長期にわたる事例も多く、リスクが大きい場合もあります。

・利用者側

メリット:情報公開が進むとともに、よりきめ細かいサービスを受けられる可能性があります。

デメリット:事業者の倒産などによりサービスを受容できなくなる可能性があります。


このように、立場が異なればメリットとデメリットも異なるもの。国が旗振り役となってPFIの導入を推し進めていますが、導入しさえすれば成功するというわけではなく、成功の確率を高める努力をし続けることが重要だといえるでしょう。

PFIを生み出したイギリスでは、事業者が過剰に利益を得ているのではないかという批判の声も高まっていて、実は実施件数は年々減少しているのが現状です。PFIに限らず、よりよい選択はどのようなものなのか今後も考え続けなければなりません。

 

空港を巡る熱いドキュメント

著者
轟木 一博
出版日
2016-05-10

 

2016年4月から、オリックスとフランスのバンシ・エアポートが出資する「関西エアポート株式会社」によって運営されている関西国際空港。 大規模空港の民営化案件第1号として注目を集めています。

そのプロジェクトをとりまとめたのが、本書の作者、轟木一博です。

前代未聞のプロジェクトを進めるうえで、次々と立ちはだかる難関を突破していくさまは臨場感たっぷり。外からではなかなかわかりづらい空港ビジネスについても丁寧に解説されていて、随所で目から鱗が落ちる感覚を味わえます。

前例のない案件に、名だたる日本企業は及び腰になっていますが、それだけに手を挙げたオリックスには賞賛を送るべきでしょう。

関西国際空港の例をきっかけに、次々と空港の民営化が進んでいる現在。先駆けとなった事例を知るにはうってつけの一冊です。

 

民間が担うPFI刑務所について

著者
西田博
出版日
2012-06-28

 

法務省の現役官僚である作者が己の信念を賭けて成就させたのが、官民協働の刑務所、通称「PFI刑務所」です。 現在日本に4ヶ所あるPFI刑務所。本書には、実現するための準備の過程や交渉が克明に綴られています。

官民協働の刑務所は海外では意外と一般的ですが、日本人にとっては民間が携わるというだけで違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。そんな周辺住民にも丁寧に説明をくり返し、日本の未来のために情熱を燃やして仕事に打ち込む姿勢に胸が熱くなります。

罪を犯した人をただ閉じ込めておくだけでなく、いかに更生させ、社会復帰させるのか。本書を読んで見えてくるのは、PFIを通じて民間のノウハウを活用した、未来の刑務所の姿です。

 

官は官、民は民と分けて考えることが日本では当たり前でした。しかしこれからの時代は、PFIのような手法を用いて両者が手を取り合い、より効率的に資産を動かしていくことが求められるでしょう。関西国際空港のように、運営のやり方次第で利益を増やせるものもあるでしょうし、PFI刑務所のように、官民が協力してこれまでになかったものを生み出すこともできます。PFIやPPPというと難しく思えますが、端的にいえば官と民が協力してよりよいものを作ろうということ。この記事をとおして少しでも興味をもっていただければ幸いです。

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