『毒虫小僧』の4つのトラウマ要素をネタバレ紹介!ヤバすぎグロホラー漫画?

更新:2021.1.7

本作は、ホラー漫画家として知られる日野日出志の代表作です。垢抜けない、いじめられっ子の主人公が、家族やクラスメイトから阻害されていった結果、奇妙な虫に襲われて身も心も変貌していく悲しい物語です。今回は、そんなショッキングな内容の本作をご紹介します。

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『毒虫小僧』がやばい!面白い!【あらすじ】

 

主人公の名前は、日の本三平。まだ小学生のこの少年の身に、ある日とんでもない異変が起こり、それが彼の運命を大きく変えてしまうのです。

彼は病気がちで、勉強も運動も苦手な子供でした。ただ、人一倍動植物を愛していて、家でも学校でも、隙があれば虫や小動物を愛でて暮らしていました。

 

著者
日野 日出志
出版日
2005-03-24

 

3学期の終業式の日。翌日からの春休みに胸躍らせていた彼は、成績が軒並み悪かったために両親から手酷く怒られます。

彼は意気消沈し、精神的に追い詰められ、自室に戻った途端吐き気に襲われます。激しく嘔吐した、その吐瀉物の中に、見たこともない虫を発見。それこそが、彼をあらゆる意味で変えてしまうこととなる毒虫だったのです。

三平はその毒虫に刺されたせいで徐々に人間の形を失い、やがて等身大の芋虫へと変化していくこととなります……。

 

作者・日野日出志とは?

日野日出志(ひのひでし)は1946年生まれ、旧満州出身の日本人漫画家です。

日野は当初、幼少期に好きだったギャグ漫画を描こうとしていましたが、赤塚不二夫の作品に太刀打ち出来ないとしてギャグ漫画家への道を諦めます。

1967年、『つめたい汗』が「COM」の月例新人賞に入選、掲載されたことで漫画家デビューしました。このデビュー作は時代劇かつ、かつて志していたギャグ漫画に近いものでしたが、その叙情的な語り口には、すでに後のストーリーテラーの片鱗が現れています。

著者
日野 日出志
出版日

その後、1年がかりで製作した『蔵六の奇病』で、ホラー漫画家として広く知られるようになりました。彼の作品は不気味で、異様で、サイケデリック。それでいて感情に訴えてくるストーリー構成となっており、ただ怖いだけのホラー漫画とは一線を画しています。

本作は、そんな彼が初期に描いた代表作の1つです。フランツ・カフカの小説『変身』に強く影響された本作は、元ネタよりもさらに一歩踏み込んだ、強烈な内容となっています。

トラウマ要素1:毒虫になっていく過程がグロい…

トラウマ要素1:毒虫になっていく過程がグロい…
出典:『毒虫小僧』

 

あらすじで触れたように、主人公・三平は謎の巨大芋虫になります。それも一気に変わるわけではありません。徐々に徐々に、まるで彼を苦しめるように、少しずつ変化していくのです。

最初は全身が紫色に変色し、むくんでいくというものでした。この時点ではまだ、毒虫に刺されて発症した奇病だと思われていました。

しかし病気は快方に向かうどころか、日が経つごとに顔はただれ、末端から腐食していき、どんどん悪化していきます。ついには手足は腐り落ち、頭と胴体だけとなってしまうのです。

やがて食事も受け付けなくなった彼の体は、干からびたミイラのごとく硬くなり、さながら生ける屍となりました。

そうしてある日、彼が目覚めると、芋虫(後に毒虫と判明)となったのです。

毒虫となってからは動物の死骸を主食とするなど、不気味な生態も見せていきます。

 

トラウマ要素2:三平の性格が優しくて純粋なのが余計に苦しい

トラウマ要素2:三平の性格が優しくて純粋なのが余計に苦しい
出典:『毒虫小僧』

 

彼は少年の姿の時も、毒虫になってからも虐げられます。ですが、彼自身にはそこまでされるような罪はありません。

彼は人付き合いが悪いだけで、とても優しい少年でした。虫も殺せない、とはよくいいますが、彼の場合はどんな気持ちの悪い虫でも愛するほど、博愛精神を持っていたのです。

捨て猫や捨て犬、行き場のない鳥類に、忌み嫌われる蛇、生理的に嫌われる幼虫まで、ありとあらゆる動物を純粋に愛していました。

その無分別な愛情が、逆に人から遠ざけられる原因にも繋がっています。ペット感覚で芋虫や蛇を連れて歩くので、気味悪がられるわけです。

彼自身は別に嫌がらせをしたいわけでもないのに、周囲から忌避されるのが見ていてつらくなってきます。

 

トラウマ要素3:家族の仕打ちが悲しすぎる!

トラウマ要素3:家族の仕打ちが悲しすぎる!
出典:『毒虫小僧』

 

日の本家はどこにでもありそうな、普通の家でした。

父親と兄は作品発表の背景にある高度経済成長の時節を反映して、上昇志向。母親は教育熱心で、妹は大人しい女の子です。

そんななか三平だけが落ちこぼれであったため、彼は家族からも疎まれていました。

彼が奇病にかかった当初こそ家族も同情的でしたが、毒虫への変貌期や、毒虫になってからは態度が激変していきます。

毒虫を持て余した彼らは、三平が脱皮するかのように残したかつての体があるのをいいことに、勝手に葬式を挙げてしまうのです。そして世間的に出来の悪い息子を抹消した家族は、毒虫となった三平も殺そうとします。

彼には何一つ落ち度などないというのに、家族は自分達の都合だけで動くのです。

この辺りは細部がオリジナルと違えど、まさに日野版『変身』といったところ。作中のサブタイトルでも『変身』が使われていることから、意識していることがわかります。

 

トラウマ要素4:どこにも居場所がない寂しさ

トラウマ要素4:どこにも居場所がない寂しさ
出典:『毒虫小僧』

 

家族に殺されたかと思われた三平は、まだ生きていました。途轍もない生命力です。

家族から見捨てられたことを悟った彼は、静かに家を去ります。

最初に向かったのは、彼の秘密の隠れ家でした。ゴミ捨て場の一角に築いた彼の城です。彼はそこで大小無数の動物を飼っていました。放課後や休日に入り浸り、世界中で唯一安全、1番落ち着ける場所だったのです。

ところが、その隠れ家も彼を受け入れてくれませんでした。あれだけ懐いていた動物は、みんな毒虫となった彼を警戒し、追い出してしまいます。

海へ行っても、山へ行っても、本能的に毒虫を嫌う動物は、彼に寄りつきません。そして、完全にひとりぼっちとなりました。

 

トラウマ要素5:ラストも救いがない!最後は……

著者
日野 日出志
出版日
2005-03-24

人外の化け物扱いされる三平は、やがて身も心も本当の化け物になっていきます。優しい心を忘れ去り、毒虫の本能のままに人間を襲って食べていくようになりました。

頻繁に出没する怪物騒動のニュースは、日の本家にも届きます。三平を殺したと思っていた家族は、彼がまだ生きていることを確信しました。そして、自分達が彼を止めなければ、と決意するのです。

そんな家族の決意の一方で、三平は心身ともに疲れ果て満身創痍となっていました。彼は最後、どうなってしまうのでしょうか。

ラストからは、善悪の意識を越えた、虚無的な何かが伝わってくることでしょう。

いかがでしたか?変わっていってしまう三平の心境が、胸に突き刺さります。誰が悪かったのか、何が良くなかったのか。いろいろと考えさせられることでしょう。


日野日出志の代表作『蔵六の奇病』について紹介した『蔵六の奇病』がヤバすぎ!4つのトラウマ要素をネタバレ紹介!もおすすめです。

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