日本初の深夜ワイドショーとして一世を風靡したお化け番組「11PM」。小山薫堂はこの番組をきっかけに放送作家として独立することとなりました。近年では熊本県のキャラクター「くまモン」をプロデュース。そのほかラジオパーソナリティとしても活躍しています。この記事では、多方面で活躍する彼の著作のなかから、おすすめの本を厳選してご紹介していきます。
1964年、熊本県出身の放送作家であり、脚本家です。
日本大学芸術学部に在学中からラジオの制作に関わるようになり、卒業後はそのまま放送作家に。1985年には一世を風靡した深夜番組「11PM」にも携わりました。「カノッサの屈辱」や「料理の鉄人」、「世界遺産」など新たな分野を開拓し、革新的な番組を多数作りあげています。
2008年には映画「おくりびと」で脚本を担当。アカデミー賞外国語映画賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞などさまざまな賞を受賞して、華々しいデビューを飾りました。
ラジオパーソナリティとしても活躍しているほか、大学の教授、飲食店の経営、雑誌での連載などで活躍。著作も多数発表しています。
また、熊本県PRマスコットキャラクター「くまモン」の生みの親でもあります。小山が新幹線元年事業アドバイザーに就任し、熊本の魅力を発信していく「くまもとサプライズ運動」を提唱。その一環として誕生したのが「くまモン」でした。その後の活躍は多くの人が知るとおりで、関連グッズの売り上げは2016年度時点で1280億円となっています。
本書は、さまざまな企画で世の中をけん引してきた小山薫堂が、日常の何気ない一コマからアイディアを膨らませていく過程を、「もったいない」という言葉をキーワードにして語ったエッセイです。
ひらめきの素や仕事術、実際の仕事の取り組み方などは、企画立案に携わっている人のみならず、多くの人の参考になるでしょう。
- 著者
- 小山 薫堂
- 出版日
- 2009-03-01
この本で書かれている「もったいない」とは、たとえば生かされていない失敗や、デザインが良く無くて使いづらいモノ、受付しかしない受付嬢などです。このようなちょっともったいないと感じるモノをヒントに発想を膨らませていく過程を、実例を交えて具体的に紹介していきます。
目の付け所が意外性に満ちていて、独自の感性で思考を膨らませていく彼の才能に驚くことでしょう。
また文章には、小山の放送作家らしさが表れています。湧きあがる感情をぶつけているのではなく、人に見られることを前提に「どう表現したらインパクトがあるか、読む人を惹きつけるか」を考えながら書かれているのです。だからこそ、彼の考えが読者にもしっかりと伝わるのでしょう。
「もったいない」という姿勢を常にもち、無駄に思えることからもアイデアを拾っていくこと、ネガティブなことをポジティブに捉えなおす考え方など、私たちが生活していくうえで参考になるエピソードを見つけられる一冊です。
「那由他」「玉響」「赤心」など、どこかで聞いたことはあるけれども、あらためて意味を聞かれると説明に困る日本語。実は背景には奥深い情景を持ち合わせている言葉がたくさんあります。
本書は、そんな日本語のなかから語感や意味が美しいものを集め、ショートストーリーにして紹介していく一冊です。
- 著者
- 小山 薫堂
- 出版日
- 2009-04-01
本書では、言葉がもつ辞書的な意味だけに着目するのではなく、言葉が作る世界観を読者が共有し楽しむことを目的としています。
ショートストーリーからは、その言葉を使う時の人の気持ちや、言葉が放たれた後の余韻を感じることができるでしょう。メンズファッション誌などで活躍する、ソリマチアキラのイラストも添えられています。
エピソード自体は短いですが、読者の心にしっかりと届きます。このまま忘れ去られるのが惜しい、繊細な日本語に出会えるはずです。
赤ちゃんがハイハイで移動する距離、人が一生のうちに夢を見る回数、食事の量……そんな「いのち」にまつわる数字を、イラストレーターとして長いキャリアをもつフランス人のセルジュ・ブロックの挿絵とともに紹介する絵本です。
主人公は、ひとりの女の子。平均値として表される数字はシンプルですが、胸に迫るものがあります。
- 著者
- 小山薫堂
- 出版日
- 2010-10-16
「生きているうちの16ヶ月を、彼女は泣くために費やします。涙は1粒0.035グラム。悲しむたびに30粒の涙を流し、一生分の涙は190万粒を数えます。」(『いのちのかぞえかた』より引用)
ある女の子が赤ちゃんとして生まれ、ハイハイをする乳幼児期、思春期を送り、成人して新たな生命を宿すまでの一生を描いています。
生きるとはどういうことなのか、いのちとはどのようなものなのか、データで突き付けられるので、その無機質さがかえって人生がどれほど大きなものなのかを教えてくれるのです。
数字の意味が理解できる年齢になってから読むのがよいでしょう。プレゼントとしてもおすすめです。
小山薫堂が仕事への姿勢やアイディアの発想法を綴ったハウツー本です。多くのユーザーに支持される商品や、企画のつくり方などの仕事術を教えてくれます。
身近な人を喜ばせようという日常のちょっとした工夫に、実は多くの企画のヒントが隠されているそう。実践できる方法が公開されています。
- 著者
- 小山 薫堂
- 出版日
- 2012-08-28
「自分が当たり前だと思っているものほど、意識的に先入観をリセットしてみると、実は色々な発見があるものです。(中略)僕の場合はよく『君は宇宙人だ』と自分に言い聞かせて、改めて日常を見回してみるんです。」(『小山薫堂 幸せの仕事術 つまらない日常を特別な記念日に変える発想法』より引用)
自分が楽しむというより、誰かを楽しませるために動くことが、結果的には自分も楽しくするのだと語り、楽しむためのアイディアの発想や実現についてのヒントが詰まっています。
行間からは、小山薫堂の柔らかい雰囲気が伝わってくるでしょう。彼が落ち着いた口調で、相手にしっかりと伝わるように話している様子が目に浮かんできます。だからこそ、読者も納得感をもちながら読み進めることができるのです。
社会を動かすものは「共感」であるなど、クリエイティブな職業に就いている人以外にもきっと役立つはず。事務仕事や育児なども楽しくなり、人生観が覆るかもしれません。
「熊本県」という枠を超え、いまや知らない人はいないのではないかというほど全国的に有名になった「くまモン」。その経済効果は凄まじく、社会現象にさえなりました。
本書は、くまモンがどのようにして誕生し、小山薫堂というブレインのもとで熊本県庁の職員がどのような戦略を練ったのか、その成功の軌跡をまとめた作品です。
キャラクタービジネスの経験ゼロの公務員集団「チームくまモン」の、いわば奮闘記といったところでしょうか。少ない予算のなか、アイディアと工夫でくまモンを売り出していった過程が描かれています。
- 著者
- 熊本県庁チームくまモン
- 出版日
- 2013-03-15
本書を読むと、くまモンのヒットは偶然やラッキーなどではなく、かなり戦略的に練られたマーケティングの結果だということがわかります。
その活動を率いていたのが、小山薫堂。そしてデザイナーの水野学や熊本県知事の存在がいかに大きかったのかが、実際にプロジェクトを動かした熊本県庁職員の「チームくまモン」の視点で語られていきます。
面白おかしくエピソードが語られていますが、いわゆるファンブックなどではなく、あくまでもビジネス書です。商品のブランド価値をいかにして高めていくのか、どのように売り出していくのかがわかるとともに、プロジェクトに関わる人たちの熱い情熱を感じることができるでしょう。
小山薫堂の名前を知らなくても、携わった作品にはどこかで触れたことがあるのではないでしょうか。彼の作品を読むと、さまざまなビジネスの裏で活躍している仕掛人の存在がいかに重要なのかがわかります。