グルメや教育など、さまざまな事業を展開する、ホリエモンこと堀江貴文。宇宙事業にも乗り出してロケットを作って飛ばすなど、話題には事欠かない人ですよね。そんな彼の本は多くありますが、この記事ではそのなかでも「決定版」と名高い『多動力』の見所となる内容をご紹介していきます。
そもそも「多動力」とは、いったいどういった意味なのでしょうか?
著者である堀江は、さまざまな事業を同時多発的にこなしていますよね。冒頭にも書いた、グルメ、教育、宇宙、その他にも多くの会社のコンサルとして、毎日めまぐるしく動いているようです。
そんな、いくつもの異なることを同時にこなす力を、多動力といいます。
多動力 (NewsPicks Book)
2017年05月27日
いまやインターネットで、水平的に各業界が繋がっていく時代。それぞれの壁を越えていく「越境者」に必要な力が多動力であり、それぞれに掛け算にして、まったく新しいサービスが生まれていきます。
堀江は「サルのようにハマり、ハトのように飽きよ」と言っている通り、転職する際にも好きなことを基準に始め、飽きたら次の仕事をやってみたらいいと勧めます。飽きるということは、ある程度知識を得たということ。この知識が積み重なって、掛け算になるのです。自分がワクワクすることを基準に転職活動する、というのは大切なのかもしれませんね。
そんな本作の売り上げ部数は、30万部を突破(2018年10月現在)。飲食店経営に特化した『グルメ多動力』も発売され、多くの人に読まれています。
堀江と、幻冬舎の編集・箕輪は、以前にも著作でタッグを組んだ2人です。
しかし堀江はどの著作も、1文字も自分では書いてないとのこと。本文にもありますが、彼が過去話していたことをまとめて、彼の著作が出ているのです。本作も、編集の箕輪がほとんど書いたのだそう!
箕輪は元々、ファッション雑誌の広告営業をしていました。商品開発・イベントの企画運営を経て、2014年に編集部に異動。堀江の本のみならず、与沢翼やイケダハヤトの著書も手がけています。
これからの時代は、自分をブランド化していかないと生き残れないと語る彼は、どんどん自分が面白いと思うことをやっていきます。好奇心で動き、活動量を増やして、感度を上げているのだそう。
そんな彼の働き方・動き方は、どこか堀江に通じるようなところがあります。堀江の多動力に感化されて、箕輪は会社以外でも積極的に動き、いろんなことをやってみて、自分の好奇心を自ら指揮しているようです。
では、多動力をつけるためには何が必要なのでしょうか?
冒頭でも記したように、多動力とは熱しやすく冷めやすい、いわゆる飽き症のような人にも思えてしまいます。ですが、そういった人は「好きだ」と思ったことへの集中力は、かなりのものでしょう。
「サルのようにハマれ」と堀江は言っていますが、そのものが好きでハマったときは、ほうっておいても勝手にやりこんでしまいます。その好きなことは自分の身につき、やがてその人の持つ強みになるのです。
しかし、「そんなに好きになれることがない」とい人もいるのではないでしょうか。確かに、これが自分の好きなことです!と語れる人は多くはないかもしれません。ですが、好きなことを探すためには好奇心を持って、さまざまなことをやってみることが重要です。
やったことがないことを好きになれる人はいません。堀江は、年に3回ほど「自分がやらなそうなもの」をあえてやるそうです。もしかしたら、そこからハマる可能性があるかもしれないからですよね。
自分がやったことのないこと、関係のないことでも、好奇心を持って自分から飛び込めるか?は多動力を身に着けるのには必要なことなのでしょう。
多動力といえど、睡眠を削ってまで何かに没頭することは推奨されていません。十分な睡眠とストレスのない生活が、超人的スケジュールをこなす要因だと堀江は語っています。
最低でも1日6時間以上、さらにいえばベッドで8時間寝るのが望ましいそうです。
睡眠時間が短いのは「緩やかな自殺」と捉えます。睡眠不足は、作業効率が落ちるだけ。睡眠を、人生を充実させるための最優先事項とし、無理に早起きなどはしないそうです。
睡眠時間を削るのではなく、あらためるべきは仕事のやりかたであり、いかに生産性を上げるかが問題になってきます。起きている間の多動力を発揮するために、いつまでも飛びまわれる健康を維持する。そのための睡眠なのです。
堀江は仕事を、ほぼ100%スマホでこなしているのだそう。
パソコンのブラインドタッチと同等程度にフリック入力が速くなり、予測変換を活用してメルマガの原稿を書きます。打合せや意見の吸い上げ、指示などはLINEやメッセンジャー、メールを使い分け。顔を見てコミュニケーションしたいときはSkypeと、いまやスマホはビジネスには欠かせません。
逆にいえば、スマホで事足りてしまうことがほとんどなのです。
パソコンは、大きな画面で動画を見るときだけ使うもの。スマートフォンの容量はかなり大きくなり、音楽も聴け、動画も見られてしまいます。
デザインや専門のソフトを使わない限り、ほとんどの仕事はスマホで全て片付けられるもの。ロボットが人間の仕事を代わりにやってくれる時代になった昨今、生産性の低い人間は淘汰されていきます。スマホを使って効率よく、場所を選ばず働ける人が、これからどんどん強くなっていくのです。
堀江は、肩書きを複数持てる人が強いと語っています。
今までの世の中では、器用貧乏は出世せず、なんらかのスペシャリストがよいとされてきました。しかし、どんなにスペシャリストになったところで、代わりがいる存在であれば、なんの価値もありません。
がんばって100人に1人の存在になっても、代わりはたくさんいます。しかし、複数の分野で100人に1人の能力を持ったらどうでしょうか?たとえば3つの分野でそうなれば、100×100×100=100万人に1人の存在になれます。
なぜ堀江には多くの仕事が舞い込み、日々忙しく働いているのでしょうか?それは、彼がさまざまなことにハマり、飽きた結果、いろんな知見をそれぞれの業種から取り入れ、新たなアイデアを生み出し続けられる「数千億分の1」の存在だからです。
100人に1人の存在になるのは、好きでハマればかなり早い段階でなれるのではないでしょうか。それらを複数掛け合わせて100万人に1人の存在になり、また掛け算を続けていれば、さまざまな分野で声のかかる存在になれてしまうのです。
誰しもが、何かをするとき「準備を完璧にしてから始めよう」と思いがちです。しかし、堀江は「見切り発車でやってしまおう」と提唱します。それはいったい、なぜなのでしょうか?
多くの人は、やる前にリスクを予測し、対処法を考えてから何かを始めます。しかし本当に必要なことは、今すぐに始めてしまって、走りながら考えることなのです。
堀江自身の例でいうと、2017年に開いた「ホリエモン祭り」は、構想から開催まで2ヶ月しかありませんでした。練りに練って、洗練されなくていい。素人ながらも、みんなで試行錯誤して、ノリと思いつきで作った10代の頃の学園祭のように楽しもう。そんな思いで開かれたのです。
どんなに先回りして考えても、予期せぬエラーやトラブルはつきもの。だったら、予測して考えてる時間をトライに回して、エラーが出たらそのたび修正する。そのほうが、みんな成長するという考えです。
1回で完璧にしようなどと思わず、思いついたことは見切り発車してしまって、トライ&エラーをくり返しながらいいものを作っていく。これが成功の秘訣なのです。
- 著者
- ["堀江 貴文", "星井 博文", "三輪 亮介"]
- 出版日
- 2018-03-01
実は、本作は漫画にもなっています。もとの本も読みやすい文体ですが、漫画版はさらにわかりやすくなっています。
ストーリーは、旧態依然としたメーカーに勤める鈴木が、「副業で給料の3倍稼ぐ」という規格外の先輩・堀口をはじめ、全社員とともに突然無人島に送られてしまい、そこで多動力を身につけて生き残るというものです。
無人島でやるべきことは?ここに来て、会社という枠組みのルールをきっちり守る必要性があるのか?極端な設定にすることによって、より堀江の主張がわかりやすくなっています。
ちょっと現実離れしているかもしれませんが、元の本で学んだ考え方がストーリーで語られていくので、さらに理解が深まるでしょう。
最後に、名言の多い本作から、そのベスト5をご紹介!
第5位
寿司屋の修行なんて意味がない
(『多動力』より引用)
ネットで炎上した、有名な発言ですね。お寿司屋さんというのは、昔から長いこと親方のもとで修行して、何年か経たないとツケ場に立たせてもらえない、教えてもらえないというのが定説でした。
しかし、いまやネットでお寿司の握り方も調べられる時代。何年も修行するくらいなら、寿司の学校でも行って基礎を知り、それから工夫して実力を高めていけばいいのです。どんな仕事にもいえることですね。
第4位
知らないことは恥ではない
(『多動力』より引用)
恥ずかしがらずに人に聞くことで、知識はどんどん増えていきます。そして聞かなくても、手元のスマホで調べることで、簡単にわかります。それでもわからなければどんどん聞き、また自分の知識と組み合わせることで、いろんなアイデアが生まれるのです。
ベースの教養は身につけておく必要がありますが、あとは「検索する力」と「質問する力」があれば、自分の知識はどんどん増え続けるでしょう。
第3位
飽きっぽい人ほど成長する
(『多動力』より引用)
こんなことを言われることは、今までなかったのではないでしょうか?飽きっぽい、続かないというのは、これまでマイナスの要素でした。しかし、ひとつのジャンルにめちゃくちゃハマっては飽きて、次のジャンルに進むという人は掛け算がうまくなります。
80点のものを多く自分の中に持っている人は、それぞれを組み合わせて新しいビジネスを始めたり、アイデアが浮かんだりすることが多いでしょう。これからの時代は、そういう人が強くなっていくのです。
第2位
恥をかいた分だけ自由になれる
(『多動力』より引用)
自分が恥ずかしいと思ったことは、他人は意外と気にしていません。堀江は、ホテルのクリーニングにパンツを出すのが恥ずかしくないのかと聞かれたようですが、他人はそんなに自分のことに興味がない、と答えています。
どうせ忘れられるなら、最初から自分がバカになってみっともない失敗をすればいい。その失敗する勇気があれば、どんどん行動できます。そのための「恥」です。わが道を進むために、人目を気にせず恥をかける人が強いのです。
第1位
人生に目的なんていらない
(『多動力』より引用)
堀江には目的などありません。すべての理由は「面白いから」「ワクワクするから」。面白いと思って熱中したことが仕事になって、面白いと思った人に会ったら、そこからビジネスチャンスができます。
今が全てで、「将来の夢」や「目標」などなく、日々が面白くてたまらない。そんな人生を送りたいと語っています。自分がワクワクすることだけを毎日やり続ける。想像したら、きっと楽しみでしょうがないですよね。
いかがだったでしょうか?『多動力』は文章も読みやすく、内容も頭に入りやすい内容。そのうえ、目からウロコが落ちるような考え方がたくさんあります。ぜひ読んで、多動力を発揮してみてください。
ひらめきを生む本
書店員をはじめ、さまざまな本好きのコンシェルジュに、「ひらめき」というお題で本を紹介していただきます。