5分でわかる日米安全保障条約!内容や問題点、5条などをわかりやすく解説!

更新:2021.12.12

1951年に結ばれた「日米安全保障条約」。戦後日本の安全保障政策の根幹である一方で、多くの反対運動も巻き起こしています。この記事では、条約の内容やメリット、問題点、安保闘争などをわかりやすく解説してきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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日米安全保障条約とは。概要と内容を簡単に解説

第二次世界大戦に敗戦した日本。日本軍は解体され、アメリカを主力とする連合国軍が日本を占領することとなりました。マッカーサーを最高司令官とする「連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)」によって、民主化政策が推進されることとなります。

一方の国際社会では、アメリカとソ連の対立が深まり、冷戦が始まります。するとアメリカは日本に対し、反共産化の防波堤としての役割を期待するようになりました。

1950年になると、北朝鮮と韓国の間で「朝鮮戦争」が勃発。アメリカは日本に置かれた米軍基地を用いて戦争に介入するようになります。GHQは日本政府に指示を出し、自衛隊の前身となる「警察予備隊」を発足させました。このようにして日本は、アメリカの極東の拠点として、冷戦体制に組み込まれていくこととなるのです。

1951年になると、日本は第二次世界大戦の講和条約である「サンフランシスコ平和条約」に調印します。当時の内閣総理大臣だった吉田茂がこの時に同時に結んだのが、「日米安全保障条約」です。

1952年4月28日、「サンフランシスコ平和条約」と「日米安全保障条約」は同時に発効。これによって日本は独立し、GHQは廃止、連合国軍による占領も解除されました。ただアメリカ軍だけは「日米安全保障条約」の規定に従い、「占領軍」から「在日米軍」と呼称を変え、その後も日本に駐留することとなります。独立した後も日本はアメリカの重要な拠点であり続けることとなるのです。

1951年に結ばれた「日米安全保障条約」は、アメリカによる日本の防衛義務が明記されていないほか、日本で内乱が発生した場合にアメリカ軍が出動できるようになっていました。これを問題視した岸信介内閣総理大臣は、1960年に条約を改定しました。改定後は新旧を区別できるよう「旧安保」「新安保」と呼ばれています。

冷戦が終結した後も、「日米防衛協力のための指針」という防衛協力の在り方を具体的に定めたガイドラインをもとに、国際情勢の変化に対応しながら今日にまで継続しています。

その一方で、日本に設置してあるアメリカ軍基地が、さまざまな問題を生み出していることも事実です。特に基地が集中している沖縄では、基地反対運動がくり返し発生しています。日米安全保障条約は締結から半世紀以上経った現在でもその是非をめぐって議論がされている条約なのです。

日米安全保障条約が日本にもたらすメリットとは。第5条についても解説

メリットとしてまず挙げられるのが、在日アメリカ軍の存在が強い「抑止力」となっていることでしょう。

2018年8月、アメリカのトランプ大統領は、2019年度のアメリカの国防予算を7160億ドル要求すると発表しました。これは日本円にすると約79兆円にあたり、軍事予算世界第2位である中国の倍以上という、圧倒的な数字です。

また横須賀を母港とする第七艦隊は、アメリカ海軍のなかでも屈指の戦力を誇ることで有名です。

日米安全保障条約を支持する立場の人は、この強力な在日アメリカ軍の存在によって、日本の平和と安全が確保されていると主張しています。

当初結ばれた条約には、アメリカが日本を防衛する義務が明記されていませんでしたが、1960年に改定した際に、第5条として新たな文言が追加されました。

「各締約国は、日本国の施政の下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」

これは、施政下にあるいずれかの地域で「武力攻撃」や「平和及び安全を危うくする」事態が生じた場合、日米が協力して事態に対処することを「義務」として明記したものです。

そのほかのメリットとして、アメリカ軍の存在を前提とすることで、日本の安全保障に関するコストを必要最小限に抑えることができることも挙げられています。

2018年度の日本の防衛費は約5兆円で、これはGDP比で考えると1%程度に過ぎません。この比率は主要先進国のなかでもかなり低い水準となるため、日本は安全保障を低コストでおこなっているといえるでしょう。

日米安全保障条約の問題点

一方で、日本各地にアメリカ軍基地が設置されていることが、さまざまな問題にも繋がっています。

上述したとおり、日本はアメリカに大きく依存した安全保障政策をおこなっているため、その関係性を重視するあまりアメリカの意向に逆らうことができない「対米従属」の状態にあると指摘する人もいるのです。

またしばしば在日アメリカ軍の犯罪行為も問題になっています。日米安全保障条約にもとづいて1960年に締結された「日米地位協定」には、「米兵に対する日本の第一次裁判権の制限」や「日本の警察による身柄確保の制限」など、日本国内でアメリカ兵が犯罪を犯したとしても、日本が処罰することは困難だとする規定がありました。

たとえば1995年に発生した「沖縄米兵少女暴行事件」では、少女を暴行したアメリカ兵の容疑者たちの身柄を拘束することができませんでした。

この事件を踏まえて「日米地位協定」は改善はされたものの、現在も対等とは言い難い関係が続いています。

その後も沖縄では、アメリカ兵による犯罪や、アメリカ軍基地から発着する航空機の事故などが発生。根強い基地反対運動がおこなわれている状態です。

さらに、日本国内にアメリカ軍を駐留させることで、アメリカの戦争に日本が巻き込まれることを懸念する人もいます。また平和主義を掲げている日本が、軍事力を展開することに強力していること自体を批判する意見も。

このように日米関係が深まれば深まるほど、日米安全保障条約の功罪両面も深まっていくといえるのではないでしょうか。

日米安全保障条約改定にともなう「安保闘争」とは。

上述のとおり、1951年に結ばれた旧日米安全保障条約は、アメリカによる日本の防衛義務が明記されていないほか、日本で内乱が発生した際にアメリカ軍が出動できるようになっていて、内政干渉に繋がりかねない問題点がありました。

そのため1960年に、岸信介内閣総理大臣が条約を改定し、新日米安全保障条約が結ばれます。ただこの際に、新安保に反対する人々による大規模な運動、通称「安保闘争」が発生してしまいます。

大きな要因として挙げられるのが、岸信介個人に対する反感と、改定内容に対する懸念です。

岸信介は、太平洋戦争勃発時の東条英機内閣時代に、商工大臣や国務大臣を務めた人物。最終的には無罪放免されたものの、A級戦犯として一時は巣鴨プリズンに拘置されています。「安保闘争」が拡大した背景には、このような経歴を持つ岸個人への反感がありました。

また新安保に追加される規定のうち、第3条には「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的且つ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に対抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として維持し発展させる」とあります。

これは日米ともに防衛のための能力を向上させることを定めたもので、当時自衛隊の拡大を招き、日本の軍国化につながりかねないと考えられていました。

そしてもうひとつ、第6条には「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」とあります。

これは通称「極東条項」と呼ばれるもので、在日アメリカ軍基地を、日本の防衛だけでなく極東の平和維持のために利用することを認めたものです。この条文も、日本が直接関係しない戦争に在日米軍基地が用いられ、日本が戦争に巻き込まれかねないと強い反発を招きました。

「安保闘争」は、戦後日本で発生した最大の政治運動です。もっとも大規模なデモとなった1960年6月18日の国会包囲運動には、主宰者発表で33万人もの人が集まったとされています。

岸内閣は「安保闘争」に対抗し、国会への警官隊導入、自民党単独採決などの強硬手段を実施。そして1960年6月23日に、新安保の発効と同時に総辞職を表明しました。

日本語と英語で全文を収録した入門書

著者
出版日
2016-04-21

日米安全保障条約の全文を、日本語と英語でそれぞれ収録したもの。あわせて、それぞれの条文に対して簡潔な解釈が掲載されています。

法解釈は言葉の定義が難解なことが多いですが、本書では難しい内容を平易に解説しているため、比較的読みやすいといえるでしょう。

2015年に問題視された「新安保法制」と、日米安全保障条約の関わりについてもQ&Aを掲載、さらに「日米地位協定」や「国連憲章」についても項が割かれているため、本書を通じて安全保障問題の大まかな全体像を知ることができるはずです。

概要を知るための最初の一冊としておすすめの作品だといえるでしょう。

日米安全保障条約と安全保障政策を考える

著者
丹羽 宇一郎
出版日
2017-08-04

作者の丹羽宇一郎は、伊藤忠商事の社長や中国大使を歴任した人物。太平洋戦争の従軍経験者や自衛官など軍事の専門家に聴き取りをおこない、それを通じて戦争とは何か、その実態を描き出しています。

日米安全保障条約は、現在の日本の安全保障政策の根幹を担っているものです。一方でその方針は軍事力を背景に戦争の抑止を図るものであり、作者は抑止による安全保障は次善策であると述べています。

もっとも大事なのは、敵を作らないこと。そのために何ができるのかさまざまな提言をしている作品です。本書の見解にどのような立場をとるにせよ、安全保障について考えるうえで多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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