『居眠り磐音』あらすじなどネタバレ!主人公は優しすぎる浪人【映画化】

更新:2018.10.11 作成:2018.10.11

2018年10月時点で、シリーズ累計2000万部を突破!時代小説ブームを巻き起こした、佐伯泰英のヒット作です。 爽やかで剣の達人でもある主人公が、幾多の困難に立ち向かっていく物語。ドラマも好評でしたが、2019年5月には松坂桃李主演で映画化も決定し、ますます目が離せません。 今回は、そんな本作の魅力や見所などをご紹介しましょう。ネタバレ注意です。

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目次

小説『居眠り磐音』あらすじをネタバレ紹介!松坂桃李主演で2019年5月映画化!!

時は明和9年(1772年)。主人公・坂崎磐音(さかざき いわね)は九州豊後の関前藩(架空の藩)の中老・坂崎正睦の嫡男です。幼馴染の河出慎之輔、小林琴平とともに藩政改革を目指していました。
 

しかし、3年間の江戸勤番を終えて帰ってきたところ、早々に事件が発生。慎之輔が、妻・舞の不貞を問いただした結果、彼女を手打ち(斬殺)にしてしまったのです。琴平は、妹である舞を斬られたことで慎之輔らを斬り、磐音はそんな琴平を斬らざるを得ない状況になってしまうのでした。

しかし、これはある人物が流した嘘だったのです。そんな嘘に翻弄されて、磐音は幼馴染の2人を失ってしまうことになります。傷心した彼は、その後に国を出奔。浪人として江戸にやってくるのです。そして深川六間掘の金兵衛長屋に住み始め、鰻割きや、用心棒の仕事を始めるのでした。

両替商「今津屋」の主人・今津屋吉右衛門の用心棒を引き受けたことがきっかけで、江戸幕府も絡むさまざまな陰謀に巻き込まれるようになった彼は、時の老中・田沼意次一派とも壮絶な戦いをくり広げていくことになるのです。

著者
佐伯 泰英
出版日
2002-04-09

 

近年の時代小説ブームのきっかけとなったといえる、作者・佐伯泰英最大のヒット作。双葉社などから発売された本シリーズは、51巻『旅立ノ朝』で完結を迎えました。『居眠り磐音江戸双紙 読本』や『居眠り磐音江戸双紙 帰着準備号』には、読み切りの中編が収録されています。

2019年5月17日には、松坂桃李主演の映画『居眠り磐音』が公開予定。芳根京子と木村文乃がダブルヒロインを務める他、柄本佑と柄本明が親子で共演するなど、注目のキャストとなっています。

映像化はこれまでも、2007年からテレビドラマ『陽炎の辻~居眠り磐音江戸双紙~』が3シリーズ、正月スペシャル「夢の通い路」「海の母」「完結編」が放送。すべてで磐音を演じているのは、山本耕史です。他にも中越典子、渡辺いっけい、川村陽介らが出演しています。

「完結編」は原作シリーズ全巻の流れを汲んでいるものの、オリジナルエピソードなども豊富。ドラマシリーズ1が放送されてから、約10年の歳月が過ぎました。原作35巻『姥捨ノ郷』では、磐音の息子・空也も登場しています。

また本作は、2019年2月に文藝春秋の文春文庫から「決定版」が発売。作者自らは手を再度手を加えた内容となっているので、まだ読んでいない方は、こちらを読むことをおすすめします。


松坂桃李が出演した作品を見たい方は、こちらの記事もおすすめです。

松坂桃李の出演作は「攻め」揃い!実写化した映画、テレビドラマの魅力を発掘

 

『居眠り磐音』の魅力1:登場人物の関係性!嘘で引き離された、磐音と婚約者・奈緒

本作は、全51巻にもおよぶ長大な物語。登場人物も数多く登場しますが、こちらでは主要となる人物を中心にご紹介いたします。

まず、主人公の坂崎磐音。豊後関前藩の中老の嫡男で、物語開始当初の年齢は27歳。幼馴染らとともに陰謀に巻き込まれ、国を出奔した後は江戸で生活しています。直真影流の佐々木玲圓の道場で修行した剣の達人で、愛刀は備前包平(びぜんかねひら)。

そんな彼が江戸に出てきてからお世話になるのが、長屋の大家である金兵衛(きんべえ)。夏でもどてらを着ているのが特徴で、口は悪いものの、浪人の磐音を気遣う面倒見のいい人物でもあります。

その娘・おこんは「今小町」と呼ばれるほどの器量よし。しっかり者で、物語開始当初22歳ほどでしたが、女中をしている「今津屋」で奥向き(家政に関する仕事)を任されるほど信頼されています。

彼女が働き、磐音が用心棒を務めることになる今津屋は、領国広小路にある大店の両替商。店主の今津屋吉右衛門は人を見る目がある人物で、出会った当初から磐音を重用していました。用心棒仲間の品川柳次郎は貧乏御家人の次男で、母親想いの気さくな性格。磐音のピンチを救う活躍を見せることもあります。

佐々木玲圓(ささき れいいん)は直真影流の道場・尚武館道場の主で、江戸にその名を轟かせる剣の腕前の持ち主。江戸幕府とも繋がりを持っていました。磐音の剣の師匠でもあるのですが、後に彼を養子に迎え、義理の父となります。

佐々木道場の住み込み弟子の松平辰平は「痩せ軍鶏」といわれるくらい頼りない人物ですが、物語が進むにつれ、たくましく成長していくのです。

作中ではおこんと磐音の関係も気になるところですが、実は磐音には、国に残してきている許嫁がいました。その女性が、小林奈緒。彼女は彼の婚約者であり、幼馴染だった琴平の妹でもある人物です。しかし、ある人物の嘘によって生まれた悲劇のせいで、結果的に磐音と離れ離れになることとなりました。

小林家が断絶後、彼女は病に倒れた父の治療費を稼ぐために身を売り、後に吉原でも有名な花魁となります。立場がまるっきり違ってしまった磐音と彼女の、切ない関係にも注目です。

『居眠り磐音』の魅力2:優しすぎる主人公・磐音!昼と夜、ぞれぞれの顔がかっこいい!!

 

本シリーズの魅力の1つが、主人公である磐音です。

事件に巻き込まれて故郷を出奔し、その後は江戸で生活することになった彼。用心棒として活躍し、師匠である佐々木玲圓と関わるなかで、幕府の老中・田沼意次の陰謀に対峙することとなります。そして田沼派の刺客と、激闘をくり広げていくのです。

人情に厚く、礼節を重んじる好青年で、春風のように穏やか。人柄がよく、多くの人に慕われています。剣の達人ではありますが、性格が剣にも反映されているところがあり、彼の剣は通称「居眠り剣法」。

日向ぼっこで居眠りする老猫のようで、眠っているのか起きているのかわからないところから、その名が付けられました。

彼は江戸に出てきてから、金兵衛の紹介で2つの職業に就くことになります。昼間は鰻割き。実は彼、剣の達人ですが、鰻をさばくのもとても上手。そこで唐傘長屋の住人で、彼の深川暮らしの師匠となる少年・幸吉が鰻をおさめている鰻屋「宮戸川」で鰻をさばく傍ら、夜は用心棒として働いているのです。

ちなみに鰻に関わるシーンは頻繁に登場し、重要な場面で登場することもあるので、ファンにはおなじみの姿。

そんな今津屋で用心棒を始めた磐音は、さまざまな陰謀に巻き込まれることになりました。命を狙われる人々を助けるために剣を振るうことになります。品川柳次郎や竹村武左衛門ら用心棒仲間にも恵まれ、多くの人が彼に手を貸したくなるというだけでも、磐音の人柄が伝わるのではないでしょうか。

彼は、物語当初は「坂崎磐音」ですが、後に佐々木玲圓の養子となり、名字を「佐々木」と名乗るようになります。

 

『居眠り磐音』の魅力3:異色の作者・佐伯泰英!小説家で写真家!?

 

大ヒット作となった本シリーズをはじめ、多くの人気シリーズを手掛けた作者。1942年2月14日生まれ、福岡県出身の小説家です。スペイン滞在経験があり、1976年に闘牛を題材にしたノンフィクション『闘牛』で作家デビューを果たします。

闘牛をテーマにした作品や、スペイン語圏を舞台にした冒険小説、国際陰謀小説を数多く執筆しましたが、ヒット作には恵まれません。ついには『犯罪通訳官アンナ』の打ち切り宣告により、作家生命の危機に立たされます。

そこで編集者に、時代小説か官能小説の執筆を勧められ、時代小説を書くことを決めたのです。

 

著者
佐伯 泰英
出版日
2008-05-15

 

1999年、書き下ろし時代小説『瑠璃の寺』を発表。1週間で重版が決定するヒット作となります。

その後、祥伝社「密命」シリーズ、光文社「夏目影二郎始末旅」「吉原裏同心」シリーズ、「古着屋総兵衛影始末」「新・古着屋総兵衛」シリーズ、角川春樹事務所「鎌倉河岸捕物控」シリーズといった数々の人気シリーズを手掛けていくことになるのです。出版した作品は、100冊を超えています。

また、彼は小説家以外にも、闘牛を中心とした写真家としても有名。公式サイトには日々の暮らしが、美しい写真とともに綴られています。

 

『居眠り磐音』の魅力4:続編「空也十番勝負」シリーズも面白い!主人公は磐音の息子!!

 

磐音の物語は51巻で完結を迎えましたが、シリーズには正式な続編が存在します。主人公は、坂崎空也(さかざき くうや)。シリーズ作中で誕生した、磐音の子どもです。

「空也十番勝負」シリーズは、16歳になった空也を主人公に、彼の武者修行の様子を描いたストーリーとなっています。

 

著者
佐伯 泰英
出版日
2017-01-06

 

父親の故郷である豊後関前藩を出発し、各地で剣術を学ぶという筋書きですが、行く先々で現れるのは強敵ばかり。宿敵の存在や初恋など、10代の少年らしい要素も盛り込まれています。

磐音が物語当初27歳という大人の年齢だったのに対し、彼はまだ16歳。それゆえに、若々しさに溢れる青春小説となりました。

磐音の物語は江戸を中心に描かれましたが、こちらは九州を中心に各地へと旅を続けていく様子が描かれています。

ちなみに磐音は、佐々木玲圓より引き継いだ尚武館道場の主となりました。次期将軍候補、西の丸・徳川家基の剣術指南役を務めています。

この新シリーズも、ぜひご注目ください。

 

『居眠り磐音』の魅力5:おこんと結婚!恋愛展開からも目が離せない!!

 

磐音は穏やかで、とてもよい人柄をしている好青年。ドラマ版では山本耕史が、映画版では松阪桃李が演じることもあり、やはりビジュアルが固まっていない頃から、性格だけでなく顔もよいのでは?と想像した読者の方も多いのではないでしょうか。

そんな好青年な彼は、国を出奔する前には許嫁がいる身でした。その女性・奈緒とは不幸なことに離れ離れになり、つらい恋となります。互いを大切に思っているからこそ、たった1つの事件で引き裂かれてしまった運命の切なさに、読んでいて胸が痛むでしょう。

とはいえ、彼がそのまま独り身を貫いたわけではありません。続編の主人公・空也は、磐音の実子なので、奥さんが存在します。その相手とは、おこん。長屋の主である金兵衛の娘で、今津屋で女中として働いていた女性です。

しっかり者の彼女と磐音の関係は、奈緒の存在があった影響もあり、なかなか進展しませんでした。やきもきした関係が続くのですが、その後、奈緒とは正式に決別。そして第17巻『紅椿ノ谷』では夫婦になることを決め、第22巻で磐音が関前に帰郷したとき、祝言を上げて正式な夫婦となったのでした。

出会いに別れ、やきもきする展開、そして結ばれる2人……。恋愛漫画さながらの展開も、ぜひご注目ください。

 

『居眠り磐音』の魅力6:作品の世界観を江戸地図で楽しめる!? まさかの一冊!

 

江戸は現在でいうところの東京ですが、当時と今ではまったく様相が違います。埋立地が多い東京の海は今よりももっと内陸にあり、浅草も港町だったのだとか。徳川家康が、あまり発展していなかった土地を一大都市としたために郊外には農地が広がるなど、長閑な景色も広がっていたようです。

そんななかで、磐音が住むのは深川界隈。現在の江東区清澄白河付近です。資料館なども存在しているので、当時の暮らしぶりを知ることができます。

関前に帰郷するなど旅をすることもありますが、磐音の活動拠点は基本的に江戸。そんな、彼が歩いた江戸の街を知ることができる本が存在するのです。

 

著者
吉田 喜久雄
出版日
2012-01-12

 

こちらの本は、本作のために作られた地図本。特大サイズ(縦75㎝×横80㎝)の地図1枚に、作中で登場した店や寺社などが記載されています。実際の磐音の足取りや建物の位置関係を知ることで、よりリアルに作品世界を脳裏に浮かべることが可能となるのです。

また、現在の地名も記載されているので、聖地巡りのお助け本としても優秀。タイムスリップ気分を味わうと同時に、現代でも磐音たちが生きた時代を感じることができます。

本作を読み終えた際には、ぜひこちらを片手に聖地巡りをしてみてはいかがでしょうか?

 

『居眠り磐音』の魅力7:コミックス版もおすすめ!ビジュアル化された剣さばきに注目!!

 

本シリーズは、51巻にもおよぶ長編シリーズ。気になっていても、なかなか手が伸びないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな時に手に取りやすいのが、こちらのコミックス版です。作画を担当したのは、ゴルフ漫画で有名な、かざま鋭二。2011年までに全11巻が発売されています。

 

著者
佐伯 泰英
出版日
2009-01-15

 

この漫画の見所は、なんといっても文字が絵になっているので、場面がわかりやすいという点でしょう。

キャラクターのビジュアルや風景はもちろんのこと、磐音の剣さばきも再現。彼の居眠り剣法はイメージが難しいこともあり、絵で動きを知ることができると、よりその凄みを感じ取ることができます。

また、食事のシーンや何気ない会話など、細かい表情の変化を知ることができるのも楽しみの1つ。内容は原作に準拠しており、小説版を未読の方も、ファンの方も楽しめる要素が詰まっている作品です。

 

『居眠り磐音』結末をネタバレ解説!気になる最後は?

 

友人たちを次々と亡くし、許嫁と別れて江戸にやってきた磐音。彼はさまざまな人と出会い、そして助けられながら、江戸での生活を送っていました。用心棒として働き、田沼一派の陰謀に巻き込まれ、相対し戦ってきた磐音たちは、ついに最後の刺客を打ち倒すのです。

物語の最後は、戦いから5年が経過してからの磐音たちの様子が描かれます。玲圓から継いだ尚武館を復活させ、磐音は徳川家基の剣術指南役になり、ごたごたはありつつも日常生活が営まれていました。

そんななか、おこんの父である金兵衛が他界するなど悲しい変化も……。着実に時間が過ぎていっていることが感じられるのです。

 

旅立ノ朝-居眠り磐音江戸双紙(51) (双葉文庫)

2016年01月04日
佐伯 泰英
双葉社

 

金兵衛の死から3年。今度は磐音の父の容体が悪化したという知らせがあり、関前へと一家そろって帰省することになりました。そこで関前の磐音に関わる人物が勢ぞろいする姿は、まさに圧巻の一言。悪い人物も登場はしますが、どことなく影が薄くなってしまっています。

江戸、そして関前で磐音に関わった人々の現在が垣間見られ、懐かしくもあり、終わりに向かう物悲しさも漂うなか、1人の若者の旅立ちが描かれていきます。人生をまっとうした人が亡くなり、若者が己を高めようと旅立つ姿は、まさしく世代交代だといえるでしょう。

長く続いてきたシリーズの最終巻。さまざまな感情が巻き起こる感動のラストは、ぜひご自身の目でお確かめください。

別れは悲しいだけではなく、希望を見出せることだってある。磐音の物語はひとまず完結となりましたが、物語は引き継がれ、そのなかで彼らの人生は続いているのだと感じられる結末なのです。

 

1人の若者が傷心しながらも、悪と対峙していく勧善懲悪の物語。そのなかには、さまざまな登場人物の人生が詰まっています。

映画版も発表され、ますます注目が集まる磐音の世界。穏やかな剣の達人である好青年の、その生きざまをご覧ください。