本作は「ヤングアニマル」で連載中されている水無月すうの作品。村を襲う凶暴な魔物を鎮めるために主人公が生贄となるのですが、彼女は魔物が嫌がるほどの足のくささ。グルメ漫画なのにグルメしない、異色すぎるファンタジーグルメギャグ漫画です。 今回の記事では、そんな本作の魅力をご紹介していきます。スマホの漫画アプリでも無料で読めるので、気になった方はそちらから試してみてはいかがでしょうか?
あるところに、それはそれは平和な村がありました。
しかし、その村の平和は、魔物との密約によって保たれていたのです。その平和の条件は、生娘を生贄として差し出すこと。
もしもそれが守られないならば、たちまち魔物は暴れだし、空は赤く染まり、地は裂けて、村人の宝物(ビッ○リマンシール)は無惨にも奪われてしまうことになるでしょう。
そんな現況を救うべく村から差し出されたのが、ペポパという名のエルフの娘。強大すぎる魔物に対して彼女はひと飲みで食べられてしまい、その貴い犠牲によって長きに渉る平和が保証され――ませんでした。
魔物は食べる寸前に、彼女を吐き出したのです。それは美人エルフの美貌に惚れ、献身的な態度に心打たれたから――ではありません。
なんと、彼女の足が途轍もなくくさかったのです。
毒贄クッキング 1 (ヤングアニマルコミックス)
2018年05月29日
そのたった1つの理由で、魔物は彼女を拒絶。そして、その日その時から、調理で誤魔化して、どうにか魔物に自分を食べさせようという、彼女の挑戦が始まったのです。
このようにして、ファンタジーにありがちな悲劇的展開から、180度反転して、突き抜け過ぎたギャグ漫画が始まります。ペポパを具材とした料理に取り組む辺りは、おかしいやら呆れるやら。
展開はくだらないのですが、村人(と、ある理由からペポパにも)にとっては死活問題で、必死になるさまが笑いを誘います。
さらには本作をグルメ漫画、料理漫画とカテゴライズするところにも、ある種の出オチ的な面白さが感じられることでしょう。話が進むと理不尽な魔物とその生贄、という関係もズブズブぐだぐだになっていき、タイトルのクッキング要素もなくなっていきますが、気にしてはいけません。
本作の主人公にして、魔物にとらえられる哀れな生贄となるのが、エルフのペポパです。
エルフの種族的特徴なのか、はたまた本人の素養かはわかりませんが、非常に見目麗しい美少女。髪は青く艶やかで、ピンと突き出た長耳がチャームポイント。胸はたわわ、腰はほどよく引き締まり、お尻の大きいナイスバディです。
衣服の有無にかかわらず、人目を惹かずにはいられない扇情的な娘。それがペポパというキャラクターなのです。しょっちゅう後述するような、濡れ場に遭うのも特徴。
両親はおらず、生活のために伝統的手法で「エルフの一滴(したたり)」という酒を、たった1人で造り続けています。莫大な借金と引き替えに生贄になろうとしているのは、遠隔地の妹に迷惑をかけたくないという、健気な姉心からでもありました。
彼女はどんな逆境にもめげない、(ある意味では)芯の強い女性です。……図太いと言い換えることも出来るかもしれませんが。
ペポパは、作品が違えばまさしく悲劇のヒロイン的なポジションにいます。しかし、本作はあくまでも荒唐無稽なギャグファンタジーなので、そんな側面は微塵も出てきません。
彼女が生贄に選ばれたことは、まず村で唯一の生娘というのもあるのですが、村に対して莫大な借金を抱えているというのも大きな理由でした。これも悲劇のヒロイン要素になりそうなものですが、この漫画にかかれば自己破産と書いて生贄と読み、それをもって借金がチャラになるという現実的すぎる、斜め上の展開となります。
また普段の言動も、ことごとく残念。見た目のよさが全て吹き飛ぶほど、ドジでマイペースでアホの子なのです。
それに輪をかけるような酷い設定が、極度の足臭。魔物が泣いて嫌がり、生贄のチェンジを要求するくらいの激臭と描写されます。
ただ、これは彼女生来の体質でないことだけは、彼女の名誉のために書いておかなければならないでしょう。彼女の唯一の収入源である「エルフの一滴」は、村特産の毒銀杏にエルフの足を漬けることで発酵させるお酒です。その毒銀杏の匂いが染みついているがゆえの刺激臭なのです。
とはいえ酒造りしなければ生活がままならなくなり、しかも匂いが抜けるまで長期間かかってその間に餓死する危険性もあるため、簡単にやめることも出来ないというジレンマ。
このようにペポパは、生贄なのに食べてもらうのが大変という、とても残念なキャラクターなのです。
素のままだと吐き出されるばかりで、一向に食べてもらえないペポパ。チェンジしようにも交替役もいなければ、借金苦も解決しません。
そこでようやく登場するのが、本作のグルメ料理要素です。毎回のように趣向を凝らして、彼女を具材とした料理が登場します。
その調理(?)風景が無駄にエロく描写されているのです。そのまま食べられれば、粘液が絡まった結果服が透けてエロくなり、調理の煮物鍋物はほとんど入浴に近い状態となるので、これまた無闇に扇情的。
生贄の意識だけは高いのですが、エロスだけ振りまいて、毎回食べられることはありません。
本巻を紹介するうえで避けられないのは、やはりインパクト抜群の第1話でしょう。
悲劇的展開を予想される幕開けから一転して、マズイの一言で吐き出される衝撃。魔物――ギャザ男は口がないのか、直接喋らずにプラカードで意思表示してくるところも、シュールで笑いを誘います。
- 著者
- 水無月すう
- 出版日
- 2018-05-29
亡き母親の料理姿を見習って、愛情込めて鍋料理になろうとするも、あえなく駄目出しされるところは涙(そして笑い)が堪えられません。可愛らしいエルフが、一般的な意味とは違う形で理不尽な目に遭う。これこそが本作の魅力でしょう。
また、案外ギャザ男が常識人なのもポイント。料理に対して的確なアドバイスをする姿にも注目です。
本巻は前巻から引き続き、お気楽路線をぶち壊すかのように、ギャザ男退治にやってきた天使デデレルとの話です。
本来生贄を守る側であるはずの天使に、なぜか魔物のギャザ男ではなく生贄のペポパが逆上して挑むという、とんでも展開が待ち受けています。
- 著者
- 水無月すう
- 出版日
- 2018-09-28
そして、それが特に深刻な事態に陥ることもなく、デデレルは新たなレギュラーキャラと化すのです。
本巻では、どんどん不憫度が上がっていくギャザ男が面白いポイント。それが顕著なのは、15話でしょう。
ペポパからのセクハラ&自宅の占拠に悩んだ彼は、ファンタジーという世界観を完全に無視した、日本人サラリーマンのごとき悲哀を湛えて、公園で黄昏れるのです。
ギャグとシリアスと徐々に仄めかされていく、ダークな設定にご注目ください。とんでもないセクハラにあって泣いたり、困惑したりしているギャザ男が、もはやかわいく見えてきますよ。
いかがでしたか?食材をいかに美味しく調理するか、というのをグルメと呼ぶのなら、本作は間違いなくグルメ漫画といえるでしょう。何かがものすごく違う気もしますが、そんなおかしなところが魅力なのです。
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