カッコウといえば、その名前にもなっている鳴き声が特徴的な鳥類です。この記事では、彼らの生態や托卵の流れ、「閑古鳥」という別名、よく似ているホトトギスとの違いなどを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
カッコウ目カッコウ科に分類される鳥類です。体長は35cmほどで、細身な体と長めの尾が特徴です。頭や背中が灰色で、白い腹毛に細かい横縞が入っています。
ユーラシア大陸からアフリカにかけての広範囲に分布していて、日本には5月頃に渡ってくる夏鳥です。国内では主に山地や高原、寒冷地であれば農耕地や河原などの平地でも姿を見ることができ、九州より北の地域での繁殖が確認されています。
オスの独特の鳴き声から「カッコウ」と名付けられました。英名の「Cuckoo」も「クック―」と読まれ、やはり鳴き声を文字におこしたものです。
縄張りの主張とメスへのアピールのために鳴くそうで、高い木の上など見晴らしのよい場所に陣取り、早朝から夜まで10~20回ほどさえずりを続けます。
「托卵」をする鳥類として有名なカッコウ。産卵をする前に、まず自分の卵を代わりに育ててくれる相手の巣を探す必要があります。
卵を託す仮の親には「オオヨシキリ」を選ぶことが多く、彼らの巣を見つけると枝に隠れながらチャンスをうかがい、親鳥の留守を狙って産みつけるそうです。この時、もともと巣にあった卵を1つ持ち去り、数合わせをする頭の良さも持ちあわせています。この間わずか10秒ほどで、かなりの早業だといえるでしょう。
托卵された巣を調べてみると、巣から20~40mほどの範囲に見張りに使ったとされる木があるのだそうです。60cm以内に見張りができる場所がない巣には、托卵しないこともわかっています。
オオヨシキリのほかにも、モズやセキレイなど昆虫を餌にする鳥に托卵することがあります。いずれも卵の色や大きさが似ているので、仮の親でも見分けることができずにあたためることになるそうです。
カッコウの卵は托卵先にあるほかの卵よりも1~2日早く、10日ほどで孵ります。そしていち早く誕生した雛は、残りの卵を背中の窪みに乗せて巣の外に放り出してしまうのです。
こうして巣と餌を独占し、生後8日ほどで仮の親鳥と同じくらいの大きさに成長し、生後3週間ほどで巣立ちをしていきます。
お客さんがいなくて店が寂しい様子を「閑古鳥(かんこどり)が鳴いている」と表現することがあります。実はこの「閑古鳥」は、カッコウのことを指しているのです。
もともと平安時代の頃には、「郭公」という漢字があてられていました。その後江戸時代になると、「閑古鳥」「呼子鳥(よぶこどり)」「かっぽどり」などさまざまな呼び名で呼ばれるようになります。
なかでも「閑古鳥」や「呼子鳥」は、高原などの人里から離れた場所で、1羽きりで鳴いている様子が寂し気であることから名付けられました。ここから意味が派生して、人がいなくてもの寂しい様子を表す慣用句として使われるようになったそうです。
カッコウ科に分類される近縁種で、よく混同されがちな鳥にホトトギスが挙げられます。体長は30cm弱とやや小柄ですが、頭と背中が青みがかった灰色で、胸から腹にかけてが白く、黒い横線の模様が入っているよく似た見た目です。
カッコウ同様に夏鳥で、5月頃に東アジアから日本に渡ってきます。鳴き声は「キョッキョッ」という独特のもので、「テッペンカケタカ」「東京特許許可局」と聞こえるなどといわれることもあります。
ホトトギスも托卵をする習性があり、托卵先にはウグイスを選ぶことが多いです。そのほかカッコウ科のなかではツツドリやジュウイチなども托卵をすることで知られています。面白いことに種によって托卵先が異なり、これは近種の間で争うことのないよう進化したためだと考えられています。
- 著者
- 叶内 拓哉
- 出版日
- 2016-10-21
日本国内で姿を見ることができる身近な野鳥、およそ300種を紹介した図鑑です。似ている種を見開きのページに並べて載せているので、比較が簡単です。カッコウもホトトギスやジュウイチと並べられ、細かい体の違いを確認することができるでしょう。
鳴き声の違いも記載しているほか、必要に応じてオスとメス、夏羽と冬羽の解説もあり、この1冊でほとんどの情報を網羅しています。
文庫サイズで持ち運びに便利なので、バードウオッチングのお供にもおすすめです。
- 著者
- 樋口 広芳
- 出版日
- 2016-02-19
渡り鳥の高い飛行能力をはじめ、カラスやハヤブサの知能など、鳥のもつさまざまな能力や習性を紹介している作品です。カッコウについては、托卵をする「ずる賢い」進化について解説しています。
作者は、鳥類学者の樋口広芳です。どのエピソードも興味を惹くものばかりで、文章も平易なため、読みやすいでしょう。
それぞれの鳥がなぜ「すごい」能力をもつようになったのか、その理由を知っていくことで、おのずと生態も理解することができます。鳥好きの方はもちろん、生物の進化に興味がある人にもおすすめの1冊です。
子育てをしなくてよいため効率よく見える托卵ですが、卵を産み付ける機会をひたすらうかがう必要があるなど、実は苦労をともなう習性でもあります。近年では托卵先にオナガを選ぶ個体も出てきているそうですが、オナガは人間の顔の違いも認識できるほどの高い知能をもつため、カッコウの卵に気がついて巣から捨ててしまうこともあるのだとか。これからの卵をめぐる攻防にも注目していきたいですね。