ファンからは「ぼくはか」の略称で親しまれている本作。中二病を爆発させている男子高校生と、ツッコミ体質の主人公との笑える戦いを描いた本作は、単行本累計発行部数48万部を突破している人気作品です。アニメ化も決定しています。 今回は、そんなギャグ漫画「ぼくはか」の魅力をご紹介します。ぜひご覧ください。
漫画雑誌「月刊コミックジーン」で2013年より連載しているコメディ漫画、『ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。』。読めば必ず笑ってしまう本作は「ぼくはか」の略称で親しまれており、テレビアニメ化も決定するなど高い人気を誇っています。
物語は、男子高校生・小雪芹(こゆき せり)を主人公に進められていきます。彼のもっぱらの悩みは、クラスメイトである花鳥兜(はなとり かぶと)の存在。花鳥は右目に眼帯を付け、外せば自らの「暗黒破壊神」の力が解放されるという、中二病をこじらせた男子だったのです。
- 著者
- 亜樹新
- 出版日
- 2013-07-27
そんな彼に、小雪は「氷上の祈祷師」などと呼ばれており、内心ではいつも総ツッコミ状態。しかし、ツッコミを入れれば負けという謎のプライドによって、口に出しては言いません。それでももともとがツッコミ体質な彼は思わず言葉に出してしまいそうになり、その度に自らのプライドとせめぎ合うという戦いを強いられているのでした。
そんな彼の静かな戦いと、周りの目を気にせず中二設定の道をまい進する花鳥の学園生活を描いた本作は、読めば読者もツッコミを入れてしまう作品であること間違いありません。
ここでは、可愛すぎる本作のキャラたちをご紹介します。
小雪芹(こゆき せり)
三刀矢高校2年3組に在籍する、本作の主人公。根っからのツッコミ体質がゆえに、クラスメイトの中二病・花鳥兜に毎回ツッコミを入れたくなってしまいます。しかし彼のような、いわゆるかまってちゃんを相手にすることはプライドに反するため、口に出してはツッコミたくないと思っているのです。
花鳥は、そんな彼にとっては、まさに天敵。必死でツッコミをこらえているのに、最後はやっぱりツッコミを入れてしまうという結果に屈辱を感じていました。ツッコミを入れないという戦いに身を投じる彼は、かわいそうな気もしつつ、思わず笑ってしまう親しみのあるキャラクターです。
花鳥兜(はなとり かぶと)
小雪のクラスメイトで、典型的な中二病。右目につけた眼帯を外すと「暗黒破壊神」が覚醒するという自分の設定そのままに振る舞いながら日々を過ごしています。1巻では、拾った子犬に「ケルベロス」と名付けて教室に連れてくるなど、その行動は徹底しています。
しかし、そんな彼の言動にクラスメイトや教師も慣れているのか、冷たい視線を向けたりドン引きしたりすることはあっても、驚くことはあまりないようです。
そんな周りの目も気にせず、高校生になってからも中二病を貫き通す姿には、ある種の清々しささえ感じるかもしれません。しかし、やっぱりツッコミどころは満載なので、小雪にとっては最大の敵キャラクターといえるでしょう。
月宮ウツギ(つきみや うつぎ)
小雪のクラスメイトで、友人の男子生徒。彼は花鳥のように中二病でも、小雪のようにツッコミ体質でもないのですが、超の付くS体質です。
テストでは毎回100点を取るなど頭脳明晰ですが、その頭のよさゆえなのか、時折人の心を読んだような行動をとったり、裏から人を操ったりして、小雪を怯えさせることもしばしば。花鳥はもちろん、小雪でさえも彼には敵わず、メインキャラクターでは最強の立ち位置にいます。
君屋ひびき(きみや ひびき)
本作に登場する中二病は、花鳥だけではありません。小雪たちの後輩である1年生の君屋は、花鳥に憧れているという生徒。彼には「死神少年」という設定があり、手にはいつも手作りの鎌を持っています。
死神は設定ですが、極度の不幸体質であることは本当で、鳥にしょっちゅうフンを落とされたり、小雪に「ゴキブリ」呼ばわりされたりなど、さんざんな目に合うことも少なくありません。小雪を振り回す、もう1人のキャラクターです。
本作はギャグ漫画なので、もちろん笑える内容が盛りだくさん。その笑いの基本は、花鳥の中二病過ぎる言動に思わずツッコミを入れてしまうツッコミ体質の小雪と、そんな彼らをSっ気たっぷりに見守る月宮……という構図から生まれるものです。
たとえば1話は、次のような出だしから始まります。出欠を取る教室で、子犬を抱えてぐっしょり濡れた花鳥は入ってくるなり、
「すっかり遅れちまった…
こいつが俺についていきたいと泣き叫ぶんでな…」
(『ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。』1巻より引用)
と言い放ちます。この時点ですでにツッコミ所満載なのですが、高校生になっても中二病から抜け出せない彼がそれだけで終わるわけはなく、この子犬は前世で自分と一緒に死線をくぐりぬけた地獄の番犬・ケルベロスで、そんな狂犬を相棒としていた自分は光と闇を司る騎士・シュトゥルムフート……と、延々と細かな中二設定を語りだすのでした。
他にも、拾った子犬がどうして眼帯を付けているのかだとか、外は小雨なのにどうしてずぶ濡れになっているのかだとか、ツッコミたいところはたくさんあるのですが、こんな相手に絶対にツッコミを入れたくない小雪は、口に手を当てて必死にツッコミをこらえて……という展開。最初の数ページだけでも本作の魅力を感じることができるでしょう。
主人公の小雪は、花鳥にはもちろん月宮にも振り回されっぱなしなので、少しかわいそうに思えてくる時もあります。しかし、それでもほのぼのとした平和な空気が流れているために、読者も嫌な気分になることなく、笑いながら読むことができるでしょう。
また、基本的には女性向け漫画ですが、恋愛要素が少ないため男性でも読みやすい作品となっています。
本作の面白ところは、前述したように小雪と、花鳥と、月宮の関係性から笑いが生まれるところです。しかし、その面白さは、やはり花鳥が極度の中二病という設定があるからこそ。彼のような中二病がもし自分の近くにいたら、おそらく小雪のようなツッコミを入れてしまうという方も多いのではないでしょうか。
つまり、読者は小雪に強く感情移入して読むことができ、それが面白さに繋がっていると考えるとこができるのです。
そんなふうに小雪を悩ませる花鳥ですが、普段は徹底した中二病のくせに、不良に絡まれるなどといったトラブルに見舞われると、設定を守り切れずに逃げ出したり、お金で解決しようとしたりします。
普段、自分のことを「光と闇を司る騎士」とか「破壊神」とか言っているのに、不良相手にはお金で解決しようとするのか!と思わずツッコミを入れたくなるところ。こんなエピソードが生まれるのも、中二病という設定のおかげともいえるでしょう。
さらに、中二病だけど決してバカではないというのも、彼の魅力の1つ。実は、勉強は小雪よりもできるので、これもまた中二病とのギャップで面白いところになっています。
作中に登場する中二病キャラクターは彼だけではなく、それぞれに個性の強い設定があり、それもまた面白く読むことができます。読者のなかには、これらの中二病キャラクターと過去の自分を、重ね合わせることができるような方もいらっしゃるかもしれませんね。
最新刊である9巻(2018年10月現在)。この頃になると、小雪は天敵としかいえなかった花鳥たちに勉強を習うなど、そこそこ打ち解けている様子が見えるようになってきていました。
そんな9巻は、もちろん花鳥の中二病も小雪のツッコミも健在ですが、気になる見所として小雪の恋愛エピソードがあげられます。
もともと彼の気になる相手として、隣のクラスに在籍する澄楚琴子という女の子がすでに登場していました。実は彼女も彼のことが好きで、2人は付き合ってこそはいないものの、両想い状態。それなのに進展することがなく、本巻にまで至っていたのでした。
- 著者
- 亜樹新
- 出版日
- 2018-02-27
本巻では、小雪は一念発起して、澄楚を花火大会に誘おうと決心します。
受験を前に勉強漬けの毎日を過ごしていた夏休みでしたが、1日くらい思い出を作りたい!ということでワクワクする小雪。花鳥へのツッコミも忘れるほど浮かれていました。
しかし、実は花火大会には、過去に澄楚絡みで大失態を犯したこともあり、彼のなかではトラウマ案件なのです。果たして、小雪と澄楚の仲に進展はあるのでしょうか……。
もともと恋愛ストーリーは、あまりメインにならない本作。しかし、思春期の高校生らしくちょっと浮ついた話もあることで、ギャグ一辺倒で飽きがち、ということにならなくなっています。また、9巻では恋にボーっとしている小雪に花鳥がツッコミを入れるという、序盤とは逆転の現象も起きていて、それもまた面白いもの。
とはいえ、ここまでの面白さを感じるには、やはり1巻から順番に読むのがおすすめ。ぜひ少しずつ変わっていく彼らの関係性を読んで、笑ってみてください。
いかがでしたか?重い話も複雑な設定もない、ゆるくて笑えるギャグ漫画である本作。ストーリーを楽しむというよりも、のんびりしたい時、ちょっと笑いたい時に読むのがオススメです。仕事や勉強の合間に、気軽に読んでみるのはいかがでしょうか。