『ティール組織』常識をぶっ壊せ!マネジメントの新しい10個の内容を解説!

更新:2021.12.7

フレデリック・ラルーが書いた本作では、従来型の組織とはまったく異なる、次世代型の組織が提唱されています。それが、書籍名にもなっている「ティール組織」です。ティール組織においては、組織の中に上司と部下のような構造はなく、1人ひとりが組織の社会的使命を認識して行動することができるとされています。 この記事では、本作の注目ポイントについて、わかりやすく解説していきます。ぜひご覧ください。

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『ティール組織』要約して内容を紹介!

 

フレデリック・ラルーが書いた本作では、次世代型組織のモデルが提示されています。従来の組織においては、経営者から管理者、管理者から従業員という縦の組織が成り立っているのが一般的。しかし著者は、従来型の組織は、今後変革の時を迎えると主張しているのです。

そして、変革後の世界に誕生するのが、ティール組織なのです。そこには、階層的な上下関係・細かな規則やルール・定期的なミーティング・売上目標や予算の設定などはありません。

従来型の組織を効率的に管理するために必要と考えられてきたものが、そこには存在しないのです。多くの民間企業が採用している、従来の組織管理のあり方は、本作の中では「達成型組織」として定義されています。

 

著者
フレデリック・ラルー
出版日
2018-01-24

 

日本の会社であるオズビジョンが、『ティール組織』の中で紹介されるなどして話題を集めました。さらに日本においては働き方改革が進められていることから、新しい働き方を提唱した本として時流に乗って人気を得たのです。そのためか、専門書であるにも関わらず異例の売上部数を誇っています。

日本のオズビジョンの他にも、オランダの非営利在宅ケア組織であるBuutzorg(ビュートゾルフ)などは、このティール組織を実践している企業として有名です。

従来型の組織管理の代わりに、ティール組織は「セルフマネジメント(自主経営)」、「ホールネス(全体性)」、「組織の存在目的」を重視します。

セルフマネジメントとは、従業員自身1人ひとりが自己管理をして活動することです。またホールネスとは、多様性を受け入れ、従業員全員が快適に働けるようにすること。そして組織の存在目的とは、利益の追求ではなく、企業が存在するための目的を考え、それを使命として行動していくことを指します。

ティール組織は、このような特徴を備えた組織なのです。そして今後は、このティール組織こそが、厳しい市場競争を生き抜いていけると、ラルーは主張します。

 

そもそも「ティール組織」とは?「ホラクラシー組織」との違いも解説!

 

ティール組織とは、従来の組織構造や慣例の多くを撤廃した、次世代型の組織のことをいいます。上司と部下という関係はなく、従業員はすべて平等な関係に置かれるのです。そして彼らは、組織が社会的使命を果たすための原動力となります。

ティール組織においては、組織の意思決定に関する権限や責任のほぼ全てを、経営者・管理者から従業員にシフト。そうすることで、組織構造や従業員のモチベーションに革新的変化を起こすことができるとされているのです。

この組織では「セルフマネジメント(自主経営)」「ホールネス(全体性)」「組織の存在目的」という3つの特徴が重視されます。それぞれの特徴については、また後で詳しく説明していきましょう。

ここでいわれているセルフマネジメントとは、ホモクラシー経営と同じような意味を持っています。ホモクラシー経営とは、従来型の経営管理から脱却して、組織における肩書きや役職をなくし、組織全体に意思決定ができる人を分散させる経営管理手法です。

ただし、ティール組織とは大きな違いがあります。ホモクラシー経営は主に組織構造に関する議論が中心となっているため、次世代型組織が持つホールネスや組織の目的存在について、あまり重きを置いていないものなのです。
 

しかし、どんなに組織の構造がフラットになっても、組織の目的が利益だと、従来型の組織と変わらなくなってしまいます。ティール組織はセルフマネジメントの他に、ホールネスや組織の目的存在が重視されるのです。

これらの3つの特徴を兼ね備えた組織においてこそ、従業員が人間の持つ未知なる可能性に挑戦することができると、著者であるラルーは主張しています。そして組織階層がないことで、環境変化に対して迅速な組織変革が可能となります。

従業員が組織に与えられた社会的使命を常に意識しながら、「自分にできる最善の行動は何か」や「それは本当に自分がしたいことなのか」を考えつつ行動するようになる組織、それがティール組織なのです。

 

『ティール組織』著者・フレデリック・ラルー、解説・嘉村賢州を紹介!

本作の著者であるフレデリック・ラルーは、マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルティング職において、10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わった経歴がある人物。退社後はエグゼクティブ・アドバイザー、コーチ、ファシリテーターとして独立しています。
 

そして2年半にわたって、新しい組織モデルについて、世界中の組織を調査しました。その結果について書いたものが『ティール組織』なのです。本作は瞬く間に世界各国で好評を博し、さまざまな言語に翻訳されるベストセラーとなりました。

ティール組織の原作は『Reinventing Organizations』で、鈴木立哉が翻訳し、嘉村賢州が解説を寄せました。

解説の嘉村は、「場とつながりラボ home's vi」というNPO法人の代表を務める人物。この会社では人々の繋がりを大切にし、それを実現するさまざまな場作りの活動をしています。組織活性化のためのワークショップなどの活動をしている団体です。彼はここで、プロジェクトディレクターなども務めている人物です。

そしてここからはいよいよ本作の内容についてご紹介していきます。

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1:『ティール組織』のメリット

 

ティール組織は、上下関係のないフラットな組織構造が特徴です。組織メンバー1人ひとりに対する権限の移譲によってメンバー全員が、会社の意思決定権を有します。そうすると、全員が責任感を持って行動することになり、これこそがティール組織最大のメリットなのです。

ただし、この組織においては、すべてのメンバーたちに対して合意を求めるようなことはしません。組織にとって合意を得ることは、あまり重要ではありません。従業員たちは必要な事柄に置いて、必要なメンバーと連携を取りながら、それぞれが考えながら動いていくのです。
 

ただ、ティール組織にあるのはメリットだけではありません。問題点も、もちろん存在します。それは、メンバー同士の対立を収束させるための仕組みを持たないことです。

上下関係がないことから、組織のメンバーすべてに責任があると同時に、責任がないともいえます。そうなるとメンバー同士が対立した場合、どのようにその対立を解消したらよいでしょうか?

従来の組織ではヒエラルキー構造が存在することで、最終的に経営者など権限を持つ者が意思決定をおこなっていたため、意見の対立はその人物によって解消されていました。しかしティール組織にはそれがないため、特に従業員数が多くなってきた場合、フラットな組織構造があだとなって対立が高まり、意思決定が送れる可能性もあるのです。

この問題点を解説できれば、ティール組織はよりよいものとなるのではないでしょうか。

 

2:社内で起こる問題は「組織の構造」のせい

 

ティール組織が特に問題としてるのが、従来の組織が持っている、ヒエラルキーという上限関係に基づく組織構造。上司と部下のような関係が、組織内にさまざまな問題を引き起こすと、ラルーは主張します。

彼が主張する問題とは、たとえば売上のために不正を犯したり、上司と部下の関係によってストレスを抱えたりするということ。最近、日本でも従来の組織構造が問題を起こしているケースが頻発していますが、上司によるパワハラ問題などが、その代表的な例です。

ラルーは事業規模も業種も異なるさまざまな企業において、このような問題が起きていることに気づきました。多種多様な組織で同じような問題が起きているということは、個人の問題ではなく、組織構造にも問題があるといえます。だからこそラルーは、従来の組織構造ではない新たな構造を実現するモデルとして、ティール組織を提案したのです。

 

3:『ティール組織』で提唱する、5つの組織概念

 

本作の中では、組織パラダイム(認識)を5つの色に分類しています。ラルーは、現代の多くの民間会社が採用している組織パラダイムが「達成型組織」というものであることを主張。

そして、組織のあり方は原始的なものから徐々に進化していくものであると捉え、最終的にたどり着くものがティール組織であると主張しました。

ラルーが主張する組織パラダイムの5つ色は、次のとおりです。

①Red組織

群狼(文字通り、群れている狼)のイメージ。特定の個人の力で、支配的にマネジメントされることが特徴です。恐怖や脅しによって支配的に組織を管理する可能性があるのが、この組織。個人の力による支配的な管理形態の組織なので、支配者の位置にある人が変われば、簡単に崩壊してしまうこともあります。

②Amber組織

軍隊のイメージ。明確に組織内での役割が決められいて、メンバーは厳格にその役割をまっとうすることを求められます。組織が正しいと考え、規範に従うことが重視される組織。「アンバー」とは軍隊が着ている茶色を意味する言葉で、上下関係によって組織を管理します。臨機応変な対応ができないのが欠点です。

③Orange組織

機械のイメージ。階層構造によるヒエラルキーが組織の中に存在しているものの、従業員は成果を出せば昇進することができます。多くの企業に見出せる組織パラダイムです。才能ある者が認められる反面、競争を生み出すため、機械のように働き続ける環境になりやすいのが欠点。

④Green組織

家族のイメージ。ヒエラルキーのある組織構造に、ダイバーシティ(多様性)やステイクホルダー(利害関係者)を導入しようとする組織パラダイムです。従業員を家族のように扱い、互いに支え合うことが組織であると考えます。

そのため、従業員が意思決定に関われるようにするだけではなく、ときに組織外部の人々も関われるようにします。あらゆる意思決定をコンセンサス(合意)によってなすことが特徴です。

しかし、ヒエラルキーはまだ残っているため、組織メンバーが主体的に動けない場面では、権力者が決定権を持ちます。

⑤Teal組織

生命体のイメージ。1人ひとりの組織メンバーが自己実現を目指すことによって、組織が稼働します。従来のような組織構造は存在しません。1人ひとりが自己実現を目指すので、階層的な構造が必要ないからです。

メンバーは互いがともに働くプロセスで切磋琢磨し、さらなる意識改革によって、よりよいビジネスへと向かっていきます。

あなたの会社はどの段階がいちばん近いと感じたでしょうか?

 

4:『ティール組織』で重要なセルフマネジメント

ティール組織を考えるうえで、重要なコンセプトが3つあります。先ほど少し説明させていただきましたが、「セルフマネジメント(自立経営)」「ホールネス(全体性)」「組織の存在目的」です。ここでは、その中のセルフマネジメントについて紹介します。

セルフマネジメントとは、文字通り組織メンバーが1人ひとり自立することを意味しています。

ティール組織においては、組織を取り巻く環境の変化に対して迅速に対応するため、階層がありません。結果として、組織メンバーの誰もが意思決定に参加する必要があります。そのためメンバーは、常に自分自身をマネジメントする必要があるのです。

そうすることによって、物事に迅速な対応ができるというメリットが発生します。今まで何かをするには、権力を持った者にお伺いを立てて、そこで場合によっては話し合いがおこなわれ、判断が下された末に、やっと行動に移すことができました。

しかし権力者が存在せず、1人ひとりが考えて動くのでこういった過程を必要とせず、ティール組織ではそれぞれが素早く行動することができるのです。

5:存在目的を意識する

 

ティール組織におけるもう2つ目の重要なコンセプトは、組織の存在目的です。

この組織においては、創業者が決めたビジョンやミッション、ステートメント(声明)のようなものは存在しません。そういったものには通常、組織の存在目的が書かれています。そのなかで一般に、組織は社会の公共機関として存在し、世の中の人々を幸せにすることが謳われているのです。

しかしティール組織では、組織の目的をあらかじめ明示することはありません。それをしてしまうと、組織が硬直化してしまう可能性があるからです。そのためティール組織においては、組織の存在目的は常に変化するプロセスの中にあると捉えられています。

つまり、1人の創業者によって追求されるものではなく、組織メンバー同士によってくり返し確認され、作られるものといえるのです。

 

6:ホールネスの重要性

 

ティール組織において重要な3つ目のコンセプトは、ホールネス(全体性)です。

この組織におけるホールネスとは、メンバーの多様性を尊重し、自己実現を促すことをいいます。従来の組織パラダイムにおいては、人間が持つ経済合理性に焦点が当てられてきました。簡単にいえば、組織メンバーは経済的な利益が得られない行動は慎むべきであるとされてきたのです。

しかし、組織の中で人間は、経済的利益が得られない場合でも行動します。それは、自分が正しいと思うことを実現しようとする行動です。ティール組織においては、このような人間の全体性(利益追求のみではない自己実現)を高めることが求められます。

そのために、組織メンバーが不安を感じないよう心理的安全を確保することが、ティール組織においては必要であるとされているのです。

 

7:『ティール組織』のCEOは、ほぼ何もしない!?

 

ティール組織においても、CEOは存在します。ただし、チーフエグゼクティブオフィサー(CEO)という言葉は適切ではなかったものの、他に用語がなかったという消極的な理由から、ティール組織においてもCEOが必要といわれているに過ぎません。

そもそもティール組織は従来の経営管理手法とは異なるものであるため、CEOにも新しい役割が付与されています。では、その役割とは何でしょうか?それは、上で説明した3要件(セルフマネジメント・ホールネス・組織の目的存在)を常に維持することです。

組織メンバーがセルフマネジメントを実現できるように、CEOは彼らのファシリテーター(促進者)としての役割を担うことになります。ホールネスが実現できるように、心のケアをしたり、組織の存在目的を常に意識できるよう、助言したりする必要があります。

このようにティール組織においては、組織メンバーが3つのコンセプトを実現するために空間を維持することが求められるのです。一見、仕事らしい仕事をしていないようにも見えてしまうかもしれませんが、その組織においては、非常に大切な役割となっているのです。

 

8:『ティール組織』におけるリーダーの新しい役割

 

ティール組織においては、すべての物事が変化のプロセスにあります。組織の環境は目まぐるしく変わりますし、それに柔軟に対応していく組織メンバーも、常に流動的となります。

そんな状況のなかで、リーダーには、メンバーが直面することに対しての、メンターのような役割を担うことが求められるのです。メンターとは相手のそばに寄り添いながら、相談に乗ったり、助言をしたりする人のこと。

従来の組織では、リーダーによる強力なリーダーシップによって、メンバーを引っ張っていくことが求められてきました。しかし、ティール組織において求められるのは、組織の存在目的を活動に反映させることです。

組織メンバーが伸び伸びと仕事できるような環境を作っていくこと。それが組織の存在目的と常に合致しているかを、メンバーと対話をしながら一緒に作り上げること。これがティール組織のリーダーに求められることなのです。

 

9:『ティール組織』における報酬と評価制度

 

ティール組織における報酬と評価制度は、固定的であってはなりません。つまり高いパフォーマンスを達成したからといって、評価が上がり給与が上がることはないのです。従来型の評価と報酬制度とは根本的に考え方が違っている点が、ティール組織をティール組織たらしめているものなのです。

本作の出版後、報酬と評価制度の話題はよく議論の的となってきました。著者であるラルー自身も、

「Evaluations and money are a sensitive topic in any organization!」
(評価と報酬はどんな組織においてもセンシティブなトピックである)

と言っています。 

ティール組織において、報酬と評価制度で重要になるのは、成果を出した場合にはきちんと評価して報酬を与えますが、成果が出なかった場合でも、フィードバックをおこなうことで、次によりよい仕事ができるようにすることです。

従来の報酬と評価制度においては年功序列制であったことから、給与は能力とは関係なく決定されていました。そのため、なぜそのように評価されたのかについてのフィードバックもほとんどおこなわれてなかったのです。

しかしティール組織では、なぜそのような評価なのかについてきちんとフィードバックをし、出した成果にはきちんと報酬を与えるという柔軟な評価制度が求められています。

 

10:個の力を最大限に発揮する

 

ティール組織は、組織メンバー1人ひとりの力を重要視しています。これは、ティール組織で重要な3つのコンセプトのうちの1つである、ホールネスにも現れているものです。

ティール組織において個の力を最大限に発揮するためには、まず組織の階層をなくす必要があります。それがなくなって初めて、メンバー1人ひとりが平等な立場となって議論を交わすことが可能となるからです。

それによって、組織の目的存在について互いに議論を交わしながら、仕事を進めることができるようになります。結果として、メンバーはセルフマネジメントができるようになり、生き生きと働ける環境が整うわけです。

したがって何よりも重要なことは、個の力が最大限に発揮できる環境を整えることといえます。

 

最後に『ティール組織』のまとめ!

 

著者のラルーは、すべての組織がティール組織になるべきだとは提言していません。彼からの重要なメッセージは、組織構造によって働き方を変えることができるということです。

 

著者
フレデリック・ラルー
出版日
2018-01-24

 

ティール組織は、理想的な組織を示しているわけではありません。むしろ常に変化のプロセスのなかにあるような、安定しているとは言い難い経営管理手法です。そこでは組織メンバー1人ひとりが、セルフマネジメントによって組織の存在目的のために、全体性を発揮することになります。

そのため、ティール組織には完成というものがありません。常に変化の途上にあること。これがティール組織の本質なのです。

昨今はパワハラなどが問題で、働き方が見直されることも多くされるようになってきました。ティール組織は、そうした問題の解決の大きな一歩となるかもしれません。

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ラルーが著した『ティール組織』は、世界中で話題となり、2018年には日本でも英治出版によって翻訳版が出されました。後ろにある解説を読むだけでも、非常に価値がある一冊です。働き方改革が叫ばれている昨今、それを実現するために組織はどうしたらよいかについて、ヒントを与えてくれる本といえるでしょう。

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