仕事で、人生で、壁にぶち当たるときがありますよね。そんな女性たちに是非読んでほしい小説を5作品ご紹介いたします!
男女雇用機会均等法が改正された1997年に刊行されました。理想的な結婚を思い描いたり、自分を活かす仕事をしようとしていたり、女性らしい感じ方を中心にコミカルに描いた痛快な長編小説です。20~30代に直面する女独特の葛藤が5人の個性に沿って描かれていて、共感できる内容が盛りだくさんです。
保険会社に勤める5人の女性。男女平等と言われていても、まだまだ厳しい男社会の中で、自分の人生を切り開こうとする彼女たちの、それぞれの選択と葛藤が、リアルに描かれていて、入り込んでしまいます。
結婚願望の強いリサが、様々な手を使って男を落とそうと繰り返す一方で、独立願望の強く、男なんか気にも留めず、英語力を生かして羽ばたきたいとチャンスを覗う沙織、そして、自分に何か誇りが欲しくて、自分の城というマンションを手に入れようと、躍起になる康子など、身近な悩みだからこそ共鳴して、希望が湧き上がってくる作品です。
- 著者
- 篠田 節子
- 出版日
同じ会社にいても、男性の視点と女性の視点は大きく違いますよね。
自分の描いた未来が、100%実現してなくとも、彼女たちの、精一杯自分で人生を切り開く様子は、感銘を受けます。そして、戦い抜きそれぞれに決断した道にも、勇気づけられるのではないでしょうか?
霊感も何もない、ただ人づきあいが煩わしいからと始めたのは、占い師。そんな彼女が、少し変わった悩みを持ったお客さんや師匠、「終わり」が見える大学生、シングルマザーの弟子、そして恋人との関りを通して、成長していく4編からなる連作短編集です。
上司との折り合いが悪いことにより、会社を辞めた彼女。一人暮らしで収入を確保するため、目に留まった高時給のアルバイトで、彼女はたった二日で、占い師になります。はじめは、真面目に本を見ながら占うも、間違えたり、結果に満足できなかったりで、ついに彼女は、直感を頼りに占いすることを決めました。助言をする人生相談に近いのですが、お客たちは満足して帰ります。
そして、本に頼らない説得力のある言葉が評判を煽り、独立することになるのです。様々な客やアシスタントと恋人との出会いで、大切なことに気付き、成長していきます。ユニークな登場人物たちには、ほっこり和ませられ、日々の、針の刺さった心を、優しい気持ちに変えてくれる作品です。
- 著者
- 瀬尾 まいこ
- 出版日
- 2009-05-08
占いというのは、自分自身の願望を叶えるためではなく、自分の中の不安を取り除くためにあるのでしょうね。人は誰かに何かを相談するとき、八割は進むべき道の決断はできているのがほとんどですが、後押しを望んでいると言われます。
そして、ルイーズ自身いろんな人を占うことで、自分の殻を破っていく様子は、どっちがお客さんなのか分からなくなり、クスリ笑ってしまいます。
占いは、当たるも八卦当たらぬも八卦に捉えるものでありますが、生きているからこそ、感じる辛さや悲しみは、それに触れて、手を差し伸べてくれる存在があるから、乗り越えていけるということでしょう。それが占いだとしても、聞いてくれる人がいる、という事実が、心を軽くしてくれるのではないでしょうか?
彼女と関わることで、好転していった人がいるように、そんな好転を導く力のある彼女こそ、強運の持ち主であるのは、間違いない気がします。そんな彼女に触れて心を軽くしてみませんか?
二人の小学生の子を持つ杏子は、あまり理解を示さない旦那に内緒で、育児に疲れているママ向けの、マッサージと家事代行の会社を、起業します。それぞれの悩みを抱えたママたちや、家庭の問題に悩みながらも、懸命に生きる杏子に、元気がもらえる長編です。
全体的にコミカルに展開されていて、重い雰囲気を弾いているかのようです。杏子の想いは育児を経験された方なら、共感できるところがあることでしょう。毎日毎日、育児に追われ、狭い家と買い出しの行き来の繰り返しに、誰が褒めてくれるわけでもなく、やって当たり前と、感謝の気持ちのない旦那と子供たち。そんな日常に、社会から取り残されていくような感覚に襲われ、もどかしくなる杏子の心情は、リアルを感じさせます。
- 著者
- 五十嵐 貴久
- 出版日
- 2014-08-05
起業するも、次々に降りかかる問題に思い悩む杏子。理解のない夫に加え、姑問題ときたら、頭を抱えない主婦はいないでしょう。そのうえ子供のいじめ問題。子供のためなら、自分を犠牲にしてでも守り抜くその意思に、親の無敵の強さを感じました。
そして従業員の老人たち。客であるママたちに、過ちを犯さぬように繰り広げる「おせっかい」が、杏子を右往左往させる原因になるのですが、つい笑みが零れてしまいます。
この仕事を通じて、旦那や小学生の子供たちとも向き合い、次なるステージへと歩み出していくのですが、そんな杏子のパワフルな生き方は、多くの女性たちのパワーになるのではないでしょうか。結婚、出産で、生き方を変えなくてはならないのは、やはり女性が多い世の中です。日々の家事育児に追われながらも、社会とは繋がっていたいと願う、女性たちの活力になる作品です。
アパレル業界で働く菜緒が主人公。
ある日、菜緒の親友の務める会社が倒産してしまいます。失業してしまった朱美を心配する一方で、無職期間の状態が続くも余裕な朱美に、疑問を抱くのです。そして、のんびり屋の親友が、貯金をしていたことを知ります。お金はあるだけ使ってしまう菜緒が、無職になったら生活ができないと焦り、貯金できるようになるべく奮闘する物語です。
菜緒は、よき相談相手である専業主婦の姉の菜実や、その夫であり地方銀行に勤める幸宏に、貯金の仕方を教えてもらっていきます。その中で、ぶっきらぼうな性格で不動産管理会社営業の航や、1児の母でありよき先輩の由香里など、いろんな人と関り、悩みながら成長していきます。
月給の10%を使える貯金とし、ボーナスは将来のために全額手を付けない貯金にする。これをベースに、保険や投資、マンション選びのコツなど、ケチケチしない貯金術で、「ためられる女」へ導いてくれます。読みやすい表現と言葉で、楽しみながら入り込める、貯金講座ともいえる作品です。
- 著者
- 朝倉真弓
- 出版日
- 2013-07-12
物語の中で語られていく手法は、物語だからこそ、違和感なくすんなり入ってきて、ちょっと試してみようかなと思えてきます。
いざという時のために、または、何かを手にいれるために、もしくは、何かを成し遂げるために。様々な目的のために、貯えがあるのとないのとでは、出来る範囲が限られてしまうのも事実です。無理したところで、長続きもしないでしょう。でも、少しずつ楽しみながらできたらどうでしょうか。いつの間にか、気持ちにも余裕を持てる生き方を、楽しむことができるかもしれませんね。
シングルマザーである珊瑚が、我が子の雪を抱えながら惣菜カフェを開業することで自身の生き方を見つめる、心の温まる物語です。
人に頼るのが不慣れな珊瑚が、何かを成し遂げようとする意志は、人と繋がる原動力となり、一人では生きられないと気づかされます。少しの勇気が、一歩踏み出す力になるのだと、思わせてくれる作品です。
赤ちゃんを預かりながら料理や精神面で支えてくれる人、バイト先で出会った元気な女子高生、有機栽培の農家の人など、温かい人たちに珊瑚は恵まれます。その中で、一歩ずつ進んでいく珊瑚はとても穏やかで、人への優しさは大切なのだと、改めて思わせてくれます。
- 著者
- 梨木 香歩
- 出版日
- 2015-06-20
雪の存在に励まされ、育てる不安を感じながらも、日々生きていく珊瑚。自身の生い立ちとも向き合わなければならない場面に、直面し、悩む様子は、目頭が熱くなります。
そして登場する野菜たちも、とても美味しそうに描かれていて、食欲をそそられてしまうでしょう。出てくるおしゃれな料理たちに、思わず作って食べてみたいと思ってしまいます。食べることは生きること、雪を生んだからこそ、その生をまっとうさせてあげたいという珊瑚の意思が、その生き方から感じ取れます。
今日の食事のあてさえない生活が、周囲の好意に支えられ、カフェを開店するまでに至る珊瑚。その強運に、夢を持って生きてみようかなと、思わせてくれるのではないでしょうか。毎日の美味しい食事こそが、幸せを生み出すのかもしれませんね。そしてラストの雪の放つ言葉に、生きていくことの幸せが詰まっており、涙せずにいられないでしょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。女性だからこそ感じてしまう、悩みや葛藤。でも何かのきっかけで、ぐんぐん前に進んでいけるのも女性だからこそ、だと思います。この5作品が、何かのきっかけとなれば嬉しいです。