文章力を向上させるためには、いくつかの方法とコツがあります。やり方さえわかれば、あとは実戦するだけ。特別な道具は必要ありません。すぐに始められるコツと、文章を書く時に参考にしたい、おすすめの本を紹介します。
文章を書いている途中で、どうしてもペンが止まってしまうことがあるでしょう。その時の自分を、ぜひ客観的に分析してみてください。どんなふうに悩んでいるでしょうか。多くの人が次の言葉を探しているはずです。どの単語をもってくるべきなのか、どういう言い回しにするべきなのか……自分で言葉を生み出そうとすると、文章作成の迷宮に入り込んでしまいます。
ペンが途中で止まった時はぜひ、別人格の自分を生み出してみてください。ターゲットとなる読者になってみるのです。
働く男性なのか、主婦なのか、あるいは女子高生なのか……ターゲットとなる人物を設定することができれば、自分の文章を客観的に読めるようになります。そうすると、自然に次に知りたい情報がわかり、書くべき言葉が見えてくるでしょう。
歌が上手な人のことを思い浮かべてみてください。彼らはきっと、歌い出しの第一声から聴く人の心をつかんでいるはずです。もし歌手が歌い出しの音を外したとしたらどうでしょうか。メロディやサビでなんとか持ち直したとしても、歌が上手だという印象はつきづらいはずです。
文章においても同じことがいえます。読者の心をつかめるかどうかは、書き出しが勝負となるのです。
これは、プロの世界にも共通していえることです。たとえば書店で本を買おうか迷っている際、最初の数行に目を通すことも多いのではないでしょうか。短い文章のなかで、読者は面白いかどうかを判断します。
反対にいえば、冒頭部分で興味を抱かなければ、読むのをやめてしまうはず。だから文章を書く人はみな、書き出しにとことんこだわるべきなのです。
文章が稚拙に見えてしまうケースでもっとも多いのが、主語と述語の関係がねじれていることです。
言葉というのは、組み合わせによって意味合いが変わってきます。正しい単語を使えていたとしても、「てにをは」が違うだけで正しい日本語ではなくなり、意味が伝わりづらくなってしまうのです。
たとえば
「私の夢は野球選手になりたいです」
こちらの文章にどこか違和感を覚えるのではないでしょうか。使われている単語におかしなものはありませんが、主語と述語の関係が誤っています。
例文の主語は「私の夢」で、述語が「なりたいです」。これをつなげてみると、「私の夢はなりたいです」となり、おかしいことに気づくでしょう。
この場合は「夢」を削除して「私は野球選手になりたいです」とするとスッキリとした文章になります。
あるいは「なりたい」に「こと」を付けて名詞に変え、「私の夢は野球選手になることです」としても丁寧でよいでしょう。主語と述語の関係を正しく書くことは文章の基本ですが、意外とできていない人が多いので注意が必要です。
本を読んでいる時に、目で追っている文章が途中で止まってしまった経験や、同じところを何度も読み返してしまった経験はないでしょうか。知らない漢字や単語に当たった場合もそうですが、それに加えてもうひとつ、文章のリズムが悪いことも原因に挙げられます。
文章というのは言葉の連なりです。読書中の脳はひとつひとつの単語を繋げながら、意味を総合的に理解する処理作業をおこなっているのです。
それを踏まえて、一文があまりにも長文だったらどうでしょうか。意味の処理作業が中途半端なまま文字だけが頭に入ってくることになり、やがて追いつかなくなります。だからこそ文章を書く時は、読者の読みやすいリズム感が大切になってくるのです。
一文を長文にしすぎないことはもちろん、同じ文末表現が連続しすぎないようにすることも重要です。同じ文末が連続すると冗長な印象を受け、一気につまらない文章になってしまいます。リズムよく、語感に緩急をつけるのがコツです。
インターネット上で公開する文章のライティングをおこなう際は、漢字の使い方にも注意が必要です。
パソコンで執筆をする際は簡単に文字を変換できるので、つい難しい漢字を使ってしまったり、なんでもかんでも漢字にしてしまったりしがち。しかしそれは、読者に対する不親切な行為となってしまいます。
書き手は、読者にクイズを出しているわけでも、知恵比べをしているわけでもありません。いまの時代はスマートフォンでコンテンツを見る場合も多く、画数の多い感じなどは目を疲れさせてしまうでしょう。
たとえば
「子供達が元気に外を駆け回る」
という文章。これだけでやや窮屈な印象を受けます。
「子どもたちが元気に外を駆けまわる」
このように書いたほうが、読みやすくなるのです。漢字を使いすぎず、ひらがなとのバランスを考えて執筆をしてみてください。
新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング (できるビジネス)
2015年08月07日
文章を書く作業は、難しく考えれば考えるほど迷宮に陥ってしまうもの。本書には、文章を書く時に浮かんできた疑問を解決する方法が掲載されています。
作者は、ニュースメディアで新人教育を担当している人物。誰にでも学べる方法として文章作成術を伝授しています。
基礎的な知識が網羅してあるので、これまで漠然とした感覚で文章を書いていた人も、論理的に文章を作成することができるようになるでしょう。企画書や報告書、レポート、ブログなどあらゆるシーンで本書のスキルが役立つはずです。
- 著者
- 高橋 俊一
- 出版日
- 2017-03-23
本書のテーマは、「素早く楽に要領よく的確な文章を書く」こと。こうした文章を書ける人こそが「頭のいい人」といわれています。難しい単語を知っていることだけではなく、難しいことをわかりやすく伝える能力こそが求められているのです。
本書には、「頭のいい文章」「頭のよさを印象づける方法」が収録されています。言いたいことはわかるけれど、なんとなくしっくりこない文章は、「要領が悪い」もの。無駄を省いてシンプルにする、言葉の断捨離をするべきなのです。
要点を抑えて、魅力的な文章を書けるようになりましょう。