本作は、デールカーネギーが書いた世界中で読まれているビジネス書。タイトル通り「人を動かす」方法や事例が、詳しく書かれています。この記事では、そんな本作に書かれているポイントやノウハウを、要約して解説。ぜひ、最後までご覧ください。
本作はタイトル通り、人を動かすことをメインテーマとしたビジネス書。作者であるデール・カーネギーが実体験をもとに書いた哲学、ノウハウとも言え、さまざまな人間関係、ビジネスにも、適用することができる普遍的な内容です。
人を動かす 文庫版
2016年01月26日
人を動かす方法を一般的に考えると、お金や、辛い・痛いなどの恐怖と引き換えに操作する方法も考えられるでしょう。それでも、もちろん人を動かすことには変わりはないのですが、本作に記載されている内容は、あくまで人間関係を良好に保ったままおこなう方法です。
また、具体的なエピソードを元に書かれているため、ノウハウとして実際の生活に落とし込みやすいようにできており、そこもこの方法論のメリットです。
道は開ける 文庫版
2016年01月26日
そんな本作の著者であるデール・カーネギーとは、いったいどのような人物なのでしょうか。
彼は1888年、アメリカのミズーリ州の貧しい農家で生まれました。そして州立学芸大学を卒業後、雑誌記者、俳優、セールスパーソンなど、さまざまな仕事に携わります。この一見マイナスな転職の多さが、本作の内容に生きていると考えられ、そこから人間関係の先駆者として『人を動かす』を出版しました。また、この他にも代表作に『道は開ける』があり、こちらも世界的なベストセラーとなりました。
そしてここからは、そんな本作を読みとくのに役立つ6つのポイントをご紹介します。
カーネギーは、人を動かすための原則は次の3つだと述べています。
批判も非難もしない。苦情も言わない
1931年に、ニューヨーク市で起こった、前代未聞の凶悪な殺人事件。この殺人犯は、ほんのささいなきっかけで人を殺すという性格でした。彼は自分で自分のことをどう考えていたのでしょうか。一般的な感覚でいうと、罪の意識に苛まれたり、後悔したりするだろうと思いますよね。
しかしこの人物、悪いことをやったなどとは、まったく思っていないのです。この殺人犯の最後の言葉は、「自分の身を守っただけのことで、こんな目にあわされるんだ」でした。
何が言いたいかというと、相手には相手の立場、考え方があります。この犯人にしてみれば、殺人は自分の身を守るのに必要なことで、罪悪感を持つようなものではないのだ、という彼なりの自然な考えがあるのです。これを例に出し、カーネギーは相手を非難するより、理解することに努めなければならないと伝えています。
ビジネスにおいても、プレゼンの際に自分の意見をとおしたいからといって、相手の意見を頭ごなしに否定してはいけません。自分と違う意見が出ていても、そういう考え方もあるのだと解釈し、相手に一定の理解を示したうえで意見をするように心がけましょう。
率直で、誠実な評価を与える
カーネギーは、人を動かすには相手の欲しがっているものを与えるのが有効な方法であると伝えています。相手とは、重要人物のこと。この人間の欲求を満たすために、「率直で、誠実な評価を与える」方法が、唯一の方法であると伝えているのです。
率直で誠実というのは、抽象的ではダメということ。たとえば同じ職場で好きな人がいるとして、相手に「頑張ってるね」というだけでは、イマイチ相手に響きません。それを「毎朝早く来て、みんなのために掃除頑張ってくれてるんだね。ありがとう」と変えれば、それを褒めた人物の印象も大きく変わります。
しっかりとその人を見て評価することで、認められたという思いが高まり、相手があなたのことを意識するきっかけとなるかもしれません。
強い欲求を起こさせる
その他の方法としては、その人の求めるものを理解して強調することで本人の強い欲求を意識させ、それを手に入れる方法を教えてやることだと伝えています。
ある親子が、子牛を小屋に入れようとしたとき、いくら引っ張っても押し込んでも小屋に入らなかったそうです。これは、自分の欲望だけを子牛に与え続けたから。
そのため、子牛に人間の指を吸わせたところ、嘘のようにすんなり小屋に入っていきました。子牛はお腹が減っていて、早くお母さんのおっぱいを飲みたかったのでしょう。つまり、これが相手の立場に立って考えて、強い欲求を起こさせるということなのです。
恋愛においても「今度デート行こう」では、こっちに好意を持っていない相手は付き合ってくれません。「Aさん、焼肉好きだって言ってたよね?近くに有名な焼肉店できたから、今度一緒に行こう」だったらデートをできる確率は上がるでしょう。
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人に好かれるためには、6個の原則あるとカーネギーは述べています。
相手に関心を持ってこそ、自分にも関心を持ってくれるとカーネギーは伝えています。その例をご紹介しましょう。
大銀行に勤めているチャールズ・ウォルターズは、ある機密調査のために情報を聞き出そうと、その情報を握る社長の元へと向かいました。しかし、社長は一向に情報を話してくれません。
そんな相手に対して、彼は切手を持参。30分ほど、切手と社長の息子の話をしました。息子が切手に夢中だという情報を得た、ウォルターズなりの作戦だったのです。
そうしたところ、これが見事に成功。情報を、きちんと手に入れることができました。
こちらは、1「誠実な関心を寄せる」の原則に対しての具体例でしたが、その他の原則も基本的には、相手の立場に立って物事を考えることが基本となっています。逆にいえば、自分の立場のみで物事を考えていては、永遠に人から好かれるようにはならないということにもなります。人に好かれたいのであれば、自分磨きをするより、徹底的に相手になりきることが重要なのかもしれません。
このことを恋愛の観点から考えてみると、好意をもった相手とデートをしたいとき、また知り合いになりたいときなどには、とても有効な法則なのではないでしょうか。
初対面のとき、自分の話しかしない人に対して、相手はすぐに去っていってしまうでしょう。この原則のように、まずは相手に誠心誠意の関心を寄せることが大切であると考えます。
相手に関心を持って、相手のペースで話をさせてあげることができれば、2回目、3回目のデートに繋がる可能性が高くなるのではないでしょうか。そして、その都度この六原則を意識することによって、相手から高い好感度を得ることができるでしょう。
人を説得するためには、12個の原則があります。
人を説得することって、なかなか難しいことですよね。心を操作しようとするのですがから、人は無意識にそれを拒絶してしまいます。
ここでも、人に好かれる原則と同じように、相手の立場になることが基本にあると考えられるでしょう。
人は自分を認められてこそ、心を開き、受け入れる体制が整います。このことは、原則5「相手が即座にイエスと答える問題を選ぶ」からも読み取ることができます。
アメリカの心理学者であるオーヴァストリー教授は、相手にいったん「ノー」といわせると、それを引っ込めさせるのはなかなか容易なことではないので、初めから「イエス」といわせる方向に話を持っていくことが非常に大切なのだ、と言いました。
また、ニューヨークのグリニッチ貯蓄銀行の出納係であるジェームズ・エバーソンは、この方法をうまく用いていました。
たとえば必要事項を記入してくれないお客様がいたとします。そんな相手には「ここに書かないと手続きできません」といったような言い方ではなく、「記入されてない場合ですと、万が一の際にこういった手間がかかってしまいますが、いかがなさいますか?」というような言い方をしたのです。
こうすることによって、相手から「イエス」を引き出すことに成功していました。これは、まさにビジネスにおいて有効な手段であるといえるでしょう。
人を変える方法には、9個の方法があります。
人は、親や友人に指摘されて、それを簡単に変えることができるでしょうか。普通は反発してしまうものでしょう。なぜならば、その指摘された部分を悪いと思う気持ちは、その時点では持っていない場合が多いからです。
だからこそカーネギーは、上述の9個の原則を示したのではないでしょうか。どの原則も真っ向から変えようとするのではなく、最後は本人の意志で動いてもらうようにしていると感じます。
これについては、方法1の「まずほめる」に記載がある具体例からも、読み取ることができます。
ある有名な共和党員が、選挙演説の草稿を書いてきて、すごいものができたから読んでくれと意気揚々と伝えました。原稿は一見するとよくできているように見えたのですが、細かく確認すると、とても使えたものではなかったようです。
そこで、まずは共和党員の自尊心を傷つけないように原稿をほめてから、その後で具体的なダメだしをしました。その結果、彼は指摘通りに原稿を書き直し、演説は見事大成功したとのことでした。
人はほめられると承認されたと感じ、そのほめてくれた相手を味方だと思います。そうだと思った人物に対しては、多少心を開きますよね。そして、だからこそ指摘があっても反発を感じず、アドバイスとして受け取ることができるのではないでしょうか。
まず人の自尊心を満たしたうえでアドバイスを聞き入れてくれる態勢をつくるようにする、ということの重要性が理解できる例です。
このことを、恋愛に置き換えて考えてみましょう。付き合いが長くなると、嫌なところが目につき始め、だんだんと嫌いになってしまう場合も少なくありません。そんなとき、嫌なところを嫌と伝えても、相手はきっと治らないでしょう。それは、こちら側の意見を押し付けているだけだからです。
この原則のように、嫌なところもまずは認め、なぜ嫌なのかを遠回しに伝えながら、指摘ではなくあなたがこうなったら、もっと嬉しいという願いを込めたアドバイスをしていくことで、相手の嫌なところがどんどん改善されていくのかもしれません。
本作は、漫画版も出版されています。原作は1937年に発売されただけあって、1度読んだだけでは、内容がすんなり簡単に入ってくるというわけではない場合が多いかもしれません。さらに原則の数が多く、それを体感できるように書かれたエピソードも多い本です。
そういった点に抵抗を感じる方には、こちらの漫画版もおすすめします。
マンガで読み解く 人を動かす
2015年09月10日
漫画オリジナルストーリーのため、原作を読んだことがある方も新鮮な気持ちで読めるでしょう。舞台は日本、主人公も日本人のため、より受け入れられやすい内容となっていること間違いなしです。
相手と気持ちを通じさせるためにはどうするか、衝突してしまった時はどうするか……誰もが1度は悩んだことのある事柄について、わかりやくすく描かれています。広告代理店を舞台にしていることもあり、ビジネスにおいてのコミュニケーションについても具体的に学べる一冊でしょう。
原作はちょっと難しいと感じる方は、ぜひこちらを導入として読むことをおすすめします。エピソードが目で理解できるので、そのあとに活字を読むと、より一層『人を動かす』への理解が深まるのではないでしょうか。
何度も読んで、ぜひノウハウを自分のものにしましょう。
最後に、本作の作者であるカーネギーの名言をご紹介します。
人を動かす 新装版
1999年10月31日
人は誰でも、他人よりも何らかの点で優れていると
考えていることを忘れてはならない。
相手の心を確実に掴む方法は、
相手が相手なりの重要人物であると
それとなく、あるいは心から
認めてやることである。
人間には誰しも、承認欲求があります。親に認められたい、友人に認められたい、恋人に認められたい、上司に認められたい……。
しかし、これは子供だろうが大人だろうが、誰でも持ちうるものです。そのことを前提に入れて、その人のことを心から認めてあげることで、心を開いてくれるとカーネギーは伝えたかったのではないでしょうか。
恋愛においてもビジネスにおいても、認めてもらいたい相手に関しては、まずこちらから相手を認めることを心がけましょう。しっかりとその人のよさを見きわめて評価してあげることで、相手もあなたのことを評価してくれるはずです。
クリスマスの笑顔
元手が要らない。しかも、利益は莫大。
与えても減らず、与えられた者は豊かになる。
一瞬間見せれば、その記憶は永久に続く。
どんな金持ちもこれなしでは暮らせない。
どんな貧乏人もこれによって豊かになる。
家庭に幸福を、商売に善意をもたらす。
友情の合い言葉。
疲れた者にとっては休養、失意の人にとっては光明、
悲しむ者にとっては太陽、悩める者にとっては自然の解毒剤となる。
買うことも、強要することも、
借りることも、盗むこともできない。
無償で与えて初めて値打ちが出る。
クリスマス・セールで疲れきった店員のうちに、
これをお見せしない者がございました節は、
恐れ入りますが、お客様の分をお見せ願いたいと存じます。
笑顔を使いきった人間ほど、
笑顔を必要とするものはございません。
笑顔によって癒されるし、時にそれは最高のプレゼントになる。そう感じられるこの広告は、お客様と店員の双方がWin-Winの関係になることができる、と伝えている秀逸な広告なのではないでしょうか。
友を得る法を学ぶには、
世の中でいちばんすぐれたその道の達人のやり方を学べばいいわけだ。
カーネギーは、その道の1番の達人を、犬としています。犬は働きもせずに生きていくことができる、唯一の動物だと言っているのです。誠実に飼い主に関心を寄せてくれるため、飼い主も決して放っておくことはできないでしょう。
この誠実な関心が、人間社会においてもとても重要だと伝えています。
最後に、上記2つ目、3つ目の名言を、恋愛に置き換えて考えてみましょう。恋愛においても、笑顔はとても重要な要素ですよね。相手が笑顔になれば、たいていの場合、微笑みかけられた相手も笑顔になります。そして2人が笑顔になり、その幸せな気持ちは何倍にも膨れ上がってお互いの活力となるでしょう。
また相手に関心があるからこそ、恋愛というものは成立します。関心がなくなってしまったら、2人の関係は終わりを迎えてしまうでしょう。そんな互いの絆を結びつける関心のプロが、犬。彼らをお手本として、いつでも相手に関心を持って、誠実に接すれば、たいていの困難は乗り越えていけるのではないでしょうか。
もっともっと『人を動かす』の内容やノウハウを知りたい方は、ぜひ実際にお確かめください。本書の例を読むことで、より体感的にカーネギーの教えが学べるでしょう。