5分でわかるODA!活動内容や実績、国別ランキングなどをわかりやすく解説

更新:2021.11.16

先進国と発展途上国の間には大きな経済格差があり、これを解消するために先進国が資金援助や技術提供をすることを「ODA」といいます。かつて日本も恩恵を受け、戦後の復興を成し遂げてきました。この記事では、ODAの概要やランキング、日本の活動内容と実績などをわかりやすく解説していきます。あわせて理解が深まるおすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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ODAとは。概要や目的を簡単に解説

 

「Official Development Assistance」の略称で、日本語の正式名称は「政府開発援助」といいます。発展途上国の経済発展や福祉の向上を目的に、先進国が資金援助または技術提供をすることです。

ODAがおこなわれるようになった背景には、戦後世界の創始者のひとりといわれるイギリスの外交官、オリヴァー・フランクスが示した「先進国と発展途上国の経済格差の問題」がありました。

通称「南北問題」と呼ばれるこの問題を解決するため、発展途上国を支援する国際的な体制として、1960年に「国際開発協会(IDA)」が、1961年に「開発援助委員会(DAC)」が相次いで整備されます。

また1961年には、アメリカのケネディ大統領が国連総会での演説で、先進国の国民所得の1%を発展途上国に移転することで、途上国の年率5%の経済成長を目標とする「開発の10年」を提唱しました。

日本は今でこそ支援する側ですが、かつては援助を受けていたことがあります。敗戦直後の1946年から1951年の間、アメリカから約50億ドルのODAを受け、カナダやメキシコ、チリ、ペルー、ブラジル、アルゼンチンなどから生活物資や食料の援助を受けています。

また1953年には、世界銀行から多国間援助を受け、東海道新幹線や東名高速道路、黒部川第四発電所などを建設しました。日本の高度経済成長期を支えたインフラも、ODAがあってこそのものだったのです。

いわば日本は、ODAを活用して発展途上国から脱したといえるでしょう。1954年に「日本・ビルマ平和条約及び賠償・経済協力協定」にもとづいて現在のミャンマーに賠償供与をおこなったのを端緒として、日本は資金を拠出する側へと立場を変えています。

ODAの国別ランキング!日本の順位は何位?

 

2018年に発表された2016年時点のODA国別拠出金ランキングをご紹介します。

1位:アメリカ(344億ドル)
2位:ドイツ(247億ドル)
3位:イギリス(180億ドル)
4位:EU(171億ドル)
5位:日本(104億ドル)

日本は1989年と、1991年~2000年は、ランキング世界1位の拠出国でした。しかし2001年にアメリカ、2006年にイギリス、2007年にはドイツとフランスに抜かれ、その後はおおむね5位前後で安定しています。

ただこのランキングは、あくまでもODAへの拠出金額を単純に順位付けしたもの。国際的には対GNI(国民総所得)比率にもとづいて評価をするのが一般的です。

「経済協力開発機構(OECD)」が国際目標として掲げているのは、GNI比0.7%。しかし日本の拠出金は0.2%に過ぎず、「開発援助委員会」に加盟している29ヶ国中20位にとどまっています。

冷戦終結後、ODA予算は世界的に削減方向へ向かっていました。しかし2001年に起きた「アメリカ同時多発テロ事件」以来、貧困がテロの温床になっているという認識のもと、欧米諸国を中心に予算を増額する傾向にあります。

日本のODAの活動内容と実績

 

日本は、1954年から2018年までの間に、190を超える国や地域にODAをおこなっています。支出額の累計は約61兆円。その他18万人の専門家と5万人のボランティアを派遣し、62万人の研修員を受け入れてきました。

日本からODAを受け取った上位8ヶ国は、インドネシア・中国・インド・フィリピン・ベトナム・タイ・バングラデシュ・イラクです。たとえばベトナムにある東南アジア最長の斜張橋「カントー橋」や、インドネシアの「タンジュンプリオク火力発電所」なども日本のODAによって作られました。

中国に対しては、2018年度をもって終了することが発表され話題となっています。これまでも、GDP世界第3位の日本が、第2位の中国に援助をしている状況にはたびたび疑問の声があがっていました。

中国への援助額は、「文化大革命」直後の1979年に供与を開始してから、累計で3兆6500億円にのぼります。港湾整備や水力発電所の建設、国営企業の工場近代化、中日友好病院の設立、地下鉄の整備、上下水道ガス管の整備、空港の建設、公害や感染症対策など、多岐にわたる援助を実施してきました。

ODAを終了するということは、相手を名実ともに「先進国」だと認めることになります。今後日本政府は、中国との間に「開発協力対話」を立ち上げ、発展途上国の支援に連携して取り組んでいくことを目指しているようです。

日本のODAの特徴は、「円借款が多い」「ハードインフラ整備が多い」「アジア中心」だといえます。

長期低金利の資金貸し付けである「円借款」の多さについては、無償援助をおこなうほどの財政的余裕がないことや、被援助国に返済を義務付けることで自立を促し依存を防止するという理由もあるようです。

「ハードインフラの整備」は被援助国の経済発展と貧困削減のために「世界銀行」や「開発援助委員会」が重要視しているもの。道路や橋、鉄道、発電所などの整備を手掛けてきました。

ただ近年では、被援助国に民主主義や法の支配を根付かせるため、法令の運用や執行に関する支援など「ソフトインフラ整備」も重視される傾向にあります。

「アジア中心」にODAをおこなってきたのは、第二次世界大戦の戦後賠償という意味合いが大きいでしょう。

また日本は2国間援助だけでなく、「UNICEF(国際連合児童基金)」や「WFP(国際連合世界食糧計画)」「UNDP(国際連合開発計画)」などの国際機関への資金拠出を通じて、多国間援助も実施しています。

ODAとJICA

 

ニュースを見ていると、ODAとあわせて「JICA(じゃいか)」という言葉もよく目にするのではないでしょうか。

JICAとは、「Japan International Cooperation Agency」の略称で、日本語の正式名称を「独立行政法人国際協力機構」といいます。2003年に設立された、外務省所管の独立行政法人です。

ODAの実施機関として、対象となる国や地域の課題を調査、分析し、事業の計画策定や管理、現場で実際に活動をする人材の確保、派遣などの業務を担っています。

2008年には、これまで担ってきた技術協力事業に加えて、外務省が担っていた「無償資金協力業務」や、JBIC(国際協力銀行)が担っていた「有償資金協力業務」も統合し、ODAに関する業務をほぼ一手に引き受ける組織となりました。

開発途上国で大規模な災害が発生した際におこなわれる「国際緊急援助」や、海外に多くのボランティアを派遣する「青年海外協力隊」などの活動も有名です。

現地における日本の評価を分析した一冊

著者
["戸川 正人", "友松 篤信"]
出版日

 

日本のODAが、当事者である発展途上国の人々からどのように見られているのかを知るのは難しいものです。国内の報道で実状に触れることはほとんどありません。

本書は、現地の新聞報道をもとに、日本やアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなど主要な拠出国の評価をまとめています。「レピュテーション」という方法で客観的に分析しているのが特徴でしょう。よい面も悪い面も含めて考察をしているので、ODAについてあらためて考えるきっかけになります。

学術書ではありますが、すっきりとした語り口と明快な展開で、読みやすさは抜群です。ODAに関心がある方はもちろんですが、日本が世界に対してどのようなことをしているのか、どんな評価をされているのか知りたい方にとって必読の一冊です。

ODAについて考え直す一冊

著者
古森 義久
出版日

 

本書は、日本とアメリカのODAに関する歴史や政策、現状を分析し、どのように改善すべきかを具体的に提案している一冊です。

日本人の多くがODAを「豊かな国から貧しい国への援助」と考えているのに対し、アメリカは「外交戦略のひとつ」とみなしていると作者はいいます。与えることだけに意味があるのではなく、供与を通じてどのような成果を得られるかが重要なのです。

これからの国際社会で日本がどのように立ち回っていくのかを考える、よいきっかけになるでしょう。

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