高校生たちのキラキラした青春と、恋に一喜一憂する姿を描いた本作。感情豊かで恋に一生懸命な冴島翠と、自分の気持ちをはっきりとさせられない須藤晃の恋を中心に、友人たちの恋や友情、高校生ならではの日常などを描いた、青春恋愛漫画の名作です。 今回は、そんな本作の名言を中心にご紹介。ネタバレを含みますので、気になる方は、無料で読めるスマホアプリでご自身でご覧いただくのもおすすめです。
創立したばかりの学校に1期生として入学した、冴島翠。2学期早々に引いてしまった風邪が治って学校に行った彼女は、クラスメイトから生徒会役員候補として出てほしいと頼まれてしまいます。断れず頼みを聞いた彼女は、見事生徒会副会長に当選。
しかも生徒会長は、彼女が想いを寄せる須藤晃だったのです。
- 著者
- 矢沢 あい
- 出版日
- 2000-10-30
同じ生徒会の役員として気軽に話せることを喜ぶ一方、晃に恋人がいるかも知れないと思い悩むように。
彼が好きで、気持ちを抑えようもない翠は、彼と距離を縮めるに連れて、一緒にいる幸せと、彼の本心に対する不安で揺れ動くようになっていくのです。
『NANA -ナナ-』や『ご近所物語』など多くの少女漫画を描いてきた矢沢あい。
1985年、雑誌りぼんからデビューを果たし、その後『NANA -ナナ-』が実写映画化、アニメ化など多種のメディア展開を見せるなど、大ヒットとなりました。
彼女の特徴といえば、主人公の女の子を中心とした、周りの人間も巻き込んだ恋愛模様ではないでしょうか。友人たちの恋愛は他の少女漫画でも描かれますが、主人公たちががっつりサブカップルに絡んだうえで恋が進んでいくのが、彼女の作風のように思えます。
- 著者
- 矢沢 あい
- 出版日
- 2000-05-15
主要登場人物だけでなく、その周囲の人物の恋愛模様、彼らの絡みをきちんと丁寧に描いているのが矢沢あいの特徴。キャラクターたちに感情移入しやすい理由ではないでしょうか。
また、主人公のモノローグが繊細に、丁寧に語られており、そこが感情移入がしやすく、心に残りやすい理由だとも考えられます。1人の人間の心の変化をまっすぐに描くからこそ、読者も作品に引き込まれていくのでしょう。
他にも、別作品で描いたキャラを登場させることもあり、ファンとしては魅力的な部分でもあります。その物語が終わっても、キャラクターたちの生活は続いているのだと感じることができ、読者としては嬉しいですよね。
矢沢あいのおすすめ作品を紹介した<『NANA‐ナナ‐』以外の矢沢あい、おすすめ漫画ランキングベスト5!>の記事もおすすめです。
『天使なんかじゃない』の魅力は、なんといっても、主人公・冴島翠の存在です。タイトルである『天使なんかじゃない』は彼女を指す言葉であり、彼女が作中で何度も考えるものになります。
翠はどこにでもいる女の子で、特別容姿が優れているわけでも、家がお金持ちなわけでもありません。ただ、誰よりも素直。その素直さが、キャラクターたちの心動かし、読者の心をも動かします。
しかしだからといってどこまでも清廉潔白なだけの存在かというとそうではなく、心の変化、表現し得ない気持ちが絶妙に彼女の人間らしさを際立たせます。彼女の「天使ではない」そういった部分が等身大の女の子であることを感じさせ、より感情移入しやすくしているのではないでしょうか。
夏休み明け、風邪を引いて他の生徒より遅れての登校となった、冴島翠。
彼女は休んでいる間に、クラスから1人選出しなければいけない生徒会役員候補へと選ばれていました。しかも断れずにそれを引き受けることになり、何とその日に演説をすることになってしまったのです。
- 著者
- 矢沢 あい
- 出版日
- 2000-10-30
本巻は、生徒会も発足したばかりで、ま登場人物それぞれに距離感が感じられます。そのなかでも、とっつきにくく、特に距離のあった麻宮裕子に対する翠の言葉は、なかなかの名言ではないでしょうか。
あんたがあたしを嫌いでも あたしは好きよ マミリン!
(『天使なんかじゃない』1巻より引用)
翠は、麻宮が同じ生徒会メンバーの瀧川のことを好きだと気付き、頼まれてもいないのに2人がうまくいくようさまざまな工作をしてきました。そのなかで、新1年生の新入生歓迎会では、2人を主役にキスシーンなど入れた劇を提案したのです。
周りが乗り気なのを受け、麻宮も腹をくくり練習に励みましたが、肝心の新歓当日、中学時代の後輩で瀧川の彼女である志乃と会ったことで、彼女はトイレに閉じこもってしまいます。
お芝居のなかで好きな人と恋仲になる。それを気恥ずかしくも嬉しいと思っていた麻宮にとって、その劇を瀧川の本当の彼女に見られるというのは、ひどくみじめに感じるのも当然ですよね。そのやるせなさと怒りを、彼女は翠にぶつけて「嫌い」と言い放つのです。
その言葉を言われたうえで、翠は麻宮に「好き」だと言ったのでした。
まだ友人と呼にあえる前の段階でひどい言葉をぶつけられてもなお、「好きだ」と手を差し伸べられる彼女の強さ、まっすぐさ。頑なに閉ざされていた麻宮も心を開き、2人は距離を縮めるようになりました。
相手のことを想った言葉は、きちんと相手に届くということが表現されており、コミュニケーションの基本、そして大切なことを感じさせてくれます。
志乃が入学してきたことで、瀧川のことを好きな麻宮と、麻宮の気持ちに気づいている瀧川の関係に、ちょっとした暗雲が立ち込めるように。そんな3人の様子を気にするなか、翠は、彼氏となった晃と美術教師の牧の関係にも気を揉んでいました。
牧には昔、仲違いした恋人がいたと聞いた翠は、牧とその恋人になんとか仲直りしてもらおうと行動を開始。
しかし、晃の妹・広子の言葉により、晃は牧が好きなのではと考えるようになるのです。
- 著者
- 矢沢 あい
- 出版日
- 2000-10-30
新入生も入学し、それぞれの恋に進展も見える本巻の名言は、前巻での名言も思い出させる、麻宮のこの言葉をご紹介します。
あたしは冴島翠みたいになりたい
(『天使なんかじゃない』2巻より引用)
将来の夢を話しながら、何になりたいか問われた麻宮が言った言葉です。本を読んでいても、誰と何を話していても、自分の気持ちが素直に表情に出る翠に憧れている、といった意味のセリフですが、麻宮が言うからこその感慨深さがあります。
彼女は登場当初からそっけない性格のキャラクターで、素直に自分の気持ちを言えず、友人関係や友情に対しても、どこか淡白な印象を受けました。そんな彼女が臆することなく、憧れている気持ちを素直に本人に伝えたのです。
また、麻宮はこうも続けます。
あんたが みんなに好かれる理由がわかるわ
(『天使なんかじゃない』2巻より引用)
当初は嫌いとまで言い放ってきた麻宮に、ここまで思わせる翠はさすがですね。麻宮にとって、翠はとてもかけがえのない存在だったのではないでしょうか。
また、なんの計算も打算もなく、ただ純粋に1人の人間を認めることができるというのは、何よりも尊いことではないでしょうか。
翠は中学時代の友人であり、翠に好意を寄せている相手・ケンと、そして晃はお見合いをするという牧とともに過ごしたクリスマス。
互いを想いながら、それでも気持ちの整理がつかない2人は、ついに別れることを決意しました。別れを切り出した晃に、友だちになることを提案した翠。
2人は「友だち」として、今までのように生活することとなったのです。
- 著者
- 矢沢 あい
- 出版日
- 2000-12-15
晃と翠のすれ違い、晃の本心、翠の本心が一心に詰まった本巻。2人が互いのことをどう想っているかわかってからの場面、瀧川・麻宮・志乃の恋の場面、それぞれに名言があります。
そんな流れの本巻から選んだ名言は、晃と翠が別れてからの、翠のこの言葉です。
つき合ってたって やさしくなれなきゃ 意味なんかないもん
(『天使なんかじゃない』3巻より引用)
大人ですね。きっと別れたことで、彼女の気持ちにもいったん整理がついたのではないでしょうか。もしかしたら、自分のことが好きで、自分を1番に考えてくれるケンがいたというのも、大きかったのかもしれません。
そもそも、牧のことより自分を選んでほしいと思いつつ、牧が置かれていた状況を晃に伝えずにはいられない心優しい翠にとって、「彼氏」ではないほうが気持ちが楽だったのかもしれません。
また、このセリフはこのように続きます。
別れたことで失うものより
とり戻すものの方が大きかった気がするし
(『天使なんかじゃない』3巻より引用)
瀧川との関係に悩む志乃に対して翠が投げかけた言葉ですが、これは志乃にとって大事な言葉になってきます。今後、志乃は瀧川との別れを決めるのですが、この言葉が何よりの後押しとなったのではないでしょうか。
翠が本心で、取り戻したもののほうが大きいと感じているかどうかはわかりませんが、これ以上ないほど好きになった相手と別れて、こうやって考えられるのは、彼女が何より晃の幸せを願っていた証拠ですよね。
フランスにいる晃は、事故にあったことで、あらためて自分の想いを確認します。一方晃がどこにいるかわからない翠は、同級生や後輩に支えられながら、2度目の新歓を迎えていました。
無事に新歓を終えた彼女は、一向に音沙汰のない晃への想いを募らせ、抑えきれない衝動に飲まれそうに……。
そんな彼女のもとに、1本の電話がかかってくるのです。
- 著者
- 矢沢 あい
- 出版日
- 2000-12-15
お互い、電話越しに想いを確認した晃と翠。再会してからは、互いに2度と離れないという気持ちを確かめ合います。
晃と翠の絆の深さ、想いの強さを再確認させられる本巻。みんなが幸せに向かうなか、その絶頂にいる翠のこの言葉は、まさに少女漫画らしい名言なのではないでしょうか。
ねえ 神様 もし運命が本当にあるなら
あたしは 晃と出会うために 生まれて来たんだって思ってもいい?
(『天使なんかじゃない』4巻より引用)
最終回、少女漫画の締めくくりにふさわしい言葉ですよね。今まで多くのすれ違いや、悲しい思いを経験しながら、ただ1人だけをこれほど想える彼女に心を動かされます
現実的に考えると少々恥ずかしいセリフでもありますが、それほど好きな相手に出会えたなら、これくらいのことを考えてしまうよな、と思わされてしまう説得力のある展開。さまざまな後悔をして傷ついてきた翠が言うからこそ、心に響くものがあるのです。
翠は晃のちょっとした行動のなかに、不安と不信感を抱き続けてきたものの、それを表に出さず、笑顔で隠してきました。そんな彼女が、「翠を幸せにしたい」という晃の想いをやっと実感でき、「晃でなくてはダメだ」と本当に自覚した瞬間でした。
彼らが迎えるハッピーエンド、そして青春の終わりの詳しい様子は、ぜひ本編で見届けてください。
高校生たちの不器用で、もどかしい恋模様を描いた『天使なんかじゃない』。恋愛だけではなく、友情も、学校行事も、青春すべてに力を注ぐ彼女たちの姿には、元気と活力を分けてもらえます。そして誰かを一心に想う姿から、純粋に人を好きになることの良さを感じさせてくれます。
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