藤子不二雄Aおすすめ漫画ランキングベスト6!ブラックユーモアはFよりA

更新:2018.11.22

藤子不二雄は日本を代表する漫画家ですが、周知のとおり、藤子不二雄は安孫子(以下A氏)と藤本(以下F氏)両氏のペンネームです。2人は、名実とともにパートナーとして漫画界にデビューしましたが、双方とも才能のある漫画であるため、後に独立。それぞれ、別の漫画家として大成しました。 F氏はSF系が多いのですが、A氏は『笑ゥせえるすまん』のようなブラックユーモアから、『プロゴルファー猿』のようなスポーツもの、『忍者ハットリくん』のような忍者とギャグマンガを合体させたもの、さらには青春ドラマまで幅広い範囲の作品を描きました。 今回は、そのA氏の作品をランキング形式で紹介します。

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目次

藤子不二雄Aとは

A氏の本名は、安孫子素雄(あびこ もとお)。パートナーのF氏こと藤本弘(ふじもと ひろし)とは幼馴染同士です。デビュー作は、高校時代に描いた『天使の玉ちゃん』で、この作品は毎日小学生新聞に連載されました。

当時、毎日小学生新聞には手塚治虫の作品『マァチャンの日記帳』が連載されていましたが、この作品の連載が終了した後、手塚の連載が途絶えます。そこで2人は、代わりに自分たちの作品を連載してほしい、という内容の手紙と漫画を送り、見事採用されたのでした。

著者
["藤子・F・ 不二雄", "藤子 不二雄A"]
出版日
2012-09-25

高校を卒業した後、A氏は伯父が重役をしている新聞社に入社し、しばらくそこで働くことになります。彼は、そこで会社員としての経験を積んだ後、早々に会社を退社したF氏に連れられるように、漫画家を目指して上京するのです。

上京した2人は親戚の家に厄介になり、2畳1間の部屋で寝泊りをすることになります。そんななか、手塚から連絡が入りました。それは、彼が当時住んでいたトキワ荘を出ることになったので、その空いた部屋に2人で住まないか、という連絡だったのです。

これをきっかけに、2人はトキワ荘に住むことになりました。なんと手塚は住む場所だけでなく、敷金まで用意してくれたのです。

著者
藤子 不二雄A
出版日
2014-05-28

 

やがてトキワ荘には、石ノ森章太郎、赤塚不二雄、つのだじろう、森安なおや、鈴木伸一(「ラーメン大好きの小池さん」のモデル)、そしてみんなの兄貴分で恩人である、寺田ヒロオが集まってきました。

ここに集まった人達は、それぞれが得意なジャンルを発揮し、日本を代表する漫画家となっていったのです。

A氏は、上記のとおり多彩なジャンルに長けた方ですが、そのなかでも特に優れているのがホラーテイストのブラックユーモア。人間の内面や深層意識にある欲望をあぶり出し、その結果として引き起こされる、トラブルによるドラマを描くのです。

これは、新聞社で働いていたときのインタビュー経験が生きていると考えられます。その際に人間のさまざまな一面を見ることができたため、人間の内面に関心があり、このような作品が生まれたのでしょう。

 

おすすめランキング6位!『忍者ハットリくん』

 

ある日、小学生の三葉ケン一少年が、テレビで時代劇を見ていたときのこと。忍者が活躍する場面になると、隣から

なんだか、ち~とも わからんでござるな
(『忍者ハットリくん』1巻より引用)

という声がするのです。ケン一が振り返ってみると、そこにはテレビの忍者と同じく、忍び装束を纏った少年がいました。彼は

せっしゃハットリカンゾウと申す
(『忍者ハットリくん』1巻より引用)

と名乗るのです。やや無口でポーカーフェイスの少年・ハットリくんは、得意の忍術でケン一を助ける一方、現代社会に対して知識をまったく持ち合わせていません。そこから時折騒動がありながらも楽しい、彼らの日常が始まり……。

 

著者
藤子 不二雄A
出版日
1996-01-18

 

本作は、1964年に連載が開始されました。それまで忍者といえば、時代劇で、暗殺や内部工作などダークサイドな活躍をしたり、『少年忍者部隊月光』のようにスパイアクション的な活躍をするというのが主流でした。

しかし、A氏はあえて、そうしたイメージをそのままに、ギャグマンガにしてみたら面白いのではと考え、本作を思いついたとのこと。

現代社会に「忍者」を紛れ込ませたらどうなるのか?というイメージでやっているため、当初ハットリくんのキャラクターは、無口で、ぶっきらぼうで、ポーカーフェイス。そのため、あの顔はお面ではないかと言われたこともあるのだとか(A氏によると、素顔とのこと)。

 

出典:『忍者ハットリくん』1巻

 

当初はハットリくんとケン一の引き起こす騒動がメインのドタバタギャグがメインでしたが、後にライバルの甲賀忍者ケムマキやハットリくんの弟シンゾウが登場し、ストーリーに忍法合戦などを取り入れるようになり、現代社会で行われる忍法合戦という、当時の子供達にとって夢のような世界観を描いています。

本作はやがて、テレビドラマ化、アニメ化に伴い、劇場作品になるまで人気を得ました。

 

おすすめランキング5位!『怪物くん』

 

町の中で、奇妙な男たちが何かを探し回っていました。彼らの正体はオオカミ男、フランケンシュタイン、ドラキュラ伯爵……やがて、彼らに偉そうに喋りかける少年が現れました。

彼の名は、怪物くん。怪物だらけの国・怪物ランドの皇太子で、修行で人間界にやってきたのです。ドラキュラ、フランケン、オオカミ男は彼のおともで、普段は一緒に怪物屋敷に住んでいます。

しかし怪物くんは、そこから荒間荘というアパートに引っ越すことにするのです。そして、隣に住む市川ヒロシ、市川歌子の2人の姉弟と仲良くなりました。

そこから、ヒロシと歌子は、怪物くんの世界に驚かされ続けるのでした。

 

著者
藤子不二雄A
出版日
2010-04-28

連載開始は1965年。前年に『忍者ハットリくん』の連載が開始されたため、差別化を図っている箇所が見受けられます。

ハットリくんが無口で真面目な少年であるのに対し、怪物くんはわがままで強引な性格です。それとハットリくんの準主人公・三葉ケン一が一人っ子であるのに対し、怪物くんの準主人公・市川ヒロシにはお姉さんの歌子がいます。

さらに、ケン一の両親が健在で一軒家に住んでいるに対し、ヒロシはアパート住まいで、両親は早くに亡くし、姉の歌子が働いて生計を立てています。

これは連載当時、高度経済成長期が始まり、共働きや鍵っ子、一人っ子が増え始めていたのが背景になっているのです(ヒロシの場合、若い女性の勤め人が増えたことが背景になっていると思われます)。

出典:『怪物くん』1巻

当時流行していたモンスター映画の影響から、本作は生まれました。後に描かれる『魔太郎が来る!!』でもわかるように、A氏は大変、怪奇趣味な一面があります。ただし、本作は怖いはずの怪物をディフォルメして、子供に親しみやすくし、さらに子供の友達として描いているのです。
 

怪物くんの顔が変形するのは、A氏が主人公の顔を決めるのに悩んだ末に、閃いたアイディアによるものだったそうです(最初は怖い顔にするつもりだったとの事)。

その流れで、怪奇漫画といえば、水木しげるを忘れてはいけません。彼の作品は、土着的な作風で博物学的、神秘家的な一面を持っています。それに対し、本作で出てくる怪物は、当時のモダンホラー寄りで、より漫画的なキャラクター作品になっているのです。

怖い怪物が子供の味方になってくれるという設定や、アパートの隣に住んでいるという不思議さ、冷蔵庫が怪物屋敷に通じる抜け道になっているなど、子供達の心をワクワクさせてくれる要素が、本作には一杯詰まっています。そこが、本作の大きな魅力の1つといえるでしょう。

その人気は近年までおよび、2010年には大野智主演でドラマ化されました。

おすすめランキング4位!『黒ベエ』

 

黒いマントに、黒い服、黒い帽子と黒ずくめの格好をして、ピエロのような顔の小柄な男。大人なのか子供なのかわからない、正体不明のこの男の名は、黒ベエ。彼は、ハゲワシのハゲベエをつれて、影を自在に操り、催眠術や腹話術を使う不思議な旅人です。

しかし、好奇心旺盛で底意地が悪く、特に自分に危害を与えたものには容赦の無い、冷酷な一面も持っています。

 

著者
藤子 不二雄(A)
出版日
2011-11-15

 

本作は1969年に連載。前年度にはすでに『笑ゥせぇるすまん』の原型である『黒ィせぇるすまん』が読みきりとして連載されましたが、本作もまた『笑ゥせぇるすまん』同様、ブラックユーモアの系統に属する作品。

ただし、『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造があやしげなビジネスマンというスタイルであるのに対し、黒ベエはどことなくイタズラ好きの妖精のような感じです。

喪黒福造のように、ビジネスマンの営業のように人と関わるのではなく、自身の好奇心から人に関わってゆきます(喪黒福造も好奇心で関わることがあります)。

 

出典:『黒ベエ』1巻

 

しかし、関わってゆく人が大抵一癖あるキャラクターばかり。第1話では、ある少年のペットであるワニ(これも黒ベエがそそのかして飼うように仕向けた)をさらって、その肉を食おうとする家族が出てきたり、自分をいじめた連中を陰険な方法で報復する、残酷ないじめられっ子・スズキミチオが登場したりと、後の『魔太郎がくる!!』を彷彿とさせるような、とんでもないキャラクターばかり。

そしてこれこそが本作の醍醐味。『笑ゥせるすまん』の登場人物のように自己の欲望を押し隠しているのではなく、狂気性が全面的に出ているキャラクターが多く登場するのです。

そのため本作を読んでいると、黒ベエが彼らを退治するヒーローに見えてきそうですが、彼も、さしたる理由も無く人を陥れるような、恐ろしい奴でもあります。

 

おすすめランキング3位!『魔太郎がくる!!』

 

友愛学園に転校した中学生・浦見魔太郎は、小柄で態度も卑屈で、気の弱い中学生。転校した早々、底意地悪い同級生に目をつけられて、いじめられてしまいます。

しかし、限度を越えたいじめを受けた瞬間、魔太郎が、

こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か
(『魔太郎が来る』1巻より引用)

とつぶやきました。そして、黒魔術を使った「うらみ念法」を駆使して、いじめっ子に陰惨な報復をするのです。

 

著者
藤子 不二雄A
出版日
1999-11-01

 

A氏の作品の特徴の1つとして、主人公が変装したり、変身する能力の持ち主であるということが挙げられます。本作の魔太郎も例外なく、いじめた相手に復讐するときは、黒マントになぜか薔薇柄のシャツを着ているのです。

そんな本作の最大の見所は、いじめられっ子がいじめっ子に黒魔術を使って、鬱憤を晴らすというカタルシズムでしょう。本作の与えた影響は大きく、雑誌のお遊び企画「あなたの恨みを買います」では、真剣に恨みを晴らしたいという手紙がきたほどだそうです。

大人になって見ると、子供の負の側面を覗き見ているような、危うい魅力を感じ取れる作品でもあります。

 

出典:『魔太郎がくる!!』

 

途中から、悪人や、陰惨で歪んだ精神性の持ち主である人間を成敗するような、怪奇性の強い、ダークヒーロー的な活躍をするようになります。

そのために物語の路線が上記のように変わり、メインキャラクターも増え、魔太郎同様に魔力を使う、底意地の悪い3歳児・阿部切人や、魔太郎と親しくなる「怪奇や」のおじさんなどが登場します。

特に、意地悪だけれども、時には魔太郎のよき協力者となる切人との奇妙な友情は、本作のひそやかな見所です。

 

おすすめランキング2位!『プロゴルファー猿』

 

短気な中年ゴルファーがキャディーに当り散らしながら、高価なボールを捜していました。そこへ自ら「猿」と名乗る少年が現れます。その猿はゴルファーを挑発して、賭けゴルフを持ちかけてくるのです。

まず中年のゴルファーが、一打でグリーンにまで飛ばしました。しかし猿は、風の流れを読み、お手製のドライバーを使って一気にボールを飛ばすのです。ボールはホールに立てられた旗にあたり、そのままさおを伝って落ち、見事にホールインワンを決めました。

まんまとお金をせしめた猿は、己の弟達・中丸、大丸、小丸の元に戻ります。そんな彼の名前は、猿谷猿丸。なんと、まだ中学生なのでした。

そんな彼に、ある黒い覆面を被った男が関心を持ったのです。

 

著者
藤子 不二雄A
出版日
2011-09-01

 

大のゴルフ好きで知られるA氏は、少年漫画初のゴルフものを企画しました。しかし、ゴルフは大人の遊びという認識があったので、編集部では反対の声も多かったそうです。

ところが、第1話が掲載されると、たちまち人気を得ました。

本作を読んでみると、ゴルフ界を牛耳ろうとする不気味な組織や、いかにも少年誌的な、奇抜なゴルフプレイヤーとの戦い、さらにゴルフでお金を稼いで、家族を助ける主人公に、ライバルとの友情など、少年誌の見所の基本が、しっかりと守られていることに気付きます。

ゴルフという題材を使うことによって、背伸びをして大人の真似事をしたがる子供の心をくすぐるには、打ってつけの作品であったといえるでしょう。

 

出典:『プロゴルファー猿』1巻

 

また、ゴルフの知識も丁寧に紹介されていて、素人でも楽しめるようになっています。現に本作を読んでプロになった人もいるそうです。

ちなみに、主人公・猿丸の使っている必殺ショット「旗包み」は、A氏が実際にやったことのある技で、偶然にできたショットなのだとか。

 

おすすめランキングベスト1!『笑ゥせぇるすまん』

 

友達が欲しいのに、これといった相手がいない独身のサラリーマン、気が弱くて客の髭をそれない理髪師見習い、ヒーロー願望のある青年……。そんな彼らの前に、ある1人の男が現れます。

全身黒ずくめで、顔は張り付いたような不気味な笑顔。男は名刺を手渡します。そこには、こう書かれているのです。

ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造
(『笑ゥせぇるすまん』1巻より引用) 

喪黒福造と名乗るこの男は、ボランティアのようなことをやっていると言い、人々の悩みの相談を親身に聞いていました。そのうち喪黒は彼らに、自分の欲望を果たすために行動するよう、説得するのです。

この言葉を信じて行動する彼らだが、その結果は悲惨なものに……。

 

笑ゥせぇるすまん (1) (中公文庫―コミック版)

1999年02月01日
藤子 不二雄A
中央公論新社

 

発表は1968年で、当初の名称は『黒ィせぇるすまん』。1971年まで連載されました。

1989年に大橋巨泉が司会のテレビ番組「ギミア・ぶれいく」でアニメ化され、『笑ゥせぇるすまん』に改題されます。そして、再び漫画が連載されることになるのです。

喪黒福造という男が、人々の深層意識に眠っている根源的な欲望を揺さぶり起こし、その欲を叶えるべく相談に乗って手助けします。

しかし、やがて欲を叶えた人々は喪黒の忠告を破り、悲惨な結果を招いてしまうのです。

 

出典:『笑ゥせぇるすまん』1巻

 

A氏のブラックユーモアのセンスが如実に現れた作品ですが、完全なファンタジーである『魔太郎がくる!!』と違って、潜在的欲求をテーマにした、スリリングなストーリーが魅力。

読者にも当てはまるような願望が出てくるので、読んでいるときに、思わずドキリとさせられてしまった人も多いのではないのでしょうか。

 

出典:『笑ゥせぇるすまん』1巻

 

実は本作、話のスタイルはF氏の『ドラえもん』に近いもの。各話のゲストキャラが喪黒に自分の欲望を叶えてもらいますが、忠告を破ったために悲惨な自体を招いてしまいます。

これは、『ドラえもん』でよくおこなわれるパターンです(のび太が道具を使って欲望を叶えようとするが、ドラえもんの忠告を破ったために悲惨な結末を迎えるパターン)。

つまり、本作は『ドラえもん』の形式を取りながらも、キャラクターを大人に変えるだけで、サスペンス色の強い作品になったというわけです。それでもまったく異なる魅力があるのですから、漫画は奥が深いですね。

ちなみに喪黒福造のモデルは大橋巨泉なのですが、大橋巨泉とA氏は親しい間柄であるにも関わらず、このことを知ったのは、テレビ番組「トリビアの泉」で紹介されたときだったそう。

 

A氏の最大の魅力は、人間の嫌な側面を見抜いて描いてしまうというところでしょうか。しかし、嫌な一面がこれでもかと描かれていることがわかっていても『笑ゥせぇるすまん』を読まずにはいられません。

もしかしたらA氏は、人間は心の嫌な一面を覗き見ないと気が済まない、と知っているのでは……と思ってしまいます。