【ネタバレ注意】漫画「This Man」不気味さに惹かれるサイコサスペンス。全巻の見所を紹介

更新:2021.11.16

「This Man」とは、アメリカの都市伝説です。さまざまな人の夢に共通して登場する不気味な男のことを刺します。『This Man その顔を見たものには死を』は、そんな「謎の男」を中心としたサイコサスペンス漫画。その男は次々と事件を起こし、警察官の主人公ととある少女が巻き込まれていき……。その不気味さと、先の読めない展開が話題の本作は、サスペンス好きに絶対オススメの作品です。 原作を担当するのは、本作でデビューを果たした花林(かりん)ソラ。作画は、『BLOODY MONDAY』の作者として有名な、恵広史(めぐみこうじ)が担当しています。

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漫画『This Man その顔を見たものには死を』が面白い!謎の男「This Man」の目的とは……!?【あらすじ】

 

主人公・天野斗(あまのはかる)は、都内の交番勤務の警察官。また、犯罪事件の容疑者の似顔絵を描く、「似顔絵捜査官」でもあります。

ある日、恋人の三上玲愛(みかみれあ)から、「とある親子が不審者に悩まされているので相談に乗ってほしい」と頼まれます。

その親子の母親の名は、明里光代(あけさとみつよ)。娘は明里星子(あけさとほしこ)といい、感情を読み取る天才の少女でした。

事の始まりは、1週間前に星子が見た不審者。家の前に立っているその男から読みとった感情は「激しい憎悪」でした。

その感情が忘れられず毎日怯える星子。しかし彼女は、その能力故に事情聴取には耐えられません。そんな娘を見かねた母親は、似顔絵捜査官の天野に相談しにきたのです。

職務外で似顔絵を描くことに難色を示しました天野でしたが、依頼者に根負けして作成することに。

星子は感情を読みとる力の反動からか、言葉を介さずに筆談でコミュニケーションをとります。天野は筆談で情報を引き出し、男の似顔絵を描きました。そして描きあがったその男の顔は、なんと見覚えがあるものでした。

さらにその晩、星子の母・光代は「This Man」に殺され、天野の恋人・玲愛は攫われてしまい……!!謎の男と天野の戦いが始まります。

天野が描いたのは、アメリカの都市伝説として語られる「This Man」。夢に出てくる男「This Man」。やがて、その男の魔の手は星子と天野に及ぶことに……果たして「This Man」とは何者なのか?

漫画「This Man」公式アカウントから、こちらの動画も公開されています。

 

都市伝説で語られる「This Man」とは?

都市伝説で語られる「This Man」とは?
出典:『This Man その顔を見た者には死を』1巻
出典:『This Man その顔を見た者には死を』1巻

天野が描いたのは、アメリカの都市伝説として語られる「This Man」。本作のキーワードです。

もともとは都市伝説として、2006年にアメリカで広まったもの。

ある女性が、相談に精神科に訪れました。自分の夢の中に見知らぬ男が現れると言います。それだけでなく、彼女が夢で見た不気味な男と同じ男を夢でみた、という男女が複数人も現れた……というもの。

つまり彼は、夢の中にしか存在せず、現実には存在しない男。それがなぜ、星子の前に現れたのでしょうか?そして、ディスマンはこう言うのです。

 

ディスマンを見たものには 死を…
(『This Man その顔を見たら死を』1巻より引用)

星子の母親を殺したときに、そう言い残して、現場を立ち去りました。「おもしろい」という感情を残して……。

虚構であるはずの人物が、突如姿を現して人を殺すという設定は、七不思議や百物語などの怪談話が現実化してしまうような、気味の悪さを感じます。

衝撃的な殺人シーンや、ページをめくるたびにハラハラする本作。サスペンスとしてもかなり読み応えがあります。すでに本作を読みたいと思っている方は、下のボタンからスマホアプリをインストールしてみてください。

 

著者
恵 広史
出版日
2018-08-17

作品の見所1:似顔絵捜査官の主人公が、頼りになる!

作品の見所1:似顔絵捜査官の主人公が、頼りになる!
出典:『This Man その顔を見た者には死を』1巻

普段は交番勤務の警察官である天野ですが、「似顔絵捜査官」でもあります。正確には似顔絵捜査官という役職はなく、警察官の中で絵心がある者が担当するそうです。

似顔絵捜査官は、証言者のわずかな情報を頼りに、犯人の人相を描いていきます。正確に特徴を捉え、人相を描いていく技能は、まさに職人技ともいえるでしょう。紙とペンさえあればどこでも描けるので、機材が必要であるモンタージュ写真よりも利便性が高いとされています。

天野は、人相書きの技能を犯人探しだけでなく、星子が行方不明になったときに、街中で聞き込みをする際にも利用します。また敵が殺した人物の人相を書くことで、相手の心理的動揺を誘うことも。

この似顔絵描きのスキルが、物語でどのように活かされるかが見所のひとつです。

そんな天野は、似顔絵を描けるだけでなく、格闘術にも長けています。少年漫画らしいアクションシーンもたびたび登場するので、ぜひ注目してください。

作品の見所2:裏切りに次ぐ裏切り、見えざる敵との戦い

作中の「This Man」は、幽霊ではなく、現実に存在するはずの男です。星子の証言でわかっているのは、彼は「己の正体を知ったものは必ず殺す」ということ。そして、彼が「人を殺しているときに面白がっている」ということでした。

ミステリアスな悪、もしくは敵という存在は、読者を強く物語に引き込みます。正体がわからない、見えない敵だからこそ、恐怖心を煽(あお)り、主人公たちの活躍に期待が高まることでしょう。

また注目すべきは、天野と星子の周囲の人物が徐々に敵になっていく、歪な状況です。なかには警察官でありながら、星子を狙う人物まで現れます。

さらにその後、ユーチューバーならぬワンチューバ・KODAMAが、This Manに殺された兄の仇をとろうとして、関係者である星子に懸賞金を賭けて、保護するように呼びかけました。すると、多く人が懸賞金を目当てに彼女を探し、犯人の仲間と疑われた天野を捕まえようとするのです。

そして、とうとう天野の友人からも、裏切り者が出る事態に……。ネットの力によって、その場にいない多くの人間にも、言葉を届けることができるようになった現代。誰が味方で、誰が敵なのかわからないという恐怖を描いています。

KODAMAの目的とは?This Manは一体何者なのか?さまざまな謎が渦巻き、この先の展開から目が離せません!

作品の見所3:「おもしろければいいじゃない」大衆の好奇心が生み出す悪意

作品の見所3:「おもしろければいいじゃない」大衆の好奇心が生み出す悪意
出典:『This Man その顔を見た者には死を』1巻

おもしろければいいじゃない
(『This Man その顔を見たら死を』1巻より引用)

天野の恋人であり、記者として働いている、三上玲愛の言葉です。SNSでバズりたいために、動物を虐待する動画を映すような、昨今の風潮の背景にある「大衆心理」を、この一言で表しました。

ネットやSNSは、表現や伝達、調べものには最適のツールですが、一歩間違えれば、他人も己も破滅させてしまう恐ろしさを秘めています。

たとえば、天野がThis Manについて調べたとき、彼はLINEを使って友人と連絡をとり、描いた似顔絵を画像として共有することによって、情報を得ることができました。

しかしその後、天野は自宅を何者かに焼かれてしまいます。そして近くには、彼の描いた似顔絵そっくりの男・This Manがいたのです。捕らえようとした天野でしたが、多くの野次馬によって阻まれ、逃がしてしまいます。

また、兄をThis Manに殺されたワンチューバー・KODAMAは、事件関係者である星子に懸賞金をかけて、保護するように呼びかけていました。この無神経な行為のために、天野と星子は、多くの人間から好奇の視線と、敵意を受けることになるのです。

ネットの世界でしばしば問題になっているのは、こうした他人の肖像やプライバシーを何者かが手に入れて、ネットで広めてしまうこと。

本作でも、This Manは正体がわからない存在であること。そして、この事件に面白半分で首を突っ込んでいる人間、すなわち「モブ」という、名も無き人間の悪意が浮き彫りになっているのです。

この大衆の悪意と、正体不明の存在の悪意という、2種類の見えざる敵の存在が見所のひとつといえるでしょう。

『This Man その顔を見たものには死を』1巻の見所をネタバレ紹介!

 

天野は、明里親子の相談に乗り、不審者の似顔絵を描くことになりました。そして出来上がった男の似顔絵は、アメリカの都市伝説に出てくる男・This Man(ディスマン)の顔でした。

その夜、母親の明里光代は、何者かに殺害されてしまいます。生き残った星子は、母親はThis Manに殺されたと証言します。

そして彼女が、男が母を殺害しているときに読みとった感情……それは、なんと「面白い」でした。

 

著者
恵 広史
出版日
2018-08-17

 

現代社会は、ネットやSNSなどの電子媒体で成り立っていますが、本作の主人公とヒロインは、徐々に社会から切り離されます。

敵が増えていくなかで、アナログな武器で戦いを挑みますが、後半では、This Man以外にも警察内部の裏切り者が現れて、天野と星子を狙うようになるのです。

さらに、This Manに兄を殺されたワンチューバー・KODAMAが現れます。手がかりを知る星子に懸賞金を出して、彼女を自分に突き出すよう、一般人に依頼。2人を追う者は、1人また1人と増えていくことに……。

アナログの力しか残されていない主人公と、電子媒体を使って一般人を煽るKODAMAの対比が、非常に興味深い展開です。

1巻ではまだ、This Manと彼らがいかなる関係か、まるでわかりません。この見えざる敵に対して、2人はアナログの力のみを頼りに、この事件に立ち向かっていくのです。

 

『This Man その顔を見たものには死を』2巻見所をネタバレ紹介!

天野は、故郷の熊本にいたときからの親友・陣内に助力を頼みました。しかし、彼は天野が知らないうちに悪い仲間と付き合うようになり、ともに星子を捕まえにきたのです。

勤め先の工場が経営難であったことから、彼は懸賞金ほしさに天野を裏切ってしまいます。睡眠薬を盛られ、2人は陣内のトラックに乗せられました。天野は、自分が持っていた手錠で拘束されてしまったのです。

どこかの山中に下ろされた天野と星子。陣内の仲間たちに囲まれたことで、星子は多くの人の悪意を感じとってパニックになってしまい、足を滑らせて崖から落ちてしまいます。

幸いにも、木の枝に引っかかった彼女は、自身の愚行を恥じた陣内によって助けられた天野に、間一髪で助けられました。

その後、街に来た星子と天野でしたが、道中で別れた陣内に危機が訪れるのです。そして、彼とその仲間たちも……⁉

著者
恵 広史
出版日
2018-10-17

2巻の見所は、天野の故郷・熊本の、人吉でともに育った幼馴染の「人吉七人衆」です。

いわゆる小学校時代の仲良しグループで、天野が1巻でLINEを通じて連絡を取り合っていたのが、彼らです。この「人吉七人衆」には、天野の兄も含まれていましたが、どうやら若くして亡くなったようです。

小学校から続く仲良しグループと聞けば、普通のドラマであれば、涙あり感動ありの展開……。しかし本作では、陣内のように何かしらの理由で、天野を裏切ってしまうという展開が描かれます。

「いくらSNSを使っても、人は完全にわかり合うことはできない」ということを、本作を通じて暗示しているようにも思えます。

本作は、まだ始まったばかりの物語。敵の正体も、天野と星子の活躍も、まだまだこれからです。いつも助けられてばかりいる星子ですが、2巻の後半で急成長します。また、天野の親友・人吉七人衆の新しいキャラクターも登場するので、こちらもお楽しみに。

「似顔絵捜査」が題材のおすすめ作品はコレ!

本作以外で似顔絵捜査官が出てくる漫画は、元警察官という異色の経歴の漫画家・泰三子が描いた、女性警察官が主人公の漫画『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』という作品があります。

この作品では、主人公が似顔絵捜査官ではないにもかかわらず、犯人の似顔絵を描く場面があります。やはりある程度絵が描ければ、とくに資格は要らないようです。

著者
泰 三子
出版日
2018-04-23

その他には、『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』という作品も挙げられます。手塚プロダクションの元アシスタントが、似顔絵捜査の指導をしているという、逸話が語られています。本作で似顔絵捜査官に興味を持った方は、これらも合わせて読んでみてください。

著者
出版日
2011-07-08

 

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