『ここは退屈迎えに来て』『アズミ・ハルコは行方不明』など、映画化作品も多数執筆している小説家・山内マリコのエッセイ。そこのあなた、お買い物欲溜まってませんか?筆者は大溜まりですよ。ぜひ一緒にこれを読んで、擬似的に物欲を満たしましょう。
まずは筆者の心の声から。とにかく、金がありません。カッツカツのカツです。
それでも悲しいことに、物欲は尽きません。お洋服、お化粧品、お靴、おケーキ、おポーチ、もう言い出したら切りがないのです。本当はオシャレ雑誌で取り上げられてる商品を、片っ端から買い集めていきたいのです。でも金がないという立場が、それを許しません。
もう高望みはしないから、せめて、夏用パンツの下にヒートテックを忍ばせて寒さを凌ぐなんていうバカみたいな行為から卒業したいところ。誰か、私にあったかいパンツをください。
- 著者
- 山内 マリコ
- 出版日
- 2016-03-10
そんなこんなで、なかなか思うように買い物ができないでいる私。せめて買い物してる気分だけでも味わいたい……と思っていたところに、まさにピッタリの一冊が。
『買い物とわたし〜お伊勢丹より愛をこめて〜』
もう、タイトルから素敵です。「お伊勢丹」。なんて耽美な響きなんでしょう。埼玉の山奥から出てきた私にとって、そこはまさに夢の地です。
作者は、山内マリコ。『ここは退屈迎えに来て』『アズミ・ハルコは行方不明』などの作品が映画化もしている小説家・エッセイストです。田舎でくすぶっている若者の心理を描くなど、女性を中心に多くの人気を集めています。
本作は「週刊文春」で連載されていたものを、一冊にまとめた内容。連載で掲載されていた内容以外にも、その商品を買ったその後の様子も描かれています。ちなみに、差し込まれるイラストが超かわいい。
のっけからものすごく俗っぽい言い方でいやになるけれど、
生きることは、買い物することである。
(『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』より引用)
まさに心理!な一言から、本作はスタートします。確かに買い物をしなければ服は買えないし、家に住めないし、そもそもご飯も食べられません。生きること=買い物することなのです。
本作で作者は、実にさまざまな物を買っています。プラダの財布、椿オイル、ロンシャンのトートバッグ、ピッピのサンダル、ランコムのルージュ、CASIOのデジタル腕時計、GUCCIのスウィングレザートート……まだまだまだまだあります。
連載とはいえ、その豪快な買い物っぷりに、なんだかこっちまで買い物した気分に。私の行き場のない物欲が、擬似的に満たされていく……。
さらに、女性にとっての共感ポイントが多いのもポイント。
テレビで見るあのアーティストが着ている、何気ないパーカー。なんで、あんなにオシャレなの?自分が持ってる2000円くらいの物と、何が違うの?なんてこと、ありませんか。
このスカートには白シャツが合うと思ってたのに、自分が持ってる白シャツだと、なんか違うかも?なんてことも、ありませんか。
買い物するにあたって、こういった「女子あるある」的なエピソードがふんだんに盛り込まれているのも、本作の大きな魅力。買い物から派生して処分の仕方、エコについて、さらに現代社会についてまで、作者のさまざまな考えがわかるのも面白い点です。
作者の考えから、魅力的な商品の数々まで、いろんなことが詰め込まれた一冊。物欲の鬼と化してしまっているあなたは、ぜひ山内マリコに、その物欲を解消してもらいましょう。
とりあえず私は、本作を読みながら、あったかいパンツに想いを馳せてますね。
金銭的事情の方も、そうでない方も、買い物できずに悶々としてたら、ぜひこの一冊です。『買い物とわたし〜お伊勢丹より愛をこめて〜』は女子を救う!
困シェルジュ
何だか悲しい、モヤモヤする、元気が出ない……。いろんなきっかけで、もしくは何もなくてもマイナスな気持ちを抱えているあなたに、本好きのコンシェルジュ、ホンシェルジュたちが珠玉の1冊をご紹介!その沈んだ気持ちがちょっとラクになるような本、おすすめします。